LoginSignup
0
0

1. 帰無仮説とは?

帰無仮説(きむかせつ、Null Hypothesis)とは、統計学において仮説検定を行う際に設定される仮説の一つで、「効果がない」「差がない」「関係がない」といった状態を表します。検定の目的は、この帰無仮説が正しいかどうかをデータを使って検証することです。

具体例

新薬の効果を検証する場合、次のように設定します:

  • 帰無仮説(H₀):新薬には効果がない(治療グループとコントロールグループの間に有意な差がない)。
  • 代替仮説(H₁):新薬には効果がある(治療グループとコントロールグループの間に有意な差がある)。

2. 仮説検定の手順

  1. 帰無仮説の設定:効果や差がない状態を仮定します。
  2. 代替仮説の設定:帰無仮説が正しくない場合の仮説を設定します。
  3. データ収集:実験や観察によってデータを収集します。
  4. 検定統計量の計算:データを基に検定統計量を計算します(例:t値、χ²値)。
  5. p値の計算:検定統計量に基づいてp値を計算します。
  6. 帰無仮説の棄却または採択:p値が事前に設定した有意水準(通常0.05)以下であれば、帰無仮説を棄却し、代替仮説を支持します。

3. p値とは?

p値(p-value)は、仮説検定において、観測されたデータが帰無仮説の下でどの程度珍しいかを示す確率です。具体的には、観測されたデータまたはそれより極端なデータが帰無仮説が正しい場合に観測される確率を表します。

p値の解釈

  • p値が低い(通常0.05未満):観測されたデータは帰無仮説の下では珍しい→帰無仮説を棄却する。
  • p値が高い(通常0.05以上):観測されたデータは帰無仮説の下でもよくある→帰無仮説を採択する。

数式での表現

例えば、t検定を使用する場合、p値は次のように計算されます:
$$
p = P(T \geq t_{\text{obs}} | H_0)
$$
ここで、( t_{\text{obs}} )は観測されたt値、( H_0 )は帰無仮説を示します。

4. 具体例:新薬の効果を検証する

ステップ1:帰無仮説と代替仮説の設定

  • 帰無仮説(H₀):新薬には効果がない。
  • 代替仮説(H₁):新薬には効果がある。

ステップ2:データ収集

治療グループとコントロールグループに分けて、新薬の効果を測定します。

ステップ3:検定統計量の計算

例えば、t検定を使用して、2つのグループの平均値の差を計算します。
$$
t = \frac{\bar{X_1} - \bar{X_2}}{s_p \sqrt{\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}}}
$$
ここで、( \bar{X_1} )と( \bar{X_2} )はそれぞれのグループの平均値、( s_p )はプールされた標準偏差、( n_1 )と( n_2 )は各グループのサンプルサイズです。

ステップ4:p値の計算

観測されたt値に基づいてp値を計算します。仮にp値が0.03であれば、帰無仮説が正しい場合に観測されたデータが起こる確率が3%であることを示します。

ステップ5:帰無仮説の棄却または採択

通常の有意水準(0.05)と比較し、p値がこれより低い(この場合は0.03)ため、帰無仮説を棄却し、新薬には効果があると結論づけます。

5. 効果の大きさについて

帰無仮説の棄却が効果の大きさを意味するわけではありません。効果の大きさ(効果量)を評価するためには、例えば次のような指標を使用します:

  • 平均差
  • 標準化効果量(Cohen's d など)
  • 相関係数

これらの指標を使用して、観測された効果の実質的な大きさを評価します。

まとめ

帰無仮説とp値は統計的検定の基本概念です。帰無仮説は「効果がない」「差がない」という仮定を示し、p値は観測されたデータがこの仮定の下でどの程度珍しいかを示します。仮説検定の手順を理解し、p値を正しく解釈することで、データに基づく結論を導くことができます。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0