Meta製VRゴーグル3種を徹底比較!
こんにちは、シンフォニア株式会社の小川です。
当社では小型移動式クレーンVR訓練システムや、SPORTS VR TRAINERシリーズ等のVRシステム、及び(アプリ連動)感電デバイス「UNAGI」等を開発しています!
また、受託にてXRアプリケーションや、センサ連動型アプリケーション、スマートフォンアプリケーションなどを開発しております。
詳しい情報は当社HPをご覧ください。
https://sinfonia.biz/
今回の記事では、Meta Quest 3の発売から早2ヶ月半経過したということで、この機会に各ゴーグルの性能や機能、クセなどを比較しております。
可能な限りカタログスペックベースで比較していますが、使用感などは筆者の主観で判定しているところが多々あります。予めご承知おきください。
これからVRゴーグルに手を出そうと思ってるよ!だったり、過去のゴーグル持っててそろそろ買い換えようかと思ってるよ!という人にとって有益な記事になる……はずです。
ちなみに中の人は、大体週2~30時間程Quest 2を装着して仕事しています。VR内で働くことについても記事を執筆しているので、そちらをご覧ください!
「本当にVRの中で働けるの?Immersed使ってみた」
https://qiita.com/Sinfonia_Ogawa/items/86df8b6ab5afee5cbc3f
スペック表
下記にカタログスペックの比較表を掲載します。重要そうなところだけ抜粋しておりますので、全ての仕様が知りたい方はMetaのHPをご覧ください。
(出典:https://www.meta.com/jp/quest/compare/ )
機種名 | Meta Quest 2 | Meta Quest 3 | Meta Quest Pro |
---|---|---|---|
SoC | △ Snapdragon XR2 Gen1 | ◎ Snapdragon XR2 Gen2 | ◯ Snapdragon XR2+ Gen1 |
RAM | △ 6GB | ◯ 8GB | ◎ 12GB |
ディスプレイ | △ 1832 x 1920 773 PPI |
◎ 2064 x 2208 1218 PPI |
◯ 1800 × 1920 1058 PPI |
FOV | △ 90度(水平および垂直) | ◎ 110度(水平)/96度(垂直) | ◯ 106度(水平)/96度(垂直) |
光学系 | △ フレネルレンズ、3位置IAD調整 | ◯ パンケーキレンズ、連続IAD調整 | ◯ パンケーキレンズ、スライダーによる連続IAD調整 |
フェイス・アイトラッキング | ✕ | ✕ | ◯ |
コントローラー | △ Touchコントローラー | ◯ Touch Plusコントローラー | ◎ Touch Proコントローラー |
パススルー | △ グレースケール | ◎ カラー(4MP、18 PPD) | ◯ カラー(1MP、8 PPD) |
価格(税込、最安のモデル) | ¥39,600 | ¥74,800 | ¥159,500 |
機能比較
それぞれの機能について比較していきます。
SoC
SoC(いわゆるCPUはGPUに当たるもの)については性能順に、Quest 3 > Pro > Quest 2 となっています。
普段アプリを動作させるうえで顕著な違いは感じづらいですが、特にQuest2→3に変えたときに重めのアプリでフレームレートの向上などが感じられます。
また、Quest3に搭載されているSnapdragon XR2 Gen2については、カメラセンサの接続可能数が増えたことで高性能のフルカラーパススルーが実現できたり、AI機能を利用したルームマッピングなど、性能向上以外の、機能そのものを実現することに寄与しています。
RAM
RAMは多い順に、Pro > Quest 3 > Quest 2 となっています。
シンプルにRAMは多いほうが良い!ただ体感だと分かりづらいのも確かです。
特にPCVRで動作させるときより、スタンドアロンで動作させるときのほうが、アプリの応答性が良いなどの恩恵を受けることが出来ます。
ディスプレイ、FOV、光学系
ディスプレイ周りは単なる解像度の差等だけでは語りきれない範囲があるので、ディスプレイ、FOV、光学系をまとめて評価します。
私の評価は、Quest 3 > Pro > Quest 2 です。
