はじめに
LinkedIn のプロフィールに記載ありますが、私の今までの経歴は、端的に言うと、富士通 (厳密には、当時は九州のグループ会社)、マイクロソフト、独立という感じです。
大変なことはもちろんありましたが、ありがたいことに、いずれの会社でも非常に素晴らしい日々を過ごしていたこともあり、なぜ独立したのか聞かれることが良くあるので、その理由と、キャリアや目標に関する私の考え方を整理してみたいと思います。
独立した理由
まず、独立した理由は凄くシンプルです。少なくとも今は、そうした方が、喜んでくれる人が多いかな?自分を必要としてくれる人に対してより支援が出来るかな?と思ったためです。
こちらの Qiita で、Power Platform で市民開発をされる方向けに記事を書くようになって、思った以上に沢山の方に読んでいただき、社外の認知度が上がり、By name で指名いただくというか、支援してほしいと言われることも少なからず出てきました。
しかし、組織に属していると、そういった方に対して支援することが難しいケースもあります。もちろん、所属している組織が悪いわけではなく、あくまで、所属している組織のビジネス、ターゲットと自分のやりたいことの距離が少し開いた程度のことだと思っています。
そのため、昔から私を知っている人はご存じだと思いますが、キャリアや目標について聞かれても「〇歳になったら独立する」といったようなことは言っていませんでした。私自身も、1 年半前くらいまで、独立するなんて全く思っていませんでしたし、恐らく、考え始めたのは、最終出社日の数か月前くらいだと思います。
ただ、退職する日から逆算すると、最後の数年は、運よく、所属する部署のターゲットと自分のやりたいことの距離が非常に近く、高い評価をいただくことができ、人脈も (多分) それなりに広がり、何となく、「ま、独立して上手くいかなくてもどうにかなるかな」と思えたのも、一歩踏み出しやすかった理由かもしれません。
過去から現在まで簡単に遡ってみる
まず、私は、学生時代、単位を楽にとり、バイトやサークルと適度に両立をしていただけで、一応情報系の学部に所属していましたが、別に IT は好きでなく、就活では、何となく地元九州の大手の総合職ばかり受けて落ちまくって、結果的に SE になりました。当時売り手市場だったので運よく最終的にはどうにかなりましたが、そうでなかったらどうなっていたか全く分かりません。また、当時将来転職しようとは全く思っておらず、そのままその会社で一生働くんだろうなと思っていました。
そんな入口でしたが、人に恵まれ、あと、少し負けん気が強く、体力はそれなりにある方だったので、新人時代からがむしゃらに仕事をしており、その会社ではそれなりに高い評価を得ていたものの、逆に人の評価が気になるというか、比較の渦に巻き込まれていきました。
自分を変えないと本当にまずいということで、読書も好きだったため、ゆっくり本を読む時間を取った結果、20 代中盤の頃に、人生のバイブルとなる何冊かの本に出会い、人生の目標というか、自分の中心軸みたいなものが決まりました。それ以降はぶれずに生きてきたつもりです。それは、シンプルですが、「他者貢献」、「利他の心」です。
もちろんそんなに簡単に変われるわけではなく、軸がぶれないよう、それらの本の好きなフレーズを毎日読み返したり、瞑想みたいな感じで、長いときは 10 分以上感謝出来ることを出来るだけ心の中でつぶやいたりするようになりました。特に、非常に忙しいときや理不尽なことに遭遇したときこそそのような内省の時間を取るようにしています。
そして、仕事は世の中に貢献するための手段の一つと捉えており、常に、お客様はもちろん同僚に対して何か貢献できることはないか考えて仕事をしてきました。個人的に、同僚に対して貢献することは、結果的にお客様への貢献につながると思いますし、若手の同僚に対して貢献することは、将来の可能性を含めると、より大きな貢献につながると捉えて、プライオリティを高くしていました。
