1. AIツールの導入支援ビジネス
2023年末のChatGPTの登場、2025年のAIエージェントブームを経てやっと日本の企業でもAIツールの導入が本格化したと感じます。
以下の記事には、2023年から2027年の実態と予測が記載されています。
2023年から2027年にかけてのAI導入の実態と予測
■ 法人による生成AIサービスの導入は今後も拡大、2027年末には59.2万社に到達
■ 生成AI導入済の法人は約4社に1社、導入検討中は46.2%
■ ChatGPTの利用率は52.1%で最多、Copilot・Geminiも4割前後の利用率
■ 利用者満足度1位はNotion AIで83.3ポイント、ChatGPTが 83.0ポイントで続く
■ 利用端末はWindowsノートPCが主流、スマートデバイスでも一定の活用広がる
私もAIツールの導入、および、AIコーディングツールを利用した開発をしていますが、その記録を書いてみます。
2. IT企業が利用するAIツール
a. 意外とGithub Copilotの利用は多い
XやZennを見ているとClaude Codeの人気が高いです。私も開発はClaude Codeをつかっています。
ただ、実際、幅広く開発会社の人と話すと、そもそもAIコーディングツールを入れていることすらまだ実施していないところもあります。
また、AIコーディングツールとしては、GithubCopilotをつかっている所が意外と多いなという印象があります。
このポストの営業さんの話は確かに分かります。まず、Githubのサブスクリプションを利用している企業は多くあり、そこからの延長で利用することもあります。
また、セキュリティ面などを考慮して、GithubCopilotを利用するという企業は多くあります。
ただ、Claude CodeやCursorなどもその辺りは、同じようなことを謳ってはいます。
当たり前ですが、機密情報をリポジトリにいれることはしない前提なので、あとはセキュリティ設定をチェックすれうば、有名な有償ツールは企業で導入できるのではとも思います。
そう考えているところも増えているので、GithubCopilot以外のツールを使うところも増えている気がします。
b. ビッグテックやAI導入に前向きな企業で多いCursor
X、Qiita、Zennでも、Claude CodeのMaxPlanが出るまでは、Cursorの人気は高かったように思います。
もちろん、今でもCursorは人気が高いと思います。
結構、日本の有名な企業でもCursorをつかっているのがテックブログやYouTubeを見ていると分かります。
以下は、DeNAのテックブログですがCursorの利用について触れられています。
他にもいろいろな企業がCursorを導入しています。
c. 2025年5月にMaxプランで利用できるようになってから人気が出てきたClaude Code
Claude Codeは、2025年2月にリリースされました。その時から、一部には良いという評判は流れていました。
ただ、爆発的に利用者が増えたのは、2025年5月のMaxプランで利用できるようになったことと、Sonnet4/Opus4の利用がきっかけのように思います。
ここからXを中心に人気がでてきました。私も2025年5月末に契約をしてそれからずっとClaude Codeで開発をしています。
Claude Codeの良さは沢山ネットの記事もあるので、すぐに見つかると思います。
d. IT企業は生成AIの恩恵を受けやすいため他業種より導入が積極的
コーディングが中心のIT企業は、生成AIの恩恵を受けやすいと思います。それもあり、他の業種よりは導入に対して積極的だと思います。
どのツールを使うかは企業のセキュリティ意識や利用内容によって異なると思います。また、最近では、要件定義や設計のサポートが優れているIDE、kiroも注目を浴びており、AIコーディングツールは多様化していくように見えます。
e. 個人的なAIコーディングツールの利用変遷
少し個人的なことを記載します。
①最初はClineから始めたが、あっという間にクレジットがなくなる
私は、最初Clineをつかっていました。月数千円払うほどはまだ使わないかなと思っていました。ただ、利用を始めると安いモデルだと期待通りにならないので、Claude3.7をつかっていましたが、あっという間にクレジットがなくなることに気づきました。
