それとも悪なのか?
このサービスが広まった先に待つのは善なのか?悪なのか?
こんにちは、Wtanabe Jin(@Sicut_study)です。
正直このサービスを作るかはものすごく迷いました。
このサービスが良いものとして扱われるのか、悪いものとして扱われるのか全く予想がつかないのです。仮に私が開発をやめたとしても、この記事を読んで同じサービスを生み出す人が現れるかもしれない。
しかし、この体験を通して伝えられることはエンジニア業界を変えるきっかけにつながるかもしれない。
今回は私が個人開発を通して感じた「これからのエンジニア」について話していきます。
全員が幸せになれる世界は作れるのか?
私は、母親からの突然のLINEに驚きました。
「日曜日の夜、覆面調査にいくから予定を開けておいて」
覆面調査・・・?
よくわからない予定を突然言われて何をするのか聞いてみると
サービスを開発・提供する事業者が「覆面調査」を導入する共通の目的は、商品やサービスの「提供状況」や「顧客満足度」を把握することです。 「覆面調査」の実施によって、次のようなメリットがあります。
顧客にねらい通りの満足を提供できていたのかの検証
開発・提供の時点では気付かなかった、サービス利用者の視点の確認
調査結果の分析による、選ばれる理由・改善すべき点の把握
「覆面調査」のこのようなメリットを通じてサービスの向上を図ることで、顧客満足度・顧客ロイヤルティが向上するだけでなく、従業員が顧客満足を実感できる機会が増えることで、従業員満足度の向上にもつながっていきます。
実際にはもっと雑でしたが、ざっくりこような説明を受けました。
数駅離れた居酒屋での調査を行うようです。
言われるがまま集合場所の居酒屋に向かいました。
覆面調査は従業員に秘密裏に行われるのでもちろん店内で怪しい行動などはできません。
事前に口酸っぱく母親から調査のやり方教え込まれました。
その日は日曜夜でしたが、居酒屋は満席。
調査なので店内やスタッフ接客を見つつ、好きなものを頼んでほどよくお酒も回ります。
ただ酔っているとはいえ、
「なぜわざわざ調査に協力するんだろう。気を使わないほうが楽しい」
そう考えていました。
しかし、会計を終えて気づきました。
ものすごい量の注文(私はお酒をかなり飲みます)したのにも関わらず会計はタダだったのです
正確に言うと、会計分の金額があとでキャッシュバックするのです。
「無料で飲食をする代わりに、調査に協力する仕組みなのか」
この仕組みを理解して、「覆面調査最高じゃん!たくさんやればお得」
そう考えました。おそらく誰もが体験したら思ってしまうでしょう。
しかし、たくさん調査できない理由があったのです。
覆面調査は調査募集に対してユーザーが申し込み選ばれます。
もし募集枠に対して多くの応募が来た場合は抽選となってしまいます。
抽選に当たらないとそもそも調査することができない仕組みとなっています。
人気店は必ずと言っていいほど抽選で、当選率はわずか数%。
そしてこの抽選は会員のランクで確率を大幅に上げることができます。
上のランクになれば、100%当選という権利を手に入れることもできるのです。
行列のできる有名店や高級店も無料で行ける可能性すらあるのです!!
では、ランクを上げるにはどうすればいいのか?
調査を何回行ったかでランクは徐々に上がっていきます。
つまり最初は抽選が当たりやすい地方の調査に協力してランクを上げていくのが戦略になります。私の母は一人で趣味として調査をしていたようで、かなり高いランクになっていました。
次に起こる問題が、調査結果を提出するのが大変ということです。
調査結果を書くアンケートは50問以上の設問に回答する必要があります。
その中には自由記述(150文字以上)も多くあり、書くのがかなり大変です。
記事を600本投稿してライティングに自信のある私でも30分ほどかかりました。
なんと母はアンケートの回答に10時間もかけていたのです。
さぞ立派な文章を書いているのかと思うかもしれませんが、ユーザーのランクの「アンケートが参考になったか」の項目は著しく評価が低いものでした。
書きたいことはあるんだけど文章にするのが苦手で提出ギリギリになってしまうらしいです。30分で書いた私の文章と比較しても差は歴然でした。
しかい、今起きているのはこんな状況した。
誰も幸せになっていない!!!!!
