1.色々な職場を渡り歩いて
15年ぐらいソフトウェア開発の業界にいます。
グローバル企業、大企業、中小企業までいろいろなサイズの現場で手伝いをしたことがあります。
ゆく先々で、"戦力外通告"をされる人をみてきました。
派遣やフリーランスなら契約解除です。
正社員で解雇される人はあまりみたことはないですが、自分から退職エージェントを雇って辞めた人は見たことあります。
僕が見た人は、企業サイドから辞めてほしい人なのになぜ、エージェント雇うんだろうと思うような感じでしたが。
ちなみに、記事のタイトルに「生まれる」と書いたのは、次の理由からです。
雇用関係は、雇い主と労働者の双方向であり、状況もまた一方的にできるものではなく、双方の問題で生じると思うので、「生まれる」という表現にしました。
2."戦力外通告"をされる人の特徴
いろいろなパターンがあると思いますが、私が実際に見てきた人の特徴を書いてみます。
(1)嘘をついてズル休み、遅刻する
もうこれは、話の俎上に乗せるのもどうかと思うのですが、実際、現場にはいます。
漫画の話かっていうほど、身内が死んだり、病気になります。おばあちゃん、何回病気になるんだっていうぐらい。
病気にもなると思うんですが、それで休んだり、ズル休みする必要ある?って思うことが多々。
コメントもらったので補足です。家庭の都合で休むことが多くなることは勿論あると思います。子育て、介護、看病。この場合、採用や事が起きたときに上長に連絡をして、働き方を相談していると思います。
そして、そのことを理解したうえで、チームメンバーにも理解と協力をしてもらって仕事をすることが多いと思います。少なくとも私が関わった現場はそのようにして休む人をフォローしたり、理解を示していました。
職場によったら、そんなに休むなら継続は厳しいと言われることもあるかもしれませんが、一方で、理解をしてくれる職場もあると思います。
ここで記載した「ズル休み」のケースは、事前の相談などなく、ときに、音信不通で休んだりしていました。多分、ズル休みするスタッフをみたことある人なら、なんとなく感じるところがあると思います。「あ、これはズル休みだな」と。最初からはそんなことは思わないのですが、ズル休みする人は恒常化してくるケースが多いので。
(2)言われるまで動かない
これは若い人にいるのはなんとなく想像できます。
しかし、派遣で大きめの案件に配属され続けた年配の人でもこれは多いです。
大きな案件にいくと確かに、決められたことがあって、それ以外のことすると怒られたりします。
なので、とにかくワンちゃんのハウス状態で、指示があるまで動かない。
それが染み付いている人がいます。
そういう人が、自発的に動いてほしい職場に来ると、「こいつ、うごかないなあ」といって、「使えない」人判定をされてしまいます。
でも、本当は、大きい案件でも立ち振る舞い型次第では自発的に動いてもよくて、評価されることもあります。
(3)先読みし、自律的に計画が立てられない
前項と似てますが、ある指示を受けたときに、「いつまでに、なにをするのか」ということを確認せずに、放置して、全く作業ができていない人がいます。
勿論、こういうときは往々にして、指示側にも問題があります。曖昧に作業を頼んでいることが多いです。
ですが、仕事の基本ですが、何か頼まれたら、「いつまでに、どういう状態の成果物をだすのか?」が、明確でないなら、確認すべきです。
それを聞かずに放置するのは、社会人としては基礎ができてません。
(4)確認がおろそか
作業が完了したあと、一呼吸おいて、必ず確認する。
これは仕事をする上では結構、当たり前なのだけど、できてない人は多いです。
そういうのを防ぐためにも、「レビュー」や「確認」という過程が存在します。
最近話題になっている、数千万を誤入金した事件みてたら、こういうのがないのかというツッコミもありそうですが。
勿論、確認漏れは人には多いものですが、全く確認してなくて、指摘事項が多い人は当然、「こいつ使えない」といわれてしまいます。
(5)指摘されたことを改めない
失敗をする、もしくは、する前に指摘をされてそれを改めない人がいます。
改めない人は当然、指示者からしたら危ないと感じるので、「戦力外通告」を受けやすいです。
もし、納得できない、不明な点があれば、やんわり質問して自分が間違いでないことを理解してもらうのがよいと思います。(ただ、頭ごなしで聞く耳がない人が相手だと時間の無駄ですが)。
(6)日頃からコミュニケーションが少ない
無駄話をしたりしてよくしゃべる必要はありません。必要なことをきちっと伝えることができることが仕事上は大切です。
特に、問題になりそうなときほど、事前に伝えることが大切です。
