はじめに
日系の IT 企業から外資系 IT 企業に転職されるというエンジニアの方、結構いると思います。
私自身は、2017 年に日系 SIer から日本マイクロソフトに転職し、約 6 年半勤め、今後は独立して市民開発者育成支援をしていく予定です。
在籍中は、ありがたいことに常に高い評価をいただき、幸いにも社内での大きな表彰を受け、信じられないほど素晴らしい報奨旅行に行く機会をいただきました。そのため、それなりには会社への貢献ができたと考えています。
今回、自身の過去 6 年半の経験を整理する意味で、あくまで私個人の経験に基づく見解ですが、マイクロソフトで成功、活躍する人の特徴を整理してみました。
外資系 IT 企業で成功、活躍するにあたって共通する部分も少なからずあると思いますので、現在日系 IT 企業に勤めており、外資系 IT 企業への転職を考えいる方の参考になれば幸いです。
成功の定義は人それぞれかと思いますが、例えば、入社後、自身が思い描いた、場合によってはそれ以上の成長をしたり、キャリアを歩んだり、成果を出したりしている。部門内外、場合によっては会社内外問わず、一生続くような素晴らしい人間関係を構築できている。社会、業界、お客様、同僚に対して大きく貢献をしている。自分軸で生き、幸福度の高い人生を送れているといった感じでしょうか。あくまで結果的にですが、大きな Award を受賞したり、大きな報酬を得たりすることもあると思います。
アピール、自己主張が上手い、バランス感覚に優れている
個人的に、日系の企業から転職してきた人の中には、アピール、自己主張が弱い人が結構いるという印象を持っています。
少し厳しいですが、私の紹介で入社した友人の多くもそのような感じというか、「もっとアピール、自己主張した方がいいのでは?」と感じることも少なからずありました。
あくまで主観ですが、恐らく、年功序列色が強く、先輩に過剰に気を遣い、成果をアピールすることや、やりたいことを主張することがあまり肯定的に捉えられない、場合によってはわがままに捉えられてしまう環境で長年働いてきたためと考えます。
いい意味では、従順、献身的とも捉えられるかもしれませんが、結果的に自分のやりたいことを犠牲にしてしまい、キャリアの選択肢も狭めてしまっている印象があります。
また、アピールが弱いため、例え同じようなことをしていても、アピールが上手な人と比較すると評価を受けにくい印象もあります。
そのため、メンタリングする際は、本人が気づいていない強み、本人が思っている以上にインパクトが出ている成果に気づいてもらうよう問いかけるだけでなく、自分がやりたいことをもっと主張してもよいことや、自身の成果をもっとアピールしても良いことを伝えたりもしていました。
逆に、マイクロソフトで成功、活躍する人は、アピール、主張が強すぎて周囲との摩擦が生まれないよう配慮しつつ、自身の成果はしっかりとアピールし、やりたいことはしっかりとマネージャー、リーダー等に上手く主張している印象があります。その結果、チャンスを上手く掴んでいるというか、引き込んでいる気がします。
例えば、私の場合、入社して 3 年弱ほどは Exchange (メール)、Office 365 のセキュリティ周りを担当しており、2020 年頃に Power Platform というローコード、ノーコードプラットフォームのサービスに興味を持ち、当時異動してそれほど期間が経過していませんでしたが、そちらのサービスを担当したいという思いが強くなりました。
そのため、既存の業務をしつつ、自分自身や周囲の人の業務を効率化するアプリを Power Platform で作成し、そのアプリを広報するために説明会を自分自身で企画して何度も実施しました。その結果、Power Platform に関する仕事の相談が来るようになり、最終的に、私が Power Platform を担当することがある意味既成事実化するというか、その当時の組織のターゲットと Power Platform の相性が良かったこともあり、その方が組織にとっても良いといった状態になり、希望通り Power Platform の担当エンジニアになることが出来ました。
それ以外にも、やりたいことが思い浮かんだらマネージャーにすぐに確認し、この程度であれば確認すらせずにやっていいという感覚を掴んだら、事後報告をするなど、やりたいことはどんどん主張、そして成果をアピールするようにしていました。
もちろん、部署異動についても自分主体となります。私の知る限り、日系の企業のように、本人の希望関係なく、年度初めに部署異動が決まる、部署、プロジェクトの都合等で突然辞令が出て部署異動が決まる、場合によっては物理的に住む場所が変わるということはありません。
