はじめに
お疲れ様です。
株式会社オーイーシー、DX推進部 兼 経営戦略室 兼 経営管理部の若林です。
肩書の通り、私の主戦場は開発現場ですが、それ以外にも色々とやっています。
その中で今日話したいのは、社内勉強会についてです。
いわゆる「研修」とは別に、社内有志が企画、参加してスキルアップを図るものです。
当社では「DX塾」と銘打って定期開催しています。
本記事では社内勉強会で取り上げたテーマ、社内勉強会で得られたものを振り返っていきます。
社内勉強会の立ち上げ
遡ること約4年前、 2020年の1月に定期的な社内勉強会を立ち上げました。
当時はまだ「DX推進 室 」で、私も一介のSEでした。
私が長く派遣や準委任で働いており、 社外で得たスキル 、 社外で感じた文化 を多く持っていたため、これを社内に展開したい、という思いが最初のきっかけです。
当時の上長(今も同じですが)に相談し、まずは事業部内を対象として企画を開始しました。
当時の同僚たちは企画からサポートしてくれて、会場のセッティングからアンケートの作成まで、様々な形で協力してもらっています。
第1回のテーマは「Python のすすめ」です。
私は幸いなことに AI 関連の業務をしていたこともあり、 Python を日々書いていました。
当時、社内に Python 利用者はまだほとんどおらず、しかし今後需要が間違いなく増える Python は、勉強会のテーマとして最適でした。
内容はPython の環境構築、基本的な使い方までのハンズオンです。
あくまでも「 有志の自己研鑽を目的とした勉強会 」として参加者を募りました。
結果、10名の参加者でハンズオンを実施しました。
当時のアンケート結果は以下のようになっています(一部抜粋)。
当時の私がまだまだ未熟であり(今もですが)、いまいち理解が進んでいなかったり、進行が走っていたことが伺えます。
今後は私以外のメンバーにも講師をしてもらう想定だったので、技術以外にプレゼンや資料作成など、次回以降には多様なテーマを挙げています。
当時業務で使っていた Elm や Ansible が懐かしいですね。
続けて事業部内で第2回「Docker・Ansible のすすめ」を開催して更にフィードバックを集めました。
その後、2020年5月、「DX塾」の名前を冠して全社を対象に本格始動します。
開催形式
グループウェアでの掲示
社内で使っているグループウェアの掲示板に案内を出します
毎回できるだけ興味を引くように一生懸命に考えていますが、やはりテーマによって参加者数を増やすのが難しいときはあります
掲示例
# 【DX塾 第48回】 CodePen で学ぶスタイルシート実践
25年前、日本のインターネット人口普及率はわずか 9.2 % でした。
それが今や 82.9 % にまで達し、もはや誰もがいつでもWebを見ている、と言っても過言ではありません。
あらゆる企業がWebサイトを持ち、多くのサービスはWebで提供されています。
インターネットが滅びない限り、Webを支える言語の3本柱が廃れてしまうことはないでしょう。
これらの言語は基礎でありながら、習得すれば一生使い続けられるものです。
- HTML
- CSS
- JavaScript
今回はWebの外観を定義するCSS=スタイルシートをハンズオンで学んでいきます。
CodePen というサービスを使って、ブラウザ上で実際にコードを書きながらWebページを動かします。
https://codepen.io/
## 講義の概要
- CSS とは
- Selector
- Property
- Stylelint
- 開発者ツール
## 資料
[CodePen で学ぶスタイルシート実践 - Qiita](https://qiita.com/RyoWakabayashi/items/fd0d6813e4b0f3763d99)
内容的には単なる CSS の入門ハンズオンですが、読む人を引き込むために毎回頭を捻ってます
オンライン
当初はオフライン+オンラインという形で計画していましたが、すぐにコロナ対策の3密回避が必須になり、オンライン開催が続きました
ツールとしては Zoom を使っています
コロナ禍が落ち着いてきた頃には「クラウドカメラを皆で触ってみる回」なども実施しましたが、現在も基本的にはオンラインで実施しています
オンラインのため、毎回以下の注意文言を冒頭で喋っています
# Web セミナーでの案内
- 基本的に画面共有を見る
- ツールの説明
- ミュート
- 反応
- チャット
- ビデオは ON (反応を見たい)
- インストールなどの作業をする場合、自分の画面でリンクを辿る
- 社内向けの勉強会
- 録画はしない
- アーカイブのため、顔が映らない状態で録画する
- SNS に流さない
- ツールやサービスを業務で使用する場合は社内ルールに則る
時間は基本的に 1 時間ですが、軽い内容のときは 30 分の場合もあります
動画のアーカイブ配信
社内には色々な部署、色々な人がいます
時短勤務の人もいれば日中客先の人もいるので、リアルタイムでの参加が難しいケースもあります
そのため、オンライン配信時には必ず録画し、後日動画を社内公開するようにしています
アンケート
フィードバックと講師のモチベーション維持のため、毎回アンケートを取っています
ツールとしては Google Form を利用しています
アンケート項目は以下のものです
- 所属
- 氏名
- 参加してみてどのくらい満足されましたか
1(まったく満足しなかった) 〜 5(非常に満足した) - 内容は理解できましたか?
