はじめに
本記事では「2つの封筒問題」の主な4種類について、回答と簡潔な説明をする。
※ 2025年7月7日に「2つの封筒問題(金額仮定版)」の回答を修正しました。
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問題
2つの封筒問題(未開封版)
お金の入った2つの封筒があり、片方はもう一方の2倍の金額になっている。無作為に1つの封筒を選んだとき、交換した方が得か?
2つの封筒問題(金額変数版)
お金の入った2つの封筒があり、片方はもう一方の2倍の金額になっている。無作為に1つの封筒を選んだとき、交換した方が得か?ただし、選んだ方の金額をYとする(金額に名前をつけるだけで開封しない)。
2つの封筒問題(金額仮定版)
お金の入った2つの封筒があり、片方はもう一方の2倍の金額になっている。無作為に1つの封筒を選んだとき、交換した方が得か?ただし、具体的な1つの金額を決めて、選んだ方の金額をその値とする(金額を仮定するだけで開封しない)。
2つの封筒問題(分布と金額仮定版)
お金の入った2つの封筒があり、片方はもう一方の2倍の金額になっている。無作為に1つの封筒を選んだとき、交換した方が得か?ただし、次のように金額を決め、選んだ方の金額をZとする(金額を仮定するだけで開封しない)。
1または2が出るまでサイコロを振る。振った回数が$N$になったら1つの封筒に$2^N$の金額を、1つの封筒に$2^{N-1}$の金額を入れる。
回答
2つの封筒問題(未開封版)の回答
交換しても変わらない。
説明
片方をX、もう一方を2Xとしたとき、無作為に選んだときの期待値は1.5Xである。別の封筒の期待値も1.5Xで変わらない。
2つの封筒問題(金額変数版)の回答
交換しても変わらない。
説明
Yが取りうるすべての値について考える。
交換したときの差分の期待値Eは次のように考えられる。
E = 『「選んだのがYで小さい方の確率」* Y - 「選んだのがYで大きい方の確率」* Y/2』のすべてのYについての和
これを式変形すれば、『「選んだのがYで小さい方の確率」* Y - 「選んだのが2Yで大きい方の確率」* Y』のすべてのYについての和になる。これはYの分布が何であれ0となる。
差分の期待値が0なので、交換しても変わらない。
2つの封筒問題(金額仮定版)の回答
わからない。
説明
金額を具体的な1つの値に仮定することで条件付き確率になり、開封した場合と同様に考えることができる。
詳しくは下記を参照のこと。
具体的な1つの値に仮定するかどうかが重要となる。変数名をつけて、「その変数の値である」としただけでは具体的に決めたことにはならない。
2つの封筒問題(分布と金額仮定版)の回答
交換した方が得である。
説明
もう1つの数字が$\frac{Z}{2}$か$2Z$かの比は$3:2$であり、交換した場合の期待値は$\frac{11Z}{10}$である1。
パラドックスか?に対する説明
2つの封筒問題(未開封版)において、片方をX、もう一方を2Xとする。無作為に選ぶので、下記のようになる。
- 確率1/2でXを選ぶ。交換すると2倍になる
- 確率1/2で2Xを選ぶ。交換すると1/2倍になる
上記から、比率の期待値は1.25倍になる。
このことから「どちらを選んでも交換した方が得になるからパラドックスである」という主張は間違いである。「比率の期待値が1.25倍」は正しい。間違いは「交換した方が得」というところである。分母が異なるものの比率の期待値が1を超えていても値として増えるわけではないからである。
| 正しい解釈 | X → 2X (確率1/2) 2X → X (確率1/2) |
|---|---|
| 間違った解釈 | X → 2X (確率1/2) X → X/2 (確率1/2) |
※ 選んだ封筒の金額に、1.25を掛けるのは間違った解釈
別の例で説明する。
たとえば、西暦が偶数のときに100万円、奇数のときに374万円の給与になる会社があったとしよう。この会社の給与は2年づつ平均を見れば横ばいだが、比率の期待値は約2((374/100 + 100/374) / 2)である。
「期待値が無限大だから交換しても変わらない」に対する説明
2つの封筒問題(未開封版)において、期待値が無限大だから交換しても変わらないという主張は誤りである。
まず、期待値が無限大だという前提が間違い。さらに、2つの金額を$(X, 2X)$と仮定するだけで答えはでる($X$の分布は不要)。
「金額に名前をつけても期待値が同じ」なら、もう一方が2Yの確率が1/3になり、おかしいのでは?に対する説明
期待値は、Yが取りうる値について「確率と変更時の値」の和を取らなければいけない。
Yを下記のように固定したときの式だけで考えてはいけない。
Y/2 * 2/3 + 2Y * 1/3 = Y
Yを固定して考えれば、Y/2と2Yの比率は不明なので計算できない。しかし、取りうるYすべてを考慮すれば期待値を計算できる。
※ Yが具体的な値であれば、「交換して得になるかは不明」であることに注意。
「開封して必ず金額を確認するつもりなら、交換した方が得」に対する説明
2つの封筒問題(分布と金額仮定版)において、まだ選択していない状況で「選択後開封して必ず金額を確認するつもりなら、交換した方が得」は間違いである。
「選択後必ず開封する」だけ仮定しても、交換で変わらない。開封だけを仮定しただけでは、金額が前提でないからである。金額を仮定すると変わる。
2つの封筒問題(分布と金額仮定版)では、選択していなくても金額を仮定さえすれば、交換した方が得になる。
同様に、2つの封筒問題(金額仮定版)では、選択していなくても金額を仮定さえすれば、交換した方が得かどうかは不明になる。
「どちらを選んでも得なのはパラドックスか?」に対する説明
2つの封筒問題(分布と金額仮定版)で、以下は矛盾していない。
- 選んだ方の金額をZと仮定すると、交換した方が得
- 選ばない方の金額をZと仮定すると、交換した方が損
選ばない方の金額をZとしたとき、選んだ方はZ/2または2Zなので1つの数字を仮定していない。すなわち、1つの数字を仮定したときと別の仮定なので、異なる結果になっても矛盾しない。
参考
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厳密にはZが1かどうかで場合分けが必要だが、得という結論は同じなので場合分けは省略 ↩