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HRアナリティクスで人事プロセスを定量化してみる

Last updated at Posted at 2019-12-24

はじめに

こんばんは、Looker人事部のEd Snookとアライアンスチームのナロン翔平です。
Looker Advent Calendar 2019、これでなんと25日目の記事です!

皆様のご期待に添えるかどうか多少不安ではありますが、ベイエリアからなんとか締めの一本をお届け致します。

今回のお題は人事プロセスの定量化

よく直感的、情緒的に評価しがちな人事プロセスにデータを用いることで、組織にどのような変化をもたらすことができるのか説明できればと思います。

「計測なくして改善なし」

業績が伸びているか、モラルはどうか、最近テンパってるチームはどこか等、チームごとの緊迫感や同僚の顔を見れば一目瞭然。そういう意味でも「人の流れ」は企業活動の中でも一番透明性の高いエリアでは無いでしょうか。

ただ、これだけでは「分かった感じ」になっただけで、実際どこが上手く回っていて、改善点はどこにあるのか、そして何を持って改善ゴールを達成したとするのか等の深いPDCAが回せないまま。

「一人採用するのにどれくらい時間とコストがかかるんだろう。」
「今期は社員数がいきなり増えた感じがするけど、研修は大丈夫かな?」
「あれ、なんか今年に入って5人くらい一年未満で辞めてない?しかも管理職。」

この様な動向も、少なくとも一日の三分の一を共に過ごす仲間であるからこそ把握しておく必要がありますし、特に終身雇用が無くなりつつあるこの時代において更に重要度を増していく分野だと考えています。

ということで、人事プロセスの向上に必須なKPIを以下の通りまとめてみました。
アドベントカレンダー最終記事でもあるので、12月にちなんで12個のKPIをお届けいたします!

1__HR_People_Overview.png
「HR」と一括りにされる分野だがKPIは多種多様。
※スクショはイメージです

初級編:数字のトラッキングも計算方法もいたってシンプル。HRメトリクスの見える化はここから!

募集人数

計算方法:毎月新規で募集している人数
理由:採用までに候補のソーシング、面接、交渉、内定などタスクが山盛りなので、きちんと採用担当チーム内でロードバランスができているか確認するため。
追記:入社した後もオンボーディングやトレーニングが必要になるので、募集人数に見合った支援ができる体制を整えておく必要有り。内部でサポートできない数であれば今必要な職種なのか、どの職種を優先して人材を確保すべきか配慮した上で求人を出すことで入社する社員の印象とモチベーションが変わるのではないかと思います。

採用数

計算方法:内定が出た(入社ではなく)人数
理由:多すぎると新入社員向けトレーニングばかりにチームの時間が割かれてしまい本業に集中できず、過少採用だと人手が足りない分を掛け持ちすることになるので、バランスのとれた採用スピードを心がけるためにも採用数のトラッキングが必要。
追記:単に何人採用しているかを見ているだけなのですが、部署間の採用比率(例:営業対エンジニア等)にも目を向けると。。。
「営業一人につきサポート部門メンバーは何人必要か」
「インプリエンジニアのトレーニングに○ヶ月かかるのであれば営業部門の採用のどれくらい前に採用しなければならないか」
。。。といった類のトラッキングができるので、要員計画も更にプロセス化することができます。

未着手候補者数

計算方法:履歴書の提出はしたものの、何らかの理由で面接ステップにコンバートしていない候補者数
理由:特に実績を上げていて採用にも拍車をかけた企業ですと各履歴書に費やせる時間が限られてきますし、ぱっと見るだけで除外される願書も増えがち。
追記:応募者数が増えているのに何故か人手が足りていないのは良い候補に目を向けていないからかも?弊社ではなぜ各志願者が採用プロセスから振るい落とされたのか確認し、次のステップに移行する基準の改善を考慮するようにしています。

1__HR_People_Overview.png
前職での在籍期間が短いのは何故?
※スクショはイメージです

中級編:「数」から「率」、そして平均値へレベルアップ

採用パイプライン

計算方法:志望者数、一次面接数〜N次面接数、内定通知数をファネルに見立てて集計。セールスパイプラインと同じ考え。
理由:初級編の採用ファネルの結果(採用者数)に加え、各段階でどれほどふるいに掛けられているかを見える化することでどこで脱落しているのか、極端なコンバージョンがないかなど確認するため。
追記:例えば一次面接から二次面接へのコンバージョンが極端に少ない場合、書類選考の時点で落とせなかったのか、或いは一次面接の基準が高過ぎないか、それともこのコンバージョン率で良いのかの水準となるのがポイント。

離職率

計算方法:一定期間中の離職者数を同期間中の従業員数で割ったもの
理由:様々な働き方が主流になりつつある中で、従業員の何パーセントが毎年、毎期離職しているのか把握するため。
追記:多種多様なHRメトリクスの中でも分かり易さトップ5に入る離職率。とは言っても実は算出方法は様々。算出頻度は月毎か年度ごとか、派遣社員、パートも含めるのかによって結果が違ってくるので、算出方法を決めた上で、組織全体で毎回同じ様に結果を比較することが重要。生産性やモチベーションの低いメンバーが自主的に離職しているのか、仕事に合わず辞めていくのか、数値だけでなくその裏側にある理由を調査することも忘れずに。ちなみに厚生労働省調査によると従業員の3割ほどが入社三年以内に離職するとのこと。

