ビジネス観点でのSES 派遣
何かとIT業界では大悪党や魔境みたいに言われがちですが、雇われる側ではなく雇う側、人材派遣関連事業を立ち上げる側からの話をします。
※ちなみに私は経営者ではなくエンジニア側雇われ側です。
※以下、事業を始めるものが営業ができるもしくは契約先のお客さまを持っていることが前提とします。(契約先がないのにSESを始めるのは計画性がなさすぎるので)
ビジネス的に非常に安定しており、リスクが少ない
まずSESを語る上で、真っ先にあるものは、リスクが少ない という点です。
簡潔に話すため、今回リスクは、年単位での赤字の多さ、倒産するかどうかと定義します。
まずSESにて会社として利益が出る仕組みですが、契約の方法によってはしまいますが、まず
お客さまから頂く月単価が1人あたりの売上になります。
そこからまず会社が、払うものとしてお客さまと契約している社員の給料、その他諸経費、およびオフィス費用を会社の人数で割ったもの、契約するのにかかった費用(営業への給料の一部やバックオフィス費用)になります。
今回は分かりやいように、その他諸経費と契約にかかった費用を0と考えた場合、大まかにかかる費用として
該当の社員への給与+オフィス費用の一部になります。
残りの費用が利益となります。
そのため基本的には 該当社員の給料 が赤字の原因となりやすいです。(正確には契約単価と給料)
ただ このぐらいの単価で長期間色んな現場で契約出来そうだな という基準で採用し、その単価から比較して自分の想定する利益から給料を設定し雇用すればまず赤字になりません。
※例外として待機(雇用したにも関わらずお客さまと契約できない)状態または休業中はその社員の給料がそのまま赤字になります。売上がないので
ただこの例外に対しても最大限赤字の量を抑える方法があります。
基本給は低く設定し、お客さまと契約できた際のみボーナスとして設定します。もしくは、待機補償と称して最低限値を設定し、同様に、契約時に上乗せ
これにより、この例外において赤字を最小限に出来ます。
1人あたりの赤字の原因としては
- 雇用した社員が、お客さまと契約できない
- 社員が休業してしまう
- 採用を見誤り、お客さまと契約できない
(重複してますが)
もしかしたら 社員が辞めることも赤字ではないのか と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、1人あたりの計上では赤字になりません。
売上もないですが、社員に払う給料も、契約にかかるコストもないため、単純に0です。
(会社全体として見た場合、人数が減るため、1人あたりのオフィスやバックオフィスメンバーの費用負担は増えますが)
以上の理由で1人あたりのリスクが少ない上、1人の計上に複雑な考慮や計算が必要ないため、現在の会社全体としてリスク計算および将来の予測も立てやすくなります。
人を増やせば増やすほど利益があがる
SESなどの人材派遣事業は基本的に1人1人の計上の積み重ねのため、人数が多いほど積み重なります。
前述のように、赤字が積み重なる可能性もありますが、可能性は低いと思います。
もしかしたら、一部の方は 人数が増えると労働力が増えるから 利益が上がるのは当然と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。
受託開発や、自社開発が良い例ですが、
受託の場合、
もし会社にプロジェクトが1つしかない場合、会社としての売上はそのプロジェクトの完遂で発生します。(厳密には契約によりますが、)
SESと似ていますが、この場合のコストは主に開発にかかる人員の人件費(給料)です。
ただSESと違うのは1人に対して売上が立つのではなく、プロジェクトに対して売上が立つため、プロジェクトに対して人数を増やせば増やすほど逆にコスト、赤字のリスクが高まります。
人数増やせば、利益が上がるというわけではないです。
ただ例外として、プロジェクトがたくさんあるが、捌く人員がいない場合、人が増えることで他のプロジェクトも行う事ができ、利益が伸びる可能性もあります。
受託ではどこまで責任を負うのか、メンテナンスは追加費用なしでどの期間までやるのか、要件定義は準委任で行うなど、責任を明確にするための契約への配慮が必要です。
自社サービスの場合、特定のお客さまと契約を行うのではなく、自社の資金や、融資を受けてサービスを作っていきます。(B2B系のSaasなどは業界の一部の会社との契約から始まるかもしれませんが、ややこしいので例外で)
この場合、基本的には売上というものは保証されていません。こういう売上、利益が、出そうだから、最初は赤字覚悟で取り組むのがほとんどかと思います。単純に赤字から始まり、人件費分の赤字が毎月かさみますのでリスクの塊だと言えます。この赤字をリスクとどうか考えるかは、作るサービスによりますが、現実になっていない不確定というのはリスクです。
