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アジャイル開発で“迷子”にならないために:UXデザイナーが語る“コンセプト”の重要性

Last updated at Posted at 2025-07-04

はじめに:なぜこの記事を書くのか

私はBIPROGYのデザイン組織に所属し、10年以上にわたってUI/UXおよびサービスデザインに携わってきました。BIPROGYにおけるUI/UXの取り組みについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

ある新規サービスの立ち上げに際し、私はMVP開発を担当するスクラムチームにUXデザイナーとして参画しました。その経験から痛感したのが、スピード重視のアジャイル開発だからこそ、明確なプロダクトコンセプト(以降:コンセプトとする)が必要であるということです。

本記事では、アジャイル開発においてなぜ「プロダクトコンセプト」が重要なのか、私の実体験とともにご紹介します。


アジャイル開発の現場で感じた「スピード」と「迷い」

スクラムの現場では、意思決定から実装までのスピードが非常に速いです。日々のデイリースクラム、スプリントレビュー、ユーザー検証…。スピード感を持って進めるためには、迅速な判断も求められます。

決めるべき事項は次々と積み上がっていきます。たとえば、バックログの優先順位から、入力フォームにどのコンポーネントを使うかといったUIの細部まで。
実装が進むにつれて、目の前の課題をこなすことに追われ、プロダクトの全体像が見えにくくなることがあります。

「とりあえずやってみよう」「ユーザーの反応を見てから考えよう」といった姿勢は、改善サイクルの観点では確かに重要です。
しかし、「このプロダクト/サービスは誰の、どんな課題を解決しようとしているのか」という根本を見失ってしまっては、本末転倒です。

では、なぜそのような“迷い”が生まれてしまうのか。
それは、チーム全体で共有された「コンセプト」が存在しない、もしくは不明確だからです。


コンセプトがないと、何が起きるか?

コンセプトが不明確なまま進めると、次のような問題が発生します。

❌ 判断の軸がなくなる

デザインや仕様の決定が場当たり的になり、チーム内で認識のズレが生まれます。どちらの判断が正しいかを評価する基準がなく、議論が空転し、時間だけが過ぎていくことも。

❌ 説明責任が果たしにくい

「なぜこのUIにしたのか」「なぜこの機能を削除したのか」といった判断の背景が曖昧になり、ステークホルダーへの説明やチーム内の納得形成が難しくなります。

❌ 間違った方向に進み続けてしまう悪循環に陥る

アジャイルにおけるフィードバックループは重要ですが、進む方向そのものがズレていれば、いくら改善しても効果が出ず、むしろ手戻りが増えてしまうリスクがあります。


コンセプトで、チームの動きは大きく変わる

サービスの対象ユーザーは多岐にわたるため、「誰のために」作るのかの解像度が低いままだと、方向性がぶれやすくなります。そこで、チームの思考の軸となるコンセプトを策定しました。

私たちのチームでは、ユーザ検証・ペルソナ策定・ストーリーボード作成を実施した後、コンセプトを策定しました。
チームメンバーが少人数だったこともあり、すべてのUXデザインワークショップはスクラムチームメンバー(プロダクトマネージャー、プロダクトオーナー、エンジニア、UXデザイナー)全員で実施しています。xxzz
コンセプトの完成形ももちろん重要ですが、それ以上にコンセプトをつくる“過程”そのものが大切だと感じました。ワークを通じて、チーム全員がサービスやユーザー、取り巻く環境について深く思考することができました。

コンセプトをチームで共有することで判断基準が明確になり、議論がスムーズに進むようになりました。
ユーザーインタビューやスプリントレビューなどの場でも、「このプロダクトはこういう軸で作っている」と説明しやすくなり、フィードバックが具体的かつ建設的になりました。


私たちが実践したこと:スクラム内でコンセプトを活かすための4ステップ

🔹 ユーザー理解

UXデザインプロセスの一環として、ユーザーの背景や行動、価値観を丁寧に掘り下げ、ペルソナを作成しました。ユーザーの解像度を高めることが、後のコンセプト設計にも直結しました。

ペルソナについては、以下の記事も参考になります。

🔹 コンセプト設計

プロダクトマネージャー、プロダクトオーナー、エンジニア、UXデザイナーのチーム全員で、数日間かけて約6時間のワークショップを実施しました。
初めての取り組みでしたが、メンバー全員がユーザーやサービスについてじっくりと向き合ったことで、表面的なスローガンではなく、プロダクトの本質を捉えた納得感のある言葉を導き出すことができました。

🔹 コンセプトの共有

スプリントレビューのタイミングでステークホルダーにもコンセプトを共有しました。早期に共通認識が持てたことで、好みによる判断が入りがちなUI設計などでも「コンセプトに照らして考える」姿勢がチームに浸透しました。

🔹 日々の判断にコンセプトを活用

ユーザー理解のためのワークとしてインタビューやペルソナ作成などを実施し、それらをもとに作成したコンセプトをチームで共有しました。これによりメンバー全員が常にユーザーを意識して意思決定できる状態をつくることができ、迷ったときにはまずコンセプトに立ち返る――そんな習慣が自然と生まれました。


コンセプトによってスクラムチームのUXは加速する

✅ 判断の軸が明確になる

コンセプトがあることで、バックログの優先順位や仕様判断など、あらゆる場面において判断基準が明確になります。「コンセプトに従うとどうなるか?」をチーム全員が考えるようになり、意思決定の質もスピードも向上しました。

✅ ユーザーにも説明しやすくなる

サービスの目的や方向性が一言で語れるため、ステークホルダーやユーザーへの説明も明快になります。ユーザー理解に基づいて導き出されたコンセプトだからこそ、説明にも説得力が増しました。

✅ 改善の方向性が定まる

コンセプトがあるからといって、常に正解を選べるわけではありません。ですが、検証や改善の際に「迷わず進める」状態を作ることで、フィードバックループがスムーズに回るようになりました。


まとめ:アジャイルこそ「コンセプト」が必要

アジャイル開発では「スピード感」「柔軟性」「フィードバックループ」が重視されます。しかし、だからこそ「どこを目指しているのか」という指針=コンセプトがなければ、進むほどに迷子になってしまいます。

コンセプトは、ただキャッチーな言葉を作ることではありません。ユーザー理解に基づいて深層を表現する“思考の結晶”です。

UXデザイナーは、UIだけでなく「プロダクトが目指す方向」をチームと共に考え、伝え、守る存在でもあります。

ぜひ皆さんも、今どこを目指しているのかを言語化するところから始めてみてください。

アジャイル開発とUXデザインの融合についてご興味があれば、是非こちらのホワイトペーパーもご覧ください。

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