当記事は、「SBL Advent Calendar( https://adventar.org/calendars/6477 )」の11日目の記事です。また、構成は経験点効率概論と経験点効率演習の2部としています。経験点効率概論については、以下のリンクを参照してください。
1) はじめに 〜この記事の目的〜
この記事は経験点効率概論を読んでいただいた方を対象として、実際に経験点効率表を使い慣れていただくことを目的として書かれた記事になります。
概論の方でも紹介しましたが、経験点効率表のリンクは以下の通りです。なお、投手に対応した表しか用意できておりません。予めご了承ください。
もし概論の方を読まれていない方がいらっしゃれば、軽く目を通していただけるとよりこちらの記事が役に立つかと思います。それでは早速ですが内容のほうに移っていきます。
2) 経験点効率表の読み方
まずはそもそも経験点効率表に書かれている数字が何を意味するのかについて説明していきます。BBL用とSBL用が存在しますが(SBL用については通常版とS,G固定対応版の2種類ありますが、これについては後述します)、まずはSBL用の方から説明し、BBL用およびS,G固定対応版にしかない部分に関しては後ほど補足していきます。
次の画像はSBL用の経験点効率表を開いた時のレイアウトになります。
図1) SBL用経験点効率表のスクリーンショット
この章で説明するのは右上の一覧表、および左下の比較表についてです。
一覧表に関しては、非APの大練習によって各時期に得られる経験点を基準として、それぞれの練習を行った時に得られる経験点を割った数値を一覧の形で表示しています。例えば球速練習に注目すると、通常期3では非AP大練の0.86倍だけ経験点が得られるのに対し、通常期4では非AP大練の0.80倍の経験点が得られるといったように変化していることがわかります。
とはいえ、一覧表だけでは非AP大練以外の練習同士での比較がしにくいのも事実です。例えば変化と球質の効率を比べたいと言った場合、いずれも小数の値が並んでおり、一目で比率としてはどの程度なのかが非常にわかりにくくなっています。これを補完するものであり、実際に育成計画を立てる上でも役に立つのが比較表です。こちらでは任意の練習を基準として、同様に任意の練習の経験点を比率で表すことができます。これにより先ほどはあまり明確でなかった経験点比率が一目でわかるようになります。
章の最後に、BBL用の一覧表で異なる点についても説明しておきます。BBL経験者の方は実感としてお持ちかもしれませんが、特に精密鍛錬を採用した場合には、大練でマイナスがある練習においては小練の方が得られる正味の経験点が多くなることがあります。このため、大練と小練のうち得られる経験点が多くなる方を採用して表示する機能がBBL版には搭載されています。もちろん大練と小練ではケガ率が異なるため、こちらの入力に応じて計算結果が異なるような仕様としています。ケガ率の入力などについては次章以降を参照してください。
3) 経験点効率表への入力項目
経験点効率表を用いるにあたって重要になってくるのが、自分自身のAP、鍛錬、小AP、ケガ率などの情報および比較したい練習の入力になります。経験点効率表の方でも軽く説明してはいますが、記事の方でも重ねて説明します。
図2) SBL用シートにおける条件入力部分と一覧表のスクリーンショット
基本的には経験点効率表全体を通じて赤い枠の中が編集可能な領域となっています。まずは一覧表の左に配置されているAPと鍛錬の枠に、APと鍛錬をプルダウンから選択します。すると、それに応じて一覧表の数字が変化します。図1と比較すると、APが変化と球速で異なることで数字が変化していることがわかります。
次に、比較表で2種類の練習を比較するための入力についてです。こちらに関しては左側の赤枠において基準としたい練習を、右側の赤枠において比較対象としたい練習をそれぞれプルダウンから選択します。具体的な例が図3になります。
図3) 比較表への入力を行った例
球速AP、積極鍛錬のもとで作成
これにより、SBL版では一通り任意の条件で任意の練習の経験点が比較できるようになります。引き続き、BBL版とS,G固定版に固有の機能とそれに伴う入力項目について説明します。図は省略しますが、BBL版では条件入力の欄に小APと小練ケガ率、大練ケガ率の枠が追加されています。小APに関しては同様にプルダウンから選択していただく形となります。ケガ率については自分のケガ率を直接入力していただければ計算が実行されます。なお、BBL版においてはギプスの使用を前提としているため、丈夫なカラダ採用の場合には小AP計算非対応とはなってしまいますがSBL版の方をご利用ください。
S,G固定版では、条件入力の下にチェックボックスが追加されています。これについてはS能力およびG1能力があると積極鍛錬の仕様が変化することによる経験点の変化に対応しています。S能力またはG1能力がある場合、該当する部分にチェックを入れるとその場合に得られる経験点に対応して一覧表、および比較表の値が変化します。
