はじめに
プロジェクトテーマパークを使った社内研修を実施しました
実施内容、実施までの経緯、実施後の効果まで記事にまとめます
プロジェクトテーマパークとは
プロジェクトテーマパークは、プロジェクト管理ツール Backlog で有名な株式会社ヌーラボさんが開発したボードゲームです
「プロジェクト管理を学べるボードゲーム」というコンセプトで、プロジェクトをゲームとして擬似体験できるようになっています
開発の経緯やゲーム内容についてはこちらのブログにまとめられています
実施目的
研修の目的は大きく3つになります
- プロジェクトテーマパークを通して、プロジェクトマネジメントの目的、基本的な考え方を学ぶ
- 部署単位で実施することで、部署内のチームビルディングに役立てる
- Playful な文化を醸成する
当社、株式会社オーイーシーは本年度、新たに "Action! Playful!" というパーパスを掲げています
"Playful" という言葉には「ワクワクしながら新しいことに取り組む」という意味を込めています
今までのマネジメント研修とは違う、ゲームを通して楽しみながら学ぶ研修を目指しました
実施内容
株式会社 HEART QUAKE さんからゲームキットをレンタルして実施しました
研修用のスライド(全体進行、ルール説明、振り返りなど)も提供されているため、スムーズに研修できました
1回の研修を3時間とし、以下のような時間配分で実施しました
項目 | 時間 |
---|---|
ルール説明+10月 | 45分 |
練習(11月〜3月) | 30分 |
休憩 | 10分 |
本番(10月〜3月) | 50分 |
振り返り | 45分 |
スライドは自社用に少しカスタマイズして使用しました
(アイスブレイクは省略、振り返りに社内独自の取組を追加など)
実施経緯
JBUG
以前、 Backlog のユーザー会である JBUG でプロジェクトテーマを使用しています
そのときに 「面白い!しかもタメになる!」 と思い、何としても自社内でやろうと決めました
社内展開、事前アンケート実施
私自身は研修担当者ではないので、関係各所に掛け合う必要があります
社内への提案にあたって、まずは上記の Qiita 記事を書き、社内掲示板に展開しました
(当然、この時点ですでに根回しは済ませてあります)
「めっちゃ面白い!絶対有意義!」と触れ回ります
そして、アンケートに協力してもらいます
アンケート項目は以下のとおりです
- 氏名(任意)
- 所属
- 役職
- 現在の業務上の役割
- 経営層
- プロジェクト責任者
- プロジェクトマネージャー
- プロジェクトリーダー
- プロジェクトメンバー
- 営業・企画
- コーポレート部門
- プロジェクトテーマパークを利用した研修・イベントがあれば参加したいですか
- 参加したい
- 参加したいとは思わない
- どのような開催形態であれば参加しやすいですか(複数選択可)
- 業務時間内(部単位、グループ単位での研修)
- 業務時間内(全社的に部署を混合した研修)
- 業務時間外(社内イベント:社外の参加者はいない)
- 業務時間外(コミュニティイベント:社外の参加者もいる)
- 開催形態に関わらず参加するつもりはない
- プロジェクトテーマパークを利用した研修・イベントについて、ご意見、ご質問、ご要望等あればお聞かせください
アンケートをとる時点で HEART QUAKE さんから見積もりをもらい、費用も提示した上で回答してもらっています
事前アンケート結果
アンケート結果は以下のようになりました
- 総回答: 61(社員の1割以上)
- 参加したい: 55
- 開催形態:
- 業務時間内(部単位、グループ単位): 39
- 業務時間内(全社混合): 39
- 業務時間外(社内イベント): 20
- 業務時間外(コミュニティイベント): 11
アンケートの回答として、管理職の方から「自部署で実施したい」という意見が出ていたので、強力な武器になりました
アンケート結果も全社に公表し、稟議承認を経て、開催が決定しました
事前調整
「自部署で実施したい」と手を挙げてくれた部署の希望日程を中心にスケジュールを組みました
また、対象部署の人数が多いため、私一人では捌けないと判断し、今後のためにも人事部2名にサポートメンバーをお願いしました
HEART QUAKE さんからゲームキットが届いてから早速、人事部で練習兼事前確認を実施
ルールの確認、全体進行の時間調整、難易度の微調整を行います
大きな調整として、カードの選択とゲームオーバーの扱いを変更しています
カードの選択
JBUG でやったときと同様、「無口」の役割は除外しました
また、難しくなりすぎると判断し、「トラブルメーカー」も除外
