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ADX + UE5で、BGMのテンポに合わせた演出を実装する(ver2改訂版)

Last updated at Posted at 2019-12-24

はじめに

ADXアンバサダーとして記事を書いておりますSigと申します。
この記事ではアンリアルエンジン5とサウンドミドルウェア「ADX for UE」を連携させ、BGMのビートに合わせてエフェクトやメッシュを操作する演出について実装します。

「ADX for UE」のBeatSyncイベントを使用すれば、簡単に楽曲のビート情報を取得することができます。

当記事ではUE5.2を使用します。基本的にブループリントのみでの実装を想定しています。
ADX for UEはインディー向けの「LE版」であれば、無料で使用できます。
https://game.criware.jp/products/adx-le/

前提

ADX for UEの導入や基本的な使い方は以下の記事にあります。必要に応じて参照してください。
ADX for UEの導入で、一歩上のサウンド表現を(導入編)

ADX for UEの導入で、一歩上のサウンド表現を(実践編)

実装

AtomCraftでマテリアルを準備

まずはAtomCraftでBGMとなるマテリアルを用意します。
マテリアルツリーに音源をドラッグアンドドロップして追加します。
A01.png

キューを新規に作成します。
ワークユニットツリーのキューシート上で右クリックし、「新規オブジェクト」→「キュー『ポリフォニック』の作成」を選択します。
A02.png
キューに名前をつけ、音源をトラック上にドラッグアンドドロップして配置します。
A03.png

ビート同期情報の設定

まずは必要な情報として、曲のBPMを確認します。
マテリアルツリーの目的の音源を選択して右クリックし、「BPM解析」を選択します。
A04.png
ログにBPM情報が出力されます。
A05.png
もしログウィンドウが見当たらない場合、ツールバーの「表示」→「メインビュー」→「ログ」を選択することで再表示が可能です。
A06.png

トラックリストの空欄で右クリックし、「新規オブジェクト」→「ビート同期情報の作成」をクリックします。
A07.png
「BeatSync」と書かれたマーカーが追加されます。
A08.png
「BeatSync」マーカーが選択された状態で、インスペクターの「BPM」に先ほど解析したBPMを入力します。
A09.png

キューシートのビルド

ここまで完了したらキューシートを書き出します。
A10.png
A11.png

UE4でセットアップ

UE4にキューシートをインポートします。acf、acbファイルをコンテンツブラウザ(コンテンツドロワー)の任意の場所にドラッグアンドドロップしてください。
acfファイルをインポートした際のダイアログでは、どちらもYesを選びます。
これにより、Atom Configファイルがプロジェクトに自動的に設定されます。
A01.png
A02.png
ふたつのアセットがインポートされました。
A03.png
念のため、キューシート内のキューが正常に再生できるか確認しておきましょう。
A04.png

レベル上にキューを配置すると、ゲーム開始時にBGMが再生されます。
A05.png

ブループリントからビートのタイミングを取得

レベルブループリントから、BGMのビート情報を取得してみましょう。
レベルに配置したキューを選択しておきます。
B01.png

「Open Level Blueprint」からレベルブループリントを開きます。
B02.png

レベルブループリントグラフ上の空いている場所で右クリックし、「Create a Reference to (キュー名)」を選択します。
B03.png

キューのリファレンスノードが作られます。
B04.png

リファレンスノードから線を引き出し、Get Atom Componentノードを作ります。
B05.png
B06.png

さらにGet Atom Componentノードから線を引き出し、
「Assign On Atom Sound Cue Beat Sync」を検索して配置します。
B07.png
B08.png

新規にノードとイベントノードが作成されました。適当に名前をつけます。
このイベントがBPMに合わせて呼ばれるものになります。
B09.png

Bind Event to On Atom Beat Sync CallbackノードにEvent BeginPlayから線をつなげます。これで、下にあるイベントがゲーム開始時に紐付けられることになります。
B10.png

この「イベントの紐づけ」に関して詳しく知りたい場合は「イベントディスパッチャー」を調べてみましょう。
(深く理解しなくても、このまま進めていけば当記事の内容は実装可能です)

テストとして、イベントからPrint Stringノードにつなげて実行してみましょう。
B11.png

実行してみると、BGMのテンポに合わせて画面左上に文字が表示されていくはずです。
B12.png

ビートに合わせて拡縮するリング

この処理を利用して、テンポに合わせて大きさが変わるオブジェクトを作ってみます。

コンテンツブラウザの任意の場所で右クリックし、「Blueprint Class」を選択して新規にアクターを作成します。
C01.png

親クラスは「Actor」を選択します。
C02.png

作成されたアクターに適当な名前をつけます。
C03.png

アクターをダブルクリックして開き、見た目となるコンポーネントを追加します。
画像では平面のStaticMeshにリングが描かれたマテリアルを適用しているだけです。
C04.png

AtomComponentも追加します。
C05.png
C06.png

AtomComponentを選択し、Detailsパネルで再生したいサウンド(キューシートを選択してからキューを選択)を指定しておきます。
C07.png

AtomComponentを右クリックし、「Add Event」→「Add OnAtomBeatSyncCallback」を選択してイベントを追加します。
C08.png