最後に、この章の内容を踏まえた練習問題をいくつか用意しておきます。解答についてはこの記事の最後に書いておきますので、適宜ご利用ください。
問3-1) SBLにおいて変化AP、積極鍛錬のもとで育成を行う。成長期2において、スタミナを基準としたときの変化球の経験比率はいくつになるか。
問3-2) SBLにおいて球速AP、積極鍛錬のもとで育成を行う。球速を基準とした時、変化球の経験点比率が最大となる時期はいつか。
問3-3) BBLにおいて変化AP、球速小AP、精密鍛錬で小練ケガ率6%、大練ケガ率14%のもとで育成を行う。変化を基準とした時、球速の経験点比率が最大となる時期はいつか。
問3-4) SBLにおいてコントロールAP、積極鍛錬のもとでコントロールSの状態で育成を行う。スタミナを基準とした時、球速の経験点比率が1.00となる時期を全て挙げよ。
4) 育成への還元
この記事のメインとなる章になります。抽象的な章タイトルとなっていますが、結局のところ表から得られる情報をどのように育成に活かしていけば良いのかということについて説明します。仮に2種類の練習しか行わないのであれば簡単で、経験点効率の良い時期に一方の練習を行い、残った時期にもう一方の練習を行えば良いでしょう。SBL変化AP、積極鍛錬で変化球と球速のみを伸ばす場合を考えます。
図4) SBLでの練習検討のための経験点比率例
SBL変化AP、積極鍛錬のもとで比較
このような場合、変化球は数字が大きいところから優先的に練習するのが良いでしょう。具体的には成長期3,4>通常期4>成長期1>成長期2>通常期1>通常期2>通常期3>停滞期3>停滞期2>停滞期1の順に変化球を優先して練習すべきであり、変化球が目標に到達する程度の練習を確保した後は残りの時期で球速を練習するのが最適解になります。
しかし実際の育成の場合、このようにことは単純に進みません。3種以上の練習を行う場合、それぞれの組み合わせについて経験点効率を考えなければならないためです。特にマイナス2種大練、マイナス1種大練、小練にAPが絡むと事情は複雑になってきます。コントロールAP、積極鍛錬のもとで球質、コントロール、変化を練習する場合を考えます。球質を基準に変化の経験点を比較した表と、コントロールを基準に変化の経験点比較した表を以下に示します。
図5) 3種以上の練習間の経験点比較例
SBLコントロールAP、積極鍛錬のもとで比較
図6) 3種以上の練習間の経験点比較例
SBLコントロールAP、積極鍛錬のもとで比較
図5、図6のいずれからも通常期よりも成長期に変化を練習した方が効率は良くなりそうなことは読み取れます。しかし、図6のみを参照してしまうと、一見停滞期1の変化練習は相対的に効率が悪くないように見えてしまいます。この挙動はコントロール練習におけるAP分の上積みが停滞期になると小さくなること、停滞期1においては積極鍛錬の補正が効かないことが影響しており、必ずしもコントロール以外の練習と比較した時であっても変化練の効率が悪くないとは限りません。実際に図5からは球質と比較した際には停滞期1での変化練習はかなり効率の悪いものとなることが明らかで、複数の比較表を用いて練習対象を検討することが大切であることがわかります。
このような比較の際にまず行うべきは、いずれの表においても顕著に突出している時期を見つけることです。例えば先ほどの例では、いずれの表においても成長期3,4の変化練の値が相対的に高いことがわかります。成長期3,4があるような成長型であればこの時期に変化練を行うべきでしょう。成長期3,4がない場合については、次に変化練が優先されるのは通常期4となるでしょう。
逆にその練習を行うべきではない時期について考えることも重要になります。同様に先ほどの例で考えると、停滞期2,3についてはいずれの表においても変化練の数字が低く、この時期には変化練以外の練習を行うべきであると考えられます。具体的に球質とコントロールのどちらを練習すべきかについては、これらの比較表を用いて検討してくのが良いでしょう。
このようにして練習したい時期と練習したくない時期を考えた後は、実際に目標能力値とすり合わせながらどの時期にどれだけ練習するかについて考えていきます。効率の良い時期に変化練を行うことで余りが生じるようなら、残る練習のうち効率が良い方をその時期の残りに実行していくのがベストです。一方で効率の良い時期を全て変化練に充てても目標に到達しない場合には、次に効率の良い時期に変化を練習していきたいと考えます。少し難しいのが、この時期が他の練習でも効率が良い時期となっている場合です。抽象的な説明にはなってしまいますが、このような場合にはどちらがより他の時期に練習することで効率が悪化するかを考え、他の時期に練習したくない方を優先して練習していくのが良いです。
章の終わりとして、説明の補完も兼ねて3種類の練習での育成時期を考える問題を用意しました。設定の都合上あまり明確な解答がある問題ではありませんが、経験点効率という観点から育成について考えてみるとはどのような感覚なのかについて触れてみていただけると嬉しいです。
