はじめに
この方、いろんな国の訛りで英語を話していて凄いです
The Language Blondie |
---|
インスタグラムで見る |
欧州諸国はそれぞれの国内市場の規模が小さいため、自ずと国境を越える経済活動を志向します。そのため、経済活動のルールを共通化する動機がとても高いです。この傾向は OAuth / OpenID Connect 関連の世界標準仕様策定作業の現場でも見てとれます。
欧州では英語を公用語としている国は実はかなり少数派です(イギリス、アイルランド、マルタ、くらいでしょうか)。共通言語として英語を使っていますが、ほとんどの人にとって英語は母国語ではありません。世界標準仕様策定会議でも、母国語が英語ではない人達が大勢活動に参加しています。それぞれの母国語の影響で参加者の英語に訛りはありますが、英語ネイティブスピーカーと同じ発音かどうかを気にしている人はいなさそうです。
日常で英語を使う機会が少ないので日本人は英語を話すときに気後れしてしまいますが、海外勢からしたら日本語訛りも訛りの一種なので、私も開き直って話しています(ただ、自分が英語で話している動画は恥ずかしくて見返す気になれませんが)。
このまとめ記事では、時折話題になる「OAuth の読み方」を取り上げます。日本人的には「正しく発音しなければ」と思い詰めてしまうところですが、海外の専門家達が OAuth をどのように発音しているかを聞いて、一緒に開き直っていきましょう!
北米でかなり長い期間生活されていた方の話によると、北米では英語の訛りに対する見方が異なるそうです。北米ではアメリカ英語が主であり、出稼ぎ労働者や(不法)移民が話す訛りのある英語はバカにされる傾向があるとのことです。ポリティカルコレクトネスの観点からは英語の訛りに言及するのは避けた方がよいとのことです。
この記事の先頭で紹介している The Language Blondie さんの動画を見て、私は「面白い」というポジティブな感想を持ちました。彼女の動画のコメント欄にもポジティブなコメントが並んでいます。一方で、「彼女は英語訛りをバカにしている」とネガティブに捉える人もいるかもしれません。
Joseph Heenan
母国語はイギリス英語。OpenID Foundation の Standards Specialist & Certification Director。Conformance Suite 開発責任者。
"We are here to talk about high security and interoperable OAuth 2: What's the latest?" (『OAuth Security Workshop 2024』より。動画 0:00〜)
"It's a higher security and interoperable profile of OAuth 2." (『OAuth Numa Workshop 2023』より。動画 37:21〜)
Dr. Daniel Fett
母国語はドイツ語。セキュリティの専門家で、FAPI、DPoP、SD-JWT など数多くの標準仕様策定に携わっている。OAuth Security Workshop のオーガナイザーとしても知られる。
"If you want to use OAuth in, for example, an e-health ecosystem," (『OAuth Security Workshop 2024』より。動画 0:51〜)
"I'm also the organizer of the OAuth Security Workshop." (『OAuth Numa Workshop 2023』より。動画 10:28〜)
Nat Sakimura
母国語は日本語。世界標準仕様策定団体 OpenID Foundation の議長。デジタルアイデンティティの専門家で、JWT 仕様策定者としても知られる。
"In this channel, I'm going to talk about digital identity and privacy, including OpenID, OAuth, DID, verifiable credential, and what's not." (『Nat Sakimura YouTube チャネル』より。動画 0:05〜)
Dima Postnikov
母国語はロシア語・英語 (活動拠点はオーストラリア)。OpenID Foundation 副議長。
"So FAPI is a security profile. It's a secure version of OAuth and OpenID Connect." (『SSI Orbit Podcast』より。動画 7:54〜)
Justin Richer
母国語はアメリカ英語。キリがないほど多くの標準仕様策定に携わっている。書籍『OAuth 2 in Action』(邦訳『OAuth徹底入門 OAuth徹底入門 セキュアな認可システムを適用するための原則と実践』) の著者としても知られる。
"So, this is an OAuth workshop. How can we use this with OAuth 2?" (『OAuth Numa Workshop 2023』より。動画 3:25:57〜)
Domingos Creado
母国語はポルトガル語 (ブラジル)。OpenID Foundation Certification Team のメンバー。
"OAuth 2.0 (two dot ou) was published (in) 2012 by IETF, replaced OAuth 1, without backward compatibility." (『OAuth Track』より。動画 0:24〜)
Steinar Noem
母国語はノルウェー語。OAuth Security Workshop の長年のスポンサー企業である Udelt AS の共同創業者。
"We decided on OpenID Connect and OAuth in 2016." (『OAuth Security Workshop 2020』より。動画 3:32〜)
Amir Sharif
母国語はペルシャ語 (活動拠点はイタリア)。Fondazione Bruno Kessler のセキュリティリサーチャー。
"That is one of the security best current practices in the latest OAuth BCP." (『OpenID Summit Tokyo 2024』より。動画 10:08〜)
Tom Bruggeman
母国語はオランダ語 (活動拠点はベルギー)。DPG Media グループのエリアマネージャー。(業界の専門家ではないものの、母国語がオランダ語の知人が他にいないのでご紹介)
"We have a fully compliant, spec-compliant secure identity platform based on OpenID Connect and OAuth." (『EIC 2023』のパネルディスカッションより。動画 10:02〜)
おわりに
OAuth の読み方をカタカナで書くとオーオースです。いや、O は単独だと「オー」ではなく「オウ」と読むので(日本語ではオーとオウの違いは気にしませんが英語だと違うものとして扱われるらしいので)、より正確には (ゆっくり発音するなら) オウオースです。いや、そもそも、th (/θ/) の発音をスと書いている時点で誤りです。でも、日本語には /θ/ に対応するカタカナがありません。これは詰みました・・・。まぁ、あまり気にしても、ね。
私が創業した Authlete 社 は、本記事公開時点 (2024 年 12 月) で 40 名に満たない小さい会社ですが、国際色豊かで、メンバーの国籍は次の 16 ヶ国に及びます。日本人の人数比率は全体の約 1/3 です (エンジニアリング部に限るともっと比率は低いです)。
🇺🇸 アメリカ | 🇬🇧 イギリス | 🇮🇹 イタリア | 🇮🇷 イラン |
🇮🇳 インド | 🇦🇺 オーストラリア | 🇸🇪 スウェーデン | 🇩🇪 ドイツ |
🇯🇵 日本 | 🇵🇰 パキスタン | 🇧🇩 バングラデシュ | 🇫🇮 フィンランド |
🇧🇷 ブラジル | 🇫🇷 フランス | 🇧🇪 ベルギー | 🇲🇳 モンゴル |
このような環境ですと英語を使わざるをえず、英語を話す度胸(開き直り?)も身につきます。国際色豊かな職場に興味のある方は Careers からご応募ください!