はじめに
これは、CyberAgent 20新卒 エンジニア Advent Calendar 2019 の6日目の記事です。
今回は大学の研究でVR、特にHaptic Interface(力触覚インタフェース)を扱っているので、VR周りとHaptic Deviceについて簡単に紹介していけたらと思っています。気軽に興味のある部分だけでも見ていっていただければ幸いです。
目次
VRとは
VRとは「Virtual Reality(バーチャル・リアリティー)」の略で、日本語では「仮想現実」と訳されます。
VRはコンピュータ上に実環境と本質的に同等な仮想環境を構築し,入出力機器を用いてインタラクションを行うことで,ユーザに現実感を与える技術体系で、現在はHMD(Head Mounted Display)と呼ばれる装置を用いてVR体験をすることが主流となっています。最近ではVTuberも人気を博しており、VRひいてはxRが日常に溶け込んできています。
少し堅苦しいお話になりますが、VRには三要素と呼ばれる概念があり、即ち、三次元の空間性、実時間相互作用、自己投射性の3つです。
三次元の空間性とは,コンピュータの生成した仮想空間が人間を包み込むように存在することであり,実時間の相互作用性とはユーザが仮想空間内の環境と実時間の相互作用をしながら行動できることです.自己投射性とは,異なる感覚器官から得られた情報が矛盾なく一致している状態が仮想空間内においても実現されていることです。(詳しい内容はいい記事があったのでこちらをどうぞ)
この中の自己投射性を向上させて,より現実感や没入感のあるVRシステムを構成するために様々な感覚提示装置の提案,研究がされていて、自らの手指を使って力覚・触覚を感じ取りながら直接的に操作するための力触覚提示装置(ハプティックデバイス)の開発が進んでいます。
VR Deviceの紹介
少し話題は変わりますが、VRのデバイスをいくつか紹介させてください。
####Oculus Rift S(Oculus製品の比較はこちら)
Lenovoと共同開発で生まれた新型のOculus製デバイス。Oculus Riftとのトラッキング方式が大きく変化したほか、解像度の改善、光学系の改良、装着感の向上などの変更が行われています。個人的に感じる大きな違いは外部センサーの有無だと思います。これによりセットアップの手間が大いに削減され、さらにセンサーによる不具合が減り、没入感の向上にいもつながっているのではないかと。
2019年5月から日本でも発売しています。定価:49,800円
####Oculus Quest
Oculus QuestはPCなどと接続することなく単独で使用できる一体型VRヘッドセットで、スリープ状態から素早く利用可能な状態にすることができ、ケーブルを気にせず手軽にVR体験ができます。
2019年5月から日本でも発売しています。定価:64GB:49,800円、128GB:62,800円
####Oculus Go
ほかのOculus製品との大きな違いは移動ができないことだと思います。そもそも利用用途が違う気がしていて、Oculus Goでは映画鑑賞や見るVR体験をする人向けかと思います。お値段もお手頃なのでとりあえずVRを体験したい方にお勧めできると思います。
2018年5月から日本でも発売しています。定価:32GB:23,800円、64GB:29,800円
####HTC VIVE
Oculus製品との大きな違いはトラッキングの範囲で、360度全体をトラッキングします。というのも、トラッキングのセンサがちょっとしっかりしていて、設置は難しいが精度、範囲ともに良好だと思います。VIVEトラッカーを足や腰、肘や膝につけることで、現実側の動きをより細かくVR上のアバター等に反映できるシステムがあり,拡張性も高いと思います。
2016年4月から販売を開始していて、2019年4月からは最新版であるHTC VIVE PROも発売しています。定価:64,250円(Pro:94,000円)
####PSVR
馴染みのあるPlayStationが発売しているVRでVR体験はもちろん、CGムービー、ミュージックビデオ、360度実写映像など多彩なVRコンテンツを楽しむこともできます。PlayStation®4とPlayStation®Cameraが必要ですが、VR単体ではお求めやすい価格なので、PlayStation®4を持っている方にはおすすめしたい製品です。PlayStation®4のゲームでVR対応のものもあるので是非!
2016年10月から販売をしています。定価:34,980円
今は百均でも簡易的なVRデバイスが買える時代ですので、一度も体験したことのない方は是非!また、VRデバイスをいじれる環境にいて少しでも興味のある方はBeat Saberがおすすめなので是非やってみて下さい!
