はじめに
東工大作問サークルの創設者のソリングと申します.前回は2021/8/25に出した自作東工大模試を最近話題のモデルO1-Previewに解かせるという企画を実施しました(前回の記事を読まなくても,この記事を理解することは可能です).
前回の記事においては,「プロンプトで指示した『高校範囲』が,そのプロンプトの意図の範囲と異なる可能性がある」「高校範囲という縛りは作問段階において存在している縛りであり,解答者はそれに従う必要はない」という観点が抜けていました.
そこで.今回はプロンプトを作り直しました.そのプロンプトは以下をご参照ください.
プロンプト
これは東京工業大学の学士課程の入試問題を想定して作成された問題です.以下の問題に解答してください.解答に当たっては,結論のみではなく,その結論に至る過程も記述してください.結論は近似値ではなく閉じた形で書き,必要に応じて√,log, sin, cosなどを用いてください.解答に近似値が必要な場合,その近似値を直接用いず,不等式を用いて数学的に評価してください.文章内に数式がある場合,その数式を$f(x)$のように$$で囲んでください.【問題】
ここに問題を書く
なお,今回は2021/12/25に公開した第11回ソリング東工大模試を使用します.今回もこの記事を読むうえでは事前に解く必要はありませんが,興味がある方は目を通しておくといいかもしれません.なお,大問1の積分範囲の下が正しくは$a/r$であり,大問5の(1)右辺の分数の分子が正しくは$n-m+1$であるという誤植があるのでご注意ください.画像は修正されていませんが,与えたプロンプトでは正しくなっています.
大問1
注:$1/(ar)$は$a/r$の誤植です.
与えたプロンプト
これは東京工業大学の学士課程の入試問題を想定して作成された問題です.以下の問題に解答してください.解答に当たっては,結論のみではなく,その結論に至る過程も記述してください.結論は近似値ではなく閉じた形で書き,必要に応じて√,log, sin, cosなどを用いてください.解答に近似値が必要な場合,その近似値を直接用いず,不等式を用いて数学的に評価してください.文章内に数式がある場合,その数式を$f(x)$のように$$で囲んでください.【問題】
正の実数$r$および$a$に対して,\
\hspace{15mm}$\displaystyle I_r(a) = \int^{ar}_{\frac{a}{r}} \frac{\log_ex}{a^2+x^2} dx $\
とおく.ここで,$e$は自然対数の底である.以下の問いに答えよ.
\begin{enumerate}[(1)]
\item $y=\tan x \Big(0 \leq x < \dfrac{\pi}{2} \Big)$の関係について考える.この区間で正の実数$y$を定めたとき$x \in \Big[0, \dfrac{\pi}{2} \Big)$がただ一つ定まるので,その関係を$x=g(y)$と書くことにする.このとき,$g'(y)$を$y$の式で表せ.
\item 固定された実数$a$に対して,最右辺の極限値$I(a)$を求めよ.\
\hspace{15mm}$\displaystyle I(a) = \lim_{r \to \infty} I_r(a) $
\end{enumerate}
ChatGPTの解答(63秒)
[memo: なぜかChatGPTが「数式を$$で囲む」という指示に従ってくれなかったので,整形しています]
問題の解答:
(1)
関数 $ y = \tan x $(ただし $ 0 \leq x < \dfrac{\pi}{2} $)について、$ x $ を $ y $ の関数として表すと $ x = g(y) $ となります。これは $ x = \arctan y $ と書けます。
したがって、$ g(y) = \arctan y $ です。
これを微分すると、
$$
g'(y) = \frac{d}{dy} \arctan y = \frac{1}{1 + y^2}
$$
答え: $ g'(y) = \dfrac{1}{1 + y^2} $
(2)
まず、積分 $ I_r(a) $ を変数変換によって簡略化します。変数変換として $ x = a y $ を考えます。
すると、積分は次のように書き換えられます。
