どしたん?
一年半以上前から脳腫瘍が見つかってまして,春休みの期間を使って摘出手術を受けてきました.17日間と割と長めの入院生活だったんですが、思った以上に何していいか分からなかったため,一助になればと思いポエムに纏めようかと思います。
脳障害の見つけ方
ぼけーっとゲームをしてたときに画面の一部がそのまま切り抜かれて残るような症状が一分程度出てました。初回はすぐに回復し,なんだったんだ今の面白いバグは?とワクテカしてたんですが、半月後くらいに全く同じ症状が出て
- 左右の目を交互に覆っても,どちらでも全く同じ症状が出ている
- 切り抜きと思っている部分の意味が一切読み取れない
- 切り抜き部が数分後に白抜きになり、その部分が認識できない。たとえば「こんにちは」という文字列の「こ」だけ抜け落ちるようなイメージ
- 視野障害が収まった後にかなりの片頭痛が出る
などなど,これもう完全に脳がアカンやつやんということで,すぐに脳外科へ飛び込みレントゲンを撮ってもらったところ即発覚しました.素人目に見ても”居る”のが分かるくらいです.何度目かに撮ったレントゲン写真が頂けたんで貼っときます.(※脳のレントゲン写真は若干グロいのでリンクにしてます.自己責任で開いてください)
脳腫瘍の種類
脳腫瘍にもいろいろとあるのですが,今回関係する髄膜腫と神経膠腫を取り上げます。脳の皮が腫瘍になったのが髄膜腫,脳の実が腫瘍になったのが神経膠腫となります.脳腫瘍だけで150種類ぐらいあるそうで,それぞれ素性や悪性度が異なります.悪性度が高いと急速に成長したり転移したりで,場所が場所だけに相当まずいシロモノとなります(グレード3で5年後生存率がロシアンルーレット並み、グレード4となるとほぼ全弾装填状態。)
当初は悪性度が低い髄膜腫で殆ど成長も見られないし,場所も場所なので静観でいいでしょうとのことだったんですが,検査を続けていくうちに一部が神経膠腫の可能性が0ではない、それが悪性化したら非常に不味いってことで、手術に踏み切った次第です。
めちゃくちゃアクセス悪い位置にあるし、視覚障害もやだし、小脳から障害が出る可能性もあると、正直メチャクチャびびってました。どうやって取るんだよこんなもん。
入院生活について
さて、前置きが長くなりましたが、単身で入院に挑む場合のあれやこれやを纏めておこうと思います。着替えとかめっちゃ持っていってたんですが、全く不要でした。一方、欲しかったものもあれこれありました。
入院前にすること
髪を切っておくこと。特に頭の手術なら坊主にしてしまうのが絶対楽です。1週間ほど包帯が取れず、めちゃくちゃ痒くて悶え苦しみました。
病院にどんな施設があるのか、しっかりと確認しておきましょう。今回の病院はコンビニがあったのでとても楽でした。コインランドリーや洗髪台、散髪は可能かなども聞けるなら聞いときましょう。病院によって状況は変わるので必要な物品もどのようなものがあるか、ないかしっかりと確認してください。
入院準備
私の入った大学病院では、入院セット(タオル、入院着、歯ブラシ・コップ、ティッシュ等々)が選択可能でした。これだけあれば、大抵事足ります。足りるのですが、下着は自前なんですよね、1週間分ほど用意しつつ、洗濯できる環境を作っときましょう。洗濯機・乾燥機もあったのですが、下着数枚だけ洗うのが若干不便で、結局シャワーを浴びるついでに洗ってしまい、乾燥だけ機械に任せていました。
あって助かったもの
- 下着一週間分、小分け洗剤
- 電源タップ・USB電源
- 小物あれこれ(爪切り、ハサミ、目薬、清涼シート)
- タンブラー
- PC
- ノート・ペン
あると良かったなぁ
- 洗濯バッグ(シリコン製のやつで洗濯物・お湯・洗剤を入れてわしゃわしゃ洗えるやつ)
- 物干し紐
- 小さな読書灯
- バリカン
持って行ったけど不要だったもの
- 着替え(行き帰り分だけあれば十分、おっさんなので同じも可。靴下も一週間分ありましたが使ったのは1だけでした。防寒用にも持って行ってましたが、病院内はほぼ温度が一定で入院着一枚でも快適です)
