目次
はじめに
はじめまして,Shimodasと申します。
病院で”理学療法士”( = リハビリをする人 )をやっています。
今回,NotionAIやChatGPTを上手く利用して臨床業務の傍らG検定に合格することができたので,合格体験記を書きました。
非エンジニア・非IT業界からのキャリアチェンジを考えている人達の参考になれば…と思っています!
※Qiita初投稿です,お手柔らかに + 何か誤った情報があればご指摘ください...!
著者のレベル感
スキル / 経験 | レベル | 詳細 |
---|---|---|
プログラミング全般 | 初心者 | Pythonを少し触った程度(GCI 2024 Summer修了)基本的な構文の理解・実装はできるが実務経験はなし。 |
医療知識 | 専門家(若手) | 理学療法士として5年の臨床経験あり。修士課程修了し,論文執筆・学会発表の経験あり |
AI/機械学習 | 入門レベル | 浅く,広く。松尾研講義や自己学習してはいるが,実装経験は少ない。 |
データ分析 | 基礎レベル | 研究のための基本的な統計解析経験(相関係数・t検定など)はあり。 |
AIツール活用 | 初心者~中級者 | NotionAI,ChatGPT,manusを日常的に活用し業務効率化する程度。 |
なぜ理学療法士がG検定を受験するの?
知識の整理と成果の獲得
理学療法士として日々の臨床や研究に向き合うなかで、「AI」や「データサイエンス」といった新しい領域に触れる機会が増え,徐々に興味を持つようになりました。最新のツールを触ってみたり,AI研修や松尾研の講座を受けていたものの,知識が自分の興味に偏っていて,断片的であるように思いました。
G検定のカリキュラムはAIの基礎から応用、社会実装まで体系的にカバーしてくれるため、学んだ内容を整理しながら「ここまで理解できた」という客観的な成果を形にすることができます。また,自分の今までの学習はもっぱら興味ベースであり,時間やお金を費やしても形にならない者ばかりでした。資格という明確な証明は、そうした自己満足に終わらず、周囲に自分の努力を示す力にもなるため,受験を決めました。
キャリアへの不安感
臨床現場だけにとどまらず、データサイエンスやAIの知識を活かせるキャリアへの転換を考える理学療法士も少なくありません。医療職は専門性が高い一方で、将来の働き方やキャリアの選択肢に不安を抱く場面もあります。基本的に理学療法士は昇給の少ない職種です。それもそのはず,新人もベテランも20分を1単位として同額の診療報酬を算定するにもかかわらず,業務に従事する時間は一定であり,病院にとっても昇給させるメリットが少ないからです。運動機能を改善させ,在宅復帰などの目標を叶えた患者様から感謝していただける環境は何物にも代えがたいですが,私と同じような不安を抱えている方も多いかもしれません。
このような現状に対し,G検定は「次のステップ」へ進むための橋渡しになると考えました。AIやデータに強い人材を求める医療・ヘルスケア業界は確実に広がっており、臨床経験とAI知識の両方を持つことは大きな強みになるはずです。「自分のキャリアはこのままでいいのか」という不安を、学びと資格取得を通して具体的な行動を,今回はその第一歩となったわけです。
検定までのスケジュール
段階 | 期間 | 内容 |
---|---|---|
① 初期計画段階 | 7/20~7/22 | G検定の学習計画を立案。学習方法の模索と模試や問題集などのリサーチを実施。 |
② 初期学習段階 | 7/23~8/4 | 学習の進捗を可視化(4%→20%)しながら継続。日々の復習ルーティンを確立し、学習方法の整理を実施。 |
③ 勉強休止期間 | 8/5~8/11 | 旅行に際し,1週間の勉強休止。 |
④ 本格学習段階 | 8/12~8/31 | G検定出願完了。8/21ごろからG検定に集中し,8/29にG検定テキスト(白本)をなんとか完了。 |
⑤ 仕上げ段階 | 9/1~9/6 | 復習を毎日継続。問題集周回完了(黒本),最終模試(黒本付録)に着手。 |
勉強休止期間はPC持ち込み厳禁・勉強禁止としていた(さすがにGPT-5が出た時はスマホでこっそり触ってた)ので,計(44-6): 38日間の実施期間となりました。期間中は臨床業務,研究業務(学会スライド・論文執筆など)と,DS検定・kaggle(pythonしばらく触れてなかったので復習から)などのタスクと並行して進めていました。