アンケートをもっと楽に伝えたいことを的確に文章にすることができれば、この問題は解決します。私はエンジニアなので、問題をプログラミングを駆使して解決することにしました。
いまはAIが発展しているので、簡単に文章を作ることができます。
文章を作ることを自動化することで、この問題は簡単に解決することが可能です。
Win-Winの未来はすぐそこです。
しかし、やり方を間違えるとこのシステムは悪にもなってしまいます。
もし質問項目だけで完全自動化してしまうと、調査アンケートがお店側からすると嘘の情報になってしまいます。このシステムで実現することは文章を構成する部分だけを自動化することが大切です。
AIもかなり進化していて、人が書かいたかAIが書いたか、見分けるのは困難になってきました。飲食業界の方であればよっぽど難しいでしょう。
本気でプロンプトを考えて使えるようにすれば、質問だけでも"それっぽい"回答を生成することは可能です。もしこれをしてしまうとこのサービスはグレーなシステムとなってしまい、調査会社や飲食店にも迷惑をかけることになります。
あくまで伝えたいことを的確に伝えるために使う補助ツールという立ち位置でなければなりません
善になるか悪になるか。そんな個人開発が始まるのでした。
アイデアは日常に眠っている
「アイデアが思いつきません」
私はプログラミングコーチングJISOUという現役専門のプログラミングスクールを運営しているのでよく聞きます。そしてこの悩みは駆け出しエンジニアだけでなく、最前線を走るエンジニアでさえ同じことを言います。
プログラミングスキルを身につけるには「アウトプット」が大切になっていきます。
そんなアウトプットも「作るもの」がなければできません。
作るものがない、つまりアイデアがないからアウトプットができない人は多いようです。
アイデアは日常にたくさん眠っているのに、多くの人が気づかずに生活しています
アイデアとは「誰かの悩みや問題を解決する助けをすること」なのです。
この定義で考えると、日常には問題がたくさんあふれています。
「アイデアが問題を解決することくらい知っているよ。でも見つからないんだ」
これもよくJISOUの中でよく相談を受けることです。
しかし、この問題は本気で周りに困り事や悩みがあるかを考えたことがないのが原因なのです。
あなたが最近買った高額なものはなんですか??
もしあなたが車を買ったとします。
車のような高額なものを買うときはおそらくパンフレットやYoutubeなどでたくさんの情報を仕入れたはずです。
すると普段どおりの世界の見え方は大きく変わります
いままで気にもしていなかった眼の前を走る車を気にして見てしまうのです。
「あ、あの車はカローラだ」
こんな感じで、知っている車があったり、かっこいい車があったらあとで調べたり、いままで気にしていなかった車というものを意識するようになります。
人は意識が3%しかなく、97%は無意識で動いています。
アイデアが生まれないのは、無意識的に問題を感じているけどキャッチできていないのです
先程の車の例は、車を買うというところから調べることによって車が無意識から意識へと昇格したことで、日常から情報を集めるようになったことで起きるのです。
アイデアも一度周りに種になるような問題がないかを考えることで見つけられるようになります。
私も覆面調査を経験して、母の抱える問題をキャッチしました。
そしてこの問題は覆面調査全体でも問題になっているのではないか?という仮設が生まれて個人開発のアイデアとなりました。
あとで話しますが、このアイデアを見つける能力は次世代のエンジニアに必要なスキルとなります。
実際にJISOUでもこの能力を早くから養ってもらい、ユーザーの問題を解決するちゃんとしたサービスを作ってもらっています。
駆け出しエンジニアや年収の低い状態からのキャリアアップを狙うのであれば、ポートフォリオはかなり重要になってきます。しかし、ほとんどのポートフォリオがユーザー価値につながらないですし、似たアプリが世の中にたくさんあったり、そもそもリリースされてなかったり、メンテナンスがされてないです。