まず、Quest 3及びProと、Quest 2では、ディスプレイを見るために採用されているレンズが、パンケーキレンズとフレネルレンズという差があります。
Quest 2には「フレネルレンズ」という、同心円状に分割して、レンズとしての厚みを減らしたノコギリ状の断面を持つレンズが搭載されていますが、やはり厚みがそこそこあり、不格好なだけでなく前後の重量バランスを悪くする一員になっていました。
Quest 3及びProには、様々な偏光版や波長板を重ねて光を折り返すことで焦点距離の長さを確保するパンケーキレンズが採用されており、VRゴーグル本体の厚みが薄くなっています。前後の重量バランスが改善し、使い勝手が大幅に向上している印象です。
左がQuest 2で右がQuest 3を上から見た写真です。ぱっと見分かりづらいですが、白い部分の面積が大幅に減っていることが分かるかと思います。この白い部分にレンズが埋め込まれており、Quest 3ではパンケーキレンズを使用し、サイズが小さくなったことが要因です。
また、解像度、並びにFOV(視野角)の向上により、特にQuest 3は装着したときに、「おっ、きれいじゃん」と感じるレベルの仕上がりになっています。感じ方は人ぞれぞれだと思いますが、100人居たら100人がQuest 3の方をキレイだと言うと思っています。それくらい違います。
余談ですが、筆者がRift SからQuest 2に乗り換えた時も同じ感情を抱きました。VRゴーグルの進化が日進月歩だということを実感できますね。
フェイス・アイトラッキング
MetaのVRゴーグルの中で、フェイズトラッキング、並びにアイトラッキングに対応しているのはQuest Proのみとなります。Quest2、3には搭載されていません。
通常のVR使用のみであれば特段困ることはないのですが、コミュニケーションアプリ(VRChat等)を使用する場合にフェイストラッキングやアイトラッキングがあったほうが、より細かな表情が伝わりやすくなるという利点があります。
また、当社が開発しているようなVRトレーニングコンテンツ等の場合、どこを見ているか判定することが非常に重要な要素となる場合があります。
例えば、安全運転のVR訓練を作成したい場合に、アイトラッキングがないと、VR内で標識や歩行者を注視しているかどうかの判断が難しくなります。
用途は限られるかもしれませんが、フェイストラッキングやアイトラッキングを使用したアプリをMetaシリーズのVRゴーグルで開発する際には、Quest Pro以外の選択肢が無いのというのが現状です。
余談ですが、Quest Proで取得できる顔のパーツの動作は下記の通りです。
(参照URL:https://note.com/npaka/n/n71d56a603ad8 )
- 眉
- まぶた
- 目
- 頬
- えくぼ
- 鼻
- 口
- 舌
- 顎
(当社でも受託でQuest Pro、及びアイトラッキング、フェイストラッキングを使用したアプリも開発しております!)
コントローラー
コントローラーは Quest Pro > Quest 3 > Quest 2 という評価です。
(左からQuest 2, Quest 3, Proのコントローラーです。こうやって見ると、リングの有り無しくらいで、本体サイズはそこまで変わっていないことがよく分かりますね)
Quest ProのコントローラーはTouch Proコントローラーという名前で、こいつの性能がとにかく良い!本当に強い!最強!
Touch Proコントローラーはコントローラー側にカメラが付いており、VRゴーグルからコントローラーが見えない位置にあっても、コントローラー側のカメラを使用してトラッキングを継続してくれます。
当社の「VR SPORTS TRAINER SOCCER COGNITIVE TRAINING」という、サッカーの認知・判断力トレーニングでは、VRコントローラーを足に着けて、VR内でボールを蹴るという動作を実現しています。
当初はQuest 2用Touchコントローラーで実装を検討していましが、足にコントローラーを装着するとトラッキングが外れてしまうという問題が発生しました。
そこで、Touch Proコントローラー(コントローラー単体で買い、ペアリングすることでQuest 2,3でも使用可能です)を使用したところ、見事にトラッキングが外れること無く、VR内でボールを蹴る動作を実装することが出来ました。Touch Proコントローラー単体だけでも十分に性能を発揮できるので、本当におすすめです!
