Kubernetes Blue/Green Upgradeについて
目次
導入
1. KubernetesのBlue/Green Upgradeの重要性
Kubernetesクラスタのアップグレードは、新しい機能を取得するため、セキュリティのパッチを適用するため、あるいは既存の問題を修正するために行われます。しかし、アップグレードには中断のリスクが伴います。そのため、Blue/Greenのアップグレードアプローチはそのリスクを軽減するための手段として注目を集めています。
2. Blue/Green Upgradeの基本概念
Blue/Greenアップグレードは、新しいバージョン(通常は「Green」)を導入しながら、既存のバージョン(「Blue」)を稼働させ続けるアプローチを指します。問題が発生した場合には、Blueバージョンに容易にロールバックできます。
3. 記事の概要
この記事では、Kubernetesのマルチクラスタ環境でのBlue/Green Upgradeの具体的な手順、注意点、トラブルシューティング事例、そして用語の解説を提供します。
マルチクラスタ構成のBlue/Green Upgradeの具体的な手順
2.1 使用例の構成の説明
2.1.1 管理クラスタとユーザクラスタ
Kubernetesのマルチクラスタ環境には、管理クラスタとユーザクラスタがあります。管理クラスタはユーザクラスタを制御し、ユーザクラスタはワークロードを実行します。
2.1.2 ノードプールの概念
ノードプールは、同じ設定やバージョンのノードのグループを指します。ノードプールを使用することで、ノードの追加や削除、アップグレードが容易になります。
2.1.3 アップグレードプロセスの概要
アップグレードは、まず管理クラスタをアップグレードし、次にユーザクラスタのControl Planeをアップグレードし、最後に新しいバージョンのノードプールを追加し、既存のノードプールを削除することで完了します。
2.2 管理クラスタのアップグレード
2.2.1 構成ファイルの変更
管理クラスタのアップグレードを開始するには、まず構成ファイルを編集してバージョン情報を更新します。
apiVersion: baremetal.cluster.gke.io/v1
kind: Cluster
metadata:
name: admincluster
namespace: cluster-admin
spec:
type: admin
- anthosBareMetalVersion: 1.15.1
+ anthos
BareMetalVersion: 1.16.0
2.2.2 preflight checkの実行
構成ファイルの変更後、preflight checkを実行してアップグレードの可能性を確認します。
bmctl check all -c admincluster
2.2.3 アップグレードの実行
preflight checkが問題なければ、bmctl upgrade cluster
コマンドを使用して管理クラスタのアップグレードを実行します。
bmctl upgrade cluster --kubeconfig=bmctl-workspace/admincluster/admincluster-kubeconfig -c admincluster
2.3 User ClusterのControl Planeのアップグレード
2.3.1 構成ファイルの変更
同様に、User ClusterのControl Planeのアップグレードも構成ファイルの変更から始めます。
apiVersion: baremetal.cluster.gke.io/v1
kind: Cluster
metadata:
name: usercluster1
namespace: cluster-usercluster1
spec:
type: user
- anthosBareMetalVersion: 1.15.1
+ anthosBareMetalVersion: 1.16.0
2.3.2 preflight checkの実行
bmctl check all -c usercluster1
2.3.3 アップグレードの実行
bmctl upgrade cluster --kubeconfig=bmctl-workspace/admincluster/admincluster-kubeconfig -c usercluster1
2.4 新バージョンでのGreenノードプールの追加
アップグレードされたControl Planeを使用して、新バージョンでのGreenノードプールを追加します。このノードプールには、新しいバージョンのノードが含まれます。
kubectl apply -f new-green-nodepool.yaml
2.5 Podの移行と旧Node Poolの削除
2.5.1 Podの移行
Greenノードプールが追加されたら、cordon/drainを使用してPodを移行します。
kubectl cordon <blue-node-name>
kubectl drain <blue-node-name> --ignore-daemonsets --delete-emptydir-data
2.5.2 旧Node Poolの削除
Podの移行が完了したら、旧Node Poolを削除します。
kubectl --kubeconfig=bmctl-workspace/admincluster/admincluster-kubeconfig delete nodepool <blue-nodepool> -n cluster-usercluster1
Upgrade時の注意点とベストプラクティス
3.1 通信の中断
Upgrade中に通信が中断しないように注意が必要です。事前の計画とテストが重要となります。
3.2 エラーハンドリングとロールバック
エラーが発生した場合、適切なエラーハンドリングとロールバックのプロセスが必要です。Blueバージョンへのロールバックを確実に行えるようにしましょう。
3.3 アップグレードプロセスの監視
アップグレードプロセスは、進捗の監視が重要です。アップグレードの状態を定期的にチェックし、問題が発生した場合には迅速に対応が必要です。
3.4 テスト戦略
Upgrade前に十分なテストを行い、本番環境での影響を最小限に抑えることが重要です。
トラブルシューティング事例と解決策
4.1 通信断のトラブルシューティング
通信が断たれた場合、まずネットワークの接続と設定を確認します。ルーティングやFirewallの設定もチェックが必要です。
4.2 ノードアップグレードの失敗
ノードのアップグレードが失敗した場合、ログを確認して具体的なエラーメ
ッセージを特定しましょう。具体的なエラーメッセージを元に解決策を探求します。
用語の解説
5.1 cordon, uncordon, drain
- cordon:Kubernetesのノードをcordonすると、新しいPodがそのノードにスケジュールされなくなります。しかし、既存のPodは影響を受けません。
- uncordon:cordonされたノードをuncordonすると、そのノードに再びPodがスケジュールされるようになります。
- drain:ノードをdrainすると、そのノード上のPodが他のノードに移動します。これは、ノードのメンテナンスやアップグレードの際に使用されます。
5.2 Node Pool
Node Poolは、同じ設定のノードの集合を指します。Node Poolを使用することで、ノードの管理が容易になります。
5.3 Control Plane
Control Planeは、クラスタの全体的な管理と制御を担当します。ユーザのリクエストの処理、ワークロードのスケジューリング、クラスタ内のリソースのトラッキングなどを行います。
結論
Blue/Green Upgradeは、Kubernetesのアップグレードプロセスのリスクを管理し、ダウンタイムを最小限に抑えるための有効な戦略です。事前の計画、テスト、適切なロールバックの準備によって、安全かつ効率的なアップグレードプロセスを実現できます。
参考資料
- Kubernetes公式ドキュメント
- Anthos Bare Metal公式ドキュメント
- https://qiita.com/suzuyui/items/a23dcb02f613e99b718e
この記事がKubernetesのBlue/Green Upgradeの理解と実行の助けとなることを願っています。