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同じシーンの中で状態遷移を実装するベストプラクティス

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はじめに

メインゲームなど中心的なシーンでは、開始演出、ゲーム本編、結果発表、などの複数の状態を同じシーンの中で切り替えて実装する場合があります。

最初はキレイにかけていたとしても、作り込むにつれて複雑で見通しが悪いコードになってしまうこともしばしばありました。この記事では、先日リリースできたゲームの状態管理の仕組みをベースに、開発中に課題に思った点を整理して、自分なりのベストプラクティスな設計を考えてみます。

この記事に含まれている要素は、主に以下の通りです。

  • 状態遷移の管理方法の一例
  • UniRxの購読を止める方法
  • ポーズの実装方法の一例

この記事では説明用に一部のソースコードのみ抜粋・編集しています。
動作する全コードを知りたい場合は、githubのサンプルを御覧ください。

作成した状態遷移のサンプル

画面収録 2021-12-01 14.52.54_1.gif

仕様

  • 同じシーンの中にSTATE_A(黄)STATE_B(青)STATE_C(紫)の3つの状態がある。
  • それぞれの状態では、0.1秒ごとにオブジェクトを生成し、20個になると次の状態に進む。
  • スペースキーで、ポーズの開始と解除が切り替わる。
  • 画面をクリックすると、どの状態が有効なのかをログに表示する。

スクリーンショット 2021-12-01 14.28.34.png

実装の特徴

状態とUIをセットにする

状態とUI画面は、ほとんどの場合、セットになるのではないでしょうか。
この設計では、Canvas以下のゲームオブジェクトに状態名をつけ、併せてUIのレイアウトを行いました。

また、Sceneウィンドウで、全UIを見渡しやすくするために、並べています。
(全UIは、実行時に中央に集まるようにしています)

レイアウトの位置が分かりやすいように、少しだけ背景に色をつけています。
(これも実行時に透明になります)
スクリーンショット 2021-12-01 15.45.13.png

オブジェクトのアクティブ・非アクティブで、状態の有効・無効を表現する

ゲーム実行中、アクティブな状態はヒエラルキーで、白文字で表示され、無効な状態は、グレーアウトします。
ヒエラルキーを見るだけで、どの状態が有効かが、すぐに分かります。

また、その状態で必要なオブジェクトは、各状態の子要素として生成します。
スクリーンショット 2021-12-01 14.30.48.png

オブジェクトをアクティブ、非アクティブにしたときをトリガーにして呼ばれる関数があります。
OnEnable()OnDisable() です。

ここでは、この仕組みを利用して各状態の初期化、終了処理を記述しています。

状態の開始時と終了時にUniRxの購読を開始、停止している

UniRxの購読は、気が付かないところで購読され続け、不具合の原因になることがあります。
例えば、適当なスクリプトのUpdate関数に、何か処理を書いたとしましょう。シーン遷移した場合、オブジェクトは破棄され、そのUpdate関数の中に書かれた処理が実行されることはありません。
しかし、UniRxの Observable.EveryUpdate() を使い、購読した場合、停止処理を書かないとシーンを遷移しても実行され続けます。

ここでの設計では、前述のシーン遷移時に呼ばれる、OnEnable()OnDisable() を利用して、購読の開始と停止を記述します。

public class EachScene : MonoBehaviour
{
    // 購読しているリスト
    private List<IDisposable> disposables = new List<IDisposable>();

    // 状態オブジェクトがアクティブになったときに呼ばれる
    void OnEnable()
    {
        Observable.Interval(TimeSpan.FromSeconds(0.1f)) // 0.1秒ごとに生成
            .TakeWhile(_ => this.objectsRoot.childCount < 20) // 20個に達するまで
            .Subscribe(_ =>
            {
                // 生成部分
            }, () => // 20個に達したら呼ばれる
            {
                // 自らを非表示にすると、OnDisableが呼ばれる
                this.gameObject.SetActive(false);
            })
            .AddTo(this.disposables); // 購読しているリストに追加
    }

    // 自分自身が破壊されたり、非アクティブになったときに呼ばれる
    void OnDisable()
    {
        // 後述するが、子要素を破壊する
        foreach (Transform child in this.transform)
            Destroy(child.gameObject);
        // 購読停止処理
        foreach (IDisposable disposable in this.disposables)
            disposable.Dispose();
    }
}

