KubernetesのRBACの裏側
1. はじめに
Kubernetesは、コンテナ化されたアプリケーションをホストするための先進的なオーケストレーションエンジンです。このエンジン内で、**RBAC(Role-Based Access Control)**という認証メカニズムが注目を浴びています。
Kubernetes認証の重要性
Kubernetes環境内でリソースにアクセスする際の認証と認可は、セキュリティの観点から非常に重要です。誤った設定は、不正アクセスやデータの漏洩を引き起こす可能性があります。
RBACとは何か?
RBACは、ユーザーにロールを割り当て、そのロールに基づいてリソースへのアクセスを制御する方法です。これにより、特定のユーザーやグループに対して、必要な権限だけを付与することができます。
2. RBACとABAC:基本的な違い
RBACはロールに基づくアクセス制御を提供するのに対し、ABACは属性に基づくアクセス制御を提供します。
ABACの特性
ABACは、JSON形式のポリシーファイルによって認可ルールを定義します。しかし、現状のKubernetesのABACは、リソースの任意の属性に基づくアクセスを許可することは難しいです。
RBACの特性
RBACは、APIオブジェクトとしてRoleやRoleBindingを動的に追加できるため、より柔軟で効率的です。
3. RBACの許認可のパイプライン
Kubernetesの認証パイプラインは、ユーザーがどのリソースにアクセスできるかを判断するためのものです。このパイプラインには、RoleとRoleBindingの概念が含まれています。
Kubernetesでの認証と認可のフロー
- ユーザーがリクエストを送信します。
- Kubernetes APIサーバーはリクエストを受け取り、認証します。
- リクエストが認証されると、認可プロセスが開始されます。
- RBACはRoleとRoleBindingをチェックし、ユーザーのリクエストが許可されるかどうかを判断します。
RoleとRoleBindingの相互作用
Role
は、特定のネームスペース内でのリソースへのアクセス権限を定義します。一方、RoleBinding
はユーザーやグループにRoleを紐付けます。
kind: Role
apiVersion: rbac.authorization.k8s.io/v1
metadata:
namespace: default
name: pod-reader
rules:
- apiGroups: [""]
resources: ["pods"]
verbs: ["get", "list"]
上記は、pod-reader
というRoleを示しています。このRoleは、podsリソースの取得と一覧表示の権限を持っています。
4. シナリオごとのRBACの設定方法
RBACの設定は、実際のユースケースやシナリオに応じて変わる可能性があります。以下は一般的な設定手順と
実例を示すものです。
RBACの基本的な設定手順
- 必要なRoleを定義します。
- ユーザーやグループにRoleを紐付けるRoleBindingを作成します。
- RoleとRoleBindingをKubernetesクラスタに適用します。
RoleファイルとRoleBindingファイルの作成と適用
Roleファイルは、リソースへのアクセス権限を定義するためのものです。RoleBindingファイルは、ユーザーやグループにRoleを割り当てるためのものです。
# Roleファイル
kind: Role
apiVersion: rbac.authorization.k8s.io/v1
metadata:
namespace: default
name: pod-reader
rules:
- apiGroups: [""]
resources: ["pods"]
verbs: ["get", "list"]
# RoleBindingファイル
kind: RoleBinding
apiVersion: rbac.authorization.k8s.io/v1
metadata:
name: read-pods
namespace: default
subjects:
- kind: User
name: "janedoe"
apiGroup: rbac.authorization.k8s.io
roleRef:
kind: Role
name: pod-reader
apiGroup: rbac.authorization.k8s.io
上記の設定では、janedoe
というユーザーにpod-reader
というRoleが紐付けられています。
5. ABACの認証ワークフロー
ABACは、属性に基づいてユーザーのリソースへのアクセスを認証および認可する方法です。ABACポリシーはJSONファイルとして提供され、APIサーバーに供給される必要があります。
属性ベースのアクセス制御
ABACでは、ユーザーの属性(例:ユーザー名、役職など)に基づいてリソースへのアクセスを制御します。ABACの主な利点は、柔軟性とグラヌラリティですが、設定が複雑になる可能性があります。
JSONポリシーファイルの役割
ABACポリシーはJSON形式のファイルとして定義されます。このファイルはAPIサーバーに提供され、リクエストが来るたびに評価されます。
{
"apiVersion": "abac.authorization.kubernetes.io/v1beta1",
"kind": "Policy",
"spec": {
"user": "alice",
"namespace": "projectA",
"resource": "pods",
"readonly": true
}
}
このポリシーは、alice
というユーザーがprojectA
というネームスペース内のpodsリソースを読み取ることを許可しています。
6. RBACの認証ワークフロー
RBACの認証ワークフローは、RoleとRoleBindingのコンセプトに基づいています。これにより、ユーザーやグループに特定のリソースへのアクセス権限を動的に付与することができます。
RoleとRoleBindingの導入
RBACの核となるのは、RoleとRoleBindingの2つのAPIオブジェクトです。これらのオブジェクトを使用することで、ユーザーにリソースへのアクセスを許可または拒否することができます。
RBACの効率的な管理
RBACは、APIオブジェクトとしてRoleとRoleBindingを動的に追加・削除する能力を持っています。これにより、ABACよりも簡単に
アクセス制御の設定や変更を行うことができます。
まとめ
Kubernetesの認証メカニズムとしてRBACとABACの2つの主な方法が提供されています。現代のKubernetes環境では、RBACが推奨される方法となっています。この記事では、これらのメカニズムの基本的な違いと利点、および実際の設定方法について詳しく説明しました。