#はじめに
Business Intelligenceの最もメジャーな使い方というのは明細データを集計して全体を把握することだと思います。
例えばPOSシステムの売上データ。
いつ、どの店で、誰が、どんな商品を、いくらで購入したか という情報を
・地域別商品毎 売上推移
・顧客層別商品毎 売上分析
など、多種多様な軸を用いてデータを分析します。
アドホックに分析した内容を定点観測の形にする、という流れですね。
Business Intelligenceの中では今のような売上分析の他に、IoTなどのセンサーデータのリアルタイムの可視化や、SFAから販売管理までのカスタマージャーニーの分析など、分析するデータは山ほどあります。
今回はその中でも、財務会計データの分析についてを記事にします。
例えば全社の売上から始まり、部門集計、課集計、商品単位の集計など、Business Intelligenceの世界では、最上位から明細までドリルダウンして、大局的な流れから詳細の要因までを分析する手法が一般的です。
財務会計データの場合、明細データは仕訳データになります。
この仕訳データが、POSの売上データなどと異なり、分析するにはクセモノになるのです。
本記事ではクセモノである仕訳データの分析の方法についてを解説します。
#仕訳データとは
データ分析を生業としている人間として、この10年で様々なパッケージの仕訳データを見てきました。
扱った会計システムのパッケージは5種類あります。
10年前と今では仕訳データの持ち方が異なるのですが、現在の仕訳データはおおよそこのような構成になっています。
項目 |
---|
伝票番号 |
年月日 |
借方部門コード |
借方部門名 |
借方科目コード |
借方科目名 |
借方補助コード |
借方補助名 |
借方金額 |
貸方部門コード |
貸方部門名 |
貸方科目コード |
貸方科目名 |
貸方補助コード |
貸方補助名 |
貸方金額 |
決算区分 |
摘要 |
#仕訳データを分析する
###仕訳データは同じデータを2度集計する
仕訳データが通常の売上データと異なるのは、集計項目が2つあることです。
売上データであれば、売上金額を集計すればよいのですが、仕訳データの場合は、1レコードの中に借方金額、貸方金額という2つの集計対象の項目があるのです。
仕訳データを集計して、最終的に可視化したいことはおおよそPL表関連のデータとなります。
その場合、借方貸方問わず、科目単位での集計が必要となります。
この時点で、貸借合計金額を計算する場合に、仕訳データを2度集計する必要がございます。
すでにこの時点でトリッキーですね。
###仕訳データは科目の貸借区分を見る
2度集計するだけじゃありません。
もうひとつ、貸借区分を判定することが重要です。
勘定科目には、科目のひとつずつに貸借区分が振ってあります。
こちらの記事が参考になると思います。
「税理士いらず」の勘定科目一覧表
このような形で、科目には貸借の区分がついているのです。
当座預金なら借方の科目、買掛金なら貸方の科目となります。
例えば現金であれば、借方科目ですが、仕訳上は借方金額、もしくは貸方金額にデータが入るのです。
仕訳の原理で考えると、当然ですよね。
さて、そうなると、BIで分析をするときに、気にしないとならない点があります。
###仕訳データをサマリする
今までの流れを追いますと
①仕訳データは勘定科目ごとに貸方金額、借方金額のそれぞれで集計をする
②勘定科目の貸借区分を判定する
という必要性がご理解いただけたかと思います。
勘定科目ごとの貸借区分が判定出来たら、最後の仕事です。
③"借方-貸方"なのか"貸方-借方"なのか、科目ごとに式を分ける
とする必要がございます。
例えば"現金"であれば借方の項目なので、仕訳の借方金額に載っている数値が正となります。
逆に貸方金額に載っていると負の扱いになります。
データ上、仕訳は正負がありませんので、明示的に支持をする必要があるのです。
ここまでをおさらいすると、
POSのような売上金額であれば、売上テーブルの中の売上金額を集計すればよいだけのところを、
仕訳データが対象となると
①仕訳データは勘定科目ごとに貸方金額、借方金額のそれぞれで集計をする
②勘定科目の貸借区分を判定する
③"借方-貸方"なのか"貸方-借方"なのか、科目ごとに式を分ける
という3つの要素が必要となるのです。
###対処策はいろいろ
そのような理由で、仕訳データをただ単純に集計しただけでは、求める数値は出てきません。
先ほどの3要素を攻略する必要があります。
ただし、BIツールの力だけで、クエリ発行→仕訳の集計は製品上できないツールが多いので、
データマートやキューブという集計済のデータを作ることが得策となります。
今回の場合は、①~③の要素を計算したデータを明細状態で保持することとなります。
世の中のパッケージはこの状態のデータを出力できることが多いです。
なので、仕訳に固執せずに、①~③が実装された後のデータを出力し、BIシステムに取り込むことを推奨します。
もうひとつは、PL表のデータを取り込むこともオススメです。
会計パッケージのほとんどはPL表の科目で集計されたデータを出力することができます。
それをBIツールに取り込み、可視化するだけでも効果は絶大です。
MotionBoardに代表されるように、PL表の集計したデータソースから、仕訳の明細表にリレーションをすることも可能です。
例えば、PL表の中で、画面左のように売上高の予実推移を表示します。
特定の月の売上が低いことがわかったら、その部分をクリックすれば、別の画面で仕訳データの一覧を表示することが可能です。
このようにPL表のデータ、仕訳のデータという元データが違う状態でも、詳細を掘り深められるBIツールが今後重宝されることと思います。
言葉だけの説明で、わかりにくい箇所もあると思うのですが、BIツールにおける仕訳データの集計の注意点について、投稿させていただきました。