- 薬類(病院なので言えば次の日には処方してくれました)
- タオル(持って行ったものの、レンタル品で十分でした)
- 小説(暇つぶしに4冊ほど持って行ったものの、消灯が早すぎて読めずじまい)
- こっそり食べるお菓子(コンビニがあったので不要でした)
入院生活
入院生活というと堅苦しく質素で堅実な生活のイメージですが、食事や消灯のおかげでパラメータのブレがとても小さいです。合法的に自身で実験しやすい環境でした。
例えば痛み止めですが、他の生活があると計測は難しいですが、ブレない環境と痛くても問題のない生活のおかげでそこそこ測ることができます。トアラセットで日中7時間半、夜間5時間半で、効き始めと終わりを揃えられます。炎症もあったため、一部をロキソニンに置き換えて、効果を測るみたいな運用もできました。
日記
毎日日記を付けましょう。その日の状況と、イベント毎に以下のような感じでつけてました。
頭痛は比較的抑え込めている、左点滴を抜いた後が内出血でとても痛い、看護師さんに相談する
0600 起床、頭痛無し
0630 トアラセット投入
0700 朝食完食、食後に朝薬投入
1400 リハビリ予定
Notionで作成しており、全般用のページの中に日ごとのページを作成していました。
先生や看護師さんに適切に状況を伝えれば、必ず良くしてくれます。しゃべり過ぎず事実だけを端的に淡々を意識していました。
遺書
手術日の前日に念のため遺書やら身辺整理のドキュメントを作成していました。
作り始めはかなりつらいが、一度作ってしまえば定期的にアップデートを掛けたくなる資料になります。契約関係、資産の場所、どうするか、その他物品の処分方法、pcの中身は見ずに消せ等。無くてもなんとかなるはずですが、あると残された人がとても助かります。
遺書はフォーマットがあるので、分配を調整したい場合はそちらを参照。遺言書は署名捺印が必要なので予め入院前に印刷しておくと良いかと、目録はデータだけで大丈夫なはずです。特に私は半額ほど寄附予定だったんで書類がないと相当面倒になりそうでした。(相続税としてもっていかれそう)
入院中のスケジュール
- 3/10 入院
- 3/11 一般病室
- 3/12 手術
- 3/13 ICU/GICU
- 3/14 一般病室
- 3/15 緊急再手術
- 3/16 ICU/GICU
- 3/17 午後から一般病室
- 3/18-20 まだまだ頭痛い & 頭痒い
- 3/21-22 かなり元気、念願のシャワーと散髪
- 3/23-26 健康過ぎてヤバイ
- 3/27 退!院!
検査
実はこれが一番言いたかったかもしれない。医療技術が凄すぎて一人で大興奮していました。
レントゲン
X線を投射して陰影を写し取るあれですね。かなり前からデジタル化されており、昔ながらのフィルムで見るってことは殆ど見かけなくなりました。撮影後に即時確認しているらしく、OKが出るのも非常に早くなりました。
CT (Computed Tomography)
レントゲンを360度投影できるようにしたやつですね。連続的な断層画像が取得できます。
造影剤(ヨード剤)を投与して、血管をより鮮明に映すものも行いました。ヨード剤が入ると身体がビビるくらい瞬時に熱くなります。こんな速度で血が流れてるのかってのが嫌でも体感できます。
MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴イメージング)
当初、電子レンジと同じように水分子の共鳴を見ているものだと勝手に思い込んでいたのですが、全然違いました。
クソデカ磁力で水素原子の陽子のスピンをガチガチに揃えて、電磁波で倒して戻る際の電波を見る・・らしい?いまいち良く分かってないが、私の中のスピンが揃ってるんだーって感じになります。あと、とんでもない音が鳴ってるんですが、磁場でコイルがぎゃんぎゃん変形しているそうな、怖すぎて泣いちゃいそう。
PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)
