初めに
重み付き残差法(特に,最小二乗法),およびGalerkin法について,自分なりに纏めてみる.
以下を参考にしている:
- 明治大学 桂田先生: 応用数値解析特論 講義ノート
- 竹内 則雄,樫山 和男,寺田 賢二郎: 計算力学(第2版)有限要素法の基礎
- 地盤工学会: 地盤技術者のためのFEMシリーズ 有限要素法を学ぶ
モデル問題
問題設定
厚さ$h$の均一な地盤(単位体積重量$\gamma$,ヤング率$E$)を考える.
地盤は下端境界で固定支持されており,上端境界で分布荷重$q$が作用しているものとする.
このとき,地盤の深さ方向の変位$u(z)$を求める問題を考える.
微小要素における釣り合いを考えると,
\begin{align}
(- \sigma_{zz}(z) + \sigma_{zz}(z+\Delta z)) \Delta x \Delta y - \gamma \Delta x \Delta y \Delta z &= 0 \\
\frac{d \sigma_{zz}}{d z} \Delta z - \gamma \Delta z &= 0 \\
\therefore \frac{d \sigma_{zz}}{d z} &= \gamma
\end{align}
を得る.応力$\sigma_{zz}$と変位$u$の関係
\begin{equation}
\sigma_{zz} = E \varepsilon_{zz} = E \frac{du}{dz}
\end{equation}
より,以下の境界値問題を得る.
\begin{alignat}{2}
E \frac{d^2 u}{d z^2}
&= \gamma
\quad &&(0 < z < h) \\
u &= 0
\quad &&(z = 0) \\
E \frac{d u}{d z} &= - q
\quad &&(z = h) \\
\end{alignat}
厳密解
まずは,厳密解を求めておく.
元の微分方程式を積分すると,
\begin{align}
\frac{d^2 u}{d z^2} &= \frac{\gamma}{E} \\
\frac{du}{dz} &= c_1 + \frac{\gamma}{E} z \\
u &= c_0 + c_1 z + \frac{\gamma}{2E} z^2
\end{align}
として,一般解を得る.境界条件を考慮すると,
\begin{align}
0 &= u(z=0) = c_0 \\
- \frac{q}{E} &= \frac{du}{dz}(z=h) = c_1 + \frac{\gamma}{E} h \\
\end{align}
より,
\begin{align}
c_0 &= 0 \\
c_1 &= - \frac{q + \gamma h}{E}
\end{align}
であるから,厳密解は
\begin{equation}
u = - \frac{q + \gamma h}{E} z + \frac{\gamma}{2E} z^2
\end{equation}
である.
例えば,$z=h$における変位は
\begin{align}
u(h)
&= \frac{\gamma}{2E} h^2 - \frac{q + \gamma h}{E} h \\
&= - \frac{2 q h + \gamma h^2}{2E}
\end{align}
であり,負の値であることは,沈下していることを示している.
重み付き残差法(最小二乗法)
近似解の用意
厳密解$u$の代わりに,近似解$\hat{u}$を用意する.
\begin{align}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta})
&= \sum_{i=0}^{N} \beta_i \psi_i(z) \\
&= \sum_{i=0}^{N} \beta_i z^i \\
\end{align}
ここで,$\boldsymbol{\beta} = \lbrace \beta_i \rbrace_{i=0}^{N}$はパラメータ(未知数)である1.$\psi_i(z)$は既知の基底関数であり,今回は$\psi_i(z) = z^i$としてみる.近似関数$\hat{u}$を決定することは,$N+1$個の未知数$\lbrace \beta_i \rbrace_{i=0}^{N}$を決定することである.
まずは,境界条件を満たすために,$\hat{u}$の動ける範囲を絞る.$N \ge 1$とし,$\hat{u}$は少なくとも1次以上の多項式とする.
Dirichlet境界条件$u(z=0) = 0$を$\hat{u}$に課す.
\begin{align}
0 = \hat{u}
&= \sum_{i=0}^{N} \beta_i z^i \\
&= \beta_0 + \beta_1 \cdot 0 + \beta_2 \cdot 0^2 + \cdots + \beta_N \cdot 0^N \\
&= \beta_0
\end{align}
すなわち,$\beta_0 = 0$である.