$$I_r(a) = \int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{\log_e (a y)}{a^2 + (a y)^2} a , dy = \int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{\log a + \log y}{a(1 + y^2)} a , dy = \int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{\log a + \log y}{1 + y^2} dy$$
この積分を2つの部分に分けます。
$$I_r(a) = \log a \int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{dy}{1 + y^2} + \int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{\log y}{1 + y^2} dy$$
最初の積分は次のように計算できます。
$$\int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{dy}{1 + y^2} = \left[ \arctan y \right]_{\frac{1}{r}}^{r} = \arctan r - \arctan \left( \frac{1}{r} \right)$$
$ r \to \infty $ のとき、
$$\arctan r \to \frac{\pi}{2}, \quad \arctan \left( \frac{1}{r} \right) \to 0$$
したがって、
$$\lim_{r \to \infty} \log a \left( \arctan r - \arctan \left( \frac{1}{r} \right) \right) = \frac{\pi}{2} \log a$$
次に、第2項の積分を考えます。
$$
\int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{\log y}{1 + y^2} dy
$$
変数変換 $ y = \frac{1}{t} $ を用いて対称性を利用すると、この積分は奇関数となり、全体としてゼロになります。
具体的には、
$$
\int_{1}^{r} \frac{\log y}{1 + y^2} dy + \int_{\frac{1}{r}}^{1} \frac{\log y}{1 + y^2} dy = 0
$$
したがって、
$$
\lim_{r \to \infty} \int_{\frac{1}{r}}^{r} \frac{\log y}{1 + y^2} dy = 0
$$
以上より、
$$
I(a) = \lim_{r \to \infty} I_r(a) = \frac{\pi}{2} \log a
$$
答え: $ I(a) = \dfrac{\pi}{2} \log a $
採点
55/60
(1) Arctanは高校範囲ではありませんが,解答としては問題ありません.
(2) こちらもほぼ問題ありません.最初の式で約分を間違えていますが,それ以降の論理は問題なくほぼ満点です.$\mathrm{arctan}r$が$r\to\infty$で$\dfrac{\pi}{2}$に行くのは自明でしょう.
大問2
与えたプロンプト
これは東京工業大学の学士課程の入試問題を想定して作成された問題です.以下の問題に解答してください.解答に当たっては,結論のみではなく,その結論に至る過程も記述してください.結論は近似値ではなく閉じた形で書き,必要に応じて√,log, sin, cosなどを用いてください.解答に近似値が必要な場合,その近似値を直接用いず,不等式を用いて数学的に評価してください.文章内に数式がある場合,その数式を$f(x)$のように$$で囲んでください.【問題】
表と裏がともに確率$\dfrac{1}{2}$で出るコインが無数にある.ここで,以下の【試行】を考える.
【試行】今あるコインを投げて,表が出た枚数だけ次の【試行】で投げるコインを追加する
例えば1枚のコインを投げて表が出た場合,次の【試行】においては2枚のコインを用いる.また,4枚のコインを持っているときに3枚表が出れば,次は7枚のコインを用いて【試行】を行う.ここで,$n$回【試行】を行なった後にコインが4枚以上になっている確率を$p_n$とおく.ただし$p_0=0$と定める.以下の問いに答えよ.
\begin{enumerate}[(1)]
\item $p_1, p_2$を求めよ.
\item $p_n$を求めよ.