Haptic Deviceの歴史
なぜHaptic deviceが生まれ、現在も使われているのか勉強したことを必死に思い出しながら解説したいと思います。(研究の英文輪講で作った資料があったのでよかったらどうぞ)
1950年代、原子力産業においてオペレータの命を危険にさらすことなく放射性製品を取り扱うために、エンジニアはマスターアームを使用して遠隔のスレーブロボットを制御するのにためのマスター・スレーブシステムの概念を開発し、技術の発展とともに電動化、遠隔化が進み、自由度も高まってきました。
この技術は、環境的に困難なところや(原子力、水中、宇宙など)、大きさの制約(顕微操作、顕微手術、低侵襲手術など)で手が出せないところなど、人が直接介入できないあらゆる場所で遠隔操作だけでなく仮想環境との相互作用に利用できるようになりました。
ここで根本に戻ってHaptic Deviceが生まれた経緯を考えると、仮想世界で可能な限り完全な没入感を錯覚させること、つまり自己投射性を上げることにあります。見ることはできても触れない現在のVRでは遠隔の作業で違和感が生まれることは言うまでもないことで、遊ぶという体験にしても物足りなさを感じてくるのは時間の問題です。そして触覚にまつわるVR Deviceの開発が進んできています。
Haptic Deviceについて
まず現在開発されているHaptic Deviceを紹介したいと思います。
EXOS Wrist DK1
手首の掌背屈(前後方向)と橈尺屈(左右方向)の二方向へ力を加えることで、さまざまな触覚を提示するデバイスです。従来機種であるEXOS Wrist DK1から約1/3となる350gまで軽量化を実現し、Vive ControllerやOculus Touch等の標準的なコントローラと組み合わせて使用することができます。
Hi5 VR GLOVE
形状は完全にグローブであり、指先に高精度9自由度のIMUセンサー(ジャイロスコープ、加速度計、磁力計搭載の慣性計測装置)を内蔵し、VIVEのVR空間上に両手と全ての指の動きを、高精度且つ5ms以下の低レイテンシーで、リアルタイムにシミュレーション表示させることが可能です。
VRfree
特徴はVRヘッドセットの機種依存がないことで、各種のVRヘッドセットにセンサーを装着してVRグローブを活用することができます。6種類のセンサーを搭載しており、VRゴーグルの機能に依存せずにVRFreeだけで手の位置トラッキングと指の動きのトラッキングが可能とされています。
VRgluv
Vive/Oculus対応で手を使いバーチャルオブジェクトをコントロールするだけではなく、Full Force Feedbackと呼ばれる触感機能があり、そのものが固いのか柔らかいのかまで判別でき、優しく掴んだり、握りつぶしたりといったこともできるようになっています。
キックウェイ
ハシラスが開発したパーソナルモビリティ型VRライドデバイス「キックウェイ」で楽しむVRジェットコースターコンテンツです。立ち乗りならではの新感覚のスリルを味わえます。VRコンテンツに合わせて加速度や振動、送風などの体感を発生させ、VR体験のリアリティを何倍にも増幅させることが可能です。
####GTS(Galvanic Tongue Stimulation)
GTSとは電気刺激によって味覚を変化させるために使用される技術で、塩分や旨味を増加させたりなど長時間持続する味覚増強を可能にし、さらにVR/ARと組み合わせて、より効果的な飲食体験に拡張することも期待されています。似たデバイスでスプーンタイプのものもあります。
PHANToM
3DSystmes社が特許を持つ触覚/力覚技術を応用し、仮想物体に触れて操作することを可能にし
幅広い用途でのコンピュータ・インタラクティブ・デバイスとして活用することができます。肩を軸とした腕周りの広大な作業空間は1:1スケールでの操作が可能です。
SPIDAR-G2
ワイヤ駆動型6自由度力覚提示デバイスです。SPIDAR-G2はワイヤ、プーリ、DCモータで構成されており、その軽量性により他のハプティック
デバイスアーキテクチャと比較して慣性の大幅な低減を実現しています。
今年のTGS(Tokyo Game Show)でもWearable Haptic Deviceの出展があり、Haptic Deviceの流れが来ている気がしています。
現在研究していること
新しいHaptic Deviceとして、HMD一体遭遇型ハプティックデバイスの開発、改良を行っています。
研究室としてSPIDARと呼ばれる、糸を用いたHaptic Deviceの開発を行う傾向にあり、自分も糸を用いて力触覚を提示するデバイスの開発を行っています。
また、個人的な興味で「クロスモーダル」と呼ばれる視覚と味覚、視覚と聴覚など、本来別々とされる知覚が互いに影響を及ぼし合う現象を用いた、VR技術の発展を目指して研究を行っています。
個人的に現在のVRで大きな欠点となるのは広い範囲を歩けないことだと思っています。解決策としてOmniがあり買いたいのですが、高すぎるのでいつか歩けるVRの開発を行いたいと思っています。
まとめ
ここまで読んでくださった皆さんありがとうございました。
VRはまだまだ発展途上の技術かもしれませんが、今後技術の発展と共に今では考えられないサービスが考えられたり、なくてはならない製品が生まれてくると思います。願わくばその中に自分が入っているように今後頑張っていきます。
皆さんも今後のVRに注目してみてください。