続いて,$\hat{u}$の1階の導関数を求めておく.
\begin{align}
\frac{d \hat{u}}{d z}(z; \boldsymbol{\beta})
&= \beta_1 + 2 \beta_2 z + 3 \beta_3 z^2 + \cdots + N \beta_N z^{N-1} \\
&= \sum_{i=1}^{N} i \beta_i z^{i-1}
\end{align}
これを以て,Neumann境界条件$d u/d z = -q/E$を$\hat{u}$に課す.
\begin{align}
- \frac{q}{E} = \frac{d \hat{u}}{d z}
&= \sum_{i=1}^{N} i \beta_i h^{i-1} \\
&= \beta_1 + \sum_{i=2}^{N} i \beta_i h^{i-1}
\end{align}
すなわち,$\beta_1 = -q/E - \sum_{i=2}^{N} i \beta_i h^{i-1}$である.
以上より,近似解$\hat{u}$は,
\begin{align}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta})
&= \sum_{i=0}^{N} \beta_i z^i \\
&= \beta_0 + \beta_1 z + \sum_{i=2}^{N} \beta_i z^i \\
&= \beta_1 z + \sum_{i=2}^{N} \beta_i z^i
\end{align}
に改められる.
$N+1$個の未知係数$\lbrace \beta_i \rbrace_{i=0}^{N}$を定める問題から,$N-1$個の未知係数$\lbrace \beta_i \rbrace_{i=2}^{N}$を定める問題に置き換わった.
残差
近似解$\hat{u}$を元の微分方程式に代入し,以下の残差$r$を定義する.
\begin{align}
r := E \frac{d^2 \hat{u}}{d z^2} - \gamma
\end{align}
ここで,$\hat{u} = \hat{u}(z; \boldsymbol{\beta})$より,$r = r(z; \boldsymbol{\beta})$である.
また,$\hat{u}$は,真なる解$u$とは異なると考えられるため,残差$r$は非ゼロであろうと予想する.ただし,真なる解$u$が残差ゼロを達成するのだから,近似解$\hat{u}$に対する要求は,残差$r$をなるべく小さくせよ,ということである.
すなわち,残差$r$を最小化するような$\boldsymbol{\beta}$を求めよ,という問題に置き換わった.
最小二乗法(2次多項式)
ところで,残差$r$を最小化せよ,という問題は少し都合が悪い.
なぜなら,$r$は$z$に依存する関数であるため,例えば,
- $r(z=0.2; \boldsymbol{\beta}_1) = 0.1$,かつ $r(z=0.8; \boldsymbol{\beta}_1) = 0.2$,
- $r(z=0.2; \boldsymbol{\beta}_2) = 0.2$,かつ $r(z=0.8; \boldsymbol{\beta}_2) = 0.1$,
という,2つの解の候補があるとき,$\boldsymbol{\beta}_1$と$\boldsymbol{\beta}_2$のどちらがを採用すべきか難しい.
そこで,$r$の大きさを測る尺度を用意する.具体的には,以下の二乗和を考える.
\begin{align}
R(\boldsymbol{\beta})
&:= \int_{\Omega} r(z; \boldsymbol{\beta})^2 dz
\end{align}
ここで,$\Omega = (0, h)$である.$z$について積分することで,$z$の次元を押し潰している.得られた$R(\boldsymbol{\beta})$のことを,飽くまでも本稿では「積分残差」と呼ぶことにする2.
先ほどは,残差$r$を最小化するような$\boldsymbol{\beta}$を探そう,と記したが,上述の不都合などを解消するために,積分残差$R$を最小化するような$\boldsymbol{\beta}$を探せ,という問題に置き換えた.
さて,近似解の形を
\begin{equation}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta})
= \sum_{i=0}^{N} \beta_i z^i
= \beta_1 z + \sum_{i=2}^{N} \beta_i z^i
\end{equation}
などとぼかしていたが,そろそろ具体的な形(次数)を定めて話を進めることにしよう.
まずは,$N=2$としてみる.すなわち,
\begin{equation}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta}) = \beta_1 z + \beta_2 z^2
\end{equation}
である(既に$\beta_1$は既知であるため,$\beta_2$のみ定めれば良い).このとき,残差$r$は
\begin{align}
r(z; \boldsymbol{\beta})
&= E \frac{d^2 \hat{u}}{d z^2} - \gamma \\
&= E \frac{d^2}{d z^2} (\beta_1 z + \beta_2 z^2) - \gamma \\
&= 2 E \beta_2 - \gamma
\end{align}
である.よって,積分残差$R$は
\begin{align}
R(\boldsymbol{\beta})
&= \int_{\Omega} r(z; \boldsymbol{\beta})^2 dz \\
&= \int_{\Omega} (2 E \beta_2 - \gamma)^2 dz \\
&= (2 E \beta_2 - \gamma)^2 h
\end{align}
である.