1(まったく理解できなかった) 〜 5(よく理解できた) - 進行のスピードはいかがでしたか?
1(おそすぎる) 〜 5(はやすぎる) - 講義内容について、感想やご意見をお聞かせください
- 今後、とりあげて欲しいテーマがあればご意見ください
これらに毎回テーマに沿った質問を加えています
自分でも内容を詰め込みすぎたな、と反省する時は理解度やスピードの項目に見事に反映されます
講師の応募
半分くらいは私が講師を務めますが、残り半分は他の人に頼みます
多くの場合は同じ部署のメンバーに助けてもらいますが、他部署の方が講師を務めてくれることもあります
財務の方が「貸借対照表の見方」や「決算資料の見方」を説明してくれた回はかなり好評でした
最近では自治体部門の方が「ガバメントクラウド」の説明をしてくれて、非常に参加者の多い回になりました
開催時間帯
当初は完全に有志の勉強会だったので、業務時間外に実施していました
しかし、勉強会自体が完全に定着し、社内でも Python や AWS 、 GitHub など、勉強会で取り上げた技術の利用者が増えてきた結果、会社公認の扱いになりました
勉強会への参加時間を業務時間として見做せるようになった結果、現在は業務時間内に実施しています
内定者の招待
会社公認になったこともあり、人事部と連携して内定者も勉強会に招待するようになりました
冒頭の画像も、人事部の方が作ってくれたものです
内定者への案内用に毎回素敵な画像を作ってくれるのでモチベーションが上がります
テーマの振り返り
Pre も含めると 78 回実施しています
番外編「DX塾+」(5回)、「DX塾EX」(1回)、「DX塾Deep」(7回)も合わせると、4年間で91回になりました
開催回 | 開催月 | テーマ | アンケート件数 |
---|---|---|---|
Pre 1 | 2020/01 | Python のすすめ | 8 |
Pre 2 | 2020/02 | Docker・Ansible のすすめ | 6 |
1 | 2020/05 | 現代的Web開発の基礎 | 15 |
2 | 2020/06 | デザインスプリントのすすめ | 9 |
3 | 2020/06 | AWSのすすめ | 16 |
4 | 2020/07 | 見やすいプレゼン資料作成のすすめ | 24 |
5 | 2020/07 | ゼロから始めるAI構築 | 23 |
6 | 2020/08 | Nuxt.jsのすゝめ | 11 |
7 | 2020/08 | SEの知らないIT英語の世界 | 7 |
8 | 2020/09 | 新規事業企画のすすめ | 8 |
9 | 2020/09 | Docker:高速環境構築のすすめ | 4 |
10 | 2020/10 | お客目線の資料作成術のすすめ | 15 |
11 | 2020/11 | Terraformのすすめ | 1 |
12 | 2020/11 | OOUI のすすめ | 6 |
13 | 2020/12 | Slack のすすめ | 16 |
14 | 2021/01 | アイデアソンのすすめ | 22 |
15 | 2021/01 | E資格対策 | 2 |
16 | 2021/02 | Lintのすすめ | 3 |
17 | 2021/03 | テレワークのすすめ | 6 |
18 | 2021/04 | DevOpsのすすめ | 4 |
19 | 2021/04 | 開発言語紹介 | 4 |
20 | 2021/05 | FACTFULNESS | 20 |
21 | 2021/06 | ビジュアルシンキング のすすめ | 26 |
22 | 2021/06 | データサイエンス | 12 |
23 | 2021/06 | 貸借対照表(BS)の見方 | 63 |
24 | 2021/07 | Markdownのすすめ | 17 |
25 | 2021/07 | draw.io のすすめ | 17 |
26 | 2021/08 | 量子コンピュータ入門 | 15 |
27 | 2021/08 | GitHub実践 | 7 |