サンプルでは、立方体などのオブジェクトが次々に生成され、回転します。
この回転にもUniRxを使用しています。
ここでは Start() で購読が開始され、このスクリプトが破棄されたとき購読が停止されます。

public class SimpleRotation : MonoBehaviour
{
    void Start()
    {
        Observable.EveryFixedUpdate()
            .Subscribe(_ => this.transform
            .Rotate(Vector3.right * Time.deltaTime * 100f))
            .AddTo(this); // このスクリプトが破棄されたときに、購読も停止されるように指定
    }
}

状態遷移時に、その状態の子要素を一括して破壊することで、まとめて購読を停止される設計です。

非アクティブになるときを状態遷移のトリガーにしている

SceneManager.cs が、意図した順番に、状態のオブジェクトをアクティブにします。
それぞれの状態のスクリプト(ここではEachState.cs)が、それぞれの条件を満たしたときに、自らを非アクティブにします。
SceneManager.csは、状態のオブジェクトの非アクティブを監視しており、その状態が終了したことを知ります。

スクリーンショット 2021-12-01 16.47.44.png

非アクティブになったオブジェクト名(状態名)から、次の状態のオブジェクトをアクティブにします。

public class SceneManager : MonoBehaviour
{
    private GameObject targetState; // 監視する状態のオブジェクト

    void Start()
    {
        // 最初の状態を指定
        ActivateState("STATE_A");
        
        // 各状態が終わったときの遷移先を指定
        Observable.EveryFixedUpdate()
            .Select(_ => this.targetState.activeInHierarchy)
            .DistinctUntilChanged()
            .Where(active => !active)
            .Select(_ => this.targetState.name)
            .Subscribe(stateName =>
            {
                switch (stateName)
                {
                    // ここにそれぞれの状態が終了したときに、次に何をすべきかを指定する
                    case "STATE_A" :
                        ActivateState("STATE_B");
                        break;
                    case "STATE_B" :
                        ActivateState("STATE_C");
                        break;
                    case "STATE_C" :
                        ActivateState("STATE_A");
                        break;
                    default:
                        break;
                }
            })
            .AddTo(this);
    }

    private void ActivateState(string stateName)
    {
        var state = this.transform.Find(stateName).gameObject;
        state.SetActive(true);
        // 監視対象に
        this.targetState = state;
    }
}

TimeScaleでポーズ機能を実装している

ポーズ機能を実装するにあたり、お手軽な方法はTime.timeScale0にすることです。

Time.timeScale = 0f;

こうすることで、Time.delataTimeを使ったアニメーション処理を止められます。
サンプルではスペースキーを押すとポーズの開始と解除ができます。
画面収録 2021-12-01 18.52.22_1.gif

一見簡単なのですが、気をつけなくてはならないことがいくつかあります。

Update()timeScaleの影響を受けないので、この関数の中に書かれた処理は動き続けます。
一方で、FixedUpdate()timeScale=0のときは止まるので、ポーズで止めたい処理はこちらを利用します。

ただしInputクラスはFixedUpdate()の中に書くと、挙動が変になるので、Update()関数内で書かなくてはなりません。
ここではUniRxのBatchFrameオペレーターを使用して、止められるようにしています。

Observable.EveryUpdate()
     .Where(_ => Input.GetMouseButtonDown(0))
     .BatchFrame(0, FrameCountType.FixedUpdate) // InputはUpdateでないと正しく動かない
     .Subscribe(_ => Debug.Log(" Click! <= " + this.gameObject.name))
     .AddTo(this.disposables);

ポーズ画面で動かしたい処理は、Update() で書けば動きます。
ただしアニメーションさせたいときはdeltaTimeを使ってアニメーションの見え方を一定にしたいところ。
無理やりですが、UniRxのスケジューラー機能を使って、timeScaleを無視するスレッドを指定します。

Observable.EveryUpdate()
    .Where(_ => Input.GetMouseButtonDown(0))
    .BatchFrame(0, FrameCountType.FixedUpdate) // InputはUpdateでないと正しく動かない
    .Subscribe(_ => Debug.Log(" Click! <= " + this.gameObject.name))
    .AddTo(this.disposables);

最後に…

以上が、現段階の状態遷移の設計です。
分かりづらい部分や、もっと良くするアイディアがありましたら、ご指摘頂けますと幸いです。

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