初任給は良いキーボードを
良いキーボードを買え。肩を壊す前に。
なぜ良いキーボードが早めに必要なのか
エンジニアは一日中タイピングをする。この表現を「誇張」と感じるかもしれない。だが、ひとたびデスマーチが起きれば誇張とは感じなくなるだろう。そしてそれは、仕事に慣れていない新人のうちに起きることが多い。一時的であっても「一日中タイピング」を迫られる時期は必ず来る。
私はエンジニアになって最初の数年でとても忙しい時期があり、その時に使っていたキーボードがやたらと押下圧の高いキーボードであったため肩を壊した。
多くの人は、エンジニアとしてどこかに入社したら業務用に PC を貸与されるはずだ。今日ではノート PC であることが多いだろう。だがノート PC は肩の大敵だ。良い外付けキーボードを使うべきだ。デスクトップを貸与された場合も、たいていは PC メーカーの純正がついてくるだろう。私の肩を壊したのはこいつだ。
アメリカのプログラマは平均で年6000行のプログラムを書くという話だが、日本の場合はどうだろう。あなたはこの数字を多いと感じるだろうか、少ないと感じるだろうか。
もし入社後の数ヶ月は研修期間で打鍵数が少ない業務しかしないという場合「忙しくなってから買えば良い」と思うかもしれない。「そんなに良いキーボードを買ってもまだまだ使いこなせる実力がない」「実力もないのにキーボードだけ立派なものを買ってもなんだか恥ずかしい」「もう少し中堅どころになってから」とも思うかもしれない。「もう少しお金がたまったら」とも思うかもしれない。次に述べるように健康を損ねてからでは遅い。また忙しくなったら買い物に行ったり、製品を吟味する時間が充分に取れないことにもなりかねない。特に、お金が貯まってきたり、ある程度の実力がついて中堅どころになると、年齢的にも結婚したり子どもが出来たりと出費の方も多くなってきてキーボード以外にお金の使い道を充てたくなるだろう。エンジニアとして一生とは言わないまでも、しばらくやっていくなら初任給でなくても良いが早めに用意した方が良い。
肩を壊すと治らない
その人の症状の程度にもよるが、私の場合は治らない。 じん帯が切れてしまったからだ。そうなってからでは遅い。 (2017/03 追記:別の医者にかかったら「別に切れてない」と断言された。いったいなんだったのか...。)
エンジニアになって最初の頃は学ぶべきことも多く、給料は自分への投資として、そうしたことの学習に当てたいと思うことも多いだろう。しかしそうした勉強は、後になって取り返すことが出来る。だが壊した身体は(少なくとも私は)取り返せない。労災も降りないだろうし、降りたところで元には戻らない。
「肩こり程度のもの」と高をくくって治療を延ばすと、それも手遅れの原因になる。異常を感じたらすぐに受診すべきだ。とはいえ、私が最初に受診したところはヤブだったので悪化させたかもしれない。受診先もよく調べて選ぼう(私のころは調べる手段も限られていた。今は違う)。
(2017/03 追記:「なに科?」にかかればいいのかというと 整形外科 です。鍼灸や整体は全体治療なので、まずは整形外科で症状を詳しく把握し、その後(利用したければ)鍼灸や整体を利用するとよいでしょう。)
肩は生命線(もちろん腕全体だが)
音声入力がまだまだ一般的になるとは言えないし、なったとしてもソースコードについてそれが出来るようになるのはまだまだ遠い道のりだろう。肩は絶対に守らなければならない。
どのキーボードを選択するべきか
HHKB、Realforce、メカニカル、US 配列か JIS 配列か... 様々の高級キーボードや配列の選択肢があり、それぞれの愛好家の間で宗教戦争のようなものがあり悩ましいかもしれない。情報過多気味でなのでよく言われているようなことは繰り返さない。
個人的には以下のような基準がある。
貸与された PC がノート PC なら、その PC が備えているものに近いものを選択すれば、外付けキーボードを持っていけない場合(会議など)に使い勝手の混乱がなく便利だ。
もしあなたが派遣だったり、様々な出向先で働くようなワークスタイルなら、やはり日本で最も普及している JIS 配列を選択すべきなのかもしれない。
何を選んでもいつかは慣れる。一度慣れたら、もしキーボードを壊してしまったりした場合に同じものが欲しいと思うだろう。いや「同じでなければ困る」はずだ。しかし絶版になっていたら?(私にはそれば起こった)だから「ロングセラー」を選ぶのも大切かもしれない。
上と矛盾するが、何を選んでもいつかは慣れる。身体に合わないと感じたら選択肢を変える勇気も必要か。
ときどきはわざと能率を落とす
効率的な仕事をするためのツールは多い。ホームポジションからあまり手を離さなくて良いテキストエディタとか。だが効率が上がるということは、疲労も効率的に溜まっていく。ノっているときはずっとタイピングし続けたい気持ちも解る。でもたまには違うタイプの仕事(アイコン作りとか)に切り替え、同じ疲労がたまらないように気をつけよう。
職に就く前に確認せよ
会社によっては、私物持ち込み機器の制限をしているところもある。面接で確認しよう。これは転職する場合も同じだ。
制限があるためキーボードの持ち込みが出来ないと言われたら、このページを見せてなんとか説得するか、その会社で働くメリットと天秤にかけて選択しよう。
しかし個人的には、キーボードやマウス(などポインティングディバイス)の持ち込み禁止をしている会社は早めに滅びるべきだと思っている。そうした会社はエンジニアを単なる労働力と見なし、会社の生命線を守る重要且つ優秀な人間として扱っていない可能性があるからだ。また禁止理由に不明瞭で根拠のない理由を持ち出す会社は、単に同調圧力の高い没個性な会社かもしれない。滅びるべきだ。
もちろん記録媒体やそれを内蔵するような私物の持ち込みは当然制限されるべきで、もし逆に記録媒体も含めて持ち込みオッケーにしているという会社だったら、違う意味で避けた方が良い。顧客や取引先や従業員のプライバシーに対する配慮が会社全体に欠けている可能性があるためだ。将来性に疑問がある。
上司の方へ
従業員が私物の入力機器(キーボード、および記録媒体を含まず、セキュリティホールや通信状態の輻輳原因となり得ないもの)の持ち込みを許可していただくようお願いいたします。
これは「自家用車で通勤したい」などという欲求とは異なり、不相応な贅沢や見栄などが目的では決してありません。これは従業員の生命と健康を守るために必要なことです。
他の道具と異なりインターフェイスであるこれら入力機器は、例えば「杖」が個々人によって適切な長さが異なるように、個々人によって適切な道具が異なります。
これらの道具が身体に合っていない場合、業務を効率的に行い生産性を上げれば上げるほど、従業員の健康を損ね、ひいては回復不能なほどに損傷させ得ます。
キーボードの多くは記録媒体を持たず、セキュリティホールとはなりません。また有線接続のものであれば室内の無線環境に干渉することもありません。もしそれでもセキュリティに対する他の(根拠のある)懸念があるのなら、適切にサニタイズし使用できるよう取り計らいをお願いいたします。
以上の理由から、入力機器は従業員の私物の持ち込みを許可いただきたく存じます。もし就業規則にてそうした機器の持ち込みに特別な申請が必要な場合、積極的に手続きにご協力いただきますよう、お願い申し上げます。もしそうした許可制度が存在しない場合は、記録媒体を伴わない機器についての例外条項を新たに加えていただきますよう、取り計らいをお願いいたします。
いずれも無理そうでしたら、まったく同じものを貸与していただきますようお願い申し上げます。
蛇足
姿勢にも気をつけよう。