イベントグラフに自動的に移動し、BeatSync用のイベントが追加されたのが確認できます。
C09.png

リングの大きさを変化させる処理を書きます。
まずはコールバックイベントからつなげる処理です。
メッシュのコンポーネントをイベントグラフ上にドラッグ&ドロップして、**Get (見た目のコンポーネント名)**を配置します。
C10.png

そこから線を引き出しSet Relative Scale 3Dを置きます。これはアクター内で相対的なスケールを変えるものです。「New Scale 3D」にはとりあえず「3」を入力しておきます。
この処理により、ビートごとにリングの大きさが「3」倍に設定されます。
C11.png

次にTickイベントからの処理です。
コールバックイベント側とほぼ同じですが、少しだけ複雑になります。スケールの指定にはVInterp Toノードを使い、大きさが滑らかに変化するようにします。「Current」にはGet Relative Scale 3Dをつなげて現在の相対スケールを、「Target」には「1」を指定します。
「Delta Time」にはEvent Tickの「Delta Seconds」をつなげます。
「Interp Speed」にはひとまず仮で「5」を入れておきます。
これにより、Tick毎にリングの大きさは常に「1」倍に近づきます。
C12.png

ふたつのイベントからの処理により、常に1倍のスケールに近づくリングが、ビートのタイミングで3倍のスケールに再設定されるという仕組みができあがります。どう動くかは実際に見てみるのが早いと思います。

レベル上にアクターを配置します。
(最初にテスト用に置いていたキューは削除し、またエラーが出るのでレベルブループリントの内容も消しておきます)
C13.png

実行すると、ビートごとにリングの大きさが変わります。ライブシーンのエフェクトなどにも使える演出かもしれませんね。
C14.png

ビートに合わせて発光するマテリアル

ビートに合わせて発光するオブジェクトも作ってみます。
同様にアクターを作成し、
D01.png

合わせて新規にマテリアルを作成します。
コンテンツブラウザで右クリックし→「Material」を選択です。
D02.png
D03.png

作成したマテリアルをダブルクリックしてマテリアルエディタを開きます。
D04.png

キーボードの「3」キーを押しながらクリックすると3つのパラメータを持つノードが作られます。
「Emissive Color」につなげます。これでこのマテリアルが、外部から操作可能なパラメータに応じた色で発光するようになります。
D05.png

作成したノードを右クリックして「Conver to Parameter」をクリックします。
D06.png

ノードがパラメータ(変数)化されるので、「EmissiveColor」と名前をつけます。
D07.png

「Apply」を押して変更を確定します。
D08.png

アクターを開きます。
リングのときと同じように、見た目となるコンポーネントとAtomコンポーネントを追加します。今回は外観をSphereにしています。
D09.png

Atomコンポーネントには、忘れずに再生する音源を指定しておきます。
D10.png

イベントグラフに移動し、Event BeginPlayからCreate Dynamic Material Instanceノードを配置します。これはブループリントにより動的に操作可能なマテリアルを作成するものです。「Parent」には先ほど作成したマテリアルを指定します。
D11.png

青いアウトプットピン「Return Value」を右クリックし、「Promote to Variable」を選択します。
D12.png

これで作成した動的なマテリアルが変数化され、このブループリントからいつでも操作可能になります。今回は「DMI_SphereColor」と名前をつけました。
D13.png

外観となるSpehreコンポーネントのGetノードを作り、Set Materialノードで先ほど変数化したマテリアルを指定します。これでSphereにゲーム中に操作可能なマテリアルが適用されることになります。
D14.png

あとはリングの大きさを変えたように、コールバックイベントとTickイベント間で色を変えるだけです。
マテリアルの色を変えるにはSet Vector Parameter Valueノードを使います。まずGet DM_Colorを配置し、そこからノードを作成します。「Parameter Name」にはマテリアルのパラメータ名である「EmissiveColor」を入力します。
処理はOn Atom Sound Cue Beat Syncイベントノードからつなげましょう。
D15.png

色を数値で指定するには「Value」ピンから線を引き出し、Make Colorノードを置きます。
今回は青に「50」を指定しました。マテリアルの「EmissiveColor」は数値が大きいほどHDRにより発光して見えるので、かなり眩しく輝くはずです。
D16.png

Event Tick側にはまずGet DMI_SphereColorからのGetVectorParameterValueをつなげます。これで現在の色のパラメータ値を取得します。
D17.png

あとはSet Vector Parameter Valueと**Interpolate(LinearColor)**ノードを使用し、黒色が指定されるようにします。
「Interp Speed」はとりあえず「7」とします。「Delta Seconds」(黄緑色の線)も忘れずにつないでください。
D18.png

ノードの全体図はこんな感じです。うまく動かない場合、見比べてみてください。
D21.png

レベルに配置してテストしてみましょう。音楽が被って聞こえてしまうので、リングのアクターは取り除いておきます。
D19.png

実行すると、音楽に合わせて明滅します。
D20.png

参考リンク

今回の記事は、「ADX2 for UE4 LE」アップデートに伴い、過去記事の処理内容に当たるノードが追加されている旨の指摘をいただき作成しました。

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