Quest 3用のTouch Plusコントローラーは、Quest 2のTouch コントローラーより軽量で、かつトラッキングの性能も上がっていると実感できる仕上がりになっていました。また、Quest 3のトラッキング可能範囲がどうやら広がっているようでそれと併せて、特に膝下や脇下でもそこそこトラッキングしてくれる印象です。どうやら、機械学習を用いた位置推測が働いているらしく、それの恩恵かなというような感じです。
ただ、Quest 2のTouchコントローラーにも他には無い良い点があります。こいつは自立してくれます。
(ネタっぽくしてるけど、Quest 3のコントローラーって結構机から落ちるんですよね…)
パススルー
巷で一番騒がれているのが、このパススルーに関してではないでしょうか。
パススルーの機能は、Quest 3 > Pro >>>> Quest 2 という評価です。
下記がパススルーの比較画像です。社内の大体同じ場所で撮影しています。少し撮影範囲が異なりますがご了承ください。
まず、Quest 2と他の2機種では、パススルーについてグレースケール(白黒)と、フルカラーという大きな差があります。
グレースケールのパススルーでは出来ることが大きく限られます。MRアプリも使えないし、外部環境も最低限しか分かりません。MRを使用したいのであれば、Quest 2は選択肢から外れることになります。
次に双方ともフルカラーパススルーである、Quest 3とProについてですが、性能的にはQuest 3に軍配が上がります。スペック的に見ると、Quest 3はProの約3倍の高解像度で体験できることになりますが、こちらも肉眼で見て判別が付く程度には違いがあります。
色味は好みによりますが、Quest 3の方が暖色系、Proの方が寒色系に見て取れます。色の再現度でも、Quest 3に分があるように感じます。
ただし、Quest Proのパススルーも決して劣っているわけではありません。必要最低限のフルカラーは備えていると感じますし、Quest 2を使用している方から見ると相当良い仕上がりに見えるはずです。
ただ、費用的にQuest Proの方が高額なこと、そしてQuest 3の方がパススルーがキレイに見えることを加味すると、Quest Proを「フルカラーパススルーを使用するためのVRゴーグル」として買う価値はないという結論になります。
また、Quest 3が屋外で使えるようになったという情報がありますが、こちらは正確に言うと「トラッキング性能が上がった結果、屋外のトラッキングが多少可能になった」というのが正しい気がします。
未だに直射日光が少しでもゴーグルに当たると(絶対に真似しないでください)、トラッキングを失いますし、基本は屋内、仮に屋外だとしても直射日光に当たらないことを徹底しましょう。
価格
価格はQuest 2が¥39,600、Quest 3が¥74,800、Quest Proが¥159,500と大きな違いがあります。
(2024年1月5日追記 2024年より正式にQuest 2が¥39,600に値下げになりましたので修正しました。)
特にQuest Proについては、Quest 3が2台購入できる価格ということもあり、家庭で使うユーザー向けでないことが分かります。
その点、Quest 3については、Quest 2からの乗り換え先というだけではなく、よりリッチなVRやMRを楽しみたい方に対して手の届きやすい価格設定になっています。
(余談ですが、原材料費ベースで見ると、Quest 3自体で利益はほとんど取っていないように思われます)
その他
スピーカーサウンド
Quest 3がとても優秀で、スピーカーめっちゃ良くなってます。低音域から高音域まで全てクリアに聞こえますし、VR内での定位感もはっきり聞こえます。
デフォルトのストラップ(頭に装着するやつ)
Quest 3ストラップの進化を感じた……!
Quest 2のストラップは頭頂部のバンドが1本しかないから安定しづらかったんですけど、それが2本に増えたことでめちゃくちゃ安定するようになりました!
(どちらにしろ、純正、サードパーティ製問わず、Eliteストラップを買うことを強くおすすめします。)
Quest ProのみデフォルトでEliteストラップ的なものが付いてきます。こちらはおでこと後頭部で留めるタイプで個人的には使いやすく感じました。
充電器
Quest Proの充電器かっこよすぎだろ!
