この記事はBeeX Advent Calendar 2022の21日目の記事です。
AWSへのSAP導入・移行プロジェクトでAWSインフラ周りの担当としてアサインされたがSAPなんて触ったことないよ、という方向けの記事です。
そもそもSAP Noteって何?
「SAP触ったことない」方向けの記事なのでまずはここから説明します。
結論から言うとNoteは不具合の修正パッチや技術文書の総称です。(Noteは普通に英語読みで "ノート" と呼びます)
SAPプロジェクトでは「Noteを適用する」とか「Noteを参照する」という表現がよく出てきますが、
・Noteを適用する = パッチを適用する
・Noteを参照する = 技術文書を確認する
という感じで表現によって意味が異なります。
NoteはSAP社から提供されていて、SAP社とサポート契約を結んでいれば参照(及びパッチ入手)ができます。
NoteへのアクセスにはS-USER(OSS IDとも呼ばれる)と呼ばれるアカウントが必要となるので、プロジェクト参画後はすぐにプロジェクトマネージャやSAP社とサポート契約をされているお客様に依頼してアカウントを払い出してもらいましょう。
尚、本記事で取り上げるNoteは技術文書のことを指します。
最初に確認すべきNote
私がSAP on AWSプロジェクトの初期段階で目を通しておいた方がよいと考えるNoteを紹介します。
この情報に触れておくことでSAP on AWSの雰囲気(?)は掴むことができると思いますので「なんも分からん」状態は脱することができるはずです。
尚、これだけ見れば十分という意味ではなく他にも読むべきNoteはたくさんありますので「最低限見ておくべきNote」と理解していただければと思います。
1656250 - SAP on AWS: Support prerequisites
AWS上で稼働するSAPシステムがSAP社からサポートを受けるための前提条件が記述されています。
サポート対象のストレージ構成、モニタリング、バックアップなどについての前提条件が記述されており、このNoteの内容から逸脱した構成になるとSAP社のサポートを受けられない可能性があるため注意が必要です。
1656099 - SAP Applications on AWS: Supported DB/OS and AWS EC2 products
サポート対象のOS・データベースの種類とバージョン及びEC2インスタンスタイプが記述されています。
料金を抑えるために安いインスタンスタイプを選択するという方針を立てることなどもあると思いますが、ここに記載してあるインスタンスタイプ以外を安いという理由だけで選択するとサポート対象外となるので御注意ください。
また、このNoteにはSAPS値というSAPの処理性能を示す数値がインスタンス毎に記載されておりインスタンスタイプ選択時の参考にすることもできます。
2358420 - Oracle Database Support for Amazon Web Services EC2
SAPのデータベースにOracleを使用する際のサポート対象のOracleバージョンや注意点等が記述されています。
特に注意したいのがSAP on AWSでデータベースにOracleを選択した場合、OSはOracleLinuxを使う必要があるという点です。
2198693 - Key Monitoring Metrics for SAP on Amazon Web Services (AWS)
「1656250 - SAP on AWS: Support prerequisites」に記述されていますがAWS上でSAPを稼働させる際にAWS Data Provider for SAPというリソース情報取得ツールをインストールする必要があります。
AWS Data Provider for SAPが収集した情報はSAPから参照することができるのですが、このNoteではその情報が何を示しているものなのかの説明が記述されています。
どういった情報があるのかを確認しておくとパフォーマンス調査などの際に役立つかもしれません。
余談ですがこのNote内でcloudwatchをCloudTrailと誤記している個所がなかなか修正されないのが個人的に気になっています。
2935898 - Install and Configure SAP HANA Backint Agent for Amazon S3
SAP HANAというデータベースのバックアップツールであるBackintの導入・設定に関する情報です。
バックアップ先をS3に指定する想定での内容が記述されています。
バックアップ設計・実装はインフラ側のタスクになることが多いのでバックアップの選択肢の一つとして検討できるようにこのNoteにも目を通しておきましょう。(Backintを使わなくてもSAP HANAのバックアップは取得可能です)
2765525 - Red Hat Enterprise Linux High Availability Add-On on AWS for SAP NetWeaver and SAP HANA
2309342 - SUSE Linux Enterprise High Availability Extension on AWS for SAP HANA
RHEL、SUSE Linuxのアドオンを使った高可用性構成に関する情報です。
このNote自体には大した情報は記載されていませんが、Note内に記述されている以下のリンクはAWS上でSAPシステムの冗長化を実装する際のポイントを抑えるために参照しておくべき内容です。
- https://access.redhat.com/articles/3569621#overview
- https://access.redhat.com/articles/3916511#overview
- https://documentation.suse.com/sbp/all/#redirectmsg
ちなみに高可用性構成にSIOSのLifeKeeperやDataKeeperを利用する場合は「1662610 - Support details for SIOS Protection Suite for Linux」を参照してください。
2184871 - hardware key changed after a stopped instance image and clone from AMI
AMIからリストアするとSAPライセンスの再登録が必要になるよという内容が記述されています。
SAP on AWSのプロジェクトでは環境をAMIからリストアしたりコピーしたりすることがよくあります。
リストア後にライセンス登録をうっかり忘れてライセンスが切れてしまったということにならないように覚えておきましょう。
1618572 - Linux: Support Statement for RHEL on Amazon Web Services
OSにRHELを採用する場合はこのNoteに目を通しておきましょう。
SAPを導入する場合は利用可能なRHELのAMIが限定されているのですが、SAP導入をサポートしている公式AMIの探し方も記述されています。
以上となります。
この記事がどなたかの参考になれば幸いです。