そのため、例えば、マイクロソフトに入社後、他部署含め、新卒の方向けに、ビジネスの基礎、マインドセット、お客様の仕事について、本部全体に対しても、技術的なことはもちろん、サポートエンジニアとして成長するための習慣など、勝手にプレゼンを企画して実施していましたし、新卒、インターン生のメンターも沢山しました。富士通時代や時々依頼いただく社外のメンティーも含めると、かなりの人数のメンターをしてきたと思います。
それなりにメインの仕事も忙しい中、こういったことにもエネルギーを注げてきたのは、「他者貢献」、「利他の心」という揺るがない中心軸を持っていたためと思っています。
富士通からマイクロソフトに転職したのは、富士通時代にマイクロソフトのサービスを長らく担当していたことで、運よく縁があったためです。当時の仲間とは今でもよく会うくらい人間関係は良好でしたが、転職することで人生の選択肢が増え、会社に依存しない生き方ができ、結果的に家族や当時の同僚に対しても、長い目で見るとより多く貢献できると思い、悩んだ末に転職を決断しました。
実際、私が転職した後、沢山の元同僚 (協力会社含む) が刺激を受け、転職をして収入を大きくアップしています。マイクロソフトに転職したいと私に相談してきた人もおり、「活躍できそうかな?マイクロソフトのカルチャーと相性いいかな?」と思った人については、他者貢献の一環で、履歴書のレビューや面談の練習のお手伝いもし、転職後もメンタリングをしていました。本人はもちろん家族も喜んでくれており、とても嬉しく思っています。
マイクロソフト入社後も、運よく多くの良い出会いに恵まれ、予想をはるかに超える充実した日々を過ごせていました。そんな中、Power Platform に出会い、「Power Platform を通じて世の中にもっと貢献できるかもしれない」と心の底から思い、のめり込んでいきました。自分の中心軸を基に考えた結果、少なくとも今は、独立した方が世の中に貢献できるかもしれないと思ったためです。
過去から遡ってみると大体こんな感じです。
実際のところは、正直、運よくギリギリ乗り越えられた経験も沢山ありましたし、個人的には、たまたま運が良かっただけとも捉えています。個人的に、私は運がいい人間だといつも思っており、感謝をしています。
キャリアアップに対する私の考え
個人的に、「キャリアアップ」という言葉あまり好きではないというか、最近は使わなくなりました。その理由は、何をもって「アップ」と呼ぶのか、自分の中で明確に定義できなかったためです。例えば、収入が上がることをキャリアアップと捉えることもできますが、私の経験上、収入は必ずしもスキルや業績に比例するわけではなく、高給与を支払う企業に所属しているかどうかによる部分も大きいと思います。実際に、仕事内容はあまり変わらないのに収入が大幅に上がった人もいるでしょうし、その逆もあると思います。
では、目標ややりたいことを追求し、プライベートも含めた人生全体を考えて転職し、結果として収入が下がった場合、それはキャリアダウンなのでしょうか。私は、自分の決断に納得しており、目標に少なからず近づけているのであれば、それはキャリアダウンではないと思います。
また、以前所属していた会社から見ると、キャリアアップという表現を使うことが、その会社に所属し続けるとキャリアアップできないと言っているようにも受け取られかねず、少し失礼に感じられるかもしれません。
もちろん、ブラック企業は別として、どこで何をしていようと、成長を実感することや幸福を感じることは出来ると思いますし、縁や相性、偶然含め、たまたま何らかの理由があって転職をすることになっただけと思っています。
そのため、私は「キャリアアップ」という言葉は使わず、単に「〇〇の理由で転職した」と言うようにしています。ありがたいことに、現在のところ収入は増加していますが、キャリアアップとは考えておらず、単に運が良かっただけと考えています。
キャリアという観点ではなく、自分の中心軸を基に考える
キャリアという単語について、マイクロソフト入社以降よく耳にするようになりました。1on1 で頻繁にキャリアについて尋ねられたり、さまざまな人のキャリアストーリーを聞く機会が増えました。しかし、時にはその話題が少しプレッシャーに感じることもありました(笑)。個人的には、「キャリア」という概念がしっくりこず、この観点で考えるよりも、自分自身の中心軸を基に考えるほうが自然に感じています。