28 | 2021/08 | 第1感 〜最初の2秒のなんとなくが正しい〜 |
10 |
29 | 2021/09 | はじめてのマーケティング | 11 |
30 | 2021/10 | iOS開発 | 11 |
31 | 2021/10 | Linux のすすめ | 23 |
32 | 2021/11 | リーダブルコード | 12 |
33 | 2021/11 | Python その1 | 20 |
34 | 2021/11 | 認知バイアス | 11 |
35 | 2021/12 | 達人プログラマー | 10 |
36 | 2021/12 | 事故から学ぶマネジメント | 7 |
37 | 2022/01 | 論文のすゝめ | 8 |
38 | 2022/02 | Python その2 | 5 |
39 | 2022/03 | ショートカットキー講座 | 9 |
40 | 2022/03 | 事業構想へのいざない | 12 |
41 | 2022/04 | アジャイル開発のすすめ | 12 |
42 | 2022/05 | クラウド録画カメラ | 5 |
43 | 2022/05 | Elixir のすすめ | 6 |
44 | 2022/05 | ハッカーと画家 | 6 |
45 | 2022/06 | シェルスクリプトのすすめ | 4 |
46 | 2022/07 | ロジカルライティング | 5 |
47 | 2022/07 | 2021年度オーイーシー決算説明について | 15 |
48 | 2022/07 | CodePen で学ぶスタイルシート実践 | 29 |
49 | 2022/08 | PlayWright のすすめ | 27 |
50 | 2022/08 | CodePen で学ぶスタイルシート実践 第2回 |
13 |
51 | 2022/09 | 商品券事業サーバレス事例 | 23 |
52 | 2022/09 | CodePen で学ぶSCSS実践 | 4 |
53 | 2022/10 | ピクサー流 創造するちから | 47 |
54 | 2022/10 | Vim入門 | 9 |
55 | 2022/12 | テクノロジトップトレンド2023 | 13 |
56 | 2022/12 | 自作PCのすゝめ | 11 |
57 | 2023/01 | 英語資格のすすめ | 7 |
58 | 2023/01 | 衛星データについて | 8 |
59 | 2023/02 | Atomic Habits | 16 |
60 | 2023/03 | リファクタリング・ウェットウェア | 11 |
61 | 2023/03 | 今年度の振り返りと来年度の予定 | - |
62 | 2023/04 | ディズニー流の育て方 | 35 |
63 | 2023/04 | 技術コミュニティーのすすめ | 1 |
64 | 2023/05 | 出向業務のフィードバック | 32 |
65 | 2023/05 | JS、CSSフレームワーク紹介 | 17 |
66 | 2023/06 | Range | 26 |
67 | 2023/06 | プレゼンテーションスキルアップ | 25 |
68 | 2023/07 | Svelteのすすめ | 15 |
69 | 2023/07 | GitHub Copilot のすすめ | 23 |
70 | 2023/08 | あなたの知らない ノーコードデータマイニングの世界 |
18 |
71 | 2023/08 | 生成AIボット | - |
72 | 2023/09 | 出向業務のフィードバック2 | 17 |
73 | 2023/10 | クラウド利用料を把握して上手に使おう | - |
74 | 2023/10 | Figma でデザイン、そのままデモ、 そのまま実装! |
31 |
75 | 2023/11 | PMBOK入門 | 41 |
76 | 2023/12 | ガバメントクラウドの概要とAWS | 34 |
特定の技術に絞ったテーマだとやはり参加者が少なくなり、書籍紹介などでは参加者数が多くなっています
