James H. Fowler大先生がHarvard Dataverseでデータを公開してくれているので遊んでみました。
論文はこの2つ。
Legislative Cosponsorship Networks in the U.S. House and Senate, James H. Fowler, Social Networks 28 (4): 454-465 (October 2006) https://doi.org/10.1016/j.socnet.2005.11.003
Connecting the Congress: A Study of Cosponsorship Networks, James H. Fowler, Political Analysis 14 (4): 456-487 (Fall 2006) https://www.jstor.org/stable/25791871
データはここから入手できます。
#何をするかというと
要するに、アメリカ議会に提出される法案の共同提出者名簿を使って、議員同士がどのように「つながっているか」を調べたものです。
このデータセットさんは非常に優秀なので、各議員のNOMINATEスコアが付されていたりします。NOMINATEというのは各議員の持っている政策的立場を二次元にまとめたものと思ってしまった大丈夫だと思います。
このスコアが正の数なら保守的、負の数ならリベラルと言われたりしますね()
今回はこいつらを使って「他の議員よく繋がっている議員はどんな政策的立場をとる傾向にあるか」を調べます。さっそくアメリカ議会下院のNOMINATE第1次元をみてみましょう。
#実際にやってみる
fit.dim1.H.dem <- list()
chmbr <- "H"
for(i in c(93:107)){ #93議会から107議会までの
con <- i
net <- NET %>%
filter(congress==con, chamber==chmbr, party==100) #第i議会下院の民主党議員(party=100)を抽出
fit.dim1.H.dem[[i-92]] <- lm(ideol1 ~ connectedness, data = net)
#NOMINATEスコア第1次元を中心性で単回帰
}
要は、アメリカ議会下院で93議会から107議会までの間において、共同提出者になっている回数の増加は政策的立場をどの程度変化させるのかをまとめたリストを作成しています。
これを議会会期毎にプロットしていきます。
df.dem <- matrix(NA, length(fit.dim1.H.dem), ncol(fit.dim1.H.gop))
for (j in c(1:length(fit.dim1.H.dem))) {
df.dem[j,] <- fit.dim1.H.dem[[j]]$coefficients
}
plot(c(93:107), df.dem[,2], xlab = x, ylab = y, main = ttl)
民主党議員の場合、中心性が高いほどNOMINATE第1次元が負の数になりやすい傾向があることがわかります。Poole & Rsenthal (2006)によれば第1次元は保守/リベラル軸で、数値が-1に近づくほどリベラルなことになっているので中心性が民主党議員で中心性が高い人たちは点呼投票でよりリベラルな政策的立場を取りやすいことがわかります。
共和党議員についても見てみましょう。やってることはさっきと同じです。
fit.dim1.H.gop <- list()
chmbr <- "H" #下院を抜き出す
for(i in c(93:107)){
con <- i
net <- NET %>%
filter(congress==con, chamber==chmbr, party==200)#第i議会下院の共和党議員(party=200)を抽出
fit.dim1.H.gop[[i-92]] <- lm(ideol1 ~ connectedness, data = net)
}
summary(fit.dim1.H.gop[[1]])
df.gop <- matrix(NA, length(fit.dim1.H.gop), ncol(fit.dim1.H.gop))
for (j in c(1:length(fit.dim1.H.gop))) { #各会期の回帰結果をデータフレームにまとめる
df.gop[j,] <- fit.dim1.H.gop[[j]]$coefficients
}
colnames(df.gop) <- names(fit.dim1.H.gop[[1]]$coefficients)
plot(c(93:107), df.gop[,2], xlab = x, ylab = y, main = ttl, type = "l")
共和党議員について見てみるとちょっと面白いことがわかります。
回帰した推定値を議会期の推移で見てみると、中心性が大きくなる場合、政策的立場のスコアを押し下げる効果が見て取れる年が多いのです。推定値0のところに赤線を引っ張って見ましたが、ほとんどの時期でスコアを引き下げる効果が見られます。
データセットがある93議会以降は次第に議会における分極化が進んでいった時期でもあるので、両党のNOMINATEスコアは比較的凝集性が高くなっていっており、民主党議員はスコアが負の数に、共和党議員は正の数になる傾向があります。それでもなお、両党議員においてスコアを引き下げる効果が観測されるとすると、中心性の増加は民主党議員の場合、政策的立場が極端になることを、共和党議員の場合は政策的立場が比較的穏健になることを意味するのかもしれないですね。