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DxLibAdvent Calendar 2019

Day 1

DXアーカイブの暗号化を強引に解除することは法に触れるのか?

Last updated at Posted at 2019-11-30

注意

この記事は法律の専門家によって書かれた記事ではないため、記事の正確性については100%の保証をするものではありません。
個別の事案について筆者が回答できるものではありませんので、弁護士などの法律の専門家にご相談ください。

DXアーカイブの暗号化が問題になった

2019年1月3日のDXライブラリの更新でDXアーカイブの仕様が変更されました。
主な仕様変更は「暗号化されたDXアーカイブの鍵長が56ビットになった」ことです。
これは、私がwas-blue.0793名義で「Android版(当時iOS版DXライブラリは存在しなかった)において、DXアーカイブの鍵長が56ビットより大きいことは日本、アメリカの輸出関連の法律上問題にならないか?」という指摘から始まり、議論の結果「Windows版でも鍵長56ビットより大きいと日本の輸出法に触れる恐れあり」として、最終的に鍵長を56ビットに落とすこととなったものです。
ここで、私は「DXアーカイブの暗号化を強引に解除するツールは違法なものである」と話したのですが、何故私がそう思ったのか、この記事でお話ししようと思います。

技術的保護手段、技術的利用制限手段

まず、DXアーカイブを暗号化することが「技術的保護手段」或いは「技術的利用制限手段」に相当するかが問題となります。
2019年11月現在(ただし、2019年1月当時もこの節について変化はありません)、著作権法においてこれらはこのように定義されています。
(e-Govより引用)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号及び第百二十条の二第一号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第三項において同じ。)を制限する手段(著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

だいぶわかりづらいですが、わかりやすく整理して言い換えると、技術的保護手段は、

  1. 電子的な、あるいは磁気的な方法、または人の知覚によって認識することができないもの
  2. 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権、著作隣接権を侵害する行為を防止・抑止する手段である
  3. 著作権者が自らの意思で施したものである
  4. 著作物の利用に際して使われる機器が特定の反応をする信号を記録しているか、送信方式か機器で特定の変換をしないと使えないようにしている
    これらすべてに該当するものであり、技術的利用制限手段は、
  5. 電子的な、あるいは磁気的な方法、または人の知覚によって認識することができないもの
  6. 著作物の使用を制限する手段である
  7. 著作権者が自らの意思で施したものである
  8. 著作物の利用に際して使われる機器が特定の反応をする信号を記録しているか、送信方式か機器で特定の変換をしないと使えないようにしている
    これらすべてに該当するものがこれにあたります。

DXアーカイブはこれに相当するか

DXアーカイブの暗号化が、電子的な方法に相当することは間違いないでしょう。
続いて、「著作権」などの侵害を抑止するためのものか。
これに関しては、著作権を保護するために暗号化を施したのであれば技術的保護手段に該当しますし、保護する目的がなかったとしても、DXアーカイブはDXライブラリで使う特定のアプリでしか使えないようにするものなので、技術的利用制限手段に該当します。
続いて、著作権者が自らの意思で施したものであるかどうか。
例えば、使った素材の中に一般的なフリー素材が入っているとその素材が「著作権者が自らの意思で施したものではない」と判断される可能性があり、このように判断されると技術的保護手段・技術的利用制限手段のどちらにも該当しないことになりますが、自作した素材を暗号化したDXアーカイブにした場合は、自作した方が著作権者となり、著作権者が自らの意思で施したものとなるでしょう。
最後に「特定の反応をする信号」か「特定の変換をしないと使えないか」に該当するかどうか。
これは、DXライブラリを使った特定のアプリ内でしか使えず、アプリで使えるようにするには復号化、つまり変換が必要になります。
よって、後者の「特定の変換をしないと使えない」に該当することとなります。

技術的保護手段、技術的利用制限手段を解除してはならない根拠

著作権法において、この「技術的保護手段」「技術的利用制限手段」の解除に際し、このような条文があります。

第百十三条 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
(中略)
3 技術的利用制限手段の回避(技術的利用制限手段により制限されている著作物等の視聴を当該技術的利用制限手段の効果を妨げることにより可能とすること(著作権者等の意思に基づいて行われる場合を除く。)をいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)を行う行為は、技術的利用制限手段に係る研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き、当該技術的利用制限手段に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

これに加えて、

第百二十条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 技術的保護手段の回避若しくは技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避若しくは技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とし、又は第百十三条第三項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を技術的利用制限手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者
二 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避又は技術的利用制限手段の回避を行つた者
(後略)

技術的保護手段、技術的利用制限手段を回避するプログラムの公開等について罰則をもって禁じる条文があるため、日本国内においてはDXアーカイブの暗号化が技術的保護手段あるいは技術的利用制限手段に該当する場合、それを解除する方法の公開や解除ツールの配布は著作権法違反となります。

結論

これらのことから、DXアーカイブに著作権保護を目的として暗号化が施されている場合、そのDXアーカイブを強引に解除する方法、またはそのツールを公開することは著作権法に反します。
よって、DXアーカイブに著作権保護を目的として暗号化が施されている場合、それを強引に解除することは明確に違法なものであることは間違いないでしょう。

あとがき

実際はDXアーカイブの暗号化を解除する行為については他にも不正競争防止法など多くの法律が関係するのですが、どちらにしても著作権法違反となれば違法なものとなりますので、わかりやすさの観点から著作権法の問題のみに絞っています。
繰り返しになりますが、この記事は法律の専門家によって書かれた記事ではないため、記事の正確性については100%の保証をするものではありません。
個別の事案について筆者が回答できるものではありませんので、弁護士などの法律の専門家にご相談ください。

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