知識グラフ×LLMで自然言語分析してみたを勉強会で発表してみたところ、参加者の方から『そもそもグラフDBって何がいいの?』とコメントをいただき、改めて整理してみました。
RDBMSしか使ったことない方向けに、グラフDBの基本的な価値や使いどころをまとめています。図解多めで書いたので、ご参考になれば。🙏
はじめに
「知識グラフ・グラフDB面白いよ!」って言われても、「うん、それで?🤔」ってなりますよね。
私も最初はそうでした。でも使ってみると「あ、これは確かに便利かも」と思える場面に出会えました。
この記事では「グラフDBって実際何に使えるの?」という素朴な疑問に、具体例を交えて答えてみたいと思います。
グラフDBの良いところ
1. 「つながり」を扱うのが上手
例えば、こんな場面で力を発揮します:
- 「友達の友達を探したい」(SNSでよくありますよね)
- 「この商品を買った人は、他に何を買ってる?」(ECサイトでおなじみ)
- 「上司の上司は誰?」(組織図を扱うとき)
通常のデータベースだと、これらを実現するのに複雑なJOINが必要になります。
でもグラフDBなら、こんな感じでシンプルに書けます:
// 友達の友達を探す
MATCH (me)-[:FRIEND]->(friend)-[:FRIEND]->(friendOfFriend)
RETURN friendOfFriend;
// この商品を買った人が買った他の商品
MATCH (p:Product {id: 'A'})<-[:BOUGHT]-(user)-[:BOUGHT]->(other)
RETURN other;
2. 複雑な関係性を自然に表現できる
例えば、システムの依存関係を考えてみましょう:
「このシステムが止まったら、どのサービスに影響があるんだろう?」
こういう分析が得意です。
3. 新しい関係性を柔軟に追加できる
普通のデータベースだと、新しい関係を追加するのに:
- テーブル設計を変更
- 外部キーを追加
- アプリケーションコードも修正
...と大変です。
グラフDBなら:
// 新しい関係性を即座に追加
CREATE (a)-[:NEW_RELATIONSHIP]->(b);
これだけ!
実際のユースケース
1. 不正検知
例えば、こんなパターンを見つけるのが得意:
User1 --> IP1 --> Transaction1 --> Card1
User2 --> IP1 --> Transaction2 --> Card2
「同じIPアドレスから異なるユーザーが異なるカードで取引...?🤔」
というパターンを簡単に検出できます。
2. レコメンデーション
「おすすめ」機能の裏側でも使われています:
- 「この映画を見た人は、こんな映画も見ています」
- 「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」
3. ネットワーク分析
例えば:
- SNSでの影響力のある人を見つける
- システム障害の影響範囲を調べる
- 最適な配送ルートを見つける
4. 知識の整理
最近だと:
- 社内ナレッジの関連性を可視化
- 文書間のつながりを管理
- AIの学習データの整理
にも使われています。
グラフDBが向いているのはこんなとき
こんな特徴があるデータを扱うときは、グラフDBを検討する価値があります:
-
「つながり」が重要
- 人間関係
- システムの依存関係
- 商品の関連性
-
複雑な関係を扱う
- 友達の友達の...
- システムの影響範囲
- 商品のレコメンド
-
関係性が頻繁に変わる
- 組織の変更
- システム構成の更新
- 新しい関連の発見
所感:RDBMSと比べて
正直なところ:
-
RDBMSでもできること
- でも、複雑なJOINが必要
- パフォーマンスが気になる
- コードが読みにくくなる
-
グラフDBの方が楽なこと
- 関係性の表現が自然
- クエリが書きやすい
- パフォーマンスが安定
まとめ
グラフDBは、特に以下のような場合に真価を発揮します:
- データ間の「つながり」が重要なとき
- その「つながり」が複雑なとき
- 「つながり」を分析したいとき
最初は「RDBMSでもできるじゃん」と思うかもしれません。
でも、実際に使ってみると「あ、確かにこっちの方が楽」という場面に出会えるはずです。
興味を持った方は、Neo4jのサイトに無料の学習リソースがあります。クラウド環境でグラフDBを構築して試せるので、実際にグラフ構造をUIで確認しながらクエリを実行してみると、より理解が深まると思います。
参考
- Neo4j - グラフデータベースのユースケーストップ5
- Neo4j AuraDB: Fully Managed Graph Database
- Netflixの屋台骨 「AIレコメンド」技術最前線
- How LinkedIn, Uber, Lyft, Airbnb and Netflix are Solving Data Management and Discovery for Machine Learning Solutions