この記事は エムスリーキャリア アドベントカレンダー の21日目です。
プログラマーとして開発をしてきたのに、ある日、リーダーをやってくれと言われる。そんな話を結構聞きます(自分もそうだった)。
そもそもプログラマーとして必要な能力とリーダーとして必要な能力は異なるので、いきなりやれって言われても難しいんですよね。でも、リーダー研修とかやってるところは少ないですし、自分で何とかしないといけないことの方が多いかと思います。
自分自身、結構悩んで色々試したので、その中で実際に読んで良かった、役に立ったと思う本をいくつか紹介させて頂きます。同じ悩みを持つ方の、少しでもお力になれればと思います。
ピープルウェア
リーダー~PM、マネージャーの人にはぜひ読んで欲しい、プロジェクトマネジメントの必読書と言っても過言ではない一冊! プロジェクトが失敗する一番の原因は「人」であり、いかに「人」が成果を出せるようにするか、について書いています。
個人的に好きな話:
・品質第一・・・・・・時間さえ許せば
一般にQCDはトレードオフだと言われています。・・・・・・本当にそうでしょうか?この本では「エンドユーザーの要求をはるかに超えた品質水準は、生産性を挙げる一つの手段である」と書かれています。品質はプログラマーの自尊心と直につながっているので、安易に品質に妥協すると生産性が落ちる、ということだそうです。
他にも、パーキンソンの法則はプログラマーには当てはまらない!など、興味深い話が盛り沢山になっています。ぜひ、読んでみてください!
TeamGeek-Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
チームとして働くための話を、元googleの人がユーモアと皮肉を交えて書いた本です。
人とうまく働くには~から始まり、チームとして働く、自分がリーダーになったら、組織の中で働く、など社内政治の話にも言及しています。初めてリーダーをやる人や、プログラマーからリーダーになってしまった人にはぜひお勧めです!(もちろん既に経験を積んでいる人も、読んで得るものは大きいと思いますのでぜひ!)
個人的に好きな話:
・失敗は選択肢の一つ
「これは何だね」CEOが聞いた。
「退職届です」マネージャーが答えた。「ここに呼び出されたのは、解雇されるからですよね」
「解雇だって?」CEOは信じられない様子で答えた。「なぜ私が君を解雇するのかね。1,000万ドルかけて君をトレーニングしたのだよ!」'
失敗から何を学ぶかが大事、という話ですね。ちなみにgoogleでは、過去に失敗したことがなかったら、それは革新的ではないか、リスクをとっていない証拠だと考えるそうです。
子どもの心のコーチング―一人で考え、一人でできる子の育て方
子育ての本です。いや、そもそもお前、結婚すらしてないじゃん。と突っ込まれそうですが…。
最近、指示待ちの人が多い、もっと自分で考えて動ける人が欲しいという話をよく聞きますよね。この本では、子供にどうやって自分で考える力をつけるか、を説明しています。
その内容を応用すると、自分の部下や後輩が自分で考えて動けるようにするにはどうしたらいいか、ができるようになります。いかに外発的動機(やらされている)ではなく、内発的動機(やりたい!)を育むか。'親は子どもをサポートし、才能を花開かせるコーチ'という一文があります。これは、リーダー(マネージャー)はメンバーをサポートし、才能を花開かせるコーチ、と読み替えることもできるのではないでしょうか。子育てとメンバーの育成、両方に使える一石二鳥の本です。
ちなみに、実際に子供が生まれた&リーダーになってダブルで悩んでいた同僚にこの本を進めたところ、子供&メンバーへの接し方がいい感じに変わったとのことでした。何かブレイクスルーがあったようです(何があったかは聞いたけど忘れた…)
デッドライン
小説仕立てのプロジェクトマネジメントの本です。
ピープルウェア、熊とワルツを、に社内政治の話を足して小説にした感じです。他の本だと重くてとっつきにくい・・・という人でも、小説形式になっているので読みやすいかと思います。また、小説なので自分だったらどうするか、という視点で考えやすく、既に他の本を読んだ状態でも多くの気付きを得られました。
個人的に好きな話:
・プロジェクト管理講習会
「ハード面の管理学は教えるが、人材の選択、適材適所、士気の維持、チーム編成についてはふれもしないと。管理において最も重要な四つの項目に」
「そう、そういった話はしません。なにかお気にめしませんか、ええと・・・・・・」
「トムキンスです。ええ、気に入りませんね」
「何が気に入らないです」
「この四つの項目を組み込まずに、『プロジェクト管理』講座と呼ぶことが、です」
「ああ、つまり名前が気に入らないというわけですね。それじゃ、なんと呼べばいいんです」
「『管理ごっこ』なんてどうです」
部屋全体が息を飲んだ。トムキンスはくるりと後ろを向くと、部屋を出ていった。'
管理ごっこ!
