🧠1.中堅非IT企業のAIとの関わり方
自社サービスやSIerなどIT企業のAI導入は大手ほど前のめりな印象を受けます。
たしかに、もっともAIの恩恵を受けそうなのがソフトウェア開発やインフラ構築だと思います。
では、一方で、非IT企業ではどのようにAIを導入しようとしているのか。また、すでにどういうふうに使っているのか?
私自身が、AI導入の支援、情シス業務の手伝いのなかでAIをどうつかっているのかをメモ程度に記載してみます。
🏢2.中堅企業の情シス業務
業種、規模、会社ごとにそれぞれ仕事は異なっていますが大体、以下のようなことをしていると思います。
- 情報処理端末(PC、タブレット、スマホ)のキッティング(利用準備)、OSやアプリの更新対応、資産管理
- 情報処理端末、ネットワーク、SaaSなどの不具合に関する対応
- 社内ニーズに応じたシステムや情報処理端末の導入計画や支援
- システムや端末のリプレイスに関する移行契約や支援
- セキュリティ対策としてのインフラ整備、状態チェック、監視、監査などの対応
- 各種ベンダーとの調整(社内SEはあまりいないので外部ベンダーに依頼する)
ざっくり書いてみましたが、以下の記事をはじめ情シスの仕事をしらべれば、いくらでも分かると思います。
上場大企業は、組織が大きいので社内SEがいますが、中堅企業の場合人がいなくて外部ベンダーに依頼することが多いと思います。
最近は、ここにAIの導入業務が入ってきています。また、情シスのスタッフとしてもAIを利用してきています。
💪3.情シスのAI導入対応
私が支援したり、聞いた範囲の対応内容を記載します。
✒️ a. 情報漏えい対策
AIを導入するとき、中堅以上の企業になると情報漏えいについて留意することが多いです。学習データに使われないか、暗号化されているか、データの取扱はどうなっているかなどです。
✒️ b. 著作権対策
また、非IT系で営業部署になると公的にチラシを配布したり、Webサイトでプロモーションをかけますが、生成AIでつくった画像、文章が著作権を侵害していないのかなど気をつける事が多いです。
✒️ c. ユーザーの利用教育(生成物のチェックや利用用途の注意)
大きい組織になると、いろいろな社員がいますのである程度利用規約を整備して、インシデント防止対策も必要となります。
たとえば、前掲の情報漏洩対策や著作権侵害対策について、どうすればよいか資料を作って説明したり、利用システムではどのようにすればよいかを説明します。
あとはハルシネーション対策など情報の裏付けをとって利用することや生成物のチェックなどを伝えます。
✒️ d. AI利用規約の作成
前述の対策を踏まえたり、また、ユーザー教育をする前提となるAIの利用規約を作成することもあります。それには公的機関が発行しているものがとても参考になります。
📜東京都の生成AI活用ガイドライン
- どのように利用するか、何をしてはいけないかなどが記載されている。
📜情報処理推進機構(IPA)
- 東京都のガイドラインと内容は似ている
📜一般社団法人ディープラーニング協会 資料室
- これも前掲の資料に近いが、その他の資料もある
📜文化庁 AIと著作権について
- AIと著作権に関する資料。おそらく、一番参照されている資料。
⚒️ 3. 非IT系企業でよく見かけるAIツール
すでにいろいろなツールを利用していますが、製品名よりはツールの機能分類を列挙します。
非IT系企業でよく見かけるAIツール
- 多目的アシスタント:(ChatGPT、Copilot Chat、Geminaiなどが該当する。検索、文書作成、画像作成、プログラム作成、翻訳など汎用的な処理をさせる
- 議事録作成:Teams、ZooMだと正確性に書ける場合、専用の文字起こし、議事録ツールを導入しています
- オフィス系アプリに付属のAI機能:Microsoft 365 Copilot、Google Workspace のGeminiなどオフィス系アプリにAIチャットボックスを表示させてAIを使いやすくする