早期離職率

計算方法:入社して6ヶ月以内に辞職か解雇された社員を社員数で割ったメトリクス。
理由:コストと時間がかかる採用だからこそ入社してすぐに離職するスタッフの比率をトラック。採用ミスの検知と新入社員の企業カルチャーフィットが主な目的。
追記:「短期間」の定義も会社によって様々なので、まず組織全体で統一する必要があります。ちなみに弊社では「入社6ヶ月以内」を短期間と定めています。

また、ある部署で早期離職率が上昇していることが判明すれば、募集要項と実際の職務内容に明らかな差はあるか、オンボーディングプロセスにギャップはあるのか、など採用プロセスの改善点を確認することが大事。こちらも上記の離職率と同じく、算出頻度と対象社員カテゴリを決めた上で分析することがポイント。

採用チャネル別内定率

計算方法:採用チャネル別(社員紹介・推薦、リクルーター、インバウンド等)に内定数を志望者数で割ったもの。
理由:どのキャンディデートパイプラインが最も採用につながっているかを算出するため。
追記:特に送ってくる履歴書は多いが内定者数が少ないリクルーターとは契約の更新をしない、インバウンドが多い場合は更に社内リクルーターにリソースを追加するなど、チャネル毎に比較することでアクションに繋げやすいメトリクス。

内定辞退率

計算方法:内定辞退者数を内定通知数で割ったもの
理由:時間をかけて最終面接まで行ったのに、何故最終的に断られたのか理解するため。
追記:せっかく時間をかけて、しかも即戦力を求めて内定を出したのに辞退されると勿体無いですよね。しかし、辞退率に変動はあるか、部門毎にばらつきはあるか、給料面の問題なのか、勤怠制度の調整が必要なのか、または面接を実施したスタッフが原因だったのかなどをトラッキングすることで社内の改善点が見えてきます。

入社までの平均日数

計算方法:各ロールの求人受付開始日から入社までの日数の平均値
理由:求人受付開始から入社までの採用スピードを測るため
追記:時間がかかり過ぎると日々の業務への影響が出ますし、速すぎるのであればじっくり面接もしないままとりあえず人材の確保だけに目が行き、スキルのない人材を採用している可能性があります。ただ、平均値だけを見るのではなく、何故この結果になったのか掘り下げて行くことも重要です。例えば採用スピードが遅いのはやたら面接が多いのか、それとも志望者数が少ないのかで次にとるべきアクションが変わってきます。

1__HR_People_Overview.png
学歴、部門、ジョブサティスファクションの違いが離職率にも反映。
※スクショはイメージです

上級編:採用関連KPIを人事だけの指標から経営層の興味を惹く指標へ

従業員一人当たりの売上

計算方法:ある一定期間の売上を同期間中の従業員数で割ったもの
理由:従業員が増えると同時に売上のスケールアップがきちんと追いついているか確認するため。
追記:純利益、粗利益、コストも一人当たりどれくらいなのか算出し、会社がどれほど効率よくスケールしているかトラックすると尚良し。言ってしまえば企業版GDPみたいなものです。

平均面接コスト

計算方法:面接にかけた時間を新社員数で割ったもの
理由:面接に割く時間がどれほどの機会損失に繋がっているか確認するため
追記:単に「何時間費やしたか」ではなく、職業クラスによって、一年目の営業メンバーであれば1時間=1単位、マネージャーであれば1時間2単位、ディレクターレベルであれば4単位といった風に1時間ごとの機会損失ユニットを定めると更に精度の高い採用コストの見える化に繋がります。例えば、一次面接で営業チームメンバー二人に各1時間、二次面接でマネージャーに1時間、3次でCEO(1時間6単位と仮定)と30分面談したとすると、2単位+2単位+3単位の合計7単位のコストがかかったことになります。

ダイバーシティメトリクス

計算方法:ある特定のメトリクスではなく、どちらかと言うとHRメトリクス(社員数、採用者数、志望者数、離職者数など)のスライス方法
理由:知識、背景、スキル、思考に多様性のあるチームを形成するため
追記:社員の内、性別間、世代層、母校、新入v中途採用、などの割合を算出し、時系列としてどれほど多様性のある企業か注目するのがポイント。母校によって入社後の実績は変わるのか、性別・年代間で離職や昇進に差はあるのか比較することでアンコンシャス・バイアスを見直し、より良い職場環境、そして企業実績の向上に繋げるのが長期的な目的。

定量化する事で変わる人事プロセス

この記事で弊社でも注目しているHRメトリクスをリストアップしました。KPIなのでもちろん定量化された、いわゆる数値を追っていくわけですが、人の動きと態度に関連する数値なのでこれと言った水準やベンチマークもなければ、なぜある結果に着地したのかも理由は様々(これぞまさに十人十色)。

ただ、今までは「OOOな感じだよね」とか「まぁ一応出来てます」の様なざっくり感満載だった人事プロセスを、上記KPIを使うことによってピンポイントで抑えることができるだけではなく、次はどの方向に向かって改善していけば良いのか、もう少しはっきりと伝えられる様になるのではないでしょうか。

おわりに

アドベントカレンダー25日目の記事、いかがでしたでしょうか。

弊社東京オフィスでの本格的な営業活動開始、初カスタマーイベントの実施、JOIN東京の開催等、日本のお客様とパートナー社の皆さまに何から何まで支えて頂いた2019年も残すところあと僅か。来年も変わらぬご愛顧のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、良いお年をお過ごしください!

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