問4-1) SBLにおいて変化AP、積極鍛錬で育成を行う。リリーフ投手を育成するものとし、球質、コントロール、変化を上げたい。成長型が普通早であった場合、おおよそどの時期にどの練習を行うと効率が良いか、導出過程と共に述べよ。ただし、普通早の各時期の成長係数は以下の通りである。
図7) 普通早の成長係数
5) 経験点効率の欠点
ここまで経験点効率を考えることにより育成の効率が上がることを説明してきました。しかしながら、この概念にも多少欠点が存在します。この章では経験点効率の概念が活用しにくい育成と、その場合の経験点効率の利用について説明します。
単刀直入に言うと、経験点効率の概念の欠点は反転育成と相容れない点です。反転育成は簡単に言うと積極鍛錬のデメリットを減らす育成であり、そもそも経験点効率そのものを変化させるため、全ての時期において経験点効率を考えながら反転育成も実現することは困難です。
この場合の経験点効率の利用としては、反転以降の練習を効率的に進めるための活用がベストでしょう。反転育成の性質上、反転以前は最短で積極鍛錬のマイナスが乗らない形を作ることが最適ルートとなります。これは経験点効率から得られる結論とは完全に異なる結論ですが、経験点効率の表そのものを変化させるため結果的には経験点効率から得られる結論以上の育成が期待できます。一方で反転後は経験点効率が変化しないため、S,G固定対応版を用いることで効率の良い練習を追い求めることが可能になります。そのままでは経験点効率の適用範囲外となる場合でも経験点効率を完全に切り捨てるのではなく、使える部分で使っていくことが肝になります。
6) おわりに
経験点効率という概念と経験点効率表についてここまで長々と説明してきました。もちろんBBL・SBLの育成においてこれが正解というルートは存在しませんし、このゲームの本質は楽しむことなので、自分がやりたいように育成を進めていくことが一番です。経験点効率というのは最終能力を完成させたことに特化した概念となるため、通算成績の良い選手を作りたい、選手のエピソードを絡めたい、といった育成からは少し縁遠くなってしまうものかもしれません。しかし、自分にとっての「正解」が少しでも強い選手を作ることを意識したものであれば、その大きな助けになりうるのがこの経験点効率の概念です。この記事がほんの少しでも誰かの育成の役に立てば、そんなことを祈りながら文章を締めさせていただきます。2部構成、両方とも長丁場となりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
7) 章末問題解答
問3-1) 変化AP、積極鍛錬を条件としてスタミナを基準とし、変化球と経験点を比較した際の成長期2での数字を見れば良い。1.00が正解。
問3-2) 球速AP、積極鍛錬を条件として球速を基準とし、変化球と経験点を比較した際の各成長期での数字を比較すれば良い。成長期3に0.59となり最大。
問3-3) BBL版において変化AP、球速小AP、精密鍛錬、小練ケガ率6%、大練ケガ率14%を条件として変化を基準とし、球速と経験点を比較した際の各成長期での数字を比較すれば良い。停滞期1に1.27となり最大。
問3-4) コントロールAP、積極鍛錬、コントロールSを条件としてスタミナを基準とし、球速と経験点を比較した際の比較表を参照する。停滞期1、通常期1、通常期2、通常期3において1.00となる。
問4-1) 球質、コントロール、変化の間の経験点比較表はそれぞれ以下のようになる。
まず、成長期3においては変化を基準とした際の球質、コントロールともに獲得経験点が少ないことから、この時期には変化練を行うべきであると考えられる。通常期3、通常期4、成長期1を比較して考えると、通常期3については球質、コントロールの双方とも比較的経験点が得られる。通常期4>成長期1の順に変化球を優先して練習した上でなお変化の経験点が不足するようであれば、通常期3に変化練を行うことも検討するが、優先順位は低い。
次に変化練の効率が悪い停滞期について考える。球質とコントロールの比較を行うと、停滞期2についてはコントロールを優先すべきであり、停滞期1では球質を優先すべきである。停滞期3についてはその他の時期との兼ね合いとなる。停滞期以外の通常期3、通常期4、成長期1では通常期3および成長期1で比較的球質の効率が良化する。通常期4ではコントロールが若干優越する。
以上のことを総合して考えると、成長期3は変化、停滞期1は球質、停滞期2はコントロールをそれぞれ練習するのはほぼ確定的であろう。通常期4については変化球に充て、余裕がありそうならばコントロールを練習するべきである。この場合通常期3、成長期1については、目標能力に応じて球質とコントロールを任意に定めるのが良い。通常期4のみで変化が不足であれば、成長期1にも変化練を行うべきであろう。この場合、成長期1の残りおよび通常期3で目標能力に応じて球質とコントロールを練習するのが良い。