はじめに
Fano効果は1961年Ugo Fanoによって理論的に導かれた。任意の始状態から終状態へ移る際に連続的な準位と離散的な準位を通る過程があるときにこれらが干渉することで特徴的なスペクトルが現れる現象をFano効果という。Fano効果はラマン散乱、光電子放出、原子の光電離、光吸収、中性子散乱、量子ドット、金属表面での近藤効果など分光学では有名な現象である。
#Fano公式
Fano効果における量子干渉は次式で表される。第一項は連続準位、第二項は離散準位、第三項はそれらの干渉項である。
H = E_{\phi}\left|\phi\right>\left<\phi\right|+\sum_{E'}{E'\left|\psi_{E'}\right>\left<\psi_{E'}\right|}+\sum_{E'}{\left(V_{E'}\left|\psi_{E'}\right>\left<\phi\right|+V_{E'}^{*}\left|\phi\right>\left<\psi_{E'}\right|\right)}
このハミルトニアンに対し、スペクトルは次のように与えられる。
\frac{(\varepsilon+q)^{2}}{\varepsilon^{2}+1}
この式はFano公式と呼ばれる。$\varepsilon=(E-E_{0})/\Gamma$はエネルギーであり、$E_{0}$および$\Gamma$は共鳴準位の位置とその寿命である。$q$はFanoパラメータあるいは非対称パラメータと呼ばれており連続準位と共鳴準位とのカップリングの程度を表す。
#数式の可視化
Fano公式を可視化します。今回は三次元プロットをするためにAxes3Dをインポートしました。プログラムは下記のものを実行すればできるはずです。パラメータはてきとうに当てているので、必要に応じて書き換えてください。
import pylab
from matplotlib import pyplot
from mpl_toolkits.mplot3d import Axes3D
step = 500
p = [[0.00 for i in range(step)] for j in range(step)]
e = [[0.00 for i in range(step)] for j in range(step)]
q = [[0.00 for i in range(step)] for j in range(step)]
for i in range(step):
for j in range(step):
e[j][i] =(i-250)/10
q[j][i] = j*0.05
for i in range(step):
for j in range(step):
p[j][i] = (e[j][i]+q[j][i])*(e[j][i]+q[j][i])/(e[j][i]*e[j][i]+1)
fig = pylab.figure()
ax = Axes3D(fig)
ax.set_xlabel("Energy")
ax.set_ylabel("Fano parameter")
ax.set_zlabel("dI/dV")
for j in range(40):
ax.plot(e[:][j],q[:][j],p[:][j],'b')
pyplot.show()
三次元プロットは次の図のようになります。様々なFanoパラメータに対して曲線を書いてあります。Fano公式や図からわかるように$q=0$のときは反共鳴的なスペクトルになります。一方$q\rightarrow\infty$ではBreit-Wigenr型のスペクトルに一致します。