(参加者数はアンケート数よりは多いです)
いくつか所感
- まだ社内で AWS が浸透していない時点での Terraform はかなり厳しかった
- 各種 Linter の紹介は改めて最新版をやりたい
- CodePen はフロントエンドテーマのときに便利
- Elixir はハンズオンしたけど、内容詰め込みすぎていた(いつかリベンジ)
- 自分以外の多くの人に講師をしてもらったので、かなり多様性が出て良かった
勉強会を開催して得たもの
度胸
まずは度胸です
私はそもそも喋るのが得意な人間ではありません
できることなら、ずっとすみっこでくらしていたい、くらいには人前に出るのも苦手です
しかし勉強会で幾度となく講師役を務めた結果、かなり人前で喋れるようになったと思います(少なくとも自分としては)
社内勉強会で慣れた結果、 Elixir のコミュニティでも LT を(下手でも)多数こなすことができました
Elixir の国際カンファレンスにも英語で登壇し、かなり良い経験ができたと思います
AWS のコミュニティ JAWS-UG でも JAWS FESTA 2023 in Kyushu で登壇することができました
これだけ登壇できたのも、とにかく社内勉強会で場数を踏んで度胸を付けたお陰です
参加者が極端に少なかったり、やりたいことが多すぎて1時間を超えてしまったり、ピンチも多かったですが、その分メンタルの耐久力も上がったと感じます
技術や思想への理解
実のところ、勉強会のテーマを決める時点では「自分でもよく理解できていない」テーマを選ぶことが多々あります
しかし、勉強会開催のために 期限付き で資料を作っていくと、どんどん理解が進んでいきます
これは自分一人で勉強するよりも何倍もの効果があります
特に自分で期限を決めてやるのが効果的だと感じます
その日に「勉強会を開く」と宣言した以上、そこまでに説明できるようになっておかねばならないのです
自分が知っているつもりの技術に関しても、改めて「人に教えるために調べる」と新しい気づきだらけで面白いです
本の紹介も何度もしましたが、自分で読むだけの時より何倍も読み込むことになるので、「読んだ」実感が強いです
アウトプットする癖もついたので、 Qiita の記事もどんどん増えています
社内での知名度
勉強会でほぼ毎月しゃべっているので、社内での知名度はかなり上がったと思います
そのおかけで「AIといえば、、、」とか「クラウドといえば、、、」という感じで相談に来てくれる人も多くなりました
そこから新しいビジネスや社内の取り組み、部署間の連携などが生まれるので、とにかく「社内に名の知れた奴が居る」状況は「DX推進」の空気を作るのに有利です
活動を評価される機会も増え、その結果、経営戦略や経営管理にも関わることができています
新入社員研修でも講師をする機会を得られたのは嬉しいです
成長を見る機会
新人たちの吸収力は半端ないです
教えれば教えた以上に成長する子もいます
技術的にはどんどん後輩に追い抜かれている自覚があります
でもそれこそが教育の醍醐味です
もちろん、まだまだ背中を見せていくつもりなので、自分自身も現場で新しい技術を身につけ続けるつもりです
まとめ
合計すればもうすぐ 100 の大台が見えるほど続けてきたのかと思うと、我ながらよくやったと思います
多くの方々に協力してもらい、講師も務めてもらいながら、ここまで続けることができました
今後は社外コミュニティでの活動にも力を入れて、大分県のエンジニアを応援していきたいと考えています
というわけで、年明け 2024年1月20日(土)14:00から、 JAWS-UG 大分の勉強会を開催します
AWS のサーバレスを無料で学べる機会なので、大分県の方も、近県の方も、遠隔地の方も海外の方も、是非是非ご参加ください!
また、翌日 2024年1月21日(日)には大分県で6年ぶりとなる「ハンズオン祭り」が開催されます
私も「AWSのAIサービスをお手軽に使ってみよう」というテーマで登壇します
以下の記事でやった内容をハンズオンしていきます
大分のITを盛り上げていきましょう!