$$
\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}
\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}
$$
はじめに
こんにちは、S.Kouです。お待たせしました!
言い訳をすると試験が…
今回もニールセン・チャンの演習やっていきましょう!
今回は演習2.11からやっていきます!
前回の記事はこちら
本記事の内容は
Michel A. Nielsen, Isaac L. Chuang 共著. 木村達也 訳.
量子コンピュータと量子通信. オーム社. 2004
の内容に準拠しています。
本編
2.1.5 固有ベクトルと固有値
演習2.11
それぞれのパウリ行列の特性方程式を解く。
\begin{align*}
|X-\lambda I| &=
\begin{vmatrix}
-\lambda & 1 \\
1 & -\lambda
\end{vmatrix}
\\
&= \lambda^2 - 1
\end{align*}
より$X$の固有値は$\lambda=\pm 1$
したがって正規直交基底$\ket{v_1},\ket{v_2}$を用いて
X=\ket{v_1}\bra{v_1}-\ket{v_2}\bra{v_2}
と表すことができる。$\ket{v_1},\ket{v_2}$は
\begin{align*}
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
1 & 0
\end{bmatrix}
\ket{v_1} &= \ket{v_1} \\
\begin{bmatrix}
0 & 1 \\
1 & 0
\end{bmatrix}
\ket{v_2} &= -\ket{v_2} \\
\end{align*}
を解くことで
\begin{align*}
\ket{v_1}&=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 \\
1
\end{pmatrix} \\
\ket{v_2}&=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 \\
-1
\end{pmatrix}
\end{align*}
とわかる。
同様の計算で、
\begin{align*}
\ket{w_1}&=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 \\
i
\end{pmatrix} \\
\ket{w_2}&=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
i \\
1
\end{pmatrix}
\end{align*}
を用いて
Y=\ket{w_1}\bra{w_1}-\ket{w_2}\bra{w_2}
Z=\ket{0}\bra{0}-\ket{1}\bra{1}
となる。
演習2.12
この行列の固有値を考える。この行列の特性方程式は
\begin{align*}
\begin{vmatrix}
1-\lambda & 0 \\
1 & 1-\lambda
\end{vmatrix}
= (1-\lambda)^2 = 0
\end{align*}
より、$\lambda = 1$であり、この固有値に対応している固有ベクトルは
\begin{align*}
\ket{v}=
\begin{pmatrix}
0 \\
1
\end{pmatrix}
\end{align*}
のみしか取れない(大きさは1に限定)
したがってこの行列は対角化することができない。
2.1.6 転置共役とHermiteオペレータ
演習2.13
定義より
\begin{align*}
(\ket{w}\bra{v})^\dagger &= (\bra{v}^\dagger)(\ket{w}^\dagger) \\
&=\ket{v}\bra{w}
\end{align*}
演習2.14
定義を用いて計算していく。
\begin{align*}
\big((\sum_i a_i A_i)^\dagger \ket{v}, \ket{w} \big) &= \big( \ket{v}, (\sum_i a_i A_i)\ket{w} \big) \\
&= \sum_i a_i \big( \ket{v}, A_i\ket{w} \big) \\
&= \sum_i a_i \big( A_i^\dagger \ket{v}, \ket{w} \big) \\
&= \big(\sum_i a_i^* A_i^\dagger \ket{v}, \ket{w} \big)
\end{align*}
最後の変形は内積の第一引数に対する共役線型性を利用(演習2.6)
演習2.15
定義から計算していく。
\begin{align*}
\big( (A^\dagger)^\dagger \ket{v}, \ket{w} \big) &= \big( \ket{v}, A^\dagger\ket{w} \big)\\
&=\big( A^\dagger\ket{w}, \ket{v} \big)^\dagger \\
&=\big( \ket{w}, A\ket{v} \big)^\dagger \\
&=\big( A\ket{v} , \ket{w}\big)
\end{align*}
より$(A^\dagger)^\dagger = A$
である。
演習2.16
$P=\sum_{i=1}^k \ket{i}\bra{i}$であるから
\begin{align*}
P^2 &= \big( \sum_{i=1}^k \ket{i}\bra{i} \big)\big( \sum_{j=1}^k \ket{j}\bra{j} \big)\\
&= \sum_{i=1}^k\sum_{j=1}^k \ket{i} \braket{i}{j}\bra{j} \\
&= \sum_{i=1}^k\sum_{j=1}^k \delta_{ij}\ket{i}\bra{j} \\
&= \sum_{i=1}^k \ket{i}\bra{i} = P
\end{align*}
演習2.17
Hermiteオペレータはスペクトル分解が可能であるから、任意のHermiteオペレータ$A$は
A=\sum_i \lambda_i \ket{i}\bra{i}
と書ける。ここで、演習2.14から
\begin{align*}
A^\dagger &= (\sum_i \lambda_i \ket{i}\bra{i})^\dagger \\
&= \sum_i \lambda_i^* (\ket{i}\bra{i})^\dagger \\
&= \sum_i \lambda_i^* \ket{i}\bra{i} =A
\end{align*}
であるから、
$\lambda_i^* = \lambda$ つまり$A$の固有値が実数である必要がある。
あとがき
2.1.6章を全部やると長くなりそうなので(あと間が空いてしまったので)
今回はここまでとなります。
試験が終わったので次回はすぐに出せるはず…
次回は2.1.6章の後編です。
これからも勉強頑張っていきましょう〜
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