プロジェクトの複雑性管理について整理してみました🤔
特に意識したポイント:
・複雑性と複雑さの違い
・早期発見の重要性
・適応型アプローチの活用
実務で役立てば幸いです。
プロジェクトにおける複雑性を認識し、適切に対処する
複雑性と複雑さの違い
- 複雑性(Complexity): 多数の要素やステークホルダーが関与し、それらの相互作用が予測困難な状態。
- 複雑さ(Complication): 難易度は高いが要素間の関係は比較的予測可能な状態。組み合わせや作業量が多いために難易度が上がっているが、原理上は論理的に解明できる。
たとえば、大規模ITシステムの要件定義は、さまざまな部署や外部システムとの連携が絡むため複雑性が高くなりがちです。一方、各システムの移行手順が決まっていて手順数が多いだけの場合は複雑さ(Complication)が高い状態であり、手順や計画を整理すれば対応可能です。
複雑性の管理
「12の原則」の中で複雑性に対処するための考え方が重視されています。特に、「システム思考」や「ステークホルダーとの協働」といった原則が、プロジェクトの複雑性を管理するうえで重要な役割を果たします。
- ステークホルダーとの協働: 多様な利害関係者を巻き込み、複雑な状況で調整・合意形成を行う
- リーダーシップ行動: プロジェクトのビジョンやゴールを明確化し、チームが柔軟に動けるようにリーダーとして支援する
- システム思考: 前回紹介したように、プロジェクト全体を俯瞰し、要素間の相互作用を理解する
こうした他の原則と組み合わせることで、複雑性をより効果的にコントロールできるとされています。
複雑性を早期に察知し、管理するポイント
1. 複雑性を早期に察知する
- システム思考を用いて相互影響を俯瞰する。
- ステークホルダー分析やリスクアセスメントを実施。
2. 複雑性を分解・整理する
- **WBS(Work Breakdown Structure)**を活用し、作業を細分化。
- 影響範囲や相互依存関係を明確化。
3. コミュニケーションとリーダーシップ
- ステークホルダー間の情報共有と意思疎通を強化。
- プロジェクトマネージャーはビジョンと目的を明示。
4. 変化への柔軟性と適応力
- アジャイル型やイテレーティブなアプローチを採用。
- 変化マネジメントプロセスを明確化し、迅速に対応。
5. 継続的なリスク評価と対応策
- リスクマネジメントを継続的に実施。
- 教訓学習を活用し、再発防止策を講じる。
6. 適応型アプローチと反復型計画策定
複雑性の高いプロジェクトでは、プロセスを一度で決め切らずに短いサイクルを繰り返す適応型アプローチや反復型計画策定を取り入れることが効果的です。
- 短いイテレーション: 一度の計画サイクルを短く区切り、実行と検証を繰り返す。変化を取り込む余地を常に残しておく。
- 頻繁なフィードバック: チームやステークホルダーからのフィードバックをこまめに受け取り、次のサイクルの計画に活かす。
- 優先度の見直し: イテレーションごとに要求や課題の優先度を再評価し、リソース配分やスケジュールを柔軟に調整する。
- リスク低減: 不確実性が高い領域や技術的難易度の高い部分を先に検証することで、リスクを早期に顕在化させる。
このような反復型計画策定により、プロジェクト環境の変化に迅速に対応でき、複雑性に含まれる不確実性を段階的に解消・軽減していくことが可能になります。
7. 具体的な事例
- 大規模システム移行プロジェクト: 新しい基盤への移行には多種多様なステークホルダーが存在し、要件変更や外部システムとの連携調整など、相互作用が多岐にわたる。そのため、システム思考と複雑性管理が不可欠。
- 複数部署を横断する組織改革プロジェクト: 人事制度や評価制度などが絡み合い、影響範囲が組織全体に及ぶ。関係者の合意形成には、リスクや不確実性を踏まえた丁寧なコミュニケーションが求められる。
まとめ
プロジェクトマネジメントにおける複雑性の管理は、プロジェクトの成功確率を高めるカギです。ただし、複雑性と複雑さを区別し、複雑性に対しては不確実性や相互作用をしっかりと見据えたうえで、早期発見と分解・整理、継続的なリスク管理、コミュニケーション強化などのアプローチを組み合わせる必要があります。
特にシステム思考やリーダーシップとの相乗効果が重要とされています。また、適応型アプローチや反復型計画策定を活用することで、不確実性の高い状況でも柔軟に計画を更新し、複雑なプロジェクトを着実に前進させることが可能です。今後の実務でプロジェクトを進める際には、この複雑性管理を意識して取り組むことで、想定外のリスクや混乱を最小化できるでしょう。