強調すべきは,$R$は$\beta_2$の2次式となっている点である.すなわち,$R$はパラメータ空間で($\beta_2$について)綺麗なお椀型の(単峰の)下に凸な関数となっており,$R$を最小化する$\beta_2$は唯一に定まる(「$R$を最小化する$\beta_2$を探す」と「$\partial_{\beta_2} R = 0$なる$\beta_2$を探す」は同値である).
ヤング率$E$や厚さ$h$は明らかに非ゼロなので,
\begin{align}
\frac{d R}{d \beta_2} = 0
\Rightarrow 2 E (2 E \beta_2 - \gamma) h &= 0 \\
\therefore \beta_2 &= \frac{\gamma}{2E}
\end{align}
より,$\beta_1$の具体的な形($\beta_1 = -q/E - \sum_{i=2}^{N} i \beta_i h^{i-1}$)を思い出し,以下の近似解を得る.
\begin{align}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta})
&= \beta_1 z + \beta_2 z^2 \\
&= \left( - \frac{q}{E} - 2 \beta_2 h \right) z + \beta_2 z^2 \\
&= - \frac{q + \gamma h}{E} z + \frac{\gamma}{2E} z^2
\end{align}
これは,厳密解$u$と一致する(何ということだろう!).
最小二乗法(3次多項式)
続いて,$N=3$としてみる.すなわち,近似解を以下の3次多項式とする3.
\begin{equation}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta}) = \beta_1 z + \beta_2 z^2 + \beta_3 z^3
\end{equation}
このとき,残差$r$は
\begin{align}
r(z; \boldsymbol{\beta})
&= E \frac{d^2 \hat{u}}{d z^2} - \gamma \\
&= E \frac{d^2}{d z^2} (\beta_1 z + \beta_2 z^2 + \beta_3 z^3) - \gamma \\
&= 2 E \beta_2 - \gamma + 6 E \beta_3 z
\end{align}
である.積分残差$R$は
\begin{align}
R(\boldsymbol{\beta})
&= \int_{\Omega} r(z; \boldsymbol{\beta})^2 dz \\
&= \int_{\Omega} (2 E \beta_2 - \gamma + 6 E \beta_3 z)^2 dz \\
&= (2 E \beta_2 - \gamma)^2 h
+ 2 (2 E \beta_2 - \gamma) 6 E \beta_3 \frac{h^2}{2}
+ (6 E \beta_3)^2 \frac{h^3}{3} \\
&= (2 E \beta_2 - \gamma)^2 h
+ 6 (2 E \beta_2 - \gamma) E \beta_3 h^2
+ 12 E^2 \beta_3^2 h^3
\end{align}
であり,やはりパラメータについて2次形式となっているから,$\partial_{\boldsymbol{\beta}} R = 0$を解けば良い.
実際に計算すれば,
\begin{align}
\frac{d R}{d \beta_2} = 0
&\Rightarrow
(2 E \beta_2 - \gamma) + 3 E \beta_3 h = 0 \\
\frac{d R}{d \beta_3} = 0
&\Rightarrow
(2 E \beta_2 - \gamma) + 4 E \beta_3 h = 0
\end{align}
より,
\begin{align}
E
\begin{bmatrix}
2 & 3h \\
2 & 4h
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
\beta_2 \\
\beta_3
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
\gamma \\
\gamma
\end{bmatrix} \\
\therefore
\begin{bmatrix}
\beta_2 \\
\beta_3
\end{bmatrix}
&=
E^{-1}
\begin{bmatrix}
2 & 3h \\
2 & 4h
\end{bmatrix}^{-1}
\begin{bmatrix}
\gamma \\
\gamma
\end{bmatrix} \\
&=
\frac{1}{2Eh}
\begin{bmatrix}
4h & -3h \\
-2 & 2
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
\gamma \\
\gamma
\end{bmatrix} \\
&=
\frac{1}{2Eh}
\begin{bmatrix}
\gamma h \\
0
\end{bmatrix} \\
\end{align}
である.これは,先ほどの2次多項式の場合と全く同じである(これは統計学の最小二乗法にも登場するNormal Equationではないか,名前が偶然一致しているわけではないのか,うおお).