私は同じ場所に 2、3 年いると幸福度が少し下がるように感じるため、自分の中心軸を基に、どこで何をすることが世の中への貢献を最大化できるか、どういったサービスや人々とどういった距離感で接すると自分自身の幸福度が高まるか、という観点で考える時間を取り、決断を下しています。
例えば、好きな Power Platform に関わるとしても、サポートエンジニア、ソリューションアーキテクト、技術営業、コンサルティングなどのロールによってサービス自体やお客様との距離感は異なりますし、所属している組織によってもその距離感は変わります。実際、マイクロソフトに所属していた時と独立した現在では、Power Platform 自体やお客様、Power Platform に関わる人々との距離感が異なります。そのため、これらの点を踏まえて熟考した結果、独立という選択をしました。
このように自分の中心軸を基に決断をしてきたため、自分の選択に対して全く後悔はありません。また、他人がキャリアという観点から私をどう見るかも全く気にしていません。
目標の持ち方
私は、これまで「5 年後、10 年後の目標は?」と聞かれても、明確に「絶対にこうなりたい」という強い目標を答えられたことはありません。また、自分の中心軸を基に手段、つまり短期の目標を探して実践していますが、例えば、年収や SNS のフォロワー数といった他人軸の指標は目標にはしません。
現在、独立したこともあり、「今後会社をどうしていきたいですか?従業員数や売り上げの目標は?」と聞かれることもありますが、基本的に特に決まっていないと答えています。従業員はまだいないので、強いて売り上げ目標を立てるとすれば「生活に困らない」くらいでしょうか。これは、上述の通り、私にとって独立は、たまたま手段になったためです。
今後、自分では対応しきれないくらいの仕事の依頼をいただいたとしても、幸いなことに Power Platform を通じて知り合った素晴らしい仲間がたくさんいますし、実際に業務提携している会社も多数あるので、協業することで対応できると思っています。独立したことで、そのような素晴らしい仲間と一緒に働けることは私にとって幸せなことです。上手くお互いの長所を活かして協力しあい、Power Platform を通じて世の中に貢献していきたいと思っています。
ただ、もし「益森さんではなくても、益森さんが信頼している人、益森さんが育てた人であれば安心なので、是非自社で従業員を増やしてほしい」というようなことを依頼された場合は、従業員を増やすことや、その従業員やその人の大切な人のためにも、売り上げの目標を持つことになるかもしれません。
いずれにせよ、私は自分の中心軸を基に、世の中に貢献するための手段を探して実践し、時々短期の目標を設定して行動するくらいが合っていると感じています。それ自体が目標ではなかったですが、そのような感じでやってきた結果、収入も上がり、多分成長もしており、人間関係も広さ、深さどちらの意味でもよりよくなっている気がします。間違いなく、学生時代や社会人 1、2 年目時代の自分に今の状況を説明しても信じてもらえないと思います。もちろん、このような結果になったのは、運が良かっただけと思っています。
5 年後、10 年後といった将来の目標を持つことが求められたり、それが良いことだというプレッシャーを感じることもあるかもしれません。ただ、正直なところ、私はこの業界の 5 年後、10 年後どころか、2、3 年先のことすらよくわかりません。そのため、そういった意味でも、私には、中心軸を基に手段を探して実践し、また新たな手段を見つけるというアプローチの方が合っていると思います。
また、中心軸が定まっていない人は、とりあえず今楽しいと思うことや、それほど苦痛に感じないことをがむしゃらに続けて、時々振り返るくらいでいいと考えます。その際、手段や短期の目標が自分軸に基づいているか、他人軸になっていないかを吟味することは重要だと思います。