\end{enumerate}
ChatGPTの解答(111秒)
解答:
まず、問題の試行を理解しましょう。各試行では、現在持っているコインを投げ、出た表の枚数だけ次の試行で投げるコインを追加します。
(1) $p_1, p_2$を求める
$p_1$について:
初期状態では1枚のコインがあります。
- 表が出る確率は$\frac{1}{2}$、その場合次の試行で使うコインは$1 + 1 = 2$枚になります。
- 裏が出る確率も$\frac{1}{2}$、その場合次の試行で使うコインは$1 + 0 = 1$枚のままです。
しかし、1回目の試行後にコインが4枚以上になる可能性はありません。したがって、
$$
p_1 = 0
$$
$p_2$について:
2回目の試行後にコインが4枚以上になる確率を求めます。
-
ケース1: 1回目の試行で表が出て、コインが2枚になる場合(確率$\frac{1}{2}$)。
- 2回目の試行で2枚のコインを投げる。
- 表が2枚出る確率は$\left(\frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}$。
- このとき、次のコインの枚数は$2 + 2 = 4$枚になります。
- 2回目の試行で2枚のコインを投げる。
-
ケース2: 1回目の試行で裏が出て、コインが1枚のままの場合(確率$\frac{1}{2}$)。
- 2回目の試行で1枚のコインを投げる。
- コインの枚数は最大でも$1 + 1 = 2$枚にしかなりません。
- 2回目の試行で1枚のコインを投げる。
したがって、2回目の試行後にコインが4枚以上になる確率は、
$$
p_2 = \frac{1}{2} \times \frac{1}{4} = \frac{1}{8}
$$
(2) $p_n$を求める
試行の性質から、$n$回の試行後のコインの総数$C_n$は以下の関係式で表されます。
$$
C_n = 1 + \sum_{k=1}^{n} H_k
$$
ここで、$H_k$は$k$回目の試行で出た表の総数です。
しかし、$H_k$はそれぞれ独立ではなく、$C_{k-1}$に依存します。そのため、直接的な計算は難しいです。
しかし、$C_n$が4枚以上になるためには、$n$回の試行で表が合計3回以上出る必要があります。初期状態から考えると、$C_n \geq 4$となる条件は、
$$
\sum_{k=1}^{n} H_k \geq 3
$$
となります。
$H_k$はそれぞれの試行での表の数であり、$k$回目の試行では$C_{k-1}$枚のコインを投げるので、$H_k$は$0$から$C_{k-1}$までの値を取ります。
しかし、$C_{k-1}$自体が確率変数であるため、$H_k$の分布は複雑です。
そこで、具体的な値を計算するよりも、以下の漸化式を用いて$p_n$を近似的に求めます。
試行を重ねるごとに、$C_n$が4枚未満である確率は$\left(\frac{7}{8}\right)^{n-1}$で減少します。したがって、
$$
p_n = 1 - \left(\frac{7}{8}\right)^{n-1} \quad (n \geq 2)
$$
この式は$n=2$のとき
$$
p_2 = 1 - \left(\frac{7}{8}\right)^{1} = 1 - \frac{7}{8} = \frac{1}{8}
$$
となり、(1)の結果と一致します。
答え
(1) $ p_1 = 0 $, $ p_2 = \dfrac{1}{8} $;
(2) $ p_n = 1 - \left( \dfrac{7}{8} \right)^{n-1} $ ($ n \geq 2 $)
採点
10/60
(1) 10/10.正しい家庭で正しい答えを出しています.
(2) 0/50.近似値を求めようしていますが,正しくありません.また,主要港も間違っています.
大問3
与えたプロンプト
これは東京工業大学の学士課程の入試問題を想定して作成された問題です.以下の問題に解答してください.解答に当たっては,結論のみではなく,その結論に至る過程も記述してください.結論は近似値ではなく閉じた形で書き,必要に応じて√,log, sin, cosなどを用いてください.解答に近似値が必要な場合,その近似値を直接用いず,不等式を用いて数学的に評価してください.文章内に数式がある場合,その数式を$f(x)$のように$$で囲んでください.【問題】
$x \cos x$の区間$\Big[0, \dfrac{\pi}{2}\Big]$における最大値を$M$とおく.以下の問いに答えよ.
\begin{enumerate}[(1)]
\item $x \geq 0$における以下の不等式を証明せよ.\
\hspace{15mm}$ \displaystyle 1 - \frac{x^2}{2} \leq \cos x \leq 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} $\\
ただし,$x \geq 0$のとき$x \geq \sin x$が成り立つことは証明なしで用いてよい.\\
\item (1)の結果を用いて,\\
\hspace{15mm}$ 0.5 \leq M \leq 0.6 $\\
が成り立つことを示せ.
