はじめに
Salesforceを使い始めると必ず出会う概念が「標準オブジェクト」と「カスタムオブジェクト」です。この記事では、両者の違いと特徴を、具体例を交えながら解説していきます。
標準オブジェクトとは
1. 定義
標準オブジェクトは、Salesforceが最初から用意している基本的なオブジェクトです。すべてのSalesforce組織で利用可能で、ビジネスの基本的なニーズに対応するように設計されています。
2. 主な特徴
- Salesforce組織作成時から使用可能
- 基本的な項目が予め設定済み
- 他の標準オブジェクトとの基本的なリレーション(関連付け)が設定済み
- 完全な削除はできない
- 名前の変更は可能だが、APIでの参照名は固定
3. 代表的な標準オブジェクト
- 取引先(Account):企業や組織の情報
- 取引先責任者(Contact):個人の情報
- 商談(Opportunity):販売や取引の機会
- リード(Lead):見込み客の情報
- ケース(Case):サポート案件
- キャンペーン(Campaign):マーケティング活動
カスタムオブジェクトとは
1. 定義
カスタムオブジェクトは、ユーザーが独自に作成できるオブジェクトで、企業固有のビジネスニーズに対応するために設計できます。
2. 主な特徴
- ユーザーが必要に応じて作成可能
- 項目やリレーションを完全にカスタマイズ可能
- オブジェクトの作成・削除が自由
- 名前やAPIでの参照名も自由に設定可能
- カスタムタブやページレイアウトも柔軟に設定可能
3. カスタムオブジェクトの作成例
不動産会社の例:
- 物件(Property__c):販売・賃貸物件の情報
- 内覧予約(Viewing__c):物件の内覧予約管理
- メンテナンス記録(Maintenance__c):物件のメンテナンス履歴
医療機関の例:
- 診療記録(Medical_Record__c):患者の診療履歴
- 予約(Appointment__c):診療予約管理
- 医療機器(Medical_Equipment__c):設備管理
両者の主な違い
観点 | 標準オブジェクト | カスタムオブジェクト |
---|---|---|
作成 | 最初から利用可能 | 必要に応じて作成 |
削除 | 不可 | 可能 |
基本項目 | 事前定義済み | 自由に設定 |
API参照名 | 固定(例:Account) | カスタム(例:Property__c) |
制限 | ほとんどなし | データ容量やレコード数に制限あり |
ライセンス | 基本的に追加コストなし | エディションによって作成可能数に制限あり |
使い分けのポイント
標準オブジェクトを使うべき場合
- 一般的なビジネスプロセス(営業、サポート、マーケティングなど)
- Salesforceの標準機能をフル活用したい場合
- AppExchangeのアプリケーションと連携する場合
カスタムオブジェクトを使うべき場合
- 業界特有のデータを管理する場合
- 企業独自のビジネスプロセスがある場合
- 標準オブジェクトでは表現できない関係性が必要な場合
実装時の注意点
標準オブジェクト活用のコツ
- 可能な限り標準オブジェクトを使用する
- 必要に応じてカスタム項目を追加する
- 標準のリレーションを活用する
カスタムオブジェクト作成のベストプラクティス
- 命名規則を統一する(例:
ObjectName__c
) - 必要最小限の項目から始める
- 適切なリレーションを設定する
- 項目の説明を丁寧に記載する
まとめ
- 標準オブジェクトは基本的なビジネスニーズに対応
- カスタムオブジェクトは特殊なニーズに対応
- 両者を適切に組み合わせることで、効率的なシステム構築が可能
- 拡張性とメンテナンス性を考慮して選択することが重要