G検定受験で工夫したこと
本題になります。私は非IT系で,かつ時間もかなり限られていたため,あまり凝ったことは出来ないものの,学習の効率化が必要と考えていました。Notionを触るのはもともと好きだったので,Notionでの学習管理を行いました。
NotionAIをフル活用した
各ページに確認問題(カスタムAIブロック)を設置
下記のプロンプトにより確認問題を作成
このノートの内容の理解度を確認するための問題を3問作成してください。2問は5択の選択肢形式、1問は文章での説明問題として、回答部分は明確に区別できる形式で,かつ回答中に見えないように,出力の最下部に記載してください. また,なるべく更新前の問題とテイストを変えた問題を出題してください。
完成した確認問題のイメージは以下:
回答・解説はこんな感じ
→テキストや問題のアウトプットとして確認問題を利用することで復習の質と効率が上がった気がします
また,文章問題は以下のプロンプトを用いて採点しました。
選択した文章を,ノートの文章をもとに「採点」し,良かった点・悪かった点についてそれぞれ解説してください
データベースの作成:知識の管理
①:Note : 公式テキスト(白本)の知識を登録
②:W+Q : 作成した問題・問題集(黒本)の間違った箇所を登録
→それぞれプロパティを以下に統一
“Ref” : DL-T,DL-Q(G検定のテキスト/問題集),DS-T,DS-Q(DS検定のテキスト/問題集)
“重要度“ : 1〜5 : 初回は2スタート、以降は以下のフローに従って更新
“最終更新日” : 更新した最後の日付を自動で記録
以下が学習のフローになります。
①教科書OCR → 一読 → 問題解く → 重要度2 (2問間違えたら3スタート)
②間違えた問題を W+Q に登録:該当文章貼り付け・復習 → 重要度2へ
③復習ⅰ:昨日のものを重要度順に復習:
重要度 4,5:文章題のみ解いて採点
重要度 2,3:全問解く
④復習ⅱ:DB指定(Note or W+Q)してノートからランダムに問題作成→解く
:大まかな流れはこのように進め,進捗や問題の得意・苦手に合わせて臨機応変に進めました
データベース縦断でのランダムなテスト問題の作成
上記の④の問題のプロンプトは複数パターン使用しました
(1)日付を指定する方法
【Qualifications】に以下の要件を満たすページを作成して:
①★重要:データベース[ Note : G + DS ]の内容のうち, 月 日に編集されたものを選択する。
プロパティ"Ref"が" "のものを選択する。
②理解度を確認するための問題を10問出してください。
③★重要:回答はトグルブロックにして格納してください。
④10問のうち8問は5択の選択肢形式,1問は文章での説明問題としてください。
⑤また,[ Note : G + DS ]のページ内に書かれている問題とややテイストを変えた問題にしてください。
⑥最後に,今回の問題作成で参考にしたページのページリンクを各問題ごとに挿入してください。
(2)重要度1のものをランダムに復習する方法
【Qualifications】に以下の要件を満たすページを作成して:
①データベース[ Note : G + DS]の内容のうち,「重要度」の値が1であるノートを選択する
②理解度を確認するための問題を3問出してください。
③回答はトグルブロックにして格納してください。★重要
④3問のうち2問は5択の選択肢形式,1問は文章での説明問題としてください。
⑤また,[ Note : G + DS]のページ内に書かれている問題とややテイストを変えた問題にしてください。
⑥最後に,今回の問題作成で参考にしたページのページリンクを各問題ごとに挿入してください。
(1):前日の復習(前日の進捗が多かった場合)に使用
(2):章が進むたびに使用 という感じで進めてました。
参考にしたノートのリンクを添付させると,復習がかなりやりやすかったです
※モデル=GPT5やClaude Sonnet 4を使うと(”良い問題” = 丸暗記では解けない)問題を出してくれる比率が多い気がしました(個人の感想です)
用語の分類はChatGPTを使用した
深層強化学習やオートエンコーダ―などの領域は馴染みが浅く、用語同士の“区別”が必要だと思いました。