最小二乗法(1次多項式)
先ほどは,特に理由を付けずに$N=2$や$N=3$としてみたが,$N=1$とするとどうなるだろうか(試行関数の定義$\hat{u} = \beta_1 z + \sum_{i=2}^{N} \beta_i z^i$上,こんなことをして良いのか?という疑問はあるがえいやっと進む).近似解は,
\begin{equation}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta}) = \beta_1 z
\end{equation}
である.$\beta_1$は既に定まっており,$\beta_1 = -q/E - \sum_{i=2}^{N} i \beta_i h^{i-1}$であるから,結局,
\begin{equation}
\hat{u}(z; \boldsymbol{\beta}) = - \frac{q}{E} z
\end{equation}
が近似解となろう.これは,$z=0$で$u=0$,$z=h$で$du/dz = -q/E$であり,境界条件を満たす.
ところで,元の微分方程式は2階の微分方程式であることを思い出そう.$d^2u / dz^2 = \gamma / E$において,例えば,右辺が$z$に依存する滑らかな関数のとき,$u$は2回微分して,まだ滑らかな(かつ$z$に依存する)関数でなければ等式が成り立たない.しかし,いま用意した近似解は1次多項式であり,そのラプラシアンは至るところでゼロである.
こうしたことを考えると,今回の近似解は境界条件を満たすものの,何だか違和感が残る(かつ,関数自体の定義の怪しさがある).
弱形式
弱形式化
元の境界値問題を再掲する.
\begin{alignat}{2}
E \frac{d^2 u}{d z^2}
&= \gamma
\quad &&(0 < z < h) \\
u &= 0
\quad &&(z = 0) \\
E \frac{d u}{d z} &= - q
\quad &&(z = h) \\
\end{alignat}
ここで,関数空間$V$を
\begin{align}
V = \{
v \in H^1 (\Omega) \mid
v: \bar{\Omega} \to \mathbb{R},
v = 0 \text{ on } \Gamma_D
\}
\end{align}
と定めておく($\Gamma_D$はDirichlet境界であり,今回の例では$z=0$がこれに当たる).
微分方程式の両辺に任意の$v \in V$を掛けて$\Omega$上で積分すると,
\begin{align}
\int_{\Omega} E \frac{d^2 u}{d z^2} v dz
&= \int_{\Omega} \gamma v dz
\end{align}
である.ここで,部分積分法から,
\begin{align}
\int_{\Omega} E \frac{d^2 u}{d z^2} v dz
&= E \left. \frac{d u}{d z} v \right|_{\Gamma}
- \int_{\Omega} E \frac{d u}{d z} \frac{d v}{d z} dz \\
&= - q v(h)
- \int_{\Omega} E \frac{d u}{d z} \frac{d v}{d z} dz
\end{align}
より,先の積分の式は
\begin{align}
- \int_{\Omega} E \frac{d u}{d z} \frac{d v}{d z} dz
&= \int_{\Omega} \gamma v dz + q v(h)
\end{align}
となる4.
強調すべきは,解$u$の微分の階数が1階減っていることである.すなわち,$u$に課される滑らかさの条件が緩和されている.また,Neumann境界条件は,境界条件として陽に課されるというよりも,方程式の中に取り込まれた形になっている.
このようにして得られた方程式を,元の方程式の弱形式(weak form)と呼ぶ.これに対して,元の方程式は強形式(strong form)と呼ばれる.弱形式の解を,元の方程式の弱解(weak solution)と呼ぶ.
また,この分野では,
- $\hat{u}$のことを試行関数(trial function),あるいは近似関数(approximate solution)
- $v$のことを試験関数(test function)5,あるいは隆起関数(bump function),あるいは重み関数(weight function)
と呼ぶ.
Galerkin法(1次多項式)
弱解の有限次元近似を求める方法に,Galerkin法がある6.
