はじめに
初めまして、株式会社viviONでアプリエンジニアをしてるTKと申します。
私が所属しているチームでは、MBO(目標管理制度)に基づいて各自が目標を設定し、自己マネジメントを行いながらサービス付加価値付与の創出に取り組んでいます。
以下の目標管理入門の書籍を軸に開発メンバーが各々自己管理して目標を設定を課されました。

当初の私は目標管理をどう定義すればよいのか分からず、非常に難しいものだと感じていました。
そんな時、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(以下、『もしドラ』)という本に出会いました。この本を読んだことで、目標管理に対する解像度が上がり、仕事への取り組み方も大きく変わりました。そこで本稿では、『もしドラ』が私に与えてくれた気づきを、具体的な例を交えながらご紹介したいと思います。

想定対象者
・目標設定の考え方がわからない人
・会社の貢献の仕方が難しく、イメージが湧かない人
目的
より解像度の高い目標を設定しやすくなる
そもそも目標設定とはなんなのか
MBO(エムビーオー)の目標設定って、なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は身近なことなんですよね。
ざっくりと表現しますと、「自分で目標を決めて、それを達成するために頑張りましょう!」のような仕組みのことです。
MBOって何の略?
MBOは、英語の "Management by Objectives" の頭文字をとったものです。日本語にすると「目標による管理」っていう意味になります。
なんで目標を自分で決めるの?
上司から「これをやりなさい」って言われるよりも、自分で「よし、これをやるぞ!」って決めたことの方が、やる気が出ると思います。
MBOは、会社で働く大人たちが、やらされ感ではなく、自分で「この目標を達成するぞ!」と決めることで、もっとやる気を出して、もっと良い結果を出せるようにするための仕組みなんですね。
目標設定は実際に難しい
MBOで目標を設定する際、私が最も悩んだのは「自分はどこに貢献したいのか」という問いの答えが見つからないことでした。
組織の一員である自分が、所属するチーム、会社、さらには社会全体に対してどのような影響を与えられるのか、具体的なイメージを描けずにいました。
それに転じて、マネジメントの本質を説明されているドラッカーの経営哲学がヒントになるはずですが、その考え方は抽象度が高く、特に初心者にとっては理解が難しいという課題がありました。
自分もその一人で、具体化するために実例が結び付かずに悩んでました。
そこで『もしドラ』が、ドラッカーの抽象的な理論を高校野球という身近な舞台で分かりやすく説明しているので、非常に理解しやすかったのです。この本がどのように役立ったかをご紹介します。