ついハード面(ガントチャート、WBS、状況報告、上との連絡、会議体、勤怠管理、進捗状況の確認・・・など)に注力しがちですが、本当に大事なのはソフト面、つまり人だという話です。他には、なぜプレッシャーをかけても生産性が上がらないのか、に対しての'プレッシャーをかけられても思考は速くならない'も最高の一文だと思います。
※別にハード面を軽視しているわけではありません。作中でもハード面をちゃんと専任の人に任せたりしています。
アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン
プロジェクトでのノウハウや、アンチパターンを集めた本です。
普通に読むだけでもタメになることが多いですし、さらに深掘りして考えるきっかけにもなる、役に立つ話が盛り沢山です。
個人的に好きな話:
・フェイスタイム
分散開発は本来難しく、ハイリスクの方法である。
欲しい人材を確保しやすいという理由で、そのリスクが正当化される場合もある。
トム・ウルフの言葉を借りれば、「すすめはしない、わかるだろう、でもやれないことはない」ということになる。
なので、実際に顔を合わせる機会を作ることが大事、という話です。
・かかし
かかしの哲学は、早いうちに間違え、何度も間違えることが、できるだけ早く正解にたどり着く方法だということだ。
自分もできる限り早くお客様(今は事業会社なので業務側だったりですが)に見せるようにしています。モックを見せて、完全ではなくても機能ができれば一旦見せて…、早い段階でフィードバックを貰うことで手戻りを減らせるからです。
デスマーチ-ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか
デスマーチに巻き込まれたらどうするか、という本です。
といいつつも、デスマーチ以外でも役立つことが多く書かれているので、結構お勧めです。
個人的に好きな話:
デスマーチ・プロジェクトに参画するよう要請された場合、「いいえ、お断り致します。パスさせて下さい」とはっきり言う方がよい。会社の雰囲気がそんな態度を許さないなら、いつでも、「それなら辞めます」と言えばよいのだ。
…とはいえ家庭の事情などもあり、そう言える人は少ないと思います(さらに言えば、参画するまでデスマーチだと分からない場合も多い)。じゃあどうすればいいのか…ということについては、本文を読んで頂ければと思います。
人月の神話
いわずと知れた、ソフトウェア開発の聖書(ちなみになぜ聖書と呼ばれているかというと…)。
よくプロジェクトで遅延した際に、人員を追加するということがおこなわれています。…まあ、安易にそれをやると余計に遅延するんですけどね。なぜ人を増やすと遅延するのか、他にどうすれば良いのか、などが書かれています。
他にもプロジェクト開発を成功させるにはどうしたらいいか、人月に関する問題など濃い内容が盛り沢山です。結局は銀の弾(あるいは火の鳥、魔法のランプ、ドラゴンボール…)は存在しないので、泥臭い方法でも地道にやっていくしかないんですよね。1975年発行の本なので内容が古かったり、元が論文なので読むのが結構しんどかったりしますが、それでも読む価値がある一冊だと思います。
ABDでやるのにいいのかも?
個人的に好きな話:
私たちが使っている見積もり手法は、コスト計算を中心に作られたものであり、労力と進捗を混同している。人月は、人を惑わす危険な神話である。なぜなら、人月は、人と月が置き換え可能であることを暗示しているからである。
9人の妊婦を集めても、1ヶ月で赤ちゃんを出産することはできない、ってやつですね。後は、1人月と1ヶ月が必ずしもイコールではないのも要注意です。12月スタートで3人月だから1人でも2月末には終わるはず…?
さあ、才能に目覚めよう-ストレングスファインダー
人間の資質を34の要素に分類し、それをいかに活かすかという内容の本です。
孫子の有名な文で、
彼を知り己を知れば百戦殆からず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し
というものがあります。
敵はそもそも誰になるかも分からないですが、自分のことはいつでも知ることができます。自分は何に向いていて、何に向いていないのか。どういう場面で力を発揮できて、どういう場面で死にやすいのか。
この本は、自分を知るためにかなり優秀な本でありツールです(マネジメント、あるいは人を案件に配置するのに使ったりしている会社も多いです)。
例えば自分の場合、戦略性が一番強いので、事前にリスクを潰したり、解決策を見つけ出すといったことが得意なことが分かります。反面、規律性が下から3番目なので、ルールでガチガチの環境やルーチンワークなどには向かないということが分かります。他の要素も併せて考えた結果、自分が強みを発揮できるのは"未開のジャングルを切り開いていく"ような仕事だという結論に至りました。
この本には診断を受けるためのコードが付属しているので、ぜひ買ってやってみてください!
ストレングス・リーダシップ-さあ、リーダーの才能に目覚めよう
上で紹介したストレングスファインダーの結果を、リーダーシップに活かそうという内容の本です。
そもそも一人で完全な人間なんていないので、お互いの強みで弱みを補うことでチームとして完全になろう、という話です。
例えば自分の場合、問題解決(戦略性、着想)や、人と仲を深めること(親密性)は得意ですが、新しく人と出会う(社交性)などが弱いので、そこが得意な人を見つけて組むといい感じのチームになります(もう少し突っ込むと、この本では34の資質を4つの領域に分けて考えています。自分は戦略的志向力と影響力が強く、実行力と人間関係構築力が弱いです。なので、実行力と人間関係構築力が高い人とチームを組むと成功しやすい、となります)。
また、本の中で自分の強みをどうリーダーシップに活かすか、この強みを持つ人はどのように率いればいいか、が書かれています。この人とはなぜかうまくいかないなーという場合も、資質の視点から接し方を変えてみるとうまくいったりします。
この本にも診断を受けるためのコードが付属しているので、ぜひ買ってやってみてください!
以上、個人的にお薦めの本でした。
逆にこの本も良いよ!お薦めだよ!などあれば、ぜひコメントを頂けますと幸いです。