部署異動する際は、必要に応じて他部門の方に 1on1 を申し込んで情報収集して、自分でオープンポジションを見つけ、社外の方と同じように申し込みをして、経歴書を用意して面談をします。社内転職と呼ぶ人もいます。もちろん、確定した際、現部署に拒否権はありません。
「まだ現在の部署で●年しか経っていないから」、「現在の部署の体制上、人が足りておらず、今異動するのは申し訳ない」ということで異動を躊躇してしまう人もいると思います。
もちろん、義理や人情も大事ですが、マイクロソフトで成功、活躍している人は、自分のやりたいことを踏まえ、周囲と摩擦が生まれないよう上手くバランスを取りつつ、積極的に社内または社外転職をしております。
コネクションづくり、他者を巻き込むのが上手い
マイクロソフトでは、いつ、誰に対しても 1on1 の依頼してもいいですし、誰に対してもメンターになってほしいとお願いしてもいいです。
例えば、インターン生の中には、2 カ月の間に、40 人以上の社員 (US で働いている人や社外的にも有名な方含む) と、自ら積極的に動き、1on1 をした人もいます。
また、必要に応じてマネージャーに確認することもありますが、基本的には、勝手に何か企画をして実行してもいいですし、例えば、他部署の人を巻き込んだ V-Team を立ち上げてもいいです。
マイクロソフトで成功、活躍している人は、呼吸するようにそのようなことをしている印象があり、もちろん、入社してすぐにそのようなことを実践し、どんどん人脈を広げ、他者を巻き込み、短期間で大きな成果を上げている人もいます。
私も、入社後、1 週間も経過していない中で勉強会を企画して実施するだけではなく、他部署のマネージャーの方に 1on1 の依頼をしたり、他部署の方に対してプレゼンを実施したり、他部署含め、新卒の方向けに、ビジネスの基礎、マインドセット、お客様の仕事についてなど、勝手にプレゼンを企画して実施したりしていました。
その後も、多様な V-Team に積極的に関わってきました。以下は、今年参加した V-Team の活動をまとめた記事です。私がこれらのチームに参加するきっかけとなったのは、後に述べるアウトプットです。私のアウトプットを通じて、イベント運営用アプリの開発やチームへの参加を依頼され、喜んで参画しました。結果として、皆が私の独立を凄く応援してくれるなど、素晴らしい出会いとなりました。
個人的に、こちらも、日系の企業から転職してきた人の中には、苦手な人がいる印象があります。例えば、あくまで私の知る限りですが、入社して間もない段階で、部署外や US で働いている人はもちろん、部署内の人に対してですら、みずから積極的に 1on1 のリクエストをしている人をほどんど見た記憶がありません (マネージャー等の指示で、オンボーディング中にチームメンバーに対して 1on1 リクエストをするよう指示された場合は除く)。
あくまで主観ですが、組織が縦割りになっており、他部署のマネージャーと 1on1 をすると怪訝な顔をされたり、他部署の方に対してプレゼンをしようとしたり、V-Team を立ち上げようとしたりすると「工数はどうするんだ」と言われたりするといったカルチャーの中で長年働いてきたことが理由と考えます。
その結果、「転職してすぐにそんなことしていい」という発想すら出てこないというか、「恐れ多くてそんなことできない」といったような心理的ブロッカーが働いてしまうものと考えます。
もちろん、外資系の IT 企業といっても、会社、部署によってカルチャーは違うため、最初のうちは念のため確認しながらでもいいですが、少なくとも、マイクロソフトでは、そのようなことを気軽に行っていいということを認識いただいて問題ないというか、むしろ推奨されると個人的に思います。
出し惜しみすることなくアウトプットをしている
マイクロソフトで成功、活躍している人は、社内はもちろん、社外、コミュニティ等に対して、自身のナレッジ、考えなど、アウトプットを積極的にというか、人によっては呼吸するくらい自然に行っている印象があります。
例えば、エンジニアであれば、チーム、部署、本部、組織全体に対して勉強会を開く、外部ブログに記事を書いてナレッジを共有する、作成したアプリをパブリックに公開する、社外、コミュニティのイベントに登壇するような感じです。
アウトプットすることで、自身のナレッジを一般化して、つまり、誰でもできるようにして、新しいチャレンジをしやすくなるというメリットや、結果的に有益な仕事や情報が集まり成長にもつながる、自身の影響範囲が広がるというメリットがあります。
私自身も、直近の 1 年間で 90 以上の Power Platform 関連のブログ記事を書いており、主に市民開発者の方向けに情報発信しております。
結果的に予想以上に沢山の人に見てもらい、相談が沢山来るのはもちろん、自身の知名度も少なからず上がり、会社から評価され、結果的に独立するという選択をすることにもつながりました。
