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ゲームシナリオ検証導入の手引き

Last updated at Posted at 2022-08-23

はじめに

資料作成の背景

昨今、モバイルゲームにおいてもコンシューマゲームと遜色のないクオリティで表現されることが増えてきております。
しかしながら一般的なテスト技法と異なり、シナリオ周りのテスト技法(以降、ゲームシナリオ検証と記載します)に関しては、
参考資料があまり出回っていない状況です。
なお、この資料ではシナリオで表示するテキストや立ち絵などにフォーカスした検証内容についてまとめています。
選択肢によるフラグ管理などの検証については、取り扱いしていませんのでご了承ください。

本資料の説明

本資料はゲームシナリオ検証を実行するにあたり必要な事前準備や基本的な検証内容をまとめています。
ゲームシナリオ検証を導入する際に必要な準備は本資料を参考にしていただくだけで最低限の準備ができ、
以降の作業に注力しやすい環境を提供することを目的としています。

本資料の利用想定対象と利用用途

◎対象
・ゲームシナリオ検証にこれから着手する方
・ゲームシナリオ検証に携わっている方

◎使用用途
・ゲームシナリオ検証の立ち上げ時の準備工数削減
・ゲームシナリオ検証の検証効率化

注意事項

◆シナリオ検証について◆
ここで説明するシナリオ検証は、シナリオのテキストや立ち絵、ボイス等が正しく実装されているかを検証することを指しています。

シナリオ中にどのタイミングでどの立ち絵が表示され、どのSEが再生されるなど、詳細な挙動についての仕様書が用意されることは稀です。

一般的なテストであれば、テストを行う機能の仕様書をもとにテストケースを作成してテストを行うと思いますが、シナリオ検証ではその方法は難しいです。
「誤字・脱字がないこと」や「立ち絵が正しく表示されていること」といった粒度の粗い確認項目であれば用意は可能ですが、正しい状態がわからないとこれ以上粒度を細かくすることは困難です。
そのためシナリオ検証では経験ベースのような形で検証を行うことが多くなると思います。

シナリオ検証導入までのフロー

シナリオ検証を導入する場合、おおまかに以下のフローを辿ることになります。
本ページでは各フェイズについて説明致します。

1.仕様把握

2.開発側とのすり合わせ

3.検証内容の確定

4.検証を行うための準備

1.仕様の把握

シナリオ検証を行うにあたり、検証対象のシナリオがどのような再生形式であるかを把握する必要があります。
(後述の検証観点を割り出す際に必要)

シナリオを構成する要素として以下2つを把握しておきます。
①ボイスの再生形式
②映像の再生形式

①ボイスの再生形式

各アプリのシナリオでよく見かけるボイスの再生形式は大まかに以下の3パターンに分かれます。

ボイスなし  :進行中、セリフに対してボイスが一切再生されない
一部ボイスあり:他のキャラクターへの呼びかけや、セリフの感情にあったセリフが少々再生される
フルボイス  :セリフに合わせて全てボイスが再生される

②映像の再生形式

本資料ではシナリオの形式を以下のように定義づけて分類しています。

紙芝居型 :2Dの立ち絵のみで構成された形式、左右に動いたり、口パクなどの動きがある場合もあり
Live2D :2Dイラストがセリフのニュアンスに合わせて動く形式
3D   :3D映像で構成された形式
ムービー :ムービーが流れ、自動的に進行していく形式
体験型 :操作性があり、進行していく中でセリフが表示される形式

2.開発とのすり合わせ

まずステークホルダーを確認します。
企画or開発内で、コンテンツやシナリオの担当者を確認し、主に以下ポイントのすり合わせを行います。

すり合わせ時のポイント

  • シナリオボリューム
    検証工数を踏まえ、1回の検証期間で確認するシナリオ数を確認します。

  • 新規開発の場合
    初期実装されるストーリーの章数、話数、シナリオの種類(メインストーリー、キャラクターストーリー、イベントストーリーなど)、シナリオ・種類毎のおおよそのページ数などを把握します

  • 運用中の場合
    どのくらいのサイクルでシナリオ検証を行うのか(1か月、半月サイクルなど)を確認、サイクル中に展開されるストーリーの章数、話数、シナリオの種類、種類ごとのおおよそのページ数を把握します。

  • 検証観点
    プロダクトに必要な検証観点群をピックアップし、監修レベルに合わせてテストで担保する範囲をすり合わせます。
    詳細は後述します。

また、観点が確定したらその確認粒度も認識を合わせておく必要があります。
粒度を細かくすればするほど検証工数が膨れてしまうため、許容範囲を予め決めておくことをおすすめします。
特に検証するテスターに依存する観点などは、許容範囲を決めておくことが重要です。
テストで最低限担保しなければならない範囲と、検証中に気付いたらレベルで報告するものなど優先度をつけておくことも必要な要素となります。