②定額制のCursor Proに乗り換えたがイマイチ精度がない
Clineだとあっという間にクレジットがなくなり追加で支払うことになり、これなら定額制がよいと感じました。
そこで、Cursor Proプランを契約しました。
最初は、いいかなとおもっていました。特に、DevContainer周りの定義ファイル作成やDBのテーブル定義、API作成は比較的問題なくできていました。
問題は、Webのフロントをしたときです。かなり手間がかかり、しかもコードの質も低かったです。Claude3.7などをつかっていましたが、あっという間にリクエスト上限を突破しました。
精度もよくないし、リクエスト制限もすぐに来てしまうので、これは使えないなと感じました。
そんなとき、Claude Codeの人気を目にしました。
③Claude CodeはCursorができなかった点をカバー
もう課金については、Cursor Proをしてたので、あんまり抵抗もなくなっていました。
もっとも、経費で落とすので特に問題はないのですが、生産性があがるなら人を雇うよりは安いので他のツールよりは支払いの抵抗感が少なかったように思います。
そして、Maxプランの$100を契約して使いましたが、Cursorだとうまくいかなかった点も結構できたので、完全にこちらに乗り換えました。
ただ、Claude CodeもWebフロントのイベントやCSS周りで問題になることはありますが、根気よく指示をだしていけば解決はします。
今のところは、Claude Codeで落ち着いています。
以上、2025年7月時点の自分のAIコーディングツール利用について記載してみました。
次に、非IT企業のAIツール導入について記載してみます。
2. 非IT企業のAIツール導入
こちらはSI業務として仕事を請けて対応しています。
これはいろいろなツールがあるのですが、めぼしいものだけ記載シてみます。
a. 汎用的な生成AIツールの導入:やっぱりChatGPTが人気が高い
なにかの業務に特化したものではなく、検索、翻訳、文書作成など作業補佐をするような汎用的な使い方をするAIツールについて記載して見ます。
これは、圧倒的にChatGPTの人気が高いです。特に、メールはMicrosoftのOutlook、認証周りはEntraIDを使い、Office系アプリをメインに利用している企業は、ChatGPTを使う傾向が強いです。
「Copilotもあるんじゃないの?」となるかもですが、やはりChatGPTには及ばないところあり、ChatGPTを導入したいという企業が多いです。
Copilotも中身はChatGPTをつかっているようですが、つかっている感じChatGPTより精度が高いようには思えません。
それは他の人も感じているらしく、やはりChatGPTを使う人が多いように思います。
企業規模が大きくなるとユーザーの監視などもあるのでEnterpriseプランを利用するところが多いですが、やや小さい企業でもGPTsを使い処理を共有するためTeamプランを使うところもあります。
ただ、実際、つかってみるとClaude Desktopとかの方が便利ではないかなと感じますが、Claudeは知名度が低く、非IT企業ではなかなか導入になることは少ないです。
b. GeminiはGoogle Workspaceユーザーの利用が多い
MS系アプリでワークスペースを管理している企業はChatGPTの利用が多いですが、Google Workspaceを利用している企業だと、Gemini Advancedが使えるのでこちらを使うことが多いと思います。
なにより、Microsft365 Copilotは、別途課金がありますが、Geminiの場合、Standardプラン以上であれば、追加費用なく使えるので、AI利用の敷居は低いと思います。
あとは、GoogleはNotebook LMという特定のドキュメントの検索や要約が簡単になるAIツールがあり、これはかなり利用されています。
Gemini自体は、ChatGPTやClaude程の性能はないなと感じますが、DeepSearchは結構よくできていると感じます。本格的に業務に利用する場合は、AI Studioなどでカスタマイズすると良いのかもしれません。
こちらは導入支援というよりも、運用整備をする仕事になります。
c. どのような導入作業をするのか?