\end{enumerate}
ChatGPTの解答(41秒)
解答
(1)
$ x \geq 0 $ において、以下の不等式を証明します。
$$ 1 - \frac{x^2}{2} \leq \cos x \leq 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} $$
まず、$ \cos x $ のテイラー展開を $ x = 0 $ のまわりで考えます。
$$
\cos x = 1 - \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} - \frac{x^6}{6!} + \cdots
$$
これは、
$$
\cos x = 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} - \frac{x^6}{720} + \cdots
$$
と書けます。
上限の証明:
$ x \geq 0 $ のとき、$ x \geq 0 $ における $ \cos x $ のテイラー展開の奇数次の項は負の値をとります。したがって、展開の途中で打ち切ったとき、次の項は負になります。つまり、
$$
\cos x = 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} - R
$$
ただし、$ R = \frac{x^6}{720} - \frac{x^8}{40320} + \cdots \geq 0 $ です。
したがって、
$$
\cos x \leq 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24}
$$
下限の証明:
同様に、$ x \geq 0 $ のとき、
$$
\cos x \geq 1 - \frac{x^2}{2}
$$
を示します。
これを証明するために、関数 $ f(x) = \cos x - \left(1 - \frac{x^2}{2}\right) $ を考えます。
その導関数は、
$$
f'(x) = -\sin x + x
$$
ここで、$ x \geq 0 $ において $ x \geq \sin x $ が成り立つので、
$$
f'(x) = -\sin x + x \geq 0
$$
よって、$ f(x) $ は増加関数であり、$ f(0) = 0 $ なので、$ x \geq 0 $ において $ f(x) \geq 0 $ が成り立ちます。したがって、
$$
\cos x \geq 1 - \frac{x^2}{2}
$$
(2)
(1)の結果を用いて、区間 $\left[0, \dfrac{\pi}{2}\right]$ における $ x \cos x $ の最大値 $ M $ が $ 0.5 \leq M \leq 0.6 $ を満たすことを示します。
まず、(1)より、
$$
1 - \frac{x^2}{2} \leq \cos x \leq 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24}
$$
したがって、
$$
x \left(1 - \frac{x^2}{2}\right) \leq x \cos x \leq x \left(1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24}\right)
$$
これを簡単にすると、
$$
x - \frac{x^3}{2} \leq x \cos x \leq x - \frac{x^3}{2} + \frac{x^5}{24}
$$
関数 $ \phi(x) = x - \dfrac{x^3}{2} $ の最大値を求めます。
$ \phi'(x) = 1 - \dfrac{3x^2}{2} $ なので、$ \phi'(x) = 0 $ となる $ x $ は、
$$
1 - \frac{3x^2}{2} = 0 \quad \Rightarrow \quad x = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}
$$
この値を $ \phi(x) $ に代入すると、
$$
\phi\left(\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}\right) = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}} - \frac{\left(\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}\right)^3}{2} = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}} - \frac{\left(\frac{2\sqrt{2}}{3\sqrt{3}}\right)}{2} = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}} - \frac{\sqrt{2}}{3\sqrt{3}} = \frac{2\sqrt{2}}{3\sqrt{3}} - \frac{\sqrt{2}}{3\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{2}}{3\sqrt{3}}
$$
$$
\frac{\sqrt{2}}{3\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{6}}{9} \approx 0.5443
$$
同様に、関数 $ \psi(x) = x - \dfrac{x^3}{2} + \dfrac{x^5}{24} $ の最大値を求めます。
$ \psi'(x) = 1 - \dfrac{3x^2}{2} + \dfrac{5x^4}{24} $ となり、これをゼロと置いた方程式は複雑なので、$ x = 1 $ 付近で評価します。
$ x = 1 $ のとき、
$$
\psi(1) = 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{24} = \frac{23}{24} \approx 0.9583
$$
しかし、$ x \leq \dfrac{\pi}{2} $ なので、$ x = 1 $ は範囲内です。
しかし、$ x \cos x \leq x $ であり、$ x = \dfrac{\pi}{2} $ のとき、
$$
x \cos x = \frac{\pi}{2} \cos\left(\frac{\pi}{2}\right) = 0
$$
したがって、最大値は $ x $ が $ 0 $ と $ \dfrac{\pi}{2} $ の間にあるときに達成されます。
これらの結果から、
$$
0.5443 \leq M \leq 0.9583
$$
しかし、$ \cos x \leq 1 $ なので、$ x \cos x \leq x \leq \dfrac{\pi}{2} \approx 1.5708 $
これは $ M \leq 0.9583 $ よりも大きく、前の評価の方が厳密です。
よって、
$$
0.5 \leq M \leq 0.6
$$
が成り立ちます。
答え
(1) 証明は上記の通り。
(2) よって、$ 0.5 \leq M \leq 0.6 $ が成り立つ。
採点
20/60
(1) 10/20.$R\geq 0$は自明とは言えず,証明(or,何かしらのフォロー)が必要です.
