32
37

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 3 years have passed since last update.

SAFeは日本の大規模アジャイル開発を変えてくれる

Last updated at Posted at 2019-12-15

ここ数年間アジャイル開発に取り組んでいて、CSM&CSPOなど取得しつつスクラムをより良く回すことに努めてきました。結果チームレベルでのアジリティを上げることは出来る実感はついてきています。ですが、SIerに居るものでじゃぁこれを大規模開発に持っていこうとした時、どうすれば良いのよ?という悩みは常にありました。Scrum of Scrums、LeSS、Nexusなどスケールするアジャイル開発FWは色々あるのですが、勉強不足なのもあり決め手に欠けていたのです。

そんな私が今年に出会ったのがSAFe1です。SAFeに出会って光明が見えました。

SAFeとは?

SAFe公式サイト

Scaled Agile Inc.が提唱・メンテナンスしている大規模アジャイル開発向けのFWです。50ヶ国以上200社以上のグローバルパートナーがSAFeを推進していて、30万人以上の実践者がSAFeのコースを受講しています。

SAFeの採用事例を見ると名だたる企業がSAFeを利用しています:

  • Cisco
  • Sony Interactive Entertainment
  • Philips
  • U.S. Air Force
  • McAfee
  • FedEx
  • Microsoft
  • SK Hynix
  • Fitbit

これらはピックアップしたほんの一例です。私が参加したSAFe Global Summit 2019のオープニングで「当会場にはFBIが紛れているので悪いことはしないように」なんて日本じゃ聞けないジョークをかまされましたが、なんとそのSummit内でFBIのSAFe適用事例の発表があるので本当にFBIの方が居たという……日本の行政にもアジャイルを持ち込んでいる話は聞きますが、すごい。

SAFeの採用でもたらされる効果が以下の図2で表されます:

©Scaled Agile Inc.

  • 10-50%の従業員の幸福度およびモチベーション向上
  • 30-75%のマーケットへのリードタイムの高速化
  • 20-50%の生産性の向上
  • 25-75%の欠陥の減少

具体的です。具体的なのはSAFeが事業として運営されており、Scaled Agile Inc.がSAFeユーザーからの実のフィードバックを何よりも大切にしているからです。SAFe自体も進化しています。バージョンは当記事時点で4.6、年明けて1月には5.0がリリースされる予定です。

素晴らしいのはScaled Agile Inc.自体もSAFeを自分たちの事業に適用しているところです。自分たちも使っているものをより良くしたい、と言われるとより説得力が増しますね。

SAFeの何がすごいの?

SAFeは単なるスケールするアジャイル開発FWではありません。SAFeは組織変革、組織にリーンアジャイルなマインドセットを根付かせるためのFWです。これこそが他のFWとの大きな違いです。SAFeでは後ほど紹介するロードマップに従い、組織を進化させます。また、変化のポイントに応じて必要になるコースや教材をフルでサポートしています。これらは100冊を越える先人達の本や経験などのナレッジをベースに作られたものなのです。

CSMやCSPOなどは「スクラムのやり方」とそれぞれのロールとしてのマインドセットを学ぶためには素晴らしい研修です。ですが、スクラムをどうやって組織に根付かせるかや、そもそもどうやって導入するのかみたいな話はありません。LeSSやNexusもガイドをさらっと見た限りではその話はなさそうです(間違っていたらご指摘ください……)。

SAFe Implementation Roadmap(SAFe実装ロードマップ)

SAFeにはSAFe自身を企業内に実装するロードマップがあります。かなり細分化されています。

image.png

  1. Reach the tipping point(転換点への到達)
  2. Train Lean-Agile Change Agents(リーンアジャイル変革者の養成)
  3. Train Executives, Managers, Leaders(エグゼクティブ、マネージャー、リーダーの養成)
  4. Lean-Agile Center of Excellence(センター・オブ・エクセレンスを作る)
  5. Identify Value Streams & ARTs(バリュー・ストリームとARTの定義)
  6. Create the Implementation Plan(実装プランの作成)
  7. Prepare for ART Launch(ART発進の準備)
  8. Train Teams & Launch ART(チームの養成とARTの発進)
  9. Coach ART Execution(ART実行のコーチング)
  10. Launch More ARTs and Value Streams(更なるARTとバリュー・ストリームの発進)
  11. Extend to the Portofolio(ポートフォリオへの延長)
  12. Sustain and Improve(維持と改善)

SAFeを組織に根付かせるための道筋が詳細なガイドと対応するコース(丸いマーク)がともに明示されています。アジャイル開発導入でうまく行かない話や失敗談などはよく耳にします:

  • チームレベルでのアジャイル開発はできるが大規模化できない
  • アジャイル実践者と周りや特に役員、管理職との温度差や考え方の差が激しい
  • そもそもアジャイルのプラクティスをやってるだけで、アジャイルになってない
    • Don't just Do Agile, be Agile