→2つのカテゴリの区別に関して出力,まぎらわしい知識用
→複数カテゴリや登場したモデルの年代などの整理はこのように出力
細かい効率化ツールの使用
①Clibor:クリップボード履歴 & 書式除去ツール
https://chigusa-web.com/clibor/
Clibor は、Windows 上でクリップボード履歴を管理できるソフトウェアです。
・コピー内容を履歴として保持できる
・リッチテキストをプレーンテキストに変換して貼り付けできる
・ホットキーで履歴を呼び出せる、細かい設定が可能 などが特徴です
たとえば Excel や Web ページからコピーしたテキストを、フォーマットなしで貼り付けたいときに非常に便利です。
② ShareX:高機能スクリーンキャプチャ & シェアツール
https://getsharex.com/
ShareX は、オープンソースのスクリーンショット/録画ツールで、キャプチャ → 編集 → アップロード → URL 取得 まで多彩な機能を備えています
主な機能として:
- 通常キャプチャ、領域キャプチャ、スクロールキャプチャなど多様なキャプチャ手法
- キャプチャ後に画像編集(注釈・トリミングなど)が可能
- キャプチャした画像をクラウドサービスへアップロードして即 URL を取得
- 多様なアクション/ワークフローの自動化対応
OCRにてテキストの読み込み(※著作権に触れるため個人の使用範囲にとどめてください)に主に使用しましたが,精度はそこそこ。
特に複数ページや図形などを含むページのOCRには弱いので,NotionAIへ「明らかな誤字の修正,適切な見出しの設定,図表のOCRに伴う不要な文章の削除を行ってください」とプロンプトを投げることで解決していました。
③GPTs
(1) OCR文字起こし君
→ShareXが上手くOCRできない時に利用。やはりLLMを挟めば精度は良好。ただし 時間と貼り付けの手間 と GPTの応答の文章が邪魔 なのが難点。”以下は画像内の文字をOCRで抽出した結果です。 等の文章は不要です” とプロンプトを打てばしばらくOCRの文字だけ返してくれます。
(2) GalSensei
→ 新しい知識や難しいことは “ギャル語” と “絵文字” があれば理解しやすい,と2024年5月の usutakuさん(https://x.com/usutaku_channel )の主催するChatGPT講座でお聞きした直後に自作したGPTsをずっと愛用しています(作成者本名につきここでは自主規制)。例えがギャルすぎて逆に分からない時もありますが…
結果と受験の感想
平均得点率 88% で合格でした!
感想としては,数少ない機械学習モデルやCNNなどの深層学習モデルの実装経験がある部分の知識の定着は早く,強化学習やセグメンテーションなどの実装経験がない部分はイメージが湧かずに知識の定着に時間がかかりました。Notebookでコードを書く経験の重要性を改めて感じました。
法律・倫理や社会実装などの文章がメインの部分こそNotionAIを使った確認テストが効果を発揮できた部分ではないかと実感しています(正答率は低かったですが)。
また,”知識と知識を繋げる” 作業の重要性を改めて痛感しました。一度どこかで出てきた知識に関してピンときたら ページリンクを双方に作成することをお勧めします。これができた部分の定着率は高いような気がしました。
最後に,生成AI周りの知識を問う設問が確実に増えていると感じています。プロンプトエンジニアリングやfew-shotなどの基本的な用語周りに加えて,この辺りはテキストに集中するだけではなく,最新の知識に関する情報収集は行っていた方がいいかもしれません。
今後の展望
理学療法士として,G検定の知識を臨床に活かす場面はきっとないですが,深層学習の知識を生かして新しい研究の糸口を探すきっかけになればと思っています。何よりも ”好きなことを勉強して結果が出た” 経験を得ることができたことは素晴らしいと思いました。
さて現在,私はデータサイエンティストやAIエンジニアをはじめとしたAIを使ってインパクトを出せる業界へのキャリアチェンジを視野に入れながらデータサイエンスやAIの勉強を進めています。G検定では本当に初歩的な深層学習の知識を広く・浅く学んだのみですが,今回の体系的な知識とAIドリブンの学習方法が今後の学習に活きると期待しています。