2022年Wave1リリースの中で、Global Inventory Accounting Add-in という機能が出てくることもあるのか、FastTrackチームがコスト(原価)に関しての TechTalk を連続シリーズで出してきています。
原価の評価方法は、「品目モデルグループ」を基本設定として、他にも様々なパラメータの掛け算で成り立っているということもあり、複雑なのでこの機会に少しずつ頭の中を整理しておきたいと思い、こちらに投稿しておきます。
コスト(原価)とは
(在庫を持つ製造業を前提として)原価というと、売上から粗利を引いた「売上原価」がまず思い浮かびますが、これはあくまで販売した後にわかるコストです。当然売れなくて在庫に残っている製品も、それまでに材料・労務・経費といった「製造原価」が掛かっていますので、特に製造部門はしっかり把握しなくてはいけません。詳しいことは簿記2級などで学習ください(特に工業簿記)。
Inventory Accounting(在庫会計)の基本
在庫は増えるか(仕入や製造や移動)、減るか(出荷や移動)だけです。(俺か、俺以外かと同じです。)
しかし、在庫(物)はタダじゃないです。在庫は、物とコスト(金額)がセットです。
受領・着荷時に物は計上されますが、金額は請求してから計上されます。これで在庫(棚卸資産)の金額がわかります。イメージとしては以下になります。
また、もう少し詳細に在庫トランザクションのステータス別に定義すると以下になります。
個人的にありがたいと思ったのは、転記内容ごとのステータスと物・金額の対応表です。
棚卸評価方法(品目モデルグループ)について
FO の品目モデルグループで選択できる棚卸評価方法については以下の通りです。
・FIFO(先入先出法)
・LIFO(後入先出法)
・Moving Average(移動平均法)
・Weighted Average(加重平均法)
・Standard cost(標準原価法)
それぞれの細かい動きについては割愛しますが、性質や種類は以下の通りです。イメージはつくのではないでしょうか?Periodicなものは、締日前には再計算・在庫締め処理を行い、その評価法に従って調整と決済を済ませる必要があります。※なお、マーキングを使って受入と払出を紐づけている場合は、その評価法で評価されず実際原価にオーバーライドされます。
Actual costing や Standard costing であれば、仕入れた物と、払い出された物の金額は一致します。ただ、Average costing はそれぞれ仕入れた時の物の金額は違えど、在庫トランザクションとしてごちゃまぜにされて、払い出された時はその金額の平均値を取るような評価法なので、一致しません。
棚卸評価方法の選択時に考慮すべき事項について
DO's
・各国の会計制度・法律を考慮すること。
・トランザクションが走る前に慎重に検討をすること。
・販売手数料の計算を考慮すること。
・品目に既定の価格を入力しておくこと。
・Actual costing を用いるなら、倉庫レベルまで Financial inventory を有効にしておくこと。
・手動でマーキングする労力は減らすことを検討すること。
・LIFOであれば、LIFO dateを使うことを検討すること。
・在庫金額のマイナスを許容する設定をすること。
・基本的には月末に在庫締めや調整は行うこと。
DON'Ts
・財務の人や監査人(会計士)との相談なしに棚卸評価法を変えること。
・管理会計的なインパクトを評価しないまま棚卸評価法を変えること。
・頻繁に在庫調整する場合に移動平均を使うこと。
・在庫トランザクションが残っているのに棚卸評価法や保管分析コードを変えること。
・在庫が0になったときとかの代替原価を設定しないこと。
・標準原価法を使っているのに仕入時に違う固定価格を入力すること。
・現物在庫のマイナスを許容すること。
以上です。