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Linuxカーネル: プロセスとスレッド

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Linuxカーネル: プロセスとスレッド

Linuxオペレーティングシステムは、マルチタスク環境を提供することで、同時に複数のプロセスを実行できます。この記事では、プロセスとスレッドの基本的な違いと、Linuxカーネルがこれらをどのように管理しているかを解説します。

プロセスとは?

プロセスは、実行中のプログラムのインスタンスであり、独自のメモリ空間、実行コンテキスト、およびシステムリソースを持っています。プロセスは以下の特性を持ちます:

  • 独立性: 各プロセスは他のプロセスから独立しており、他のプロセスとは異なるメモリ空間を持っています。
  • セキュリティ: プロセス間の隔離により、システムの安全性が高まります。
  • プロセス間通信: プロセスが他のプロセスと通信するには、パイプ、ソケット、共有メモリなどのIPCメカニズムを使用します。

スレッドとは?

スレッドはプロセス内の実行単位であり、プロセスのリソースを共有しながら個別の実行パスを持つことができます。スレッドは以下の特性を持ちます:

  • 効率: スレッドの作成とコンテキストスイッチはプロセスに比べて軽量で、システムリソースの利用がより効率的です。
  • 共有メモリ: 同じプロセス内のスレッド間でグローバル変数やヒープメモリを共有することができます。
  • 同期: ミューテックス、セマフォ、モニタなどの同期メカニズムを用いてスレッド間でのデータアクセスの整合性を保ちます。

Linuxカーネルの役割

Linuxカーネルはプロセスとスレッドの作成、実行、管理を担っています。カーネルは以下の機能を提供します:

  • スケジューリング: CPUの使用時間をプロセスやスレッド間でスケジュールし、タイムスライスを割り当てます。
  • プログラムカウンター: プロセスやスレッドが次に実行する命令を追跡します。
  • システムコール: プロセスがリソースへのアクセスを必要とする際に、カーネルがこれを中継します。
  • コンテキストスイッチ: 現在のプロセスやスレッドから別のプロセスやスレッドへ制御を移す際に、状態を保存し復元します。

了解しました。以下に「マルチプロセスとマルチスレッドのプロセス間通信」というセクションを追加し、プロセス間通信(IPC)およびスレッド間の通信のコード例を示します。


マルチプロセスとマルチスレッドのプロセス間通信

オペレーティングシステムにおいて、プロセスやスレッド間で情報を交換する必要が生じることがあります。マルチプロセス環境では、独立したメモリ空間を持つプロセス間での通信にはIPCメカニズムが使われます。一方、マルチスレッド環境では、同じメモリ空間内で動作するスレッド間での通信が直接行えます。

マルチプロセスのIPC: パイプ

パイプは最も一般的なIPCメカニズムの一つです。以下にパイプを使用してプロセス間で文字列を送信する例を示します。

// C言語によるパイプを用いたプロセス間通信の例
#include <stdio.h>
#include <unistd.h>

int main() {
    int pipe_fds[2];
    pid_t pid;
    char buf[20];

    // パイプを作成
    if (pipe(pipe_fds) == -1) {
        perror("pipe");
        return 1;
    }

    // プロセスをフォークして子プロセスを作成
    pid = fork();
    if (pid == -1) {
        perror("fork");
        return 1;
    }

    if (pid == 0) {
        // 子プロセス
        close(pipe_fds[1]); // 書き込みエンドを閉じる
        read(pipe_fds[0], buf, sizeof(buf)); // 読み込みエンドからデータを受け取る
        printf("Child received: %s\n", buf);
        close(pipe_fds[0]);
    } else {
        // 親プロセス
        close(pipe_fds[0]); // 読み込みエンドを閉じる
        write(pipe_fds[1], "Hello, child!", 13); // 書き込みエンドにデータを送る
        close(pipe_fds[1]);
    }

    return 0;
}

マルチスレッドの通信: 共有メモリ

スレッド間通信では、共有メモリが直接使用されます。以下はグローバル変数を介したスレッド間通信の例です。

// C言語によるマルチスレッドプログラムの例
#include <stdio.h>
#include <pthread.h>

// グローバル変数は全スレッドで共有されます
int shared_data = 0;
pthread_mutex_t lock = PTHREAD_MUTEX_INITIALIZER;

// スレッドの関数
void* thread_function(void* arg) {
    // ミューテックスで共有データへのアクセスを同期
    pthread_mutex_lock(&lock);
    shared_data++; // 共有データを変更
    pthread_mutex_unlock(&lock);
    return NULL;
}

int main() {
    pthread_t thread1, thread2;

    // スレッドを作成
    pthread_create(&thread1, NULL, thread_function, NULL);
    pthread_create(&thread2, NULL, thread_function, NULL);

    // スレッドの終了を待機
    pthread_join(thread1, NULL);
    pthread_join(thread2, NULL);

    // 変更された共有データを表示
    printf("Shared data: %d\n", shared_data);

    return 0;
}

これらの例により、マルチプロセス環境でプロセス間で通信する際のIPCと、マルチスレッド環境でスレッド間で通信する際の共有メモリの利用方法が示されます。プロセス間通信ではパイプ、メッセージキュー、共有メモリなどのメカニズムがありますが、スレッド間通信ではグローバル変数やスレッド固有のデータ、条件変数などを使用します。

プロセス(スレッド)が持つ情報

プロセスとスレッドは、オペレーティングシステム上でタスクを実行するための基本的な単位です。これらがシステム上で実行されるとき、カーネルはそれぞれのプロセスおよびスレッドに関する複数の情報を保持し、管理します。

プロセスが持つ情報

プロセスは以下のような情報を持ちます:

  • プロセス識別子 (PID): 各プロセスには一意のIDが割り当てられ、システム内でそのプロセスを識別するために使用されます。
  • プロセスの状態: 実行中、待機中、停止中など、プロセスの現在の状態を表します。
  • プログラムカウンタ: 現在実行中の命令のアドレスを指します。
  • CPUレジスタ: プロセスが実行される際のCPUレジスタの内容です。
  • メモリ管理情報: プロセスのメモリ空間へのポインタやページテーブルなど、メモリ管理に関する情報を含みます。
  • オープンファイルのリスト: プロセスによってオープンされたファイルディスクリプタのリストです。
  • セキュリティ情報: 実行ユーザーのUIDやGIDなど、プロセスのアクセス権を管理するための情報。
  • 環境変数: シェルやアプリケーションの動作に影響を与える環境変数のセット。

スレッドが持つ情報

スレッドはプロセスの実行コンテキストの一部を共有しつつ、以下の情報を独自に保持します:

  • スレッド識別子: スレッドを一意に識別するためのIDです。
  • スレッドの状態: スレッドが実行可能、実行中、またはブロックされているなど、スレッドの状態を示します。
  • スレッド固有のレジスタ: スレッドの実行に必要なCPUレジスタの状態です。
  • スタックポインタ: スレッドのスタック(ローカル変数や戻り値などを保持するメモリ領域)へのポインタです。
  • プライオリティ: スレッドの実行優先度を表します。
  • スレッド固有のストレージ: 各スレッドが独立してアクセスできるデータ領域です。

これらの情報は、プロセスやスレッドの実行を効率的かつ正確に管理するために必要です。カーネルはこれらの情報を使ってスケジューリング決定を行い、プロセス間やスレッド間でリソースを適切に分配します。また、プロセスがシステムコールを発行するとき、カーネルはこれらの情報を参照してリクエストを処理し、適切な操作を行います。

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