はじめに
私はAIに関するコンサルティング/開発を行う会社を経営しています。
まだ小さい会社ですが、PoCで終わるプロジェクトは少なく、多くが本開発へと進んでいます。
PoCはその性質上100%の成功は保証されません。しかし、PoCで終わるべくして終わっているプロジェクトがその大部分を占めているように感じます。
この記事ではAIプロジェクトをPoCで終わらせないために考えていることをまとめました。
少しでもPoCで終わるプロジェクトが減り、意味のあるプロジェクトが増えることを祈っています。
記事を読んでもらいたい人
① AIプロジェクトの発注者
PoCで終わるプロジェクトを減らすには発注する人の協力が不可欠です。
盛り上がっているAI市場の中でPoCで終わるとわかりきっている提案をしてくる会社は後を断ちません(PoCだけをやっているのではという会社もあるほどです)。
② AIプロジェクトを提案する人
PoCで終わるプロジェクトは目先のお金にはなるかもしれませんが、それを繰り返すことは会社の信用を積み上げるため、健全な市場を作っていくためには得策ではないと考えます。
私はまだ勉強中の身ですが、社会にとってお客さんにとってより良い開発を増やすための一助になれば幸いです。
PoÇで終わるかは始まる前に8割決まっている
PoCで終わるかはプロジェクトが始まる前に8割(数字は感覚ですが)決まっています。
明確なアンチパターンがPoCで終わるプロジェクトには存在します。これを踏まないだけで本開発への到達率は大きく向上します。
市場の中で見聞きしてきたアンチパターンをいくつか紹介します。
アンチパターン① ROIの検証が不十分
このパターンが最も多い気がします。
プロジェクトを継続するにあたってROIは説明するまでもなく重要です。
しかし、成熟途中でありバズワードが行き交うAIの領域においてはROIの検証が不十分なままにプロジェクトが始まることが多いようです。
「上司がとりあえずAIを使えと言っている」「とりあえず手元にある予算で試してみよう」といったフレーズは黄色信号だと思います。
もちろんAIが急速に発展する中で企業として、ビジネスパーソンとしてその技術に触れ、試してみることは重要です。ただ、プロジェクトで得られる知見や人の成長もReturnとした時にどこまで会社としてInvestできるのかは事前に確認する必要があります。
端的にいうとプロジェクトに期待する利益をステークホルダーと認識を合わせ、そこに対してどこまで投資できるのかプロジェクトを始める前に確認しようということです。
当たり前のことだと思われると思いますが、驚くほどこれが十分でないプロジェクトが存在します。
アンチパターン② 絶対にできないことを夢見ている
このパターンも割と耳にします。
コンサルからの提案を信じてしまい、絶対に得られないReturnを夢見て多額の投資をしてしまうパターンです。
AIのできることが急激に広がる中でその最先端をキャッチアップすることが難しく、過大な期待が市場に広がっていることが原因です。
まだ最先端の研究者たちが実現できていないことをインテグレーションを主な生業とするベンダーに数億円かけて依頼したところでまず間違いなく期待通りのものは出来上がりません。
社内に有識者がいない場合、このアンチパターンを避けるためには提案のステークホルダーではない専門家の力を借りる必要があります。私もたまにですがこの第三者として提案の評価を依頼されることがあります。
アンチパターン③ 最終像が一致していない
技術者(ベンダー)とビジネスサイドの持っている最終像が一致していないことによりプロジェクトがうまくいかないパターンです。
技術者側が暗黙の了解として知っている限界がビジネスサイドに伝わっていないことで起こります。
文章などで最終像に合意していてもそこから想像している最終像が一致しているとは限りません。
具体的な画面イメージや想定される達成割合、できること、できないことを書き出して認識をできる限り揃える必要があります。
大手の企業でもこのような事例が散見されます。
プロジェクトが始まってからの落とし穴
プロジェクトが始まったあとにも落とし穴があります。
いくつかあると思いますが、今回はその中でも大きな落とし穴である 「作ってみたけど現場に導入されない」 を紹介したいと思います。
ROIも検証して実際に想定していたものができたのに現場に導入されないということが割とあるようです。
主な原因は下記です(MECEではありませんが)。
- 現場はそもそも困っていない
- 現場の賛同が得られていない
- クオリティが実用レベルに至っていない
これも書いてみると当たり前です。
ではこのような事態を避けるためにはどうすれば良いのか。
最も重要なことはプロジェクトの早い段階で現場を巻き込むことです。そして技術者を含むプロジェクトメンバーが深く現場を理解することから始める必要があります。
大企業になればなるほど事業部と技術部の距離が離れてしまい、これは言うほど簡単なことではありませんが、プロジェクトを意味あるものにするためには必須だと思います。
プロジェクトが始まる時にはまず現場を訪れ、時間をかけてそこで働く人や業務を理解することに重きを置いています。これはとても泥臭い作業ですが理論上いいものではなく実際に使われるものを作るためには必要なプロセスだと考えています。
最後に
いくつかのPoCで終わるAIプロジェクトのアンチパターンを紹介しました。
もちろんこれに尽くされませんが少しでもPoCの成功確率をあげる一助になれば幸いです。