実際やってみると練習で結構勝利チームが出たため、結局「トラブルメーカー」は本番で復活させました
「マイペース」も除外しようかと考えましたが、「協力できないのは辛い」というのも体験してもらうため残しました
「マネージャー」は研修としての意義のため、必ず入れることにします
最終的には以下のようなカード選択にしています
- 「無口」は除外
- 「マネージャー」と「エース」は必ず選択する
- 上記以外のカードをシャッフルして、3枚ランダムに選択する
- 選択した5枚をシャッフルし、各人に役割カードを配る
ゲームオーバーの扱い
本来であれば信頼ポイントが 0 になった時点でゲームオーバーです
しかし、複数チームで並行実施している中で 1 チームだけゲームオーバーになると、他チームが終わるまで何もできなくなってしまいます
特に序盤こそゲームオーバーになりやすいので、数十分の手持ち無沙汰は問題です
そこで、ゲームオーバーになったチームは 「状況悪化の報告レビュー」 を開催した上で、敗北確定のまま継続するルールとしました
信頼ポイントが 0 になった際、私を呼んでもらい、「何故、こうなったのか」を説明してもらいます
むしろ、こちらの方が 「どんなに状況が悪化しても終わらない」 という現実らしい、生々しいルールです
「状況悪化レビューするのだけは回避したい」と、より真剣にプレイしてもらえたと思います
実施結果
数値結果
合計 4 回、 11 チーム、 53 名を対象に研修を実施しました
(運営メンバーの練習、事前確認含む)
うち、本番での勝利は 7 チーム、敗北は 4 チーム
かなり良いバランスではないでしょうか
実施時間についてはおおよそ3時間に収めることができましたが、10分オーバーした回もあったため、かなり調整が難しいです
どうしても、早く進行するチームと遅く進行するチームが出てしまうので、「早く終わったチーム」をどうするか、「なかなか進まないチームをどうするか」というのはもっと考えておくべきでした
規定時間内で終わっていないチームについて、「練習」の場合は打ち切りで良いですが、「本番」で打ち切るわけにはいかないため、中間報告などの工夫が必要かもしれません(ただ、時間をかけて考えることが重要なので、急かし過ぎるのも微妙なところ)
月毎の状況、PMの経験年数で全く掛かる時間が異なるため、完全に足並みを揃えようとすると全体のテンポが遅くなってしまいます
やはり理想的には各チームにメンター兼タイムキーパーが着くといいですね(メンターの介入具合もかなり注意が必要ですが)
「運営難度」は結構高めかも
本番で50分確保しているところ、30分で余裕の勝利をしているチームもあり、「チーム内のPM経験年数」を元にハンディキャップをつけるべきかなと思います
やはり明確にベテランPMのいるチームが強かったので、イベントの雨割合や役割の指定、場合によっては「仕様変更」としてアトラクションの追加を実施するなど、現場での調整が必要そうです
事後アンケート結果
事後アンケートも取りました
若手であるほど効果的で、その上で管理職の人たちも「若手の良い機会になった」「若手と交流できた」と評価しています
ベテランの方にとっては歯応えが足りなかったようなので、この調整がやはり難しいですね
ベテランには「無口」の役割を与えてもいいかもしれません
全体としては非常に高評価なので、やって良かったと思います
総回答数
52
役職
- 一般: 45
- 管理職: 6
現在の業務上の役割(最も割合として高い者)
- プロジェクト責任者: 2
- プロジェクトマネージャー: 9
- プロジェクトリーダー: 11
- プロジェクトメンバー: 23
- コーポレート部門: 5
研修はPlayfulだと感じましたか(楽しんで学べましたか)
5段階評価平均: 4.69
研修の内容を業務で活かせると感じますか
5段階評価平均: 3.71
研修を通してチームの結束が強まったと感じますか
5段階評価平均: 4.02
研修を通して学んだことをお聞かせください
- 「行けます」と言っていたので任せたが、自分としては確率が低く感じたなど、思っていたより個人の感覚のズレがあった
- チームでのコミュニケーション、計画の大切さを学びました。プロジェクトマネージャーに任せきりになるのではなく、メンバーの一員としてプロジェクトに対して積極的に動けるようになりたいと思いました
- メンバーの役割や個性を理解してコミュニケーションが大事であることを認識できました
- 楽観的な見積やリスク管理の甘さが積み重なりプロジェクト失敗に繋がることをゲームを通して実感することができた
- 現実はゲームとは異なりやる気の増減や特性が見える訳ではないため、ゲームよりもしっかりとコミュニケーションを密にとっていくことが大切だと感じました。また個人の能力を過信しすぎず人と協力したり相談することも大事であると学びました