Galerkin法では,幾つかの関数の1次結合で試行関数や試験関数の近似関数を用意する(この意味で,先ほどまで使っていた近似解と似ている).具体的には,関数空間
\begin{align}
U_h &= \left\{ \hat{g}_D + \sum_{i=1}^{N} \beta_i \psi_i \mid (\beta_1, \ldots, \beta_N) \in \mathbb{R}^N \right\} \\
V_h &= \left\{ \sum_{i=1}^{N} \alpha_i \psi_i \mid (\alpha_1, \ldots, \alpha_N) \in \mathbb{R}^N \right\}
\end{align}
から,それぞれ試行関数$\hat{u}_h$と試験関数$v_h$を選ぶ.ただし,$\hat{g}_D$はDirichlet境界条件を満たす関数である(今回の例では,$\hat{g}_D = 0$が対応する).
ここで,$U_h$と$V_h$はどちらも基底関数$\psi_i$で張られている.これがGalerkin法の特徴であり,別々のものを用いても良い($U_h$に$\psi_i$,$V_h$に$\phi_i$を用いるなど).実際,別の基底で張る方法が重み付き残差法と呼ばれるものであり,先に記した最小二乗法はその一つである.
さて,いよいよGalerkin法で1次多項式による近似を試みる.基底関数$\psi_i$には,先ほどまでと同様に,$\psi_i = z^i$を用いる.試行関数$\hat{u}_h$と試験関数$v_h$を以下のように選ぶ.
\begin{align}
\hat{u}_h &= \beta_1 z \\
v_h &= \alpha_1 z
\end{align}
隠れているが,$\beta_0 = 0$がDirichlet条件を満たす関数$\hat{g}_D$である.また,$v_h$は$v_h = 0$ on $\Gamma_D$を満たす.
$\hat{u}_h$と$v_h$を弱形式に代入すると,
\begin{align}
- \int_{\Omega} E \frac{d \hat{u}_h}{d z} \frac{d v_h}{d z} dz
&= \int_{\Omega} \gamma v_h dz + q v_h(h) \\
- \int_{\Omega} E \beta_1 \alpha_1 dz
&= \int_{\Omega} \gamma \alpha_1 z dz + q \alpha_1 h \\
- E \beta_1 \alpha_1 h
&= \frac{1}{2} \gamma \alpha_1 h^2 + q \alpha_1 h \\
\alpha_1 \left(
E \beta_1 h + \frac{1}{2} \gamma h^2 + q h
\right)
&= 0
\end{align}
ここで,$v_h$は任意の関数であるから,上式は$\alpha_1$に依らずに成り立つ.すなわち,
\begin{align}
E \beta_1 h + \frac{1}{2} \gamma h^2 + q h
&= 0 \\
\therefore \beta_1
&= - \frac{2 q + \gamma h}{2 E}
\end{align}
を得る.よって,Galerkin法(1次近似)による近似解は,
\begin{align}
\hat{u}_h
&= \beta_1 z \\
&= - \frac{2 q + \gamma h}{2 E} z
\end{align}
である.これは,厳密解とは異なるものの,良く似ている.
実際,$z=h$における変位を計算すると,
\begin{align}
\hat{u}_h(h)
&= - \frac{2 q + \gamma h}{2 E} h \\
&= - \frac{2 q h + \gamma h^2}{2 E}
\end{align}
であり,これは厳密解と一致する.
Galerkin法(2次多項式)
続いて,Galerkin法で2次多項式による近似を考える.
試行関数$\hat{u}_h$と試験関数$v_h$を以下のように定める.
\begin{align}
\hat{u}_h &= \beta_1 z + \beta_2 z^2 \\
v_h &= \alpha_1 z + \alpha_2 z^2
\end{align}
Dirichlet条件を満たす関数として,$\beta_0 = 0$を選んでいる.
$\hat{u}_h$と$v_h$を弱形式に代入する.
\begin{align}
- \int_{\Omega} E \frac{d \hat{u}_h}{d z} \frac{d v_h}{d z} dz
&= \int_{\Omega} \gamma v_h dz + q v_h(h) \\
- \int_{\Omega} E (\beta_1 + 2 \beta_2 z) (\alpha_1 + 2 \alpha_2 z) dz
&= \int_{\Omega} \gamma (\alpha_1 z + \alpha_2 z^2) dz + q (\alpha_1 h + \alpha_2 h^2) \\
\end{align}
分けて計算する.