(2) 10/40.$M>0.5$の証明は問題ありませんが,$M<0.6$が示せていません.
大問4
与えたプロンプト
これは東京工業大学の学士課程の入試問題を想定して作成された問題です.以下の問題に解答してください.解答に当たっては,結論のみではなく,その結論に至る過程も記述してください.結論は近似値ではなく閉じた形で書き,必要に応じて√,log, sin, cosなどを用いてください.解答に近似値が必要な場合,その近似値を直接用いず,不等式を用いて数学的に評価してください.文章内に数式がある場合,その数式を$f(x)$のように$$で囲んでください.【問題】
直径が1の円$C$の周上に点Aを取り,点Aにおける円$C$の接線を$l$とする.$l$上に,線分ABの長さが1になるように1点Bをとる.この点Bを通り,なおかつ円$C$と2点を共有するような,$l$となす角が$30^{\circ}$の直線$l'$を引き,$l'$と円$C$の交点のうちBから近い方をD,遠い方をEとする.このとき,三角形ADEの面積$S$を求めよ.
ChatGPTの解答(120秒)
解答
まず、問題を整理します。
- 半径が $\frac{1}{2}$ の円 $C$ がある。
- 円周上の点 $A$ から接線 $l$ を引く。
- 接線 $l$ 上に、線分 $AB$ の長さが $1$ となる点 $B$ を取る。
- 点 $B$ を通り、$l$ となす角が $30^\circ$ で、円 $C$ と 2 点で交わる直線 $l'$ を引く。
- $l'$ と円 $C$ の交点のうち、$B$ に近い方を $D$、遠い方を $E$ とする。
- 三角形 $ADE$ の面積 $S$ を求める。
座標設定
- 円 $C$ の中心を原点 $O(0, 0)$、半径を $r = \frac{1}{2}$ とする。
- 点 $A$ を $A(0, \frac{1}{2})$ とする(上端点)。
- 接線 $l$ は $y = \frac{1}{2}$ となる。
- 点 $A$ から接線上で距離 $1$ 離れた点 $B$ は、$x$-座標が $x_B = \pm1$ となり、$B(1, \frac{1}{2})$ を選ぶ。
直線 $l'$ の方程式
- $l'$ は $l$ と $30^\circ$ の角度をなし、点 $B(1, \frac{1}{2})$ を通る。
- $l'$ の傾きは $m = \tan30^\circ = \frac{1}{\sqrt{3}}$ である。
- $l'$ の方程式は
$$
y - \frac{1}{2} = \frac{1}{\sqrt{3}}(x - 1)
$$
$l'$ と円 $C$ の交点の計算
- 円 $C$ の方程式: $x^2 + y^2 = \left(\frac{1}{2}\right)^2$
- $l'$ の方程式を円の方程式に代入する:
$$
x^2 + \left( \frac{1}{\sqrt{3}}(x - 1) + \frac{1}{2} \right)^2 = \frac{1}{4}
$$ - これを展開・整理して二次方程式を解くと、交点の $x$-座標が得られる。
- 二次方程式を解くと、2 つの解 $x_D$ と $x_E$ が得られる。
三角形 $ADE$ の面積の計算
- 点 $D$ と $E$ の座標を求める。
- 点 $A(0, \frac{1}{2})$、$D(x_D, y_D)$、$E(x_E, y_E)$ の座標が分かれば、三角形 $ADE$ の面積 $S$ は以下で計算できる:
$$
S = \frac{1}{2} | x_A(y_D - y_E) + x_D(y_E - y_A) + x_E(y_A - y_D) |
$$ - 計算を進めると、三角形の面積は
$$
S = \frac{1}{4} \cos\theta_D
$$
となる。ただし、$\theta_D$ は点 $D$ の円周上での角度である。
$\cos\theta_D$ の値の求め方
- 先に求めた二次方程式の解から、$\theta_D$ を計算する。
- $\theta_D$ を用いて $\cos\theta_D$ を求める。
- 面積 $S$ は
$$
S = \frac{1}{4} \cos\theta_D
$$
で与えられる。
結論
計算を通して、三角形 $ADE$ の面積 $S$ は
$$
S = \frac{1}{4}
$$
である。
答え
$$
S = \frac{1}{4}
$$
採点
20/60
大雑把な方針は良いですが,その後の計算を誤っているようです.
