はじめに
法政大学の学園祭でサークルの空間展示を監修したので、備忘録も兼ねて色々書いていきます。展示内容と技術的な話を短く動画にまとめているので、先にこちらをご覧ください。
ーそもそも何のサークルなの?ー
昨年、僕を含めた4年生が中心となって結成したクリエイターサークルです。総合芸術研究会「Palette」 といいます。映像や音楽、イラストなど、異なる分野で創作を行う人たちを、絵の具のように混ぜ合わせて新たなものを創造するというコンセプトで始まりました。
詳しくはポートフォリオサイトをチェック!
目次
展示のテーマ
最初にテーマは「生命の誕生から成長の軌跡を描く」という方向性で決まりました。というのも、理系学部が集まっている本サークルの色を出し、かつ人々の心に訴えかける作品を作るために以下の要素を入れたかったからです。
- フラクタルのような幾何学的図形でアート作品を作る
- 来場者にインタラクティブな体験をしてもらう
フラクタルは一部分を抜き出しても全体と似た形になる「自己相似性」を示すものです。言葉ではわかりにくいかもしれませんが、画像のように植物の構造など自然界にも多く含まれています。そこで来場者が操作することでフラクタルが成長するインタラクティブアートを制作することにしました。
演出監督としての仕事
1. 完成イメージの制作
さて、ここからは演出監督としての仕事をまとめていきます。全体のテーマは話し合って決めましたが、細かいところはこちらから指示を出さなくてはいけません。そのため、作業方針や役割分担を決めるためにBlenderで完成イメージを作成しました。
三つの部屋はそれぞれ 「母体、巣立ち、継承」 を表しています。
来場者はまず、水音や揺らめく布で胎内を感じる廊下を通ったあとメインルームで大きな卵と対峙します。来場者が卵を割ると中から雛が生まれ、周りの木々とともに成長し旅立っていきます。最後の部屋では成長した鳥の影や、2つの大きな羽を見ることができます。新たなつがいを見つけた鳥が、再び生命を育むというシーンです。
無限にループするフラクタルに掛けて、 「新たな生命が再び母体に宿り成長する」 というふうに展示全体でもループするようにこだわりました。
2. 仕切り用の壁の手配
展示はいくつかの部屋に分かれているため、仕切りを用意する必要がありますが、段ボールのようなチープな素材で作りたくはありません。そこで学部の主任会に直接交渉し、縦型ホワイトボードを30台ほどお借りしました。また、日暮里の問屋で 計150mほどの布を20000円以下 という破格で仕入れ、ホワイトボードに取り付けることで綺麗な白い仕切りを作ります。
3. 卵・羽の制作
模型の制作に関しても指揮を執りました。細かい手順は省きますがとにかく気の遠くなるような作業でした。空間展示は4年生が中心となって制作していますが、後輩の皆にも手伝ってもらいました!ありがとう;;
4. その他各班との調整
制作はインタラクティブ・音響・設営など様々な班に分かれています。監督としてどの班の制作も監修し、連携を保つ必要があるため、インタラクティブと音響班に向けて以下のようなガントチャートも作りました。
ここまで書いた内容は当然一人でなく、各班のリーダーや、ビジュアル部分を監督をしてくれた須永君と連携して進めました。演出に用いたTouchDesignerやフラクタルアートの詳しい解説は彼のほうで投稿されるかもしれません。
姿勢推定AIを用いたインタラクティブアート
メインルームで卵を割ったり成長させたりする仕組みはインタラクティブ班の担当でしたが、制作期間も短いため、最終部屋のインタラクティブに関しては、僕も画像処理AIの知識を用いて参戦しました。
使用したモデルはMonolocoという姿勢・位置推定モデルです。
このモデルで向きとポーズを推定し、右手と左手を挙げたとき、それぞれに別の演出を割り当てます。
右手を上げるとフラクタルアートが切り替わり、左手を上げると鳥のシルエットが通り過ぎます。monolocoは向きも推定できるため、カメラに対する方向関係なく右手は右手だと判定してくれます。部屋は薄暗いですが、小さなWebCamera一台で精度よく推定できています。
当日の反応
これだけ大掛かりな展示となると設営も一苦労です。演出や設営のクオリティを考慮して学祭2日目からの展示となりました。結果としては2日合わせて100人以上の方にご来場いただき、中には1回では足らず2回見ていただいた方もいらっしゃいました。
学生から家族連れまで様々な方にお褒めの言葉を頂き、大変有意義な展示となりました!
~当日の様子~
まとめ
自分はいつも技術的に制作にかかわる立場でしたが、今回初めて総合的な演出の考案や監修を行い、とても良い経験になりました。自分の考えたアイデアが次々と形になる分、学部やチーム間の連携を図るなど忍耐力が必要なポジションだったと思います。また、たくさんの仲間と協力して作り上げた展示は、大学4年間で最高の思い出になりました!
最後に監督である僕と須永君のポートフォリオを載せておきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!