- 法務・税務系のAIツール:リーガルチェックのツールや既存の会計ソフトのAI機能(仕分けチェック、OCR)を使っているのが多いです
- 各種業務特化したAIツールやドメイン特化モデル:建築系であれば設計書作成や管理、研究系であれば研究データベースを検索したり内容を評価したりするドメイン特化型モデルなど各業務に特化したツール
- 既存のSaaSやツールのAI機能:AIシステムとして導入するのではなく、すでに導入しているSaaSやアプリのAI機能を利用するケースもある
ソフトウェア開発企業だとCursortやGithubCopilotなどAIエディタを導入する企業が多いですが、非IT企業の場合エディタを使うことはほとんどなく、ChatGPTなどの多目的アシスタントやMS365Copilotのようにアプリに組み込まれたAIチャットを使うことが多い印象です。
また、各業務に特化したAIツールもいろいろでているので、それらを導入しているようです。結構、ベンチャー企業のシステムをいれているのも見かけます。
そして、AIツールというきりこみではなく、既存ツールのAI対応機能を使っていくというスタイルも結構見かけます。有名なツールもAI対応しているので、新規にAIツールをいれるとめんどくさいので、既存ツールのAI対応を待っている感じもします。
社内教育、労務管理、人事評価などもAIツールはあるのですが、私が観測している範囲ではそこまで積極的にいれてつかっているようには見えないです。多分、段階的に導入していっているので、順番の問題だろうなと思います。私が観測した範囲では、前掲のツールを多く見かけます。
💻️ 4. 情シスでのAI利用
私が情シス支援業務でAI使うのは以下のような作業です。
AIを使う作業
- 小規模なツール作成:ファイル操作、権限チェック、ネットワーク系コマンドをつかったツール作成
- AWSなどインフラ周りの設定ファイル作成:JSONやYAML形式の設定ファイルを作成
- 機器やサービスの検索:導入するサービスや機器に関する検索をDeepSearchで行う
- プレゼン資料作成:社内の報告や広報用資料の作成
- リストデータの加工:MS365CopilotでExcelのデータを結合したり、重複省いたり一覧の変種や作成
- ドキュメント検索AIエージェント作成:ドキュメント内容をもとに回答するAIエージェントを作成して情報共有
中堅非IT系企業だと開発や構築などはせず、社内と社外の調整が多いのでそこまでプログラム系の仕事はしないです。ちょっとした便利ツールをつくったり、AI自体を便利ツールとして使っています。
情シスチームとしてAIシステムをいれようとしているのはやはり、問い合わせの自動対応システムですね。問い合わせデータをデータベースに蓄積したり、ドキュメントを整備して、AIチャットボットでユーザーからの問い合わせの一次受付にしようとはしています。
なかなか整備が難しいのですが。
その他、情シスのAI利用については以下の記事にいろいろ整理されています。中堅非IT企業の情シスはなかなか大変ですから、少しずつやりやすいことからはじめるのがよいのかなと思っています。
おまけ:AIシステム開発や企業のAI活用に関する意見交換会
以上、中継非IT企業の情シスがどのようにAIと関わっているか、個人的な観測をもとにメモしてみました。
同じような立場の人の参考になればと思います。
ちなみに、この内容に関連したイベントがあり、そのイベントに参加します。
5/17(土)に東京の永田町でタイトルのイベントがあります。オフラインだけでなく、YouTube配信もあります。
以下のようなAIシステムやシステムへのAI利用などの話を経営者の方にしていただきながら、みんなでいろいろな意見を交換するイベントです。興味のある方がいれば参加してみてください。
トークテーマ
- 「AIシステム企業」ってどんな仕事になるのか、少し解像度を上げて考えてみる
- IT企業のAI活用状況(既存プロジェクトへのAI駆動開発の導入など)
- 非IT企業のAIにー