放射性物質を流し込んで、体内でβ+崩壊して発生した陽電子と周囲の電子と対消滅して発生したガンマ線を造影するそうな・・。SFにしか聞こえんのですが、すでに確立した技術なんですよね。
できるだけ新鮮(?)な放射性物質とするため、朝っぱらからOにサイクロトロンで陽子をバチクソぶつけて18Fにしてから、トレーサーとして使いやすい化学物質に合成するそうな。
検査した日は放射能を持った人間になっちゃってるので、あまり出歩かないでねとか言われちゃう。
手術
先生「首の後ろを筋肉を傷つけないように切り開いて,頭蓋に穴開けて,小脳をちょっと脇にどけながら腫瘍だけ切除しますねー」
いやもう、脳外科医の先生がやばすぎてやばいです(語彙力)
レントゲン写真を見た時から、視覚野が侵されてるし、小脳押されてるしで、障害が残ることは覚悟してたんですが、何の後遺症もなく9割以上切除してくれたそうです。何をどうしたらそんな神業をやり遂げれちゃうんでしょうね。感謝を遥かに通り越して信仰に近い感情になっちゃってます。まさに神。
手術後の面白症状 / 画像生成AI機能搭載
GICUに居たころの症状なんですが、目を閉じると、かなり鮮明な画像・動画が浮かびます。目を閉じるたびに内容が変わり、ほぼ8割方グロ画像(一面の皮膚的なもの、粘膜的なもの、血の川等々)なんですが、時々大当たり?を引くこともあり、生成され続ける模型街の俯瞰とか、映画のアクションシーンのようなものなど、かなり高精細な映像が見れました。個人的に座頭市無双2のオープニングムービーが一番楽しかったです。
ちなみに目を閉じると・・ということで寝ようとすると必然的にグロ画像が流れるわけで、相当つらかったっす。てっきり脳のヤバイ部分が押されてるのかと思ってたんですが、せん妄でも起こりうる症状なそうな。なかなか強烈なインスピレーションが得られるので、無くなるとちょっと勿体ない気もしますね。
痛みのコントロール
術後はやはり痛みが伴います。静止時の痛み、頭を持ち上げた際の痛み、特定の動作に伴う痛みなど、様々な痛みが複合的に襲ってきます。とはいえ、さすがは病院で痛み止めの薬も豊富で、状況を伝えればしっかりと抑えこんでくれます。
上記したように、痛み止めがどの程度効くのか、どれくらいで切れるのか、効き始めるのにどのくらい掛るのかを把握することも重要です。何でもかんでも最強の痛み止めで抑え込んでしまえばいい訳ではなく、最小限の薬で最大限の効果を出すことを目指してください。
私の場合、頭を起こすと非常にきつい眩暈と痛みが来てたのですが、起こさなければ大丈夫ということで、寝たままご飯を口に放り込み、真下を向いて咀嚼と嚥下すれば痛みを回避して食事をとることができました。
また、薬が切れ始める兆候も掴めてきていたため、切れる寸前までの時間を日ごとに測りつつ、徐々に薬を減らしていくようなこともできていました。
一方で、緊急再手術になったように、痛みを我慢しすぎてもいけません。マジ無理って状況は早めに看護師さんに伝えるようにしましょう。
退院までの流れ
手術後に髄液が溜まり過ぎてヤバいみたいな状況になって緊急再手術になったらしく、サンズ・リバーで体験ダイビングしてたようなんですが、無事でよかったです。
その後は快調そのもので、健康的な生活のおかげでバチクソ元気になってました。元気を持て余して、最後の方はリハビリの名目で毎日40階分くらい病院の階段往復してました。
いざ、退院
先生的にはもう少ししっかり治してから出ろと言われてたんですが、4月からの仕事が心配で仕方ないのと、病院が暇すぎて耐えきれなかったので、まだ抜糸が終わってないんですが無理くり退院させてもらいました。
おわりに
2週間半の日記やメモ書きをつらつらと切り貼りしたもので、とりとめの無い内容になってしまいましたが、何はともあれ無事でよかったです。
ちょうど厄年(人MTBF)に発覚した事もあり、同世代の皆さんもそろそろ故障個所が出始める頃かと思います。最近の医療技術は本当にすごいので、早期発見し修理できる体制を整えて頂ければと思います。何かあったときは本ポエムを思い出して準備に役立てて頂けると幸いです。