PMBOKのテーラリングについて記事を書きました。
プロジェクトマネジメントの手法は、「全部入り」でも「完全省略」でもNG。大切なのは、プロジェクトの特性に合わせて「使える手法は何でも使う」という考え方です。
金融系基幹システムのシミュレーションとしての更改事例も紹介し、要件定義・開発・管理の各フェーズでどのようにテーラリングしたかを実践的に解説しています。
はじめに:なぜテーラリングが必要なの?
「PMBOKの手法をすべて導入しないといけない」
「アジャイルだからウォーターフォールの手法は使えない」
...こんな思い込み、ありませんか?😅
実は、プロジェクトマネジメントで大切なのは、状況に応じて適切な手法を選択すること。これが「テーラリング」です。
テーラリングとは?
テーラリング = プロジェクトの特性に合わせて、管理手法を調整すること
洋服の仕立て(テーラリング)のように、プロジェクトにぴったりとフィットするように調整していくイメージです。
テーラリングの3つのポイント
1. プロジェクトの特性を見極める
以下の要素を確認しましょう:
- 規模:小規模なら軽めの管理、大規模なら厳格な管理
- 重要度:影響度が大きければ慎重に
- チーム体制:経験値や人数に応じて
- 制約条件:納期、予算、品質要件など
2. 適切なアプローチを選択する
🔄 アジャイル的アプローチ
- 要件が流動的
- 頻繁な変更が予想される
- 顧客との密接な協業が可能
📋 ウォーターフォール的アプローチ
- 要件が明確
- 変更が少ない
- 契約での縛りが強い
💡 ポイント:両方のいいとこどりもアリ!
3. 調整のシミュレーション例
実践的なテーラリング例:金融系基幹システムの更改
例えば、次のようなシミュレーションとしてのプロジェクトをもとに、テーラリングの実例を考えてみました。
プロジェクト概要
- 20年稼働した勘定系システムの刷新
- 開発規模:200人月
- 期間:2年
- 予算:10億円
直面した課題
- 古いシステムの仕様が不明確
- 運用部門が働き方改革で残業削減
- 新人が多く、ナレッジ不足
- パッケージ導入とスクラッチ開発の混在
テーラリングのポイント
- フェーズごとの使い分け
【要件定義フェーズ】
Before:
- ウォーターフォールで一気に固める
- 複数部署の承認が必要
- 属人的な運用をそのまま踏襲
After:
- プロトタイプを使った要件の可視化
- 3週間単位で優先度の高い業務から定義
- 運用手順の標準化を同時に実施
- 開発アプローチの最適化
【パッケージ導入部分】
- 導入ベンダーの開発手法を採用
- データ移行は独立したサブプロジェクト化
- 受入テストを重点的に実施
【スクラッチ開発部分】
- 2週間スプリントのスクラム開発
- ユニットテストの自動化を徹底
- CIツールでの品質チェック
- プロジェクト管理の工夫
【進捗管理】
- パッケージ:マイルストーン管理
- スクラッチ:バーンダウンチャート
【コミュニケーション】
- 朝会は週3回に削減(リモート併用)
- チャットで日次の進捗共有
- 月1回の全体報告会
成果と学び
- 要件定義の期間を当初の8ヶ月から6ヶ月に短縮
- 運用部門の残業時間30%削減
- 若手エンジニアの成長を促進
成功の秘訣
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開発手法を「目的」で選ぶ
- 要件が不明確→プロトタイプ
- 品質重視→自動テスト
- 納期重視→アジャイル
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チームの特性を考慮
- 新人が多い→ペアプロ導入
- リモートワーク→非同期コミュニケーション
- ベンダー混在→インターフェース定義を厳格に
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定期的な振り返り
- 月次でテーラリングの効果を検証
- 半期で大きな見直し
- 失敗も共有して改善
テーラリングのコツ
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段階的に調整する
- いきなり大きく変えずに、小さく始める
- 効果を見ながら微調整
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チームの意見を聞く
- 現場の実態に合わせる
- 押し付けは逆効果
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定期的に見直す
- 固定化しない
- 状況変化に応じて柔軟に
よくある失敗パターン
❌ 過剰な形式主義
「PMBOKに書いてあるから」と、不要な文書も作成
✅ 改善策
本当に必要な成果物を見極める
❌ 極端な簡略化
「アジャイルだから」と、必要な管理も省略
✅ 改善策
最低限必要な管理は維持する
まとめ
テーラリングの本質は、プロジェクトに合わせて、使える手法は何でも使うという考え方。
堅苦しく考えず、チームと相談しながら、より良い進め方を探っていきましょう!
最後に、テーラリングを始める時のチェックリストをどうぞ 🎁
- プロジェクトの特性を整理した?
- チームの意見を聞いた?
- 段階的な導入を計画した?
- 定期的な見直しの機会を設定した?
では、みなさんのプロジェクトが、よりスムーズに進むことを願っています!✨