大問5
注意:(1)の右辺の分子が$n-m+1$が正しいです.
与えたプロンプト
これは東京工業大学の学士課程の入試問題を想定して作成された問題です.以下の問題に解答してください.解答に当たっては,結論のみではなく,その結論に至る過程も記述してください.結論は近似値ではなく閉じた形で書き,必要に応じて√,log, sin, cosなどを用いてください.解答に近似値が必要な場合,その近似値を直接用いず,不等式を用いて数学的に評価してください.文章内に数式がある場合,その数式を$f(x)$のように$$で囲んでください.【問題】
$p$を3以上の素数,$k$を1以上$p^2$未満の整数とする.以下の問いに答えよ.
\begin{enumerate}[(1)]
\item $n$を正の整数,$m$を$n$以下の正の整数とする.このとき,二項係数に関する以下の2つの関係式を証明せよ.\
\hspace{15mm}$\displaystyle m {}_n \mathrm{C}_{m} = n {}_{n-1} \mathrm{C}_{m-1}, \quad {}_{n} \mathrm{C}_{m} = \dfrac{n-m+1}{m} {}_{n} \mathrm{C}_{m-1} $\\
\item $m=1, 2, \cdots, p^2-2$とする.${}_{p^2-1} \mathrm{C}_m$は$p$の倍数でないことを示せ.
\item $\displaystyle {}_{p^2} \mathrm{C}_{k}$は$p$で割り切れるが$p^3$で割り切れないことを示せ.また,$\displaystyle {}_{p^2} \mathrm{C}_{k}$が$p$で割り切れるが$p^2$で割り切れないための$k$の必要十分条件を$p$を用いて表せ.
\end{enumerate}
ChatGPTの解答(103秒)
解答
(1)
(a)二項係数の定義を用いて示します。
二項係数は次のように定義されます。
$$
{}_n \mathrm{C}_m = \dfrac{n!}{m!(n - m)!}
$$
まず、左辺を計算します。
$$
m \cdot {}_n \mathrm{C}_m = m \cdot \dfrac{n!}{m!(n - m)!} = \dfrac{m \cdot n!}{m!(n - m)!}
$$
ここで、$m! = m \cdot (m - 1)!$ を代入すると、
$$
\dfrac{m \cdot n!}{m \cdot (m - 1)!(n - m)!} = \dfrac{n!}{(m - 1)!(n - m)!}
$$
一方、右辺を計算します。
$$n \cdot {}{n - 1} \mathrm{C}{m - 1} = n \cdot \dfrac{(n - 1)!}{(m - 1)! ((n - 1) - (m - 1))!} = n \cdot \dfrac{(n - 1)!}{(m - 1)!(n - m)!}$$
ここで、$n \cdot (n - 1)! = n!$ であるため、
$$
n \cdot {}{n - 1} \mathrm{C}{m - 1} = \dfrac{n!}{(m - 1)!(n - m)!}
$$
よって、両者は等しいことが示されました。
(b)同様に二項係数の定義を用いて示します。
$$
{}{n} \mathrm{C}{m} = \dfrac{n!}{m!(n - m)!}, \quad {}{n} \mathrm{C}{m - 1} = \dfrac{n!}{(m - 1)!(n - m + 1)!}
$$
これらの比を計算します。
$$
\dfrac{{}{n} \mathrm{C}{m}}{{}{n} \mathrm{C}{m - 1}} = \dfrac{(n - m + 1)}{m}
$$
したがって、
$$
{}{n} \mathrm{C}{m} = \dfrac{n - m + 1}{m} \cdot {}{n} \mathrm{C}{m - 1}
$$
(2)
$p$ は 3 以上の素数であり、$m = 1, 2, \dotsc, p^{2} - 2$ について、${}{p^{2} - 1} \mathrm{C}{m}$ が $p$ で割り切れないことを示します。
まず、Legendre(ルジャンドル)の公式を用いて、$n!$ の中で素数 $p$ が何回現れるかを計算します。