ツールについては、ChatGPT、Geminiになることが多いですが、精度や使い勝手などを考えた場合、Claudeを使うこともあります。
では、次に導入作業をすることが多いのか書いてみます。
以前、別の記事も書いたので、それも参考に貼っておきます。
①ツール選定
まずは、ツール選定です。多分、どの企業も無料版でいろいろつかっています。その中からどれがよいのかコストと性能、セキュリティを見ながら選定します。
ただ、これは前述した通り、つかっているワークスペースツールに依存して自ずと決まります。
②ガイドラインの作成
ある程度の組織でAIを導入する場合、必ずこの工程が発生します。
特に、AI利用はハルシネーションやセキュリティ、著作権などの問題が指摘されていますので、その辺りの防止をするためにガイドラインを作ります。
前述した記事に、ガイドラインの内容は記載しています。
③利用トレーニング
汎用的なAIツールはUIがチャットだけでシンプルなので、何をしてよいか分からない人も多くいます。
そこで、最初にどのような使い方をするのかトレーニングする必要があります。
今は、YouTubeでいくらでもトレーニング用の動画があるのでそれをみながら、一緒に操作するというのが手っ取り早いと思います。
④ノウハウ共有環境の整備
トレーニングでは一般的な使い方は学べますが、会社の業務に特化した内容はわかりません。
そこで、利用を進めていくなかで、少し詳しい人達が気づいたAIの業務活用を共有する動きを作ります。
チャットやWikiなどを通じて、利用方法を投稿したり、勉強会を企画するのもありです。
④AIが参照するファイルの格納場所を整備
AIを使う場合、業務に特化した資料を読み込ませることがあります。
これをするには、アップロードして使うというのも一つの方法ですが、毎回アップしていたのでめんどくさくなります。
そこでGoogleドライブ、OneDrive、boxなどクラウドストレージを指定して読み込ませる方法なども考えられます。
ChatGPTやClaudeにはクラウドストレージとのコネクタもあります。
こうしたAIが参照するファイルの場所の整備も作業としてあります。
⑤AIが生成した結果を保存する場所の整備
読み込みだけでなく、作成したドキュメントなどを保存する場所も整備する必要があります。
クラウドストレージのMCPサーバの機能によりますが、ローカルのファイルサーバに保存したいとなると、ローカルでファイル操作をするMCPサーバを設置したり、それをプロンプトで簡単に使えるようにする必要があります。
このあたりは、Claude Desktopが環境整備しやすいなと思います。
ただし、AIがローカルを扱う場合はサンドボックス設定をしておく必要があるので、そこは注意が必要です。
サンドボックス環境はいろいろ作り方があると思います。
⑥ドキュメントやプロンプトのメンテナンス
AIを業務で使う場合、RAGで読み込ませるファイルを精度を上げるために加工することがあります。
また、プロンプトも調整が必要になります。
それぞれバージョン管理などをしながら、メンテナンスをして精度向上や新しい業務への対応をさせます。
プロンプトエンジニアリングはとても重要になります。以下の資料がよくまとまっていると思います。
最近では、プロンプトエンジニアリングから進んで、コンテキストエンジニアリングと言う領域もあるようです。
⑦AIモデルやツールの動向チェック、入れ替え
これはまだ発生はしていませんが、AIモデルやツールは月単位ぐらいで新しいものがでてきます。
もし、今よりもよいツールがでたら、移行提案をする必要もあります。
その際にAIが参照しているファイルやプロンプトを移行しやすく管理しておけば、比較的用意にツールの入れ替えはできます。
3.最後に
以上、2025年7月時点のIT系、非IT系企業のAIツール導入について個人的観測ベースで整理しました。
AIツールはまだ制約がいろいろとあり、完全自律で動くツールではないと思います。まだまだ人間のサポートなしには使えないツールです。
一方で、AIツールの進化は速く、前できなかったことが数ヶ月経てばできることもあります。
AIを利用したビジネスをする場合、こうした制約と性能をよくみながら、ユーザーがその時点で満足のいく活用方法を整備、提供シていく必要があると思います。
また、時間が経ったら、状況を書いてみたいと思います。