この投稿は、JINS Advent Calendar 2024の10日目の記事です。
はじめに
今や決済手段はグローバルにおいても多種多様な世の中。現金で支払うことも少なくなり、現金を持ち歩くこともだいぶ少なくなりました。
私がここ7年ぐらい決済を見てきた観点になりますが、今回の記事では「小売業における決済について」を取り上げ、考えをまとめてみます(文字ばっかでスミマセン)。
※ JINSは現在日本約500店舗、海外約250店舗なので、その観点を含みます
https://jinsholdings.com/jp/ja/group/jins/global/
ここ数年の決済手段の変化
日本においては、誰もが実感しているQR決済の普及で(逆に乱立している状態のように思いますが)、各社ポイント施策のキャンペーンを理由に、利用者も「ここではこれを使って、この時期はあれを使って…」と上手く使い分けてポイントをGetしている方も多いのではないかと思います。直近5年、特にアジア圏はQR決済が非常に普及したと思います。
一方で、日本では電子マネーとしてFeliCa(Type-F)が独自に普及していたために、各社モバイルウォレットへの対応が日本だけ遅れを取っていましたが、今やそれも対応され、携帯電話でタッチ決済(NFC)という環境が整ったと言えます。
圧倒的にグローバルで使用されるクレジットカードについても、磁気ストライプカードが廃止の方向で、ICチップ必須、タッチ決済対応(NFC)がスタンダードになってきました。クレジットカードとデビットカード(口座引き落とし)は、購入対象物や購入金額によって使い分けている方が多いかと思います(特にアメリカ)。
また、コロナ後のインバウンド需要回復や為替の影響で、国内外様々なお客様が決済されるという環境下、「Alipay+」のような複数国の決済を束ねたサービスが出てきたのも、各国のお客様にとって便利になってきていると思います。
決済手段が対応していないことを機会損失と捉えるか
「これで支払できますか?」→「できません」→「じゃあいいですー」と購入機会の損失にならないように…
とはいえ、どんな決済手段も利用できるように対応すべきなのか。やはりここが重要なポイントになると思います。これは小売業として会社・ブランドの方針を踏まえて対応する、が答えだと思っています。
では、もう一歩踏み入れて、上記を決める上でどのような観点があるか、を見ていきます。
観点
①まず現金をどうするか
キャッシュレス店舗という店舗モデルが出始めて暫く経ちますが、未だ多くの小売店舗では、現金の取り扱いは切り捨てられない、と考えることが多いと思います。返金対応でも現金が必要な場面があったり、やはりキャッシュレス店舗というのは一部の限定された店舗モデル、と考えている小売業がまだ一般的であるように思います。
一方で、店舗で現金を取り扱うと、準備金/売上金の管理が必要になります(委託する場合は入金機や回収費もかかり、費用もそれなりにかかってきます)。また、自動釣銭機を使用すると、現金を手動で取り扱う必要がないメリットがある反面、紙幣・硬貨の詰まりは店舗スタッフを悩ませる要因の一つであったり、新紙幣や新硬貨が発行された場合は、別途更新の対応が必要だったりもします。
現金対応可能なセルフレジは自動釣銭機を使うしかありませんが、対人レジであれば、単純なキャッシュドロワーを使うか自動釣銭機を使うかという観点も、店舗スタッフの運用とシステム対応のバランスで選択することが望まれます。
②平均購入単価と国・地域、ローカル決済
店舗の決済手段は、お客様の平均購入単価と国・地域によっても利用状況が異なります。業態によってはあまり利用されない決済手段は対応しない、ということも観点としてあり得ます。現地のローカル決済手段を対応したい場合は、POSと決済端末が連動していなくても良い場合、独立して端末を用意し対応してしまう、というのが一般的かもしれません(金額の打ち間違えによる差異には気を付ける必要はあります)。
一方で、日本のローカルのQR決済のように、下記観点で対応することも考えられます。
QR決済の方式:2パターン
・CPM(Consumer-Presented Mode):利用者がQRを提示するタイプ