- 見積りって本当に大事だよなーと、通常業務で身に染みているので再確認しました。メンバーの意見を聞いてみると当たり前なんですが、自分と違う発想があるので、業務においても相談するのは大切だなと思いました
- サイコロ等の「運」に依存する部分が多いので、実際のプロジェクトで活用できる部分は少ないように感じました。ゲームとしては楽しかったです
プロジェクトテーマパーク自体を5段階で評価してください
5段階評価平均: 4.43
講師について5段階で評価してください
5段階評価平均: 4.61
進行スライドについて5段階で評価してください
5段階評価平均: 4.28
研修全体について、5段階で評価してください
5段階評価平均: 4.51
評価の理由をお聞かせください
- コンテンツとしては非常に面白い。参加者に合わせた運営側での難度のコントロールが重要な感じを受けた
- ゲームを通して学べた点が良かったです。1年目のメンバーでも一緒にできたので
- 業務ではあまり関わりのないメンバーと目標に向かって話し合う場となり、よかったと思います。振り返りもあり、全体的に有意義な時間でした
- 世代を跨って、プロジェクトに関わる立場が違う人と意見交換したり一緒に取り組めたのが良かったと思います
- ゲームの満足度が高く、時間配分がきちんと管理されていたため
- 全体的に楽しくメンバーと交流・研修が出来て良かった。ただ、業務に学んだ内容を生かせるかということを考えると、主に若手向けの研修であるかなと感じた
- 講義形式の研修と比べて、能動的にプロジェクト管理について学ぶことができた
- プロジェクトの過程で、小さな失敗が後の工程に大きく響いたり、やり方ひとつで全く違った結果になったりして臨場感があり非常に楽しかったです
- 楽しく体験することはできたが、実際のプロジェクト進行においては想定外のタスクが発生することがやはり多いので、そのあたりも体験できる内容であればより良かった
- 自分の問題ですが、説明やリハーサルだけではルールを全て把握することができず、終了してから「こんなこともできたのか!あのときやれば良かった!」と後悔したためです
- ポジティブな雰囲気だったので、あまり緊張せず参加できたのが良かったです。スライドのルール説明に頭が追い付かず、ルールブックを読むタイミングがなかったです
全体を通して、ご感想をお聞かせください
- 完遂できるまでやってみたかった
- 成功はもちろん、失敗からも学びがあるため面白い。ただ、チーム分けをどうするかも重要な要素になりそう。ベテランが仕切り始めたら成功するかもしれないがplayfulな研修にはならない
- プロジェクトメンバーとして仕事をしていく上で、マネージャーに求められる仕事ぶりや、コミニュケーションの仕方がわかってよかった
- プロジェクトにおいて大切なことをあらためて認識するとても面白いゲームでした。新人であればプロジェクトの最初の勉強として、経験がある人は大切なポイントを再認識し自分のプロジェクトで実施できているか見直す機会になると思います
- 仕様変更(途中でアトラクションをランダムにチェンジ)したり、一部納期の変更(カードの上下の入れ替え)等があるとよりリアルだなと感じました。無事成功できて楽しかったです
- 失敗はしたけど、何が悪かったのか問題点を把握してみたりと各々が自由に発言できたので良い研修になったと思います
- 本当のプロジェクトは取り返しがつかないので、しっかり計画し、取り組みたいです
- 実際のプロジェクト経験がないため不安でしたが、楽しみながらゲームを進めることができ、さらにプロジェクト管理について学ぶことができる良い機会でした
- とても良い機会を提供していただき、ありがとうございました。同じ部内ですが、所属が異なるメンバーのチームでしたので普段プロジェクトで関わることが少ないのですが、全員で同じ目標に向かって作業をしクリアできたときの達成感を共有できたことで、部としても結束力が上がったと思います
他にご意見、ご質問、ご要望等あればお聞かせください
- 無口のカードも入れてゲームをやってみたい
- 時間がもう少し短いとたくさんの人が参加しやすいのかなと思いました。(実際に参加して、内容的に短縮するのは難しいというのは分かってて書いてます。)私自身も業務調整に苦労してしまいました
まとめ
プロジェクトテーマパークを使うことで、 Playful に楽しんで学ぶことができました
特に、まだ入社したての1年目も、ベテランPMも、管理職も一緒になって学べたのは良かったと思います
プロジェクトマネジメントの手法やテクニックではなく「根本的な目的」を学ぶのに最適な研修です