「有償のエンジニアだから」といったような理由で、自身の既存の仕事、テリトリーを守ることに固執し、出し惜しみをし、アウトプットをしていなかったら、間違いなく、独立してやっていける自信は出てこなかったというか、そういった選択肢は生まれてこなかったと思います。
他者貢献のマインドセット
個人的にこちらが一番重要と思います。別の表現を用いると、圧倒的に Giver な人、利他の心、他喜力の強い人でしょうか。
※私は、利他の心という表現が好きなため、本記事ではなるべくそちらの表現を使わせていただきます
有名な稲盛和夫さんが提唱する人生の方程式で言うと、考え方の部分でしょうか。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
当たり前と思う人もいると思いますし、言葉で言うのは簡単ですが、どんなに大変なときも決してぶれずに、見返りを求めず、非常に深い愛情を持ち、他者 (同僚、お客様はもちろん、世の中すべての人) の人生に貢献することを最優先にして生きていくことは簡単なことではないと私は考えます。
そう思う理由は、ビジネスでは、達成が容易ではない、正論を振りかざすだけではどうにもならない、時には達成不可能で理不尽にすら思えるような非常にハードルの高いターゲットの達成が求められ、その達成のためには、非常に多様な考えを持つ、かつ超多忙な人たちを巻き込み、協力し合う必要があるためです。
ターゲットの達成が困難で、日々上司や先輩からプレッシャーをかけられ、押しつぶされそうになるようなケースもあると思いますし、外資系の企業のため、場合によっては職を失うという不安を感じるケースもあるかもしれません。
そのようなプレッシャーや不安から、利他の心が負けてしまい、お客様に対して少なからず不誠実な言動をとってしまう、自分の思うように動いてくれない、意見が合わない同僚に対して不誠実な言動をとってしまう、場合によっては厳しい言葉を浴びせてしまう、最悪、人格含め人を裁いてしまうようなこともあるかもしれません。
そのような言動を取った際においても、一時的にターゲットを達成し、表面上は成功したように見えることもあるかもしれませんが、周囲の人からは表面的な賞賛しか浴びず、場合によっては嫉妬されるなど、心の底から人とつながることはできず、人間関係も希薄なものになると思います。
先ほどの方程式ですと、一見ターゲットを達成したためプラスに感じるかもしれませんが、考え方がマイナスであるため、特に、同僚、お客様、世の中全体という範囲で考えると、実はマイナスの結果になってしまう場合もあると考えます。
言うは易しですが、そのようなマイナスの結果にならないよう、利他の心が強い人は、常にその心を磨き、自分と深く、時には厳しく向き合い、例えば、「自らの成果に固執するあまり、お客様に不誠実な対応を取っていないか」、「過去の成功体験にとらわれていないか」、「単に正論を振りかざすだけになっていないか」、「同僚に対して不誠実な対応を取っていないか、裁いてしまっていないか」、「自分の利益ではなく、相手の利益を優先した言動を取れていたか、決断が出来ていたか」など、日々の言動を省みるような習慣を少なからず持っていると感じます。
そして、そのような習慣を持っていることもあり、厳しいターゲットが課せられておりプレッシャーや不安を少なからず感じている中でも、あくまでも、お客様の成功や他者に貢献することをファーストプライオリティにおき、常に他者に対して誠実で、倫理的で、サポーティブで、また、エネルギーに満ちあふれており、情熱的で、探究心が深く、向上心が高く、それでいて謙虚で人への感謝を惜しまず、良い意味で他者を巻き込み、魅了し、結果的にターゲットの達成にも大きく貢献すると思います。
もちろん、達成した素晴らしい成果に対して、周囲の人から心の底からの賞賛を浴び、人と広く、そして深くつながっていくと思います。結果的に、マイクロソフトで働きつづけるとしても、卒業して新しいチャレンジをするとしても、一生続くような人脈を形成していくと考えます。
先ほどの方程式ですと、個人の範囲はもちろん、同僚、お客様世の中全体という範囲で考えてもプラスの結果になると考えます。
あくまで私の個人的な考えですが、そのような利他の心が強い、他者貢献の塊のような人がマイクロソフトで成功、活躍し、またその後も成功、活躍している印象があります。
まとめ
他にも、チャレンジ精神、成長意欲、テクノロジーに対する探究心、ダイバーシティ&インクルージョンなど、挙げれば色々ありますが、以上が、私が 6 年半働いてきた中で、マイクロソフトで成功、活躍していると感じた人の特徴です。
あくまで個人的な経験に基づく主観ですが、今後、日系 IT 企業から外資系 IT 企業への転職を考えている方、転職したばかりの方、転職後、思ったような活躍が出来ずに悩んでいる方の参考になれば幸いです。