これらの失敗を防ぐためにいちばん重要なリーンアジャイル・マインドセットを育むための、人材の育成順なども含めて定義されているのです。SAFeは役員、管理職たちも必ず巻き込めと明示していて、彼らにも2日間のコース、可能であれば4日間のコースを受けることを求めています。私的にはここがアジャイル開発導入でできていない企業は多い気がします。リーンアジャイルな組織にしたいのに上司がリーンアジャイルなマインドセットになって居なかったら大変なのは目に見えていますよね。もちろん上司だけでなくチェンジ・エージェントやセンター・オブ・エクセレンスといった役割がチーム全体のマインドセットを作るための道筋も教えてくれます。

SAFe Big Picture

SAFeの全体像を表すBig Pictureと呼ばれるものが以下です:

image.png

SAFe Implementation RoadmapはこのBig Pictureを実現するためのロードマップになっています。ここで利用しているのはFull Configurationと呼ばれるもので、導入レベルに応じて4段階(Essential, Large-Solution, Portofolio, Full)に分かれています。この表を見ると複雑に見えてしまうかもしれませんが、私が12月初頭に受けたSPC (SAFe Program Consultant)というSAFeの変革を担う人が受けるコースやLeading SAFeというコースを受けたあとなら違って見えてくると思います。詳しく知りたい方はぜひコースを受けてみてください。

SAFeを導入するために乗り越えるべき壁

私が感じるSAFe導入のための壁は3つあります:

  1. 役員・管理職を巻き込むこと
  2. 教材・試験が英語であること
  3. 日本でのコース開催がまだ少ない

SAFeは上からの「ちょっとアジャイルやってみてよ」の一声では実現できません。そんなこという上の人達も含めてリーンアジャイル・マインドセットを作るのです。むしろ役員や管理職が積極的にSAFeでいうところのChange Agentになる必要があり、みんなへ変革へのビジョンを伝えなければなりません。弊社でも執行役員が率先して資格を取得しようとしています。SPCを目指さない限りは2日間のLeading SAFeを受講するだけでマインドはかなり変えられると思います。役員や管理職は忙しさを理由に断ることも多いかも知れません。ですが、1年365日のうち、2日間、1%にも満たない時間の投資だけで良いのです、みたいな感じで説得しましょう。

もう1つは教材・試験が英語な点です。これはいままでのScaled Agileのポリシーから来るものでしたが、やはり言語の壁は大きいことから現在Scaled Agileにも1名日本人の方が今年に入社され日本国内でも広める活動を始めてくださってるので変わってくるかも知れません。現時点ではコースは基本的に英語+同時通訳です。教材も英語でコースによって受けなければならない試験も英語なので、若干ハードルが高いのは事実です。

最後の1つは言語の壁の話と少し関連がありますが、日本でのコースの開催が少ないという点があります。私が12月初頭に受けたScaled Agile Inc.と弊社で開催したコースは国内で久々ということもあり、あっという間に応募枠が埋まってしまったそうです。アジア圏でもまだ少ないらしく香港や上海から受けに来られた方もいました。ただ、この点についても今後はScaled Agile Inc.の取り組みでかわってくることを期待しています。もしコース開催の希望などありましたら弊社のHPよりお問い合わせいただければ何かお手伝いできるかもしれません。

それでもSAFeを導入するべきと考える理由

色々な所で話を聞いているとエンタープライズにてアジャイル開発がうまく行かない理由がいくつか浮かんできます:

  • チームレベルかそのすぐ上司くらいまでしかアジャイルが浸透していない
  • アジャイル開発に慣れていないうちに自分達流のカスタマイズをやっている
  • スクラムガイドを単にやっているだけでマインドセットを育てられていない

これらはチームより大きなレベルでのマインドセットとアラインメントの欠如から来る問題です。SAFeはそういった問題に対し大きな単位での秩序をもたらします。そして進め方が他のFWに比べて明確なので迷ったり横道にそれてしまう心配も少ないです。

何より、現代においてはチームレベルのアジリティを高めるだけでは不確実性に対応できないという現実があります。組織レベルでアジリティを高めて変化に対応できるようになっていないと、いつ自分の会社のビジネスモデルが崩壊させられるか解りません。崩壊までしなくても強力なライバルはすぐ出現します。

  • 世界で一番売れている腕時計はもはやApple Watch
  • ヤフオクをスマホアプリ利用率で抜き去ったメルカリ
  • 日本国内でも小売売上高を更新し続けるAmazon

こんなのほんの一例です。SAFeが啓示する企業レベルでのリーンアジャイル・マインドセットを得た上での変化への対応の重要性こそがSAFeが提供する大切な価値の1つだと思います。少なくとも私はこのコースを受けて社内での活動のバリュー・ストリームを見直しうまくいっていないところを改善したいという思いに駆られ、行動に移しています。

もしSAFeについてより詳しく知りたい方がいらっしゃいましたらぜひご連絡ください。SAFeミートアップなども不定期で開催しているので参加してみることをオススメします。

  1. SAFeはScaled Agile Inc.の登録商標です。

  2. 図はすべてScaled Agile Inc.の著作物です。

32
37
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
32
37

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?