なぜかそれが土壇場、もしくは、仕事が終わらないままフェードアウトしてしまう人がいます。
遅れることは喜ばれることはないですが、どうしても仕事ではつきものです。
なので、臆さず、むしろ、早めに伝える方がよいです。
ですが、戦力外通告される人はなぜかそれがないか、すごく遅いです。
(7)言われてないことを了解なく勝手にしてしまう
時々、全く指示されていないことを勝手にしてしまう人がいます。確かに、自分で考えて動くはいいのですが、考えて即行動は組織ではご法度です。一応、確認をとってから動きましょう。
見当外れなことをしてしまうと時間がもったいないですし、ただの身勝手な人だと思われるだけになってしまいます。
(8)一定期間経っても知識や理解の進展がない
最初は誰しもが分からないことだらけです。なので日々、わからないことは放置せず聞いたりして、わかることを増やしていきましょう。
勿論、業務上のことなら職場の人たちに聞きます。技術的なことであれば、独学もときに必要だと思います。
最初の時期は、学習時間は増えがちですが、それも一定期間を超えれば減ってくると思います(特に業務知識)。
現場の期待値やそこで求められる知識量によりますが、いつまで経ってもそこで求められる知識や理解がなければ、作業に滞るがあるので「戦力外通告」をされます。
逆にいうと、現場に必要な知識を蓄積した人はなかなか手放されないと思います。学習期間より生産時間を増やしたいので、新しい人をいれるよりも既存の人に生産活動をしてもらいたいものです。
一方で、これについては、職場でも勉強会、ドキュメント、研修などフォローが必要だと思います。
番外編:仕事中に荒野行動の動画をみている
これはアルバイトの人ですが、テスターの仕事を任せられてて、あまりにも仕事が遅く、質が悪いので、調べてみると仕事中にスマホで荒野行動の動画をみているというケースがありました。
当然、その人は来なくてよいと言われて、みなくなりました。勿論、荒野行動は悪くありません。
ちなみに、こうした「サボり」はリモートワークであっても、結構、情シスの人はログをとって監視しているところもあります。
3."戦力外通告者"を多産する職場や指示者
雇用関係、仕事は労働者だけが作るものではありません。当然、雇い主、指示者の問題もあります。
前述のような「戦力外通告者にみえる」けど、実はフォローするとまともに動ける人も多いです。
つまり、それは雇い主、指示者に問題があるからです。
では、問題を生む職場について記載します。
(1)指示が曖昧。期日や明確な目的を言わない
これは小さい職場、忙しいプロパーの人に多いです。とにかく、「いつまでに、何をしてください」をいわない人が多いです。
端的に丸投げ。
これで自発的に計画的に動ける人は、確認して動きますが、それができない人もいます。
できないからといってその人が生産性が低いかは別問題です。
たとえば、新人であったり、派遣の人だったら、やや消極的な人もいるでしょう。
でも、いってあげるとちゃんと動いてくれる人もいます。
指示者として最低限、「いつまでに、どのような結果を仕上げる」は伝えるべきだと思います。みんなテレパシーはもってないので。
(2)丸投げして確認をしない
指示をしたら、確認をする。
これ、当たり前なんですが、指示者の方で確認しない人が結構います。
少なくとも指示をした人でなくても、他の慣れている人などに確認をさせるべきでしょう。
つまり、ダブルチェックは必要です。人は、どんな人でもミスをします。
(3)放置プレー、気分で確認
前述のことと似ていますが、指示したあとのフォローがまったくない、確認も定期的ではない、気分でする指示者がいます。
気分でしたら、問題に気づくのも漏れますよね。
(4)高圧的、聞きにくい
これは人柄なのかもしれないですが、日頃から話しかけにくい人のところにはコミュニケーションは生まれにくいです。
それでも仕事だから、確認すべきだとは思いますが、やっぱり、人間なんだから威圧的、気分が悪くなるような会話はしたくありません。
話しやすい環境をつくっておくのは当たり前でしょう。
(5)業務情報や関連する技術情報をドキュメント化していない
多くの職場は忙しいので、口頭で指示者や先輩から業務情報や技術情報を聞くことが多くなると思います。
ただ、やはり指示者や先輩は忙しくて、意地悪ではなくても時間がさけないことがあります。また、口頭で伝えるとなると教える人によって伝達する知識量もまばらですし、情報の質が揃いません。
こういうときは、ドキュメント化をして人がいなくてもある程度の情報は得られるようにしておくべきです。そうすることで、新しい参画者は情報を得やすいですし、理解も早くなります。当然、指示者や先輩もその分時間を削減できます。