\begin{align}
(\mathrm{LHS})
&= - \int_{\Omega} E (\beta_1 + 2 \beta_2 z) (\alpha_1 + 2 \alpha_2 z) dz \\
&= - \int_{\Omega} E
\left(
\beta_1 \alpha_1
+ 2 (\beta_1 \alpha_2 + \beta_2 \alpha_1) z
+ 4 \beta_2 \alpha_2 z^2
\right) dz \\
&= - E
\left(
\beta_1 \alpha_1 h
+ (\beta_1 \alpha_2 + \beta_2 \alpha_1) h^2
+ \frac{4}{3} \beta_2 \alpha_2 h^3
\right) \\
(\mathrm{RHS})
&= \int_{\Omega} \gamma (\alpha_1 z + \alpha_2 z^2) dz
+ q (\alpha_1 h + \alpha_2 h^2) \\
&= \gamma \left( \frac{1}{2} \alpha_1 h^2 + \frac{1}{3} \alpha_2 h^3 \right)
+ q (\alpha_1 h + \alpha_2 h^2)
\end{align}
よって,$\alpha_1$と$\alpha_2$について整理すると,
\begin{align}
\begin{bmatrix}
\alpha_1 \\
\alpha_2
\end{bmatrix}^{\top}
\begin{bmatrix}
E \beta_1 h
+ E \beta_2 h^2
+ \frac{1}{2} \gamma h^2
+ q h
\\
E \beta_1 h^2
+ \frac{4}{3} E \beta_2 h^3
+ \frac{1}{3} \gamma h^3
+ q h^2
\end{bmatrix}
= 0
\end{align}
である.任意の$\alpha_1$と$\alpha_2$について成り立つから,
\begin{align}
E h
\begin{bmatrix}
1 & h \\
h & \frac{4}{3} h^2
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
\beta_1 \\
\beta_2
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
- \frac{1}{2} \gamma h^2 - q h \\
- \frac{1}{3} \gamma h^3 - q h^2
\end{bmatrix} \\
\end{align}
を解けば,
\begin{align}
\begin{bmatrix}
\beta_1 \\
\beta_2
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
- \frac{q + \gamma h}{E} \\
\frac{\gamma}{2 E}
\end{bmatrix}
\end{align}
より,Galerkin法(2次近似)による近似解は,
\begin{align}
\hat{u}_h
&= \beta_1 z + \beta_2 z^2 \\
&= - \frac{q + \gamma h}{E} z + \frac{\gamma}{2 E} z^2
\end{align}
となり,厳密解と一致する.
簡単な比較
乱暴だが,パラメータを全て1としたとき($h = \gamma = E = q = 1$),各種近似解は以下のようになる.
$\mathrm{Least \ square}$ | $\mathrm{Galerkin}$ |
---|---|
興味深いことは,最小二乗法の1次近似は,きちんとNeumann条件を満たしている,ということだ.にも関わらず,近似関数全体としてズレが大きい.一方,Galerkin法における1次近似は,Neumann条件をしっかりと満たしている訳ではないものの,これを弱形式の内側に取り込み,近似関数全体としてのズレは比較的小さい.ここから,Galerkin法における1次近似の強力さを感じる(最小二乗法の1次近似のような,関数の定義自体の怪しさも無い).
終わりに
昔から気になっていたが,何となく棲み分けがはっきりしなかった事項を,自分なりに整理した.
今回は(所謂)重み付き残差法の例として,最小二乗法のみを取り上げたが,他にも様々な方法があるため,それらについても勉強して纏めてみたい.また,空間次元をもう少し大きくしたり,Galerkin法とRitz法の関係7,有限要素法の勉強などもしたい.
-
これをパラメータと呼ぶのは嫌われる気がするが,本稿は論文でもないので,少し大らかに考え,私が解釈し易い言葉を使うことにした. ↩
-
恐らく,このような名前は存在しないが,区別のためにこう呼ぶことにする. ↩
-
我々は既に厳密解が2次式であることを知っているが,これは偶々であって,現実には事前に厳密解を知るどころか,次数を推定することもできない,と考えると,えいやっと3次式を試すのも自然と考える. ↩
-
符号がヘンテコな気がするが,鉛直上向きが正の形式で,上端から鉛直下向きの$q$が作用するためである.今の問題設定ではこれが正しい. ↩
-
Galerkinの読み方は,日本語では,「ガラーキン」とすることが多いが,英語の発音を真似るならば「ガレルキン」,「ガローキン」,「ガロールキン」辺りが近いだろう. ↩