はじめに
2022年を振り返ると、5月に MapLibre GL JS で Terrain 3Dの地図を作れるようになり、私のところでもデジタル標高モデル(DEM)をよく使った一年だったなぁと思います。
ここでは、私が この一年間で使った無料のDEM(DSM)を振り返り、簡単にメモしておきたいと思います。
使ったDEM 一覧
いずれも無料で利用出来ます。
名前 | 作成者 | 範囲 | 解像度 | ユーザー登録 | 注意 |
---|---|---|---|---|---|
地球地図第二版標高 | 地球地図国際運営委員会 | グローバル | 15秒(赤道上で500 mくらい) | 不要 | 地球地図事業は完了しておりメンテされていません。 水部とNo dataの値が-9999と9998です。元データはUSGSのGMTED2010です。 |
AW3D30 (ALOS World 3D - 30m) | JAXA | グローバル | 1秒(赤道上で30 mくらい) | 必要 | DEMではなくDSMです。2011年に運用終了したALOSのデータで作っています。 |
SRTM | NASA | だいたい北緯60度~南緯56度 | 1秒(赤道上で30 mくらい) | 必要 | 2000年のNASAのスペースシャトルミッションのデータから作成されています。現在はv.3が最新だと思います。v3でもある程度欠損部分を埋めていますが、まだ山岳部にデータ欠損あり。 |
NASADEM | NASA | だいたい北緯60度~南緯56度 | 1秒(赤道上で30 mくらい) | 必要 | SRTMの欠損領域をAster G-DEMやALOSの標高データで埋めたもの。 |
その他、最近、 http://viewfinderpanoramas.org/dem3.html のページからもSRTMの欠損値を埋めたデータがあることを教えてもらいました。私はまだ利用した経験がないので単にリンクの紹介にとどめます。あと、欧州のコペルニクスのDEM( https://spacedata.copernicus.eu/web/cscda/dataset-details?articleId=394198 )も気になっていますが試していません(欧州は10m解像度、グローバルには30m解像度)。
それぞれのDEMについて(私の理解・感想)
地球地図第二版標高
- 解像度: 解像度は他のデータに比べて粗い(15秒)ので、小縮尺のDEMを作るときは1秒解像度のデータより処理がしやすい。ただし、解像度を考えるとウェブ地図で利用できる最大ZLは8程度ではないかと思います。
- データへのアクセス: GitHubページにアップしてあるので、そのままダウンロード出来るところがよい。
- 処理のしやすさ: 水部や欠損値には特別な値を入れているので、計算が必要になってくる。そんなに大変ではない。
- 私の実験の成果: データサイズの関係でZL2-7までしかおけていませんが、このデータから作ったRGB標高タイルは以下のページにあります。
こんな感じのグローバル標高タイルにできます。
イタリアの西アルプスのあたりですがズームレベル7や8だとこのくらい見えます。
私の作業のメモはこちらです。
AW3D30 (ALOS World 3D - 30m)
- 解像度: 解像度1は1秒。有料であればもっと細かいものもあるようです。
- データへのアクセス: ユーザー登録は必要ですが、ウェブページからダウンロード可能。5度×5度の範囲か、1度×1度の範囲でダウンロード出来る。
- 処理のしやすさ: DSMファイルに加えてMSKファイルがついており、水部マスクの範囲など確認出来る。特に問題なし。
- ドキュメンテーションがきちんとしていて、わかりやすい。「利用規約」の条件において、商用・非商用目的を問わず無償で利用できる。* 日本語のページもあるので、日本人には使いやすい。
- 私の実験の成果: 下図の範囲について、RGB標高DEM(ZL9-11)を作ってGitHubレポジトリにおいてあります。
DSMデータなので、地形についてシャープに再現できると思うのですが、特に都市部では建物の高さを含んでいるデータになるので基盤標高データとしての利用には適さないと思います。また、2011年までのデータ、解像度30メートル(無償データは)ということなので、建物の高さをとるのにも適しません。
私の作業のメモはこちらです。
SRTM
- 解像度: 解像度1は1秒。3秒のものもあります。
- データへのアクセス: USGSのEarthExplorerや、NASA LPDAACのページからダウンロード可能。バルクダウンロードの方法もある。
- 処理のしやすさ: HGTフォーマットでバイナリーのDEMが入っていますが、gdalのサポートがされていて、GDALやQGISではそのまま使える。(ファイル名から位置情報を読み取るようです)
- 山岳部には欠損値があるので注意が必要。また、高緯度にはデータがない。
- 私の取組の成果: 全球のRGB標高タイルをZL12まで作りましたが、サイズが大きすぎるので公開していません。手順はQiitaの記事にしています。数週間で作業できました。
NASADEM
基本的には、SRTMと同様のデータ仕様かなと理解していますが、SRTMの欠損部分(void部分という意味)を他のデータ(Aster G-DEMとALOSのDEM)で補完しています。Height以外にもslopeなどのデータセットもあるようです。(私が使ったのはHeightのみ)
- 解像度: 解像度1は1秒。
- データへのアクセス: SRTM同様、USGSのEarthExplorerや、NASA LPDAACのページからダウンロード可能。バルクダウンロードの方法もある。
- 処理のしやすさ: SRTM同様、HGTフォーマットでバイナリーのDEMが入っていますが、gdalのサポートがされていて、GDALやQGISではそのまま使える。(ファイル名から位置情報を読み取るようです)
- 高緯度にはデータがないのはそのままだが、SRTMに比べて山岳部のデータ欠損が少ない。
- 私の取組の成果: 全球のRGB標高タイルをZL12まで作りましたが、サイズが大きすぎるので公開していません。手順はQiitaの記事にしています。
(上図) 西アルプスでの比較 (n45-46, e007-008). 左: SRTM, 右: NASADEM
作業メモなどはこちらです。
まとめ
- いずれも、無料で利用出来る素晴らしい標高データです。
- 私が好きな点は次のとおりですが、それぞれの特性を踏まえて上手に使っていきたいです。
- 地球地図 → 解像度が15秒なので扱いやすい。小縮尺によいデータ。現時点では私はこれを小縮尺に使っています。
- AW3D30 (ALOS World 3D - 30m) → DSMなので都市部で3Dのベースとしては使いにくいが、DSMなので細かく凹凸が見られる。他のデータはDEMが多い中でDSMというのは面白い。
- SRTM → GDALのHGTサポートが素晴らしい。ただし山にはVOIDデータがある。
- NASADEM → SRTMの良いところを残しつつ、山岳部の欠損をASTERやALOSのデータで補完。現時点では私はこれを使っています(中縮尺~)。
- ここで示した以外にも、利用可能なDEMデータがあると思いますので、来年も必要に応じて探って行きたいと思います。
- リージョナルなものなら欧州のコペルニクスDEM(欧州地域10m)など
- 国別のものなら日本の国土地理院の標高データなど
謝辞
DEMが含まれますが、地球観測の分野ではかなりオープンデータが進んでいるように思います。関係の皆様に感謝します。