ゲームの開発なんかが特に顕著ですが、3億円やら大金を開発につぎ込んだが、売れたのは50万円ほどなど例としてはあります。
端から見ればそんなにつぎ込んだのにクソゲー作ったのかよと笑い話ですが、作った会社の人たちは、笑えません。とんでもない赤字です。
SESが利益を出せる源泉にはこういった、受託や自社サービスの会社の事業があります。
ただ、株式投資と同様に、契約したお客さまが不景気であれば、身を引いて他のお客さまと契約も可能です。(付き合いが長いため引きづらい等あるかもしれませんが、)
また、そのプロジェクトが成功するかではなく労働力に対して支払われるため、関わっているサービスが売れるサービスなのかという心配も当人の会社よりは少ないです。
SES会社をやるデメリット
- 社員が自分の仕事に対する正当な報酬をもらっているかどうかが分かりやすい
受託や自社サービスでは、より多くの人が関わりやすいため、誤魔化しが効きやすいです。「の案件を取ってこれたのは会社の名前のおかげだ」や「サービスを考えた人が最大の貢献人だ」など様々な理由をつけたり実際にそういった理由が正しい場合もあるので、そのプロジェクトで私はどれだけの役割をこなしたかが分かりづらいです。
ただ前述のようにSESは基本的に1人1人で計算を行えるので、契約している当人でもわかりやすいです。最低限自分の単価を知っていればという話ですが、
特に未経験や経験が浅い人のパターンですが、一応チームで参画できた、フォローしている人がいたからこその単価という場合や、必死に営業したからの参画であれば他の人の貢献が含まれる場合があります。
ただ会社という狭い組織に閉じ込めてしまえばその世界がすべてになり、特に地方だとよりその傾向が強まり、その待遇が適切かどうか他と比べてどうか知りづらいかと思います。
- SESという存在自体が、求職者からあまりいい印象がない
よくある話なのである程度割愛しますが、SESでの就業自体に良い印象がない場合と、SESで経験積んだ場合、他の会社に転職際、「SES以外の経験がないときびしい」など言われる可能性があることから、SESでの就業にあまりいいイメージがないと思います。
ちなみに悪いイメージの実体験としましては、「Webの開発できますよ」って言われて入ったんですが、住んでいた県の特色および会社の特色柄組み込みや制御の案件がメインでそれらにぶち込まれました。
就業している間に本当にWebがないのか、他の県の事業者でも探してくださいとお願いしていたんですが、恐らく手間かかるのが面倒で実際にやってくれてなかったと思います。
これらは、SES自体のイメージを払拭することで、解決ができると思います。
ITと言えばSESみたいな時代がくれば面白いかな、なんて思っています。(現実的かどうかは置いておきまして)
上記の悪いイメージは従来のSESの会社に当てはまるので、それらの従来の会社を撲滅して、最近の良いSES会社がそれらの代替になれば、イメージは変わると信じています。
SESと契約するお客さまが求める根源的な価値というのは、派遣されている社員の力、労働力と思うので、その仲介であるSES会社は、所詮仲介なので、すり替えることは可能だと考えています。
その会社の社員だから契約しているんですよ というのは可能性あるかと思いますが、あくまで最初の参画できるかの部分のみで、その後の契約が続いている主な理由は、その契約している社員にあると思うので、社員さえ引き抜いてしまえば、従来のSESに従事する人を減らすことができると思います。
高還元である、ということが良いSESのすべてではないんですが、もしSESに入る場合、もし今SESの会社に勤めている方であれば、そういった良いSESの会社を探していただくことをお勧めいたします。
最後に
上記理由で、SESなどの人材派遣事業は、他の事業に比べ、非常に安定的で、リスクの少ないビジネスになります。
とは言え、最初の前提条件にあるように、契約先のお客さまがいる前提でのお話になりますので、誰でもできる簡単というわけではありません。
SESは一部フリーランスに近い働き方だと思いますし、よりフリーランスのような体系で就業できるSES企業などもありますので、フリーランス目指している方は、SIerや自社開発などよりは、中間地点として、そういったSES企業を考えていただくのもありかと思います。
もしSESについて派遣される側の目線での体験、にて詳しくご質問等ございましたら、以下メールアドレスにご連絡ください。良いSESなどもご紹介させていただきます。
shinguakira1022@gmail.com
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