日常の問題をプログラミングで解決することができれば、ポートフォリオとしても差別化になりますし、自分が作ったシステムでユーザーが喜ぶ姿をみることはやりがいのある瞬間です。
日常からアイデアをキャッチする能力はぜひ身につけてほしいと思います。私も最初はまったくできませんでした。しかし、いまでは簡単にキャッチして価値のあるサービス開発ができるようになりました。1日本気で考える経験をすれば誰でも意識に持っていくことが可能です。
せっかくならみんなで練習を
覆面調査をもっと良いものにするシステムをつくる
サービスを一人でつくるのもよいですが、もっとJISOUのメンバーにもアイデアを身近に感じてほしい。それこそが今後メンバーがそれぞれの夢を叶えるために重要。そう考えて今回はハッカソンを開催することにしました。
私はハッカソンが嫌いです
そのば限りだけの作り捨てのサービスが多いですし、ユーザー価値にならないものが上位にいきます。自分は技術を楽しむより、ユーザーに本当に幸せになってもらうために技術を使っているのだと気付かされました。
ここに関してはぜひ以下の記事を読んでほしいです。
そこでJIOSUの中で、本当にユーザー価値になるようなプロダクトが生まれるハッカソンを開くことにしました。私もこのハッカソンを口実に短期間で覆面調査システムを構築できますし、メンバーにもアイデアについて悩んでもらうことで意識的にできるようになってもらいたいという策略です。
2日間でユーザー価値になるシステムを0からリリースできることはメンバーにとっても大きな自信になりました
そして私も6時間でサービスをリリースして最低限使えるところまで持っていきました。
6時間でリリースしたシステムについて
ハッカソンの限られた中で今回は覆面調査専用の文章支援ツールを作成しました。
時間は6時間ほどで最低限使えるところまで持っていきました。
実現できること
覆面調査のアンケートの設問とそこで伝えたいことを箇条書きで入力することで文章を構成してくれる。
しかし、文章の主要な内容はAIでは作らないようにする。あくまで文章を読みやすく構築してくれる部分だけを行えるようにする。
利用技術
今回は最速でリリースしたかったのでJISOUの中でも利用している技術を選択しています。
- React
- Supabase
- Firebase
- Tailwind CSS
- shadcn
- Gemini API
生成AIが必須だったので無料で利用できるGeminiを初めて使ってみました。
実現した機能
1. ユーザー設定
まずなるべくユーザーの情報をAIに渡して的確に伝わる文章を作るため、ユーザー設定画面を作成しました。
いまは名前、誕生日、居住地しかないですが、今後充実させていく予定です。
2. 質問管理
覆面調査の質問は似た質問が多いので、質問を事前に用意して使いまわすことが可能です。
質問の登録・編集・削除が可能です。
3. 回答生成
ここでは質問を選択して、その質問に対して実際に書きたいことを箇条書きで追加することができます。
調査の状況として、調査人数や飲食店のタイプなども設定ができます。
入力した条件はAIが生成する文章に渡すことでより、参考になる回答を的確に生成することが可能です。
開発してみて
得意なスキルとAIを使うことで、素早く価値を届けることができました。
UI/UXも短時間でやるためにPinterestを活用して、参考となるUIを再しました。
実際に母にファーストリリースをしたのをみせたところ
「これならかなり時間を削減できそう!」
「そもそもAIがすごすぎる。伝えたいことを伝えられている」
そのような感想をもらいました。6時間で誰かを助けることは可能です。
ただ、プロンプトがまだまだ微妙な箇所があり、想像で話をしてしまっている回答が生成されることもあるので調整をかけて使ってもらいたいと考えています。
これからエンジニアに求められること
これからのエンジニアに求められるスキルってなんでしょう?
