研究目的
1500個のミックス音源(Dance Music)を解析することで
- 曲のトランジションの長さの分析
- ミックスする前後2曲のBPMの差異の分析
- キーの転置の分析
- DJ間で同じ曲の混ぜ方の違いについての分析
をする.
データセットについて
Summary | statistic All Matched |
---|---|
The number of mixes | 1,564 1,557 |
The number of unique tracks | 15,068 13,728 |
The number of played tracks | 26,776 24,202 |
The number of transitions | 24,344 20,765 |
Total length of mixes (in hours) | 1,577 1,570 |
Total length of unique tracks (in hours) | 1,038 913 |
Average length of mixes (in minutes) | 60.5 60.5 |
Average length of unique tracks (in minutes) | 4.1 4.0 |
Average number of played tracks in a mix | 17.1 15.5 |
Average number of transitions in a mix | 14.5 12.9 |
曲の情報(BPMやKey, Cueポイント)はDTW[1]で生成する.
[1] R. Sonnleitner, A. Arzt, and G. Widmer, “Landmarkbased audio fingerprinting for DJ mix monitoring.” in Proc. International Society for Music Information Retrieval Conference (ISMIR), 2016, pp. 185–191.
分析結果
用語定義
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Cue Out = 次の曲を流した瞬間
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Cue In = 前の曲を完全に途切れた瞬間
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Cue Middle = 曲同士を混ぜている中で,メイン出力を次の曲に切り替えた瞬間.たとえば,前の曲のlowを切って,次の曲のlowをあげたタイミングなど.
曲のトランジションの長さの分析
Figure 6に曲のトランジションの長さのヒストグラムを示す.
トランジション領域のCue InとCue Outを抽出することで,トランジションの長さを計算している.
Figure 6から曲のトランジションは32beatもしくは64beatで行うのが定番であることがわかる.また,8beatや16beatでトランジションするよりも0beatで切り替えられていることの方が多い.意外にも16beatでトランジションすることは少ない傾向にある.
64beat以降はbeat数に比例して,トランジション方法としてはレアになる.
ミックスする前後2曲のBPMの差異の分析
曲のミックス音源のBPMとオリジナル音源のBPMの違いを比較する.
Figure 4はミックス音源のBPMとオリジナル音源のBPMの差異をパーセンテージで表したヒストグラムである.
例えば,5%の差があれば,オリジナル曲のBPMがミックスで再生されている間に5%上昇していることを示している.
Figure 4は平均0の正規分布の形をしていて,BPM差が5%以下なのが全体の86.1%,
BPM差が10%以下なのが全体の94.5%を占める.
つまり20曲のセットリストを組んだとすると,18曲はBPM差が5%以下である曲で構成することが望ましい.
キーの転置の分析
Figure 5は曲のミックス音源とオリジナル音源のkeyの違いを表したヒストグラムである.
Figure 5の横軸は転調度を意味し,0はオリジナル音源との同じkey,1はオリジナル音源のkey+1(例えば,オリジナル音源のkeyが”A”なら”B♭”)を意味する.
Figure 5から,転調されているのは2.5%で,転調されているトラックのうち,94.3%は+1しか転置されていないことがわかる.
この結果から,一般的にDJはキーの転調を行わず,マスターテンポ機能をオンにすることが望ましい.
また,長くトランジションする場合は,keyが同じ曲同士で行うことが望ましいとされていると考える.
DJ間で同じ曲の混ぜ方の違いについての分析
トランジションを曲のどの部分で行うかは,DJが選択できる.
しかしながら,曲ごとに”綺麗に”トランジションできる部分は限られていることが考えられるため,DJ間でのトランジション部分に差異はないことが予想される.
そこで,Figure 5にDJ間でのCue In とCue Outの乖離を示す.
その結果,全体の23.6%のペアが偏差ゼロであり,そのうち40.4%が1小節(4拍)以内,73.6%が8小節以内,86.2%が16小節以内であるとわかる.
従って,予想通り,曲ごとにトランジションする部分は決まっていると考えられる.