意外と情報を伝えきれてなくて失敗したり、行動しにくかったりすることがあります。ですが、情報を伝えてないことを棚に上げて、失敗や作業が遅いことだけを指摘して、作業者を過小評価する人もいます。
知識量の差異に気を配るのも指示者や先輩は必要ですし、職場の仕組みとしてドキュメントは常設しておくべきでしょう。
(6)業務に関する情報共有が遅い、少ない
時々、大きな企業で見かけるのが、業務に関する情報共有が遅い、または少ないことです。前述したドキュメントに関する項目とも通じるのですが、プロパー(社員)の人は忙しくてなかなか情報伝達ができないこともあります。
この場合の業務に関する情報は、ドキュメント化するようなものではなく、行動計画とかに関するものです。
こうした情報をできるだけ細く伝えてくれると、作業者は臨機応変に計画を変えることもできます。プロパーによっては、話しかけるのが苦手か億劫なため情報発信ができていないケースもあるかもしれません。
メールでもチャットでもいいし、作業現場のリーダーにでもいいので、できるだけ状況がかわるような情報伝達はこまめにしてもらえると、無駄な作業も減るし、余裕をもった対応ができます。
(7)研修や教育がほぼない
派遣をしているSESなどに多く見られますが、とにかく現場に送り込んだあとは社内で研修などはせず社員の成長をフォローしない会社も見られます。一方で、派遣先もいろいろで手厚いところは外部の人も研修に参加させてくれるかもしれませんが、そうでないところの方が多いと思います。
つまり、こうした派遣で研修などがない社員は、成長のないまま年数を過ごしてしまうことになります。仕事をしていると、気づけば改善することも結構あります。
特にマネージメントについては、年数がつけばできるものではなく、ある程度の決まったポイントを覚えておくべきですし、トレーニングが必要です。
雇用している会社がこうした研修をして、経験年数や年齢に応じたスキルを身に着けてもらい、成長を支えてその対価を受け取るのがよいと思います。
(8)現場を転々とさせてスタッフの知見の蓄積が浅い(もしくは、全くない)
これもまた、SESの会社によく見られますが、とにかく売上のことだけ考えて、空いているところ、売上になるところにスタッフを転々と配属させる企業があります。
人によっては、これによっていろいろな知見を蓄積していく人もいますが、全ての人が短期間に深く広く知見を得ることはできるわけではありません。それゆえ、経験年数の割に、いろいろ知らないなあと言われる人もいます。
実際、私が経験したことあるケースでは、あるスタッフは色々な現場のテストだけさせられていて、開発などはほぼしたこと無い。そのスタッフが、ある時、開発要員としてアサインされて、いきなり開発をさせられるということがありました。
これも珍しいことではないのですが、売り込む企業は経験年数と参加したプロジェクトの技術だけで売り込み、受け入れ側もてっきり開発できるのだと思いこんでしまいます。
しかし、本人にはそんな経験はなく、いざ開発のときに「できません」というか、知ったかぶりで作業をしてしまいます。まだ、「できません」といってくれると被害も小さいのですが、知ったかぶりで作業をされるとときにとんでもない問題が起こります。
スタッフの立場に立つと結構不憫だなと思います。もう、売り込み企業の問題としかいいようがない気もします。せめて、できなこと現場にはいれないことだと思います。
ある程度の期間、同じ現場で、いろいろな立場を経験して知見を蓄積しすることで、見積もりや計画にもいきてくると思います。どうしても案件が早く終わってしまうこともあると思いますが、可能ならば、スタッフの成長という点も考えて配属を考えることも必要ではと思います。
4. "戦力外通告者"を減らす案
決まった職場で働き続けられたり、採用したスタッフが長く生産性を上げてくれる方がいいと思います。
では、どうすれば"戦力外通告者"を減らすことができるでしょうか。
(1) スタッフ側の対応
単純な話では、前述した問題点を改善することです。重複した内容になりますが、改めて気を改善方法を記載します。
○ 指示がなくても自分から指示者に期日や作業の確認をする。
○ 作業の目的から逆算して、行動計画をたてて、自発的に担当者やチームメイトに確認しながら作業を進める。
○ 分からないことや遅れそうなこと、問題がありそうなことは早めに連絡する。
○ 成果物を提出する前に、確認を必ずする。逆にいうと、作業の期日は確認まで含めて考える。