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『もしドラ』の具体例が目標設定の考え方を助ける
『もしドラ』の最大の魅力は、ドラッカーの難解な理論を、私たちにとって身近な「高校野球のマネージャー」という視点から、具体的なエピソードに落とし込んで解説してくれる点です。これにより、抽象的な概念もスムーズに理解することができます。
例えば、ドラッカーの「顧客は誰か?」という問いに対して、『もしドラ』の主人公、川島みなみは次のように考え、行動します。
みなみは、野球部員たちを「顧客」と定義しました。なぜなら、部員たち(顧客)を満足させることができれば、チームは強くなり、高校野球界全体が盛り上がり、ひいては学校や地域社会にも良い影響を与えられると考えたからです。
このエピソードは、私自身の仕事が周囲にどのような影響を与えるのか、そして「誰のために働くのか」を具体的にイメージする上で、非常に大きな助けとなりました。
主人公と同じ視点で考えることができる
『もしドラ』を読むことの大きな魅力の一つは、主人公である川島みなみと同じ視点に立ち、彼女と一緒にドラッカーのマネジメント論を読み解き、実践していくプロセスを追体験できる点にあります。
ドラッカーの教えが「自分ごと」になる
物語の中で、主人公のみなみは次のように行動します。
野球部のマネージャーとして「甲子園に連れていく」という明確な目標(MBOにおける目標設定に通じます)を掲げ、その達成のためにドラッカーの『マネジメント』を手に取ります。
彼女は最初、ドラッカーの言葉の難解さや、それをどう野球部に応用すればよいのか戸惑います。
この、初めての課題に直面し戸惑う主人公の姿は、マネジメント論に初めて触れる多くの読者の姿と重なるのではないでしょうか。
私たちは、みなみが一つ一つの課題(弱小野球部の立て直し、部員のモチベーション向上、練習の効率化など)に対し、ドラッカーの言葉をどう解釈し、どう具体的な行動に落とし込もうと奮闘するかを、まるで自分のことのように感じながら読み進めることができます。
経営理論が具体的な物語として理解できる
ドラッカーの『マネジメント』は、経営学の古典として非常に価値が高い一方で、抽象的な概念や専門的な言葉も多く含まれています。
『もしドラ』では、これらの教えが、私たちにとって身近な高校野球部という舞台で、具体的に描かれます。
例えば、「顧客は誰か」「われわれの事業は何か」といったドラッカーの問いが、野球部においては「本当に応援してくれる人は誰か」「野球部は何を目指すのか」といった具体的な問いに置き換えられます。そして、主人公のみなみが、これらの問いに対する答えを悩みながらも見つけ出していく過程が丁寧に描写されています。
特に印象的だったのは、みなみが親友を野球で再び感動させ、喜ばせたいという個人的な動機から、「誰かを感動させる」という視点を持つようになる場面です。これは、ドラッカーの言う「顧客を喜ばせる」という考え方に繋がり、非常に分かりやすいと感じました。
このように、難解に思える経営理論も、具体的なエピソードを通して直感的に理解することができるのです。
MBOの本質への気づき
MBO(目標による管理)は、ドラッカーが提唱したマネジメント手法です。『もしドラ』を通じて、その本質に触れることができます。
物語の中で、みなみは野球部の目標(甲子園出場)を明確にし、そのために部員一人ひとりが何をすべきかを考え、主体的に行動していくよう促します。このプロセスは、まさにMBOの実践そのものです。
この物語を通して、MBOが単なるノルマ管理ではなく、組織のメンバーが共通の目標に向かって自律的に貢献するための強力なツールであることを、より深く実感できるでしょう。
『もしドラ』を読んだ後に組んだ自分のMBOはこちら
『もしドラ』を読む前と後で、私のMBOの捉え方は以下のように変わりました。
変更前
- MBO: 漫画サービスを広げてライトユーザー層を獲得していく
- 結果指標: 売上達成
- 先行指標: 売上
変更前のMBOでは、主な「顧客」は「漫画サービスのライトユーザー層」であり、その獲得と売上の達成が目標でした。
変更後
- MBO: 気持ちよく働け、かつ良いサービスを提供できる環境を醸成すること
- 結果指標: 改善できた提案と承認
- 先行指標: チームの提案と承認
変更後のMBOでは、「気持ちよく働け、かつ良いサービスを提供できる環境」という目標を掲げました。
これは、直接的なサービス利用者だけでなく、そのサービスを生み出す源泉である「チームメンバー」や、チームが一体となって築き上げる「サービス提供の質とプロセス」そのものにフォーカスしています。
『もしドラ』で主人公が野球部員という「内部顧客」の満足度向上に注力していたように、私もチームメンバーが能力を最大限に発揮し、主体的に価値創造に取り組める環境づくりを新たな「顧客満足」の対象として設定しました。
まとめ
『もしドラ』のエピソードは、自分にとって「顧客とは誰か」「仕事を通じて何を実現したいのか」という根源的な問いに対する新たな気づきを与えてくれました。
さらに自分にとってワクワクする根源はなんなのかを改めて再認識できたので、良いきっかけでした。
皆さんもぜひ『もしドラ』を読んで、自分なりの目標設定と「貢献」のカタチを見つけてみてください。
参考書籍
- もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
- 図解 目標管理入門