これは会社方針の関係でChatGPT(及びその他類似サービス)が使用できない開発現場での出来事である。
いつものようにプロジェクトがキックオフされ、チームメンバーとの顔合わせも済ませた。
今回は客先に常駐して請負開発を行う。さらに開発人員として他社BP(SES)さんを3名配置したプロジェクトだ。
BPさんはみな若手だが、使技術での開発経験もあり優秀な人材と聞いていた。
私自身も慣れない客先での開発ではあったが、要件定義から設計、環境構築とプロジェクトは順調に進んでおり、このまま問題なく開発作業も進むと思っていた。
開発が始まって直ぐに事態は起こった
「すみません! なぜかChatGPTが使えなくて開発が滞っています!」
そう、そのプロジェクトを行っていた会社では、ChatGPTをはじめとするチャット型AI、さらにはなぜかZenn
そしてQiitaまでもがアクセス禁止となっていたのである。
ChatGPTが当たり前に使える環境で生きてきた人たち
若手社員の中には、エンジニアとしての人生をスタートしたその日から、既にChatGPTが存在していたというものがチラホラ出始めている。
特に問題が深刻なことが多いのは、「学生時代からChatGPTが存在した」という層である。
私たちは「ググり力」と呼ばれる力を少なからず身に着けている。
特に調べれば必ず正解が出てくるエンジニアという職業においては、他の業種よりも「ググり力」は重要であり、発揮する機械も多いと思う。
しかし彼らは「ググり力」というものをほとんど身に着けていないのである。
ggrksとか伝わらないと思う
会社によって方針が異なる場合が多いかと思われるが、彼らの会社では業務にも積極的にChatGPTを取り入れている会社であった。
「ググり力」とは
まずは「ググる」について知らない人もいるか思うので、下記記事を見てほしい。
Google以外であったとしても、「検索エンジンで検索する」行為自体を指す場合もしばしばあるようだ。
「ググり力」とは、知りたいことを調べて、正解にたどり着く能力である。
検索ワードを自分で考え、検索ボックスに入力し検索する。 表示された検索結果から目的の答えにたどり着けそうなものを選択し表示する。
その結果、目的の答えにたどり着く。 その過程の正確さ、素早さ、そして情報の取捨選択。
これが「ググり力」である。
検索ワードが不適切であれば目的の答えにたどり着くことは容易ではない。それどころか、誤った情報を答えだと誤認することにもつながる。
検索ワードが正しくても、ソースとして不適切なサイトを表示していては、正解にたどり着けないかもしれない。
やつらはSEOだけは無駄に強い
この能力は、「Z世代」と呼ばれる我々にとって、趣味のことをスマホで調べたり、わからないことを調べて勉強したり、自然に身についてきた「技術」である。
わからないことがあったらChatGPTに質問!
調べたいことがあった時、わからないことがあった時、最初からChatGPTに質問する癖がついてしまっている人が一定数いる。
ChatGPTはこちらの調べたいことを理解してくれて、ある程度適当なワードを並べておけば、目的の答えを出力してくれる。
これによって「ググり力」は失われていく。
我々の世代の周りでも、「ググり力」が高い人と低い人がいる。
「ググり力」が低い人は調べてもわからないといい「ググり力」が高い人に聞く。「ググり力」が高い人は目的の答えにたどり着くことが容易なため、調べて答えを教える。
これを繰り返すことで「ググり力」が高い人はどんどん答えにたどり着く能力が成長していき、「ググり力」が低い人は衰退していく。
エンジニアの開発におけるChatGPTの有用性
これについては既に様々な記事があるため詳細はぜひググって欲しいが、個人的に特に有効だと感じた使い方は以下の通り。
エラー文を投げつける。
プルリクエスト前に投げつける。
サンプルコードなどを投げつけて解説させる。
コメントをつけさせる。
CSSを書かせる。
もちろん実際の業務で使用しているようなコードをそのまま投げつけるというのはNGであることがほとんどなので留意してほしい。
しっかり言っておかないとそんなことも気にせずコードを投げつける人もいるので注意
エンジニアとしての人生を歩み始めたころを思い出してほしい
私たちがエンジニアとして歩みだしたころ、そして今も、コードを書いてはエラーを確認して、何が間違っているのかを確認して、正しい実装を調べて、書き直して…
という過程を繰り返し、開発しているはずである。
今ではエラーが出たらエラー文とコードをChatGPTに投げつけると、解説とともに修正されたコードが出力される。
そして当たり前のようにその行為を学生時代から行ってきた人もいる。
学校での教え方の問題もあるかもしれない。
実際に今年の4月に入社した人に尋ねてみた
「学校ではChatGPTについても教えてくれたりしますか?」
答えは以下の通り
「わからないことがあったらChatGPTに聞くとわかりやすく教えてくれると教わりました!」
本当にそれでいいのだろうか?
もちろんその教えは間違っていないと思う。
実際ChatGPTに質問すれば、簡単に欲しい回答がそれなりの確率で返ってくる。
そして教える方もいちいち質問されるより、「まずはChatGPTに聞いてみてそれでもわからなかったら質問しにきてください」とすることでかなりの負担軽減になるだろう。
しかし、本当にそれでいいのだろうか。 「魚をくれるか魚の釣り方を教えてくれるか」と似たような問題だと思う。
ChatGPTに聞いて返ってくる答えは「魚」である。
「魚」にありつくための手段を学ぶのも重要であり、その技術も身につけた方が、いつでも好きな時に「魚」をゲットできるのではないだろうか。
実際に起こった問題
エラー文が読めないエンジニアを見たことがあるだろうか。
学生やプログラミングスクールレベルであれば珍しくないかもしれないが、業務としてエンジニアをやっていて、エラー文が一切読めない人を知っている。
彼はエラーが発生するといつもChatGPTにエラー文を投げつけてきた。 ChatGPTはエラー文を理解し、どこでどんなエラーが起こっているのか解説してくれる。
それを見て修正することで、エンジニアとして生きてきたという人だ。
別にそれ自体は悪いことではないと思う。 実際にIT企業だけではなく一般企業でも、業務にChatGPTを活かすための取り組みを行っている話を聞く。
私の会社でも、ChatGPTについて全社員を対象に会社で使い方とメリット、デメリットの講習会が開催されたことがある。
しかし、世の中には情報漏洩のリスクを防ぐためであったり、様々な理由で、ChatGPTが使用できない開発現場が存在する。
(中には一切インターネット接続できない現場もある)
以下は大手企業で実際に今年発生した事案
ChatGPTが使用できない開発現場でも生き残るために
「ググり力」を鍛えるためには、日ごろからググるしかない。
ChatGPTに質問して答えにたどり着くことで業務効率を上げることも重要だが、ぜひ「ググり力」も鍛えてさらに業務効率をあげてほしい。
そのプロジェクトは結局軽く炎上した。(皮肉にもChatGPTに頼り切っていたおかげで、早期問題発見につながった)
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