博報堂テクノロジーズの坂井です。
普段はメディアプラニングツールの企画・開発をやっています。
ユーザー像は絞り込む?広げておく?
サービス開発で、ユーザー像を「絞り込むか」「広げておくか」を悩むことはないでしょうか。
一般的にはユーザー像を絞り込むことで
- ユーザー課題の理解やアイデア出しがシャープになる
- 開発チーム内での合意形成がスムーズになる
などのメリットがあると言われています。
一方でユーザー像を絞り込むことで
- ニッチ化することで幅広いユーザーに使ってもらえる機会を逸してしまう
ことを懸念して、なるべくユーザー像は広げておきたいんだという意見もあると思います。
私の個人的な好みは後者の立場ですが、サービスやチームの状況によってはやっぱりユーザー像は絞り込んだ方がいいよね、となるときもあります。
絞り込んだユーザー像に、サービスが不必要に依存しないように
ユーザー像を絞り込むときに私が気をつけているのが、絞り込んだユーザー像にサービスが不必要に依存し過ぎないようにすることです。
サービスが成功するとユーザーは必然的に広がっていくはずですし、うまくいかなければ別のユーザー像に絞り込み直して再チャレンジすることも考えられます。このとき、サービスの深い部分が当初想定したユーザー像に依存しすぎていると、これらサービスの設計し直し、作り直しが発生する確率が高くなってしまいます。
ユーザー像を絞り込む条件のうち、
- そうそう揺るがない条件には深めに依存してもよいが
- もしかしたら変わるかもしれない挑戦的な絞り込み条件には浅めに依存する(できればUIなどのプレゼンテーション層で対処できればベスト)
ことによって、将来の顧客像の変更に対してサービスがフットワーク軽く適応できる状態を維持するように心がけています。
例: サイト解析サービスの場合
サイト解析サービスを開発したいとしましょう。汎用的なサイト解析サービスはすでに多くありますので例えば「(Qiitaのような)ソフトウェアエンジニア向け情報共有サイト」に一段階、ユーザー像を絞り込むことが考えられます。
これによって
サイト来訪者はソフトウェアエンジニアが大半だから、GitHubアカウントを持っていて連携しているんじゃないか。記事の執筆閲覧とGitHub上のアクティビティの関係を分析できたら面白そうだ。
サイト管理者は記事につけられる大量のタグのメンテナンスに苦労していそうだ。SNS上の会話をウォッチして、新しいタグをサイト管理者に提案する機能があると喜ばれるかもしれない。
など、一歩踏み込んだ課題洞察やアイデア出しが可能になります。
しかしいざサービスを作る場合は、サービスの最深部は汎用的なサイト解析サービスを前提にした機能開発に留め、「ソフトウェアエンジニア共有サイト」向けに特化した各種機能はその上に乗っかるような付加機能とすべきです。もし「ソフトウェアエンジニア共有サイト」という前提がサービスの最深部で必須条件になってしまうと、その上に乗っかる様々な要素が「ソフトウェアエンジニア共有サイト」向けに作られてしまう可能性があります。
将来ユーザー像が広がったり、別のカテゴリのサイトに変化した場合でも、付加機能をうまく切り離して作り変えることでビジネスの変化に耐えることができます。
最後に
今回紹介した指針は、あくまで絞り込んだユーザー像に不必要に依存することを避けるべきであって、必要であればサービスの深い部分で依存してしまうことは仕方ないと思います。
しかしドメイン理解が100%ではない状況では、不必要な依存関係を作ってしまったな〜という経験は私もよくやってしまうので、自分への戒めとして記事にしてみました。