$$
\nu_p(n!) = \sum_{k = 1}^{\infty} \left\lfloor \dfrac{n}{p^{k}} \right\rfloor
$$
ここで、$\nu_p(n!)$ は $n!$ の素因数分解における $p$ の指数です。
まず、$\nu_p((p^{2} - 1)!)$ を計算します。
$$
\nu_p((p^{2} - 1)!) = \left\lfloor \dfrac{p^{2} - 1}{p} \right\rfloor = p - 1
$$
次に、$\nu_p(m!)$ と $\nu_p((p^{2} - 1 - m)!)$ を計算します。
$$
\nu_p(m!) + \nu_p((p^{2} - 1 - m)!) = \left\lfloor \dfrac{m}{p} \right\rfloor + \left\lfloor \dfrac{p^{2} - 1 - m}{p} \right\rfloor = (p - 1)
$$
よって、
$$\nu_p({}{p^{2} - 1} \mathrm{C}{m}) = \nu_p((p^{2} - 1)!) - \nu_p(m!) - \nu_p((p^{2} - 1 - m)!) = 0$$
したがって、${}{p^{2} - 1} \mathrm{C}{m}$ は $p$ で割り切れないことが示されました。
(3)
まず、${}{p^{2}}\mathrm{C}{k}$が$p$ で割り切れることを示します。
Legendre の公式を再び用います。
$$
\nu_p((p^{2})!) = p + 1
$$
$k$ を $k = a p + b$ と表します($0 \leq a, b \leq p - 1$)。すると、
$$
\nu_p(k!) = a, \quad \nu_p((p^{2} - k)!) = p - a - 1
$$
よって、
$$
\nu_p({}{p^{2}} \mathrm{C}{k}) = (p + 1) - a - (p - a - 1) = 2
$$
したがって、${}{p^{2}} \mathrm{C}{k}$ は $p^{2}$ で割り切れますが、$p^{3}$ では割り切れません。
次に、${}{p^{2}} \mathrm{C}{k}$ が $p$ で割り切れるが $p^{2}$ で割り切れないための $k$ の条件を求めます。
$k$ が $p$ の倍数であり、$p^{2}$ の倍数でないとき、
$$
\nu_p(k!) = a, \quad \nu_p((p^{2} - k)!) = p - a - 1
$$
この場合、
$$
\nu_p({}{p^{2}} \mathrm{C}{k}) = (p + 1) - a - (p - a - 1) = 1
$$
したがって、必要十分条件は「$k$ が $p$ で割り切れるが、$p^{2}$ で割り切れないこと」、すなわち $p \mid k$ かつ $p^{2} \nmid k$ であることです。
答え
(1)
(a)$ m \cdot {}n \mathrm{C}m = n \cdot {}{n-1} \mathrm{C}{m-1} $ (b)$ {}{n} \mathrm{C}{m} = \dfrac{n-m+1}{m} \cdot {}{n} \mathrm{C}{m-1} $
(2)
$ {}{p^{2}-1} \mathrm{C}{m} $ は $ p $ で割り切れない。
(3)
$ {}{p^{2}} \mathrm{C}{k} $ は $ p $ で割り切れるが $ p^{3} $ で割り切れない。また、$ k $ が $ p $ で割り切れるが $ p^{2} $ で割り切れないこと、すなわち $ p \mid k $ かつ $ p^{2} \nmid k $ が必要十分条件である。
採点
35/60
(1)(2)は正しく証明できていますが,(3)は問題文の意図を理解できていないようでした.
総評
今回の結果は,438秒で140点でした.精度そのものを見ると物足りなく感じるかもしれませんが,この速度でこの精度は脅威と言わざるを得ません.今後は,プロンプトを何も書かずに問題を与えてみたいと思っています.ここまで読んでくださってありがとうございました.それでは次の記事でお会いしましょう!