はじめに
最近、ChatGPTやClaudeの話を耳にしない日はないくらい、AIが身近になってきました。その中核となっているのが「LLM(Large Language Model)」という技術です。
今更ではありますが、エンジニアの視点からLLMの基本を理解し、実際に使えるようになることを目指して書いてみました。
LLMってどんなもの?
AIの世界での位置づけ
LLMは「Large Language Model(大規模言語モデル)」の略で、膨大な量のテキストデータを学習することで、人間のような自然な文章の理解や生成ができるようになったAIモデルです。
従来の機械学習モデルと比べて、以下のような特徴があります。
- タスクごとの個別学習が不要
- 柔軟な文章理解と生成が可能
- プロンプト(指示)による多様なタスクへの対応
- 文脈を考慮した応答が可能
なぜ今注目されているの?
- 性能の飛躍的な向上:GPT-3以降、モデルの大規模化により実用的な性能を実現
- 使いやすいAPI:OpenAIなどが提供する使いやすいAPIの登場
- 実用的なアプリケーション:ChatGPTに代表される便利なサービスの普及
- オープンソース化の進展:LLaMAなどのオープンモデルの登場
LLMの中身をのぞいてみよう
基本的な仕組み
LLMの核となる技術は「Transformer」というアーキテクチャです。これは、文章の前後関係(文脈)を効率的に処理できる仕組みを持っています。
簡単に言うと・・
- 入力された文章をトークン(単語や文字の単位)に分割
- 各トークンの関係性を計算
- 文脈を考慮して次のトークンを予測
- この予測を繰り返して文章を生成
主なLLMの種類
モデル名 | 提供元 | 特徴 |
---|---|---|
GPT-4 | OpenAI | 最も高性能な商用モデル |
Claude | Anthropic | 長文処理が得意 |
LLaMA | Meta | オープンソースの代表格 |
PaLM | Googleの主力モデル |
どうやって動いているの?
Transformerの基本構造
Transformerは「Self-Attention」という仕組みを使って、文章中の単語同士の関係性を学習します。
# 簡略化したSelf-Attentionの例
def self_attention(query, key, value):
attention_weights = softmax(query @ key.transpose())
return attention_weights @ value
トークン化の仕組み
LLMは文章を「トークン」という単位に分割して処理します。
from transformers import GPT2Tokenizer
tokenizer = GPT2Tokenizer.from_pretrained('gpt2')
text = "Hello, World!"
tokens = tokenizer.encode(text)
print(tokens) # [15496, 11, 995, 0]
実際に使ってみよう
OpenAI APIの基本
import openai
openai.api_key = 'your-api-key'
def get_completion(prompt):
response = openai.ChatCompletion.create(
model="gpt-3.5-turbo",
messages=[{"role": "user", "content": prompt}]
)
return response.choices[0].message.content
# 使用例
prompt = "Pythonでバブルソートを実装してください。"
result = get_completion(prompt)
print(result)
効果的なプロンプトの書き方
良いプロンプトの特徴:
- 具体的な指示
- 期待する出力形式の明示
- 必要な制約条件の提示
- コンテキストの提供
例:
以下の条件でPythonコードを生成してください:
- 機能:CSVファイルの読み込みと集計
- 入力:sales.csv(列:date, amount, category)
- 出力:カテゴリごとの合計金額
- エラー処理を含める
- コメントを日本語で書く
コードを書いてみよう
基本的なチャットボットの実装
import openai
from typing import List, Dict
class SimpleBot:
def __init__(self, api_key: str):
openai.api_key = api_key
self.messages: List[Dict[str, str]] = []
def chat(self, user_input: str) -> str:
# メッセージ履歴に追加
self.messages.append({"role": "user", "content": user_input})
try:
# APIリクエスト
response = openai.ChatCompletion.create(
model="gpt-3.5-turbo",
messages=self.messages
)
# 応答を取得
bot_response = response.choices[0].message.content
# 応答をメッセージ履歴に追加
self.messages.append({"role": "assistant", "content": bot_response})
return bot_response
except Exception as e:
return f"エラーが発生しました: {str(e)}"
気をつけるポイント
セキュリティと料金
-
APIキーの管理
- 環境変数として設定
- Gitにコミットしない
- 定期的な更新
-
コスト管理
- トークン数の監視
- レートリミットの確認
- 予算の設定
エラー処理とレートリミット
import time
from tenacity import retry, stop_after_attempt, wait_exponential
@retry(stop=stop_after_attempt(3), wait=wait_exponential(multiplier=1, min=4, max=10))
def call_api_with_retry(prompt: str) -> str:
try:
response = openai.ChatCompletion.create(
model="gpt-3.5-turbo",
messages=[{"role": "user", "content": prompt}]
)
return response.choices[0].message.content
except openai.error.RateLimitError:
time.sleep(20) # レートリミットの場合は待機
raise
except Exception as e:
print(f"エラー発生: {str(e)}")
raise
これからどうなる?
最新トレンド
-
モデルの小型化
- 効率的な学習手法の開発
- エッジデバイスでの実行
-
マルチモーダル化
- テキスト以外の情報処理
- 画像・音声との統合
-
ファインチューニングの発展
- 特定タスクへの最適化
- 個別ニーズへの対応
学習リソース
-
公式ドキュメント
-
チュートリアル
まとめ
LLMは急速に発展している技術分野で、基本を押さえておくことで様々な可能性が広がります。この記事で紹介した内容を起点に、実際に手を動かしながら理解を深めていってください。
また、この分野は日々進化していますので、常に最新の情報をキャッチアップすることをお勧めします。
参考文献
- "Attention Is All You Need" (Transformer論文)
- OpenAI GPT-4 Technical Report
- "Language Models are Few-Shot Learners" (GPT-3論文)