・MPM(Merchant-Presented Mode):店舗側がQRを提示するタイプ
CPMでPOSと決済端末の連動が必要な場合、ローカル独自のものや対応エリアが小さいようなものまでシステム改修で対応するか、という観点です。もしMPMに対応しているのであれば個別MPMで対応してしまう、ということも一つの考え方だと思います。
③決済手段によるキャンペーン
ある決済手段に対応していないと、そのキャンペーン施策に乗れない。これをそもそも乗らないと考えることもでき(強気)、自社のキャンペーンで頑張るということもできますが、自社でキャンペーンを打つのが大変、単純に売上を上げたいという場合は、キャンペーンによって利用率が上がる決済手段は優先的に対応したい、と考えるのが一般的な考え方だと思います。
④日本のインショップ店とロードサイド店
通常、日本のインショップ店は決済手段を指定されることが多いため、インショップ店同士でも使用できる決済手段が異なるといったことがやむを得ない状況にあります(この方式が今後各店舗に任せる形に変わっていく可能性はあるかもしれませんが、現状は指定される形が続いています)。
また、ロードサイド店は直接契約になるため、そこをインショップと全て共通させる、というのもなかなか難しいのが現状です。
お客様にとっては「あそこの店舗では〇〇で支払できたのに…」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、そこを主要な決済手段だけで対応するか。同じブランドの店舗が、店舗によって取扱い決済手段が異なるということを、どこまで許容して考えるか、になります。
⑤対人レジ・セルフレジ、EC/アプリ決済
決済するチャネル別に決済手段をどう選択するか、という観点です。
対人レジ決済は、店舗スタッフが対応するという上では非常に柔軟に対応できますが、レジ付近に決済端末が乱立するのは避けたい(可能な限り1つの端末に集約したい)、決済手段が多すぎて店舗スタッフが把握しきれない、というのも一つの選択の観点だと思います(この場合はレジ上で細かい金種を意識せずに決済を可能にする、という配慮で回避することも可能かと思います)。一方で、セルフレジに関してはPOSと決済端末の連動が必須になり、現金を対応する場合は自動釣銭機との連動が必須です。
また、ECやアプリ決済は店舗決済とは異なり、キャリア決済/銀行振込/コンビニ・郵便局前払い/代金引換/BNPL(後払い決済)等の対応が差分となります。さらに、不正利用によるチャージバックへの考慮も必要となります。
これら、店舗とEC/アプリ決済でも対応する決済手段が多岐に渡りますが、各国・地域で個別開発して対応し維持するのか、どこまで統一するのか、という選択を強いられます。ECサイトで購入しリアル店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)や、宅配ボックスやドライブスルーなどの自宅以外で受け取るClick&Collectも、今では新たなショッピングスタイルとして普及してきている今、POSやECのソリューションと、決済Gatewayの組み合わせが、対応する決済手段に関わる非常に重要な要素になっていると思います。
⑥手数料率・経理処理
そして、お客様サービスからは離れますが、やはり手数料率というのも決済手段を選択する大きな要素の一つであると思います(決済金額の何%を支払う訳ですから)。この点も、お客様サービスとの兼ね合いをどう考えるか、で考慮する点となります。
また、複数入金元があり、入金タイミングが異なれば異なるほど経理処理は複雑になりますので(ERPの導入状況にもよりますが)、管理面でもシンプルにできることが理想と言えます。
まとめ
総じてあれこれ観点がある中で、お客様の利便性/システム対応/手数料率 等を踏まえ、何を優先し自社の事業形態に合った決済手段を選択する、がポイントになるかと思います。
また、オンライン決済手段の障害、機器・端末故障時の対応として、何かしら決済手段を切り替えられる冗長化も一つの必要な観点だと思います。今や現金しか使えません、という状態はなかなか厳しい時代になりましたね。日本も決済手段がもっと整理されていけば良いと思う今日この頃です。