ちなみにQuest 3はUSB Type-Cのポートの場所がここになってるけど、これストラップの調整に合わせて動くんですよね、地味にすごい機構だ(逆側には3.5mmジャックが付いています、これもすごい)。
ハンドトラッキング
Quest 3のハンドトラッキングの性能がとても良いです。MRのアプリ開発が捗りそう。
Quest Link
これは完全に体感でもしかしたら全然違いがないのかもしれませんが、Quest 3がQuest 2と比較してQuest Link(PCVR)が途切れにくいように感じました。
ただこれはデータとか無いです。本当に体感でしかないので鵜呑みにしすぎないよう…
結局どれ買えばいいの?
Quest 2→万人におすすめできる入門モデル
とにかく安くそこそこのVRを楽しみたい!という人は、Quest 2で十分です。
所謂デファクトスタンダードなこのモデルは、VR入門機として最適。尚且つ、今後もう少しヘビーな使い方をしたい…!というタイミングが来たとしても、PCVRを併用することで、それに耐えうるだけの能力を持っています。
そして何より安い、これが一番の理由になる人もたくさんいるでしょう。2023年12月28日現在、Metaの公式サイトでは、値引きも入って¥39,600で購入することが可能です(正規価格は¥47,300)。
筆者が友人に「これからVR始めたいけど何買えばいい?」と聞かれたときには迷わずQuest 2をおすすめしています。
もちろん筆者も愛用機です(Quest 3がもう少し安くならない限り)。
Quest 3→VR経験者だけと言わず、全人類に試して欲しい非常におすすめなモデル
Quest 2からの買い替えだけではなく、最新の技術に触れたい!という人にもおすすめなのがQuest 3。
フルカラーパススルーだけではなく、液晶やコントローラーなど、様々な面でのバージョンアップの恩恵を受けることの出来る機種です。
筆者がもし今Quest 2を持っていなかったとして、VRゴーグルを買うとしたらQuest 3を間違いなく選ぶでしょう。実際に試さないと分からない感動がそこにはあります。
Quest 3を購入してまず試していただきたいのは、Metaが開発したチュートリアルアプリの「First Steps」。Quest 3で出来ることをアプリ内で示してくれます。壁をマッピングしてポータルが出来るシーンなんて、本当に感動モノです。
Quest 2と比較すると少々お値段は張りますが、それでも是非購入して欲しいデバイスに仕上がっています。
Quest Pro→アイトラッキング・フェイストラッキングが必要な人にはこれ一択
上記2機種と違って万人におすすめできないのがQuest Pro。性能はもちろん良いのですが、それ以上に価格が大きなネックとなっています。
ではどこの層におすすめできるのか…?それはズバリ、「アイトラッキング・フェイストラッキング」を使用したい方々です。
例えば、VRChatを普段から使用しているユーザーで、表情もVR内で伝えたい!という場合がありますよね?そんなときに最適なのがQuest Proです。VRCFaceTrackingというアプリを使用することで、VRChat内でフェイストラッキングやアイトラッキングを有効にすることが可能です。
仮想空間内でのコミュニケーションにおいて難しいことの一つに、「相手の感情を察知する」ことが挙げられます。現実では相手のささいなジェスチャーや表情から読み取ることも可能かもしれませんが、仮想空間内ではそうはいきません。
お互いにQuest Proを使用していれば、相手のちょっとした表情の変化を読み取り、現実世界のようなコミュニケーションが出来るようになるかもしれません。
そういう意味でQuest Proは、Metaが考える今後のVRコミュニケーションのあり方を、そして未来を示したデバイスなのかもしれませんね。
さいごに
本記事を読んだ方で、実際にVRゴーグル買ってみたよ!という方がいらっしゃいましたら、是非コメントください!
また、それぞれのVRゴーグルについての質問があればそちらもコメント欄までお寄せください!分かる範囲でご回答させていただきます!
お読み頂き、ありがとうございました!
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