・検証工数

シナリオ検証で確保できる工数の認識合わせ
工数によって確認出来る観点粒度も異なるためすり合わせが必要
見積もる上で、検証観点を全て確認するのに1話もしくは1ページ当たりどのくらいかかるか、それとシナリオボリュームの乗算にて見積もります。

・検証タイミング

原稿のまま文章の中身を検証する場合は原稿が出来上がった初期のタイミングで検証が可能、演出やボイス込みで検証する場合は、データが打ち込まれた状態である必要があるため検証が後半になります。

不備があった場合にシナリオの内容や展開に、影響を及ぼすような修正が発生する場合は検証をなるべく早く行う必要があり、シナリオの内容は版元監修で担保出する場合は、検証を後半にした方が完成に近い状態で確認することが出来ます。

タイミング 特徴
原稿の状態 データ作成前に検証可能なため、シナリオの内容自体に不備があった場合にも修正が効きやすい
実機実装前 ある程度データが揃った状態での検証が可能なため、演出を含めて全体的に検証可能だが、修正時の影響範囲が大きい
実機実装後 完全にデータが揃った状態で検証可能だが、修正期間や範囲に限界がある

検証粒度について

本資料ではQA側で実施する検証粒度を大まかに3つのパターンに分けています。

検証粒度:低

一番検証粒度の荒いパターン。
内容のほぼすべてが開発側/監修側で担保されており、QA側ではシナリオが正常に再生されるかの最終チェックを行うなど、シナリオ自体の確認をQA側ではほぼ行わない。

検証粒度:中

表示不備やテキスト内の誤字脱字など、一般的な検証範囲で検証を行うパターン。
設定等の不備については気が付いた範囲で指摘を行う程度とし、検証の担保範囲を開発側とQA側で完全に切り分けている状態。

検証粒度:高

シナリオの内容に関してほぼすべてをQA側で検証するパターン。
単純な誤字脱字だけでなく、設定に関する不備なども検証対象となるため、検証対象のシナリオに対して高い知識が必要になる。
検証用の資料についても充実させる必要があるため、開発側との連携も必須。

検証観点について

検証対象シナリオの検証粒度と再生形式に合わせて検証観点を抽出します。

自身が検証するシナリオの検証粒度が「低」の場合、検証観点リストの検証粒度が「低」の観点、
検証粒度が「中」の場合は「低」と「中」の観点で、「高」の場合は「低」「中」「高」すべての観点で検証します。

◆テキスト関連

No. 検証粒度 検証対象 検証観点
1 テキスト 固有名詞に誤字・脱字がないか
2 テキスト タイトル、IP固有のレギュレーションに反していないか(記号や漢字の使い分け、IPの設定に基づくルール)
3 テキスト 世界観に反する表現がされていないか
4 テキスト 事実に基づく表現である場合、誤りが無いか
5 テキスト/バトル クエストの内容として一貫した設定がなされているか(戦闘相手や制限などがあればそれも)
6 テキスト 言い回し/呼称にキャラクター性との矛盾/違和感が無いか
7 テキスト 文章表記としてのレギュレーションに反していないか(末尾が句点で終わっているか/いないか、記号の後に全角スペースがあるかなど)
8 テキスト 呼称が適正かどうか
9 テキスト シナリオ展開に矛盾が無いか(登場人物の移動、配置など)
11 テキスト 表記揺れがない※同じ文言の表記がシナリオ内で(過去分も含め)統一されているか
12 テキスト 誤字・脱字がないか
13 テキスト 改行位置が適正かどうか
14 テキスト 難読漢字が使用されていないか、難読読みとなっていないか(必要に応じてルビを振る提案などを行う)

※テキスト関連はすべての再生形式で確認する。

◆キャラクター・背景の表示

No. 検証粒度 検証対象 検証観点 紙芝居 Live2D 3D ムービー
1 キャラクター アスペクト比別に再生して見切れが発生しないか
2 背景 アスペクト比別に再生して見切れが発生しないか
3 演出 アスペクト比別に再生して見切れが発生しないか
4 キャラクター 話者と立ち絵の表示が一致しているか
5 キャラクター 場面に適した明度になっているか
6 演出 会話内での表現と演出(エフェクト/SE/BGM)に齟齬が無いか
7 背景/演出 会話内での表現と表示物に齟齬が無いか(時間帯、建物、場面 etc)

◆その他

No. 検証粒度 検証対象 検証観点 紙芝居 Live2D 3D ムービー
1 倫理的な問題をはらむ表現がされていないか
2 時世を踏まえて避けるべき表現がされていないか
3 商標の観点で問題がないか
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