私はJISOUを運営しているのもあって、求められるスキルについて考える機会が多いです。
ChatGPTの登場によりIT業界は大きく変わり、求められるエンジニア像もアップデートしていると考えます。
GitHub Copilotの登場や、ChatGPTの精度があがり開発スピードは数倍にもなっています。
またローコードのツールでも実用レベルのものが作れるような世界が訪れようとしています。
v0を利用することで見た目を作成するだけでなく、API連携なども含めて自動化してくれます。コードはNext.jsでコマンド一つでローカルにクローンも可能です。
BaaSも日々進化しており、無料でAPIを簡単に作れるようになりました。
今後さらに競争が加速すれば、大規模サービスに利用できるようにもなる気がしています。
エンジニアがスキルを身につけるハードルは以前に比べて一気に下がっています。
もしあなたが駆け出しエンジニアであれば、従来の基準でポートフォリオを作っても評価がしづらくなります。
これからのエンジニアはスキルだけでは差別化が難しくなります。
そこで求められるのが創造力だと考えています。
会社の本質は「お金を稼ぐこと」であり、市場の素早い変化に対応していかなければなりません。AIによって実現できることの幅も広がりました。
会社にとって必要なことは、アイデアをすぐにカタチにして市場の競争力に負けないこと。
そのアイデアを生み出して実現することができるビジネス力のあるエンジニアなのです。
アイデアは日常に眠っているのに、多くの人はそれ気づいてすらいません。
ここに早く気づいてアイデアを素早くカタチにする能力を磨くことができれば、武器になります。もしあなたがキャリアアップをしたい、エンジニアになりたいと思うのであれば、差別化に繋がります。
実際にキャリアアップを目指すJISOUのメンバーにもアイデアへの意識を徹底してもらっています。個人開発をするときは、一番時間をかけるのが「何を作るか」というところです。多くの人が適当にお題を決めてすぐに開発しようとしてしまうところですが、ここをミスると作っただけで使われないものになります。
- 勉強のために作ったサービス
- 誰も利用しようと思わないサービス
- そのサービスならではの問題解決がないサービス
とりあえずポートフォリオのために作ったシステムからはスキルについては伝わりますが、今後求められるビジネス目線については評価することが難しいです。
便利なサービスが増えて簡単に開発ができるようになって、以前よりスキル取得も容易になった時代だからこそ、視座の高い視点で開発をすることが大切になります。
あなたがプログラミングをする理由はなんですか?
私は作ったサービスで喜んでくれる人、幸せになる人が1人でも増えてほしいと思っています。自分のためでなく、人のために動けるようになることは大切なことです。
自分を満たせていないと、他人のために動くことはできないからです。
人のためにサービスを作ることができるようになると、それは「勉強」ではなくなります。
プログラミングは楽しいものです。
しかし、プログラミング=勉強しないといけないものと思っている人がほとんどです。
自分のアイデアをカタチにしてユーザーに届けることができるようになると「楽しい」に昇華します。いかに早く楽しいに持っていけるかはスキルアップにおいても重要です。
今回の覆面調査の話を通じて誰にでもプログラミングを楽しいと思えるきっかけはあると思えました。JISOUのハッカソンも身の回りの困りごとを考えて、2日でカタチにすることを経験してメンバー全員のプログラミングの考え方をアップデートすることに成功しました。
身の回りの誰かのためにサービスを作る
この経験を1度でいいから早めにやってみてください。
アイデアを考えることが意識的になり、エンジニアとして更に成長することが可能です。
※ サービスは公開予定はなく、利用する予定もまだありません
おわりに
JISOUではいままでのスクールとは変わったスタイルで学習を行っています。
カリキュラムのすべてが実践的で、アウトプット中心になっています。またスキルだけでなく、ユーザー価値になるようなサービスを作る力も養っています。
今後この考え方が正しいことを証明するために、私も本気でコミュニティ運営をしていきます。
ここまで読んでいただけた方はいいねとストックよろしくお願いします。
@Sicut_study をフォローいただけるととてもうれしく思います。
また明日の記事でお会いしましょう!
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