○ 日頃から挨拶などをして、周りの人とコミュニケーション取りやすい状況を作っておく。
○ 指摘されたことについては筋が通っているのであれば、受け入れ、次にミスしないよう対策をたてる。
○ 先読みするには作業経験を多く積む。振り返りをして工程や各期間の概算値を整理する。
以上、問題点で述べたことの裏返しです。
では、こうした事がいきなりできるのかというとそうではないです。おそらく、失敗や小さい成功を重ねることを経てできるようになると思います。
また、こうした行動をいつも、誰でも完璧にできるのかというと、そうではないです。
やはり、人間なんで調子が悪い時もあるし、苦手なこと、ついついミスをすることがあります。
そこで大切なのが、チームや組織の仕組みによる個々人のサポートになります。
(2)職場や指示者の対応
いろんな年齢、経験、性質をもった人がいるのが組織です。組織で互いに得意なことにより、チームメンバーの苦手な事を補いあうことで、生産性はあがります。
そういう組織を作るための案を記載してみます。
○ 指示を出す前に、期日や結果となる状態を定め、計画をつくる。
○ 定期的に作業の状態を確認する。できれば新しい参画者には先輩や指示者が定期的に状態を確認してフォローする。
○ できるだけ、作業は属人化させずに、マニュアルなどドキュメントをつくり作業情報を共有しやすい形にする。(個人のノウハウの少なさを補完)
○ チーム内でのコミュニケーションがしやすいように日頃から高圧的雰囲気や、話しにくい環境にならないように心掛ける。(過度なコミュニケーションのとりすぎは逆に敬遠されたりもするので節度をもって)
○ マネージメント研修など、自発的、かつ、自律的な行動や計画を立てた行動ができるトレーニングを行い、手法や視点をスタッフがもてるようにする。
○ 失敗があった際も人格攻撃ではなく、仕組みや状況の問題を確認し、対策をたてる。失敗は誰でもあるものなので、全ての人がフォローしあえる意識を共有する。
○ 新規参加者や新人には先輩が積極的に状態を確認したりフォローして、早くチームに馴染めるようにする。
他にもあるかもしれないが、よく炎上したり、離職率が高い職場をみていて思う対策を記載してみました。
実際、私はチームで仕事をするとき上記の行動をとるようにします。
特に新しい人が入ったときは、不安なのがよくわかるので、フォローを厚めにするようにしています。
5.おわりに
とりとめないことを書きましたが、これから正社員は少なくなり、使い捨てのフリーランスや派遣社員が増えていくかもしれません。
つまり、契約解除ということが起きやすい状況が徐々に増えるかもしれません。「こいつ使えないなあ」といって契約解除されないように、また、採用側も人材難で採用コストがあがるので、できるだけ採用した人を育てやすい環境をつくった方がよいと思います。
ここまでの内容をまとめると、個々人の知識や知見の蓄積を補う、加速させること。チームで互いにフォローし合うということを心がけて、個人や組織が仕事を進めることが大切だと思います。
ちなみに、解雇についての客観的なデータも厚労省が公表しています(『令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)』)。それをみると今のところ、解雇が多いわけではないように見えます。
この中にある「過去5年間における有期労働契約時の解雇・雇止めの経験の有無(p.208)」をみると、解雇される人はあまりいないのですが、「派遣労働者」はそのなかでもやや解雇の経験が多いなと思います。直接指示者と契約していない場合、採用や解雇も行いやすい傾向があるのかなという感じはします(すぐ切れるのでとりあえず雇ってみる)。
実際、いろんな現場をみていると、まず真っ先に人員削減をするのが外部に委託しているスタッフだと思います。それについてはこの統計をみていると、裏付けている感じもします。
また、「過去5年間における有期労働契約時の解雇の理由(p.209)」をみると、経済的な理由や案件の終了などが多くあります。情報通信についていえば、それに加えて、成績についても理由としては比率が低くはないです。
私の経験では、「この人使えないからもういらない」という断り方をする企業は少なく、おおよそ角が立たないように経済的な理由など外部環境を断り文句にしているのをよく見ます。なので、この統計結果は現実を言い当てているようですが、実際、裏では違う理由もあるのだろうなあと現場経験から感じます。
いずれにしろ、ここに書いたようなことはネット上にいくらでも転がっていますが、たまたまこの記事を見た